ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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いつも読んでくださる方々、本当にありがとうございます。

最近は投稿頻度が遅くて申し訳ありません。
今回で80話目、これからもゆっくりとですが続けていくのでよろしくお願いします。


轟音の正体

「ではサエさん、当日はよろしくお願いしますね」

 

「こちらこそいつもありがとうございます、それではまた」

 

商店街の会長さんにそうお礼を言って頭を下げた私は、先程来た道をゆっくりと引き返していきます。

 

今回で何度目になるのでしょうか、現在私は定期的に開かせていただいているお茶の交流会の日程を決めるべく、ゲヘナ郊外へとやって来ていました。

 

「さて、用事も済みましたし帰ってもいいですが...折角なら皆さんのお菓子を買うのもいいかもしれませんね」

 

予想よりも早くお話が終わったのもありまだ時間には余裕があるようです。

袖から携帯を取り出し画面を見つめながらそんなことを考えた私は早速お店を目指し歩を進めていきます。

 

そのまま何事もなく買い物も終えて、後は茶室へ戻るのみ....そんな当たり前の想像をしながら歩いていた時でした。

 

 

ドォォォォォォォォォォン!!!!!

 

 

突然街の中にとてつもない轟音が鳴り響いたのです。

 

「い、一体なんですか!?」

 

いきなりの事態に思わず携帯を滑り落としてしまった私は慌てて拾いつつ辺りを見渡しますが、その間音は鳴り止む事なく断続的に響くのみ。

 

ドォォン...ドォォォォォォン!!!

 

(流石に暴動というには規模が大きすぎます、どこかで爆発事故でも起こった可能性も...)

 

もしそうなら巻き込まれて怪我をした方達がいるかもしれない、そう考えた私は急いで現場へと走っていきます。

途中息を切らしながらも音を頼りに進んでいくと、やがて爆発の現場であろう場所まで辿り着きました。

 

「こ、これは...!」

 

そこにあったのは視界を全て覆うほどの激しい煙、巨大な穴が広がっている地面、その周りをワラワラと移動する白いタンクトップに赤いタオルとヘルメットを被った少女達で.....

 

(....ん?今の服装は...いや気のせいでしょう、きっと見間違いです)

 

なんだが猛烈に嫌な予感がし始めた私は軽く頭を振り、手で目を擦ってからもう一度そちらに目を向けてみますが

 

「よーし、出来たー?」

 

「いい感じじゃない?」

 

やはりそこにいたのは先程見たのと同じ格好の方々、肩にはハンマーの様なものをかけ穴を覗き込みながら会話をしています。

 

(い、いえ、まだ他人の空似の可能性も...)

 

「ハーッハッハッハッ!」

 

「.....」

 

そんな願いに追い打ちをかける様に聞こえてきた高笑い、その声の主は臙脂色のシャツに黒の短パン、服の上には白衣を羽織っている人物

 

「大成功、見事な爆破だったな!ハッハッハッ!」

 

温泉開発部部長、カスミさんが瓦礫の上に笑顔で立っていました。

 

 

 

 

私が呆然と彼女達を見ていると、こちらの存在に気づいたカスミさんは目を見開き声をかけてきました。

 

「おや、そこにいるのはお茶のお嬢ちゃんじゃあないか、奇遇だな!何かこの辺りに用事でもあったかな?」

 

「え、ええまあ。...聞く意味はあまりないかもしれませんが、カスミさん達はここで何を?」

 

「ハハハッ、面白い事を聞くのだな。私がここに来たからには温泉開発に決まってるじゃないか!」

 

「ですよね...」

 

高らかに宣言するカスミさんの声に私は溜息をつきながら周りの惨状を見渡します。

...それにしても相変わらず凄い規模の爆発です、地面には底が見えない程の穴が空いてますが、まだ建物が吹き飛んでいないだけマシでしょう。

 

「それで、肝心の温泉は見つかったのですか?」

 

「それは今調べている所だ、メグ達が掘った穴を見てきてくれている筈だからな」

 

「あ、部長〜終わったよ〜」

 

丁度カスミさんと話をしていたタイミングで温泉の確認を終えたメグさんが駆け足でこちらへ向かってきました。

 

