【本編完結】山田リョウを餌付けした未練タラタラな元カレくん 作:SUN'S
かなり時間が空いてしまいましたが、ブランクを治すために初めての男の子が主人公です。
今日はカレーの気分かな
俺には元カノがいる。
ソイツはロックバンドのベースを担当し、女にも男にもモテるタイプの人間だが、人間としてはクズを極めつつあるヒモ状態の、どうしようとないほどカスだった。
「リキ、なにか食べたい」
「いや、帰れよ」
その件の元カノこと山田リョウは俺の気持ちなど露知らず、定期的に週5の割合で俺の部屋にやって来るなり、そう食べ物を要求し、あわよくば俺の一人暮らしするアパートに泊まろうとする始末だ。
深い、とにかく深い溜め息を吐いて、俺はギターケースを抱えたまま玄関先に居座るリョウを招き入れる。結局、俺もまだ彼女に未練タラタラで彼女に頼られるのを実はかなり喜んでいる。
「リクエストは?」
「じゃあ、カレーで」
「あいよ」
リョウのリクエストを作るために冷蔵庫を開けつつ、ふと暇潰しにスマホで読んでいた漫画の美味そうなカレーのレシピを思い出す。
まずタマネギを三個ほどみじん切りにして、一口サイズにカットした豚バラを厚手の鍋にみじん切りにした野菜の他にぶつ切りにしておいたタマネギとニンジン、ジャガイモを投下し、バターで炒める。
軽く野菜と豚バラを炒めたら、お湯とコンソメ一個をさらに鍋に入れて、じっくりと煮込む。細かい野菜が蕩けてきたら湯煎し皮を剥いたトマトやリンゴの擂り身、ヨーグルトを加えて、食材と馴染ませるように鍋の中をお玉で優しく回す。
ここにソースを入れたり、生クリームを加えたりするのも良いけど。今回は計量カップ一杯分のワインと大さじ二杯分のケチャップを加える。
あとは市販のカレー粉を刻み、じっくりと煮込めば完成する。
「まだ?」
「はあ、先にこれでも摘まんでろ」
テーブルに突っ伏したままカレーの匂いを嗅ぎ、俺に早くしろと空腹を訴えるリョウの作り置きしていたラッキョウを与える。ついでにサラダでも作っとくか、カレーだけじゃあれだし。
あれこれと作業している間にカレーも煮込まれていたのか。
グツグツと煮え立つ音と鼻腔を突き抜けるカレー独特の空腹感を誘う香りに急かされるがまま、俺は大皿にカレーと炊き立ての白米をよそい、いつの間にか冷蔵庫から持ってきたであろう麦茶を飲んでいる彼女に呆れる。
「待ってたよ、リキ」
「カレーを、だろ?」
「そうとも言う」
いや、そうとしか言わねえよ。
「「いただきます」」
そんな文句を彼女に言いながら俺は彼女の対面側に座り、ゴロゴロと一口サイズに切ってみたものの。やはり女の子のリョウには大きすぎたように思える豚バラを頬張り、もっと肉の繊維が解れるように煮込めば良かったかと思う。
「美味しいよ、流石はリキだね」
「まあな」
モグモグとスプーンに掬い上げたカレーと白米を小さな口で食べるリョウの顔を眺めつつ、どうして俺とコイツは別れたのかを思い出そうとするが、やっぱり別れる原因を思い出せず、未練タラタラに視線を向けてしまう。