【本編完結】山田リョウを餌付けした未練タラタラな元カレくん 作:SUN'S
「リョウ先輩は、どうして別れたんですか?」
突如、そう私に問い掛けてきたのは郁代だった。
私に纏わる話題は必ず知っておこうという魂胆なんだろうけど。リキと別れたのは、単純におたがいのすれ違いによるものだし。
あまり言いふらせる話題じゃない。
「そういやアタシも聞いてなかったな」
「私も聞いてないですね~」
ぞろぞろと私に近付いてくる恋愛弱者の集団を警戒しながら虹夏に援護・救援を求めるように視線を送った瞬間、とっても爽やかな笑顔で見捨てられた。
「くっ、殺せ!」
「殺しませんよ!?」
「落ち着け、ネタだ。リョウも悪ふざけせず、ちゃっちゃと自白しとけ。どうせ、変な理由なんだろうが、一応聞いといてやる」
店長の一言によって逃げ道を失い、まだ虹夏にも話したことのなかったリキとの別れ話を大々的に「STARRY」で教えることになってしまった。
チラリと虹夏と郁代を見ればワクワクしており、コイバナを聞きたくてしょうがないという雰囲気だ。PAさんはニコニコ、店長は怖い。
「………はあ、私とリキが別れたのは浮気だよ。いや、まあ、実際は浮気じゃなくて私の勘違いだったんだけどさ」
浮気の一言に険呑な雰囲気になったものの。私の勘違いだったという言葉に空気は緩まり、コホンと咳払いしながらスマホを取り出して、とある写真を見せる。
「誰ですか、この人?」
「「うげっ」」
「あら?」
私のスマホの画面に映っているのは私の尊敬するベーシストの廣井きくりさんと、それから彼女に抱きつかれて赤面しているリキだ。
「バンド解散した時期と二人を目撃した時期が最悪にも重なってさ。もう『私より酔っ払いの女が良いのか、この浮気者!』とか『どうせ、その人の方が私みたいな仏頂面より可愛い顔だもんね!』なんて文句言いまくって、気がついたら別れてた」
「お、おう、なんか悪いな」
「その、ごめんね?」
何故、ふたりが謝る?
そんなことを考えながらも申し訳なさそうにご飯をくれる虹夏と店長の二人に「いいよ、べつに」と返事を返す。郁代は「お、大人の世界だ」とか興奮してるし、PAさんは「リキさんも大変ですね~」と呟いている。
「で、別れたのに仲良くしてるのは?」
「私もリキと一緒で未練あるんだよ、それだけ」
ぷいっとみんなから視線を外して、お菓子を抱えるように店内の隅っこに移動する。私が悪いのは分かってるけど、リキもリキできくりさんにデレデレするのが悪い。
「さっさとコクれよ、バカ」
そうバイトを頑張っているであろう、どうしようもなく大好きな元カレに私は文句を言う。
きくりさんを貶めるつもりはないですからね?
単純にリキくんと住んでる場所が近くなだけです。