「あれ、部長その子は?」

 

「メグさんもお久しぶりです。私はサエですよ、お茶飲み同好会の」

 

「お茶飲み?...ああっ!前に美味しいお茶くれた子だ!懐かしいね〜」

 

メグさんは私を思い出したらしく手をポンッと叩いて笑った後、ここへ来た目的を思い出しカスミさんに向き直ります。

 

「そうそう、穴の中見てきたんだった」

 

「温泉は出てきたのですか?」

 

「ううん!全然無かったよ!」

 

「まあ、私も掘る前からそんな予感はしていたがな!ハッハッハッ!」

 

「ハッハッハじゃありませんよ、掘る前に気づいていたなら止めて欲しかったのですが....」

 

「それは出来ない相談だ!おかげでこんなに綺麗な爆破が出来たんだぞ?それに、生憎私の辞書には温泉に関して撤退の文字は載って無いものでな!」

 

ああ、そうでした...あまり出会わないので忘れかけていましたが、これが彼女達にとっての普通なんでしたね。

 

どんな状況に立たされようと決して諦める事なく己の道を突き進む....聞こえは良いのですが、その熱量は全てが余す事なく温泉へと注がれるので周りとしては大変な迷惑になる事も少なくありません。

 

「はぁ....空崎さんに見つかったらまた怒られますよ?確か前に彼女と話した時に次捕まえたら今度こそ逃さない方法をとるとおっしゃってましたけど」

 

「え、委員長がそんな事を?」

 

「ひぅ...!そ、そんな恐ろしい....ゴホンッ!ふ、ハハハッ、この私にそんな脅しが通用するとでも?みくびってもらっては困る」

 

「あの、尻尾が震えて....」

 

「そうだ!そろそろ次のポイントへ向かわなくてはな!メグ、他の部員達を纏めて行動開始だ!」

 

「おっけ〜、みんな!移動するよ〜」

 

「「「おー!」」」

 

私がそう指摘する途中で明らかに自身の態度を誤魔化す様に声を大きく上げ切り替えたカスミさんは、そそくさと部員達と共にこの場を去る準備をし始めました。

 

まあこれ以上作業を止めるよう言っても彼女達が素直に聞かないのはわかってますし、後は出来るだけ被害が広がない事を祈るのみです。

 

「ほどほどにお願いしますね」

 

「ハッハッハ、善処はしてみるがあまり期待はしない事だな!なぁに、もし温泉が出た暁にはお茶風呂として使っても構わないぞ?」

 

「いえ、流石の私でもそこまでは考えてませんよ...」

 

「それじゃあ、また何処かで会おうじゃないか、ハーッハッハッハッハッ!!」

 

「またね〜!」

 

そう言って初めのように高らかな笑い声を響かせながら、カスミさん達は重機に乗り颯爽と道路を走り抜けていきました。

 

(やはり嵐の様な人でしたね....)

 

彼女達が去った瞬間、辺りにはまるで何事もなかったかの様な静けさが漂い、そんな中で残された私は変わり果てた地面をもう一度見ながら深く溜息をつきます。

 

風紀委員会がやってくれば、犯人はすぐに温泉開発部の仕業だとわかり、忙しい中彼女達を捕まえる為に奮闘するのでしょう....帰ったら皆さんのためにお茶を用意しておきましょうか。

 

それにしてもお茶風呂ですか、確かに存在自体はしていますが.....そういえば、昔は自作でお茶風呂を作ろうとした事もありましたね、茶葉を纏めてこっそりお風呂場に持っていきましたっけ。

 

それが温泉規模となるとどうなるでしょうか。

開放的な空を見上げ、お茶の香りを感じながら滑らかなお湯で身体を温める、それを皆さんと一緒に楽しめたら.....

 

「....はっ!駄目ですよサエ、誘惑に負けてはいけません。そうなれば彼女の思うツボではないですか。」

 

正直に言えば非常に魅力的な話ではありますが、ここは冷静にならなくては。

 

...もしその時が来たら考えてしまうかもしれませんが。

 

そんな微かな思いを抱きながら、私は買い物袋を持ち直して早足で帰路に着いたのでした。

 

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