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更新頻度が遅い中、いつも読んでいただきありがとうございます。
「.....むぅ...」
ゲヘナ学園、二年生寮のとある一室。
そこでは一人の少女がベッドの中で布団にくるまりながら身を捩っていた。
意識は既に夢から覚めてはいるようだが、予想外の部屋の寒さに身体が思う様に動かず布団から抜け出すことが出来ない。
(急に寒くなりましたね...昨日まではまだ平気だったのですが)
そんな事を考えつつ、何とか身体を起こした少女はそのままベッド横に取り付けられたカーテンに手をかける。
「....成る程、これなら寒くなるのも納得ですね」
そして窓の外を覗き込んだ彼女...朝宮サエは、目の前に広がる光景に小さく笑みをこぼした。
小さな白い塊がポツポツと空から降り注ぎ、地面や窓を濡らしていく。
その正体は....雪。
それはまさに、キヴォトスに本格的な冬が到来した瞬間だった。
サエが目を覚まして一時間ほど経過した頃、寮を出た彼女は空を見上げながら自分の茶室を目指して広場を歩いていた。
「今年はどれ程雪が積もるのでしょうか、去年は確か寮前が凄いことになっていましたっけ」
サエの言う通り去年の今頃はかなり積雪量が多く、寮の入り口が半分埋まってしまう程だった。
その時必死に雪かきをした記憶を思い起こしながら、彼女はカラカラと下駄の音を鳴らしながら一歩一歩進んでいく。
普段であれば教室に向かう者、ダラダラと過ごす者、喧嘩する者など多くの生徒が行き交う広場の筈が、今日が休日であるからか、それとも寒さで部屋を出られていないのか人通りが少ない。
周りの様子にどこか珍しさを感じながらも、サエの視界の先には部室棟が見えてくる。
今日は何をしようか、そう考えながら扉を開こうとした時
「あ、先輩!」
突然サエの背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り返るとそこにいたのは後輩兼お茶飲み同好会のメンバー宇治アサリ、彼女はサエに手を振りながら早足で駆け寄ってくる。
「おはようございます、アサリさん。お早い到着ですね」
「じ、実は朝に雪が降ってるのを見てつい気持ちが舞い上がってしまって...」
「ふふっ、そうでしたか」
アサリはどこか恥ずかしそうに答え、そんな彼女の告げた微笑ましい理由にサエが頬を緩ませていると、
ピロンッ♪
突然二人の持つ携帯から同時に通知音が鳴り響いた。
「あ、連絡みたいですね」
「そうですね、どれどれ...おや、ミオさんでしたか」
発信元を確かめるとそれはサエ達のモモトークグループからの通知、そこには同じくお茶飲み同好会メンバーのミオの名前が映っていた。
『姐御!初雪ですよ初雪!』
そんな文と共に、ゲヘナ郊外の場所を背景にピースをしているミオが映った写真が添付されている。
『ミオさん、おはようございます。郊外にお出かけ中だったのですね』
『雪見てたらテンション上がっちゃいまして!いてもたってもいられなかったんです』
『ミオちゃんらしいね』
『私とアサリさんは茶室に向かってますので、もしよろしければミオさんも後でどうぞ』
『はい!もう少し見て回ったら後で必ず行きます!』
それからいくらかやり取りをした後サエとアサリは改めて部室棟に入ろうとしたが、そのタイミングで再びモモトークの方に通知が届いた。
「今度はキョウカさんの様ですね。.....ん?」
「どうかしたんですか?」
「ああいや、なんともキョウカさんらしいと思いまして」
サエはそう呟き画面を見つめると、そこに書かれている文に思わず苦笑いを浮かべてしまう。
『寒くて布団から出られない....助けて』
「あはは...本当ですね」
「仕方ありません、キョウカさんを迎えに行きましょうか」
こうして二人は頷きあうと、先程まで来た道を引き返して行ったのだった。
それから暫く歩き彼女が待つ寮までやって来た二人。
寮長に事情を説明し中へ入ると、早速キョウカのいる部屋を訪ねていた。
「キョウカさん、来ましたよ」
「....開いてる」
サエが扉越しに話しかけると、室内からそんな弱々しい声が聞こえてきた。
そのまま鍵のかかっていなかった室内へ足を踏み入れた二人は、ベッドの上で丸くなっているキョウカを発見した。
「これは....見事なミノムシ状態ですね...」
「キョウカちゃんの目しか見えない...」
彼女達の言う通り、キョウカは何重にも布団を巻きつけ目元だけを布団の隙間から覗かせているというなんとも言えない格好を披露している。
「キョウカさんは寒がりなのですか?...これからまだまだ寒くなりますし、本格的に茶室の寒さ対策を考えなくてはいけませんね」
「この前の炬燵はちょっとアレでしたしね...」
「キョウカさん、動けますか?」
「....布団持ってっていい?」
「...まあその状態なら仕方ありませんね。アサリさん、手伝ってください」
「は、はい!」
何枚かの布団をキョウカから抜き取り、二人は手分けして残りの布団を手に部屋を出ていく。
「ミオさんにホッカイロをいくつか買って来て貰えるようお願いしましょうか....ん?」
廊下に出たサエが少しでも暖かくなるようにと、郊外にいるミオに買い物をお願いする為携帯を取り出そうとした瞬間、それを見計らった様に携帯が震えた。
『姐御!今ホッカイロ買ってたんですけど、他に何かありますか?』
「....ミオさんはエスパーなのでしょうか」
まるで心が読まれたかの様なミオの行動に笑みを浮かべつつ、彼女への感謝と気をつけて戻ってくる旨の文面を送るサエ。
「さて、それではミオさんも帰ってきますし、茶室に向かいましょうか」
「はい...!」
「温かいお茶飲みたい...」
冬の始まりを知らせるその日、少女達はまたいつもの日常を過ごす為、足を踏み出したのだった。