今更になりますが、お気に入り、しおり、感想、評価してくださった方々ありがとうございます。
「し、失礼します!」
朝宮先輩の元へと訪ねた日から数日、私は再び先輩のいる茶室へと足を運んでいました。
あの日茶室を出た私はすぐに先輩に言われた書類の提出を済ませてしまおうと思い、そのまま大急ぎで万魔殿の元へ向かいました。
が、その時運が悪い事に万魔殿の中で対応できる人がおらず最終的に提出を終えられたのは今日の朝...。
「なるほど、そうだったんですね」
「はい...本当はもっと早くここに来たかったんですが....」
「ふふっ、焦らなくても大丈夫ですよ。私もこの茶室も逃げたりしませんから」
先輩はクスッと笑い、一つ咳払いをして私に向き直ると
「ではすべき事を終えたということで...改めてようこそお茶飲み同好会へ。今日から同じ仲間として、よろしくお願いします」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「元気があっていいですね。では、そんな宇治さんには早速こちらを....」
私の返事を聞き先輩は真ん中に置いてある茶釜に水を入れ始めました。
「まずは何事も実際に自分の手でやってみた方がいいでしょう。私が今から一通り手順を見せますから、宇治さんはそれを真似してお茶を淹れてみてください」
先輩はそう言うとあの時見た丁寧な動きでお茶を淹れていきます。
「沸騰後はゆっくりと茶釜を持ち上げてください、怪我をすれば危ないですので」
「この茶葉の場合湯冷ましは3、4回でいいでしょう。あまり回数が多いと茶葉が上手く開きませんからね」
「急須から移す時も最後まで丁寧に淹れる事を心がけてください、何事も慌てない事が大切です」
私は相変わらず目の前の先輩の綺麗な仕草に釘付けになりながらも、必死にその動きを目に焼き付けていきます。
やがて全ての工程が終わると、出来上がったお茶は湯呑みの中で温かそうな湯気を放っていました。
「さあ、どうぞ」
「....っ!」
再び茶釜に水を注いだ先輩は私に先程使用した道具を渡すと、ただじっとこちらを見つめて見守り始めました。
先輩の視線が突き刺さる中、私は先程の先輩の動きを思い出しながら手順通りに進めていきますが、やはり見るのと実際にやるのでは大きく違います。
その上初めての経験というのも合わさり、緊張していた私はついつい道具を持つ手が震えてしまったりとぎこちない動きを披露してしまう始末。
先程の手本よりも遥かに時間がかかりつつも、ようやく淹れ終わった私は先輩に促されそのお茶をゆっくりと飲んでいきます。
「どうですか?」
「...あんまり美味しくないです」
飲んだ後口に残る嫌な後味に湯呑みからのぼる香り、お茶の全体的な色....私が初めて淹れたお茶はあの時先輩から頂いたものとは明らかに違っていました。
「そうですか、では今度は私にも淹れてくれませんか?」
「...えっ!?」
このお茶を先輩に!?
「だ、駄目です!先輩と比べて全然上手じゃないですし!これを飲ませるのも悪いといいますか...!えーと.....」
私はなんとか断ろうと言い訳を並べますが、先輩は一切譲ろうとしません。
とうとう先輩の言葉に押し負けてしまった私はそれから別の湯呑みにもう一度お茶を淹れ直すと、それを恐る恐る差し出しました。
湯呑みを受け取りそのまま飲み始めた先輩を私は緊張しながら見つめていると
「....確かに苦味が強いですね。先程取り出した茶葉の量が多いのもそうですし、二煎目の蒸す時間も長かったようですから。それに色合いが違うのも急須から湯呑みへ淹れる際一気に移してしまったのが原因でしょう」
先輩は私のお茶淹れの悪かった点を次々と挙げていきます。
それだけ原因があったのかと驚きながら、私は不甲斐なさについ項垂れてしまいました。
そんな私を見て先輩は優しく微笑むと
「誰であろうと初めての挑戦で上手く出来る人はいませんよ、それに宇治さんにはまだ説明していない事もたくさんありましたから。...少し意地悪な事をしてしまいましたね、申し訳ありません」
「ですが実際やってみてわかった通り、その方法、時間、動き、それら一つ一つの些細な違いで最終的な味や香り、お茶の色までもが変わってきます...私はそんなお茶が大好きなんです。その事を今日、宇治さんには知って欲しかったんです」
「宇治さんもしっかり練習すれば、きっと美味しいお茶を淹れられるようになります。なので、これから一緒に頑張っていきましょう」
「...!はい!頑張ります!」
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ゲヘナ学園1年宇治アサリ、加入。
(お茶飲み同好会メンバー:現在2人)