【本編完結】山田リョウを餌付けした未練タラタラな元カレくん 作:SUN'S
結局、我が家に一泊したリョウの寝顔を写メる。
喋ってても黙ってても可愛いのに、コイツってお金に関してはマジのクズになるのは何故だろうかと考えながら彼女を起こさないように布団を脱出し、軽く洗顔と歯磨きを済ませてエプロンを装着する。
「さてと」
事前に用意しておいたお米2合をボウルや炊飯器のお釜に移し、しっかりと三から五回ほどよくとぎ、三十分ほどタオルの上に置いたザルに移しておく。
その間に密かな楽しみとして瓶に密封して浅漬けしていたキュウリやニンジンを取り出し、キュウリを半月切りにカットし、ニンジンは一口サイズの短冊切りにする。
ついでに漬けていた梅干しを扱き出し、しっかりとペースト状になるまで包丁で、トントンと何度も刻み、真ん中に寄せて、また刻む工程を繰り返す。
バイトを頑張ったご褒美に奮発して買った土鍋を用意して、その中に磨いだお米を移し、お水を入れてガスコンロにセットしたら強火で温める。
「もう一つくらい作るか」
そんなことを呟きながら土鍋の横にフライパンを置き、サラダ油(他にもオリーブオイルなど)を敷いておき、じんわりと弱火でフライパンを温めつつ、コショウや塩で味を整えた卵をボウルでかき混ぜ、ゆっくりとフライパンに移し変えたら、一気にかき混ぜる。
大小様々なサイズになるものの。
ゴロゴロとした炒り卵を小鉢に移動しながら、グツグツと沸騰し始めた土鍋の火加減を弱火に変える。
「…ぉはよ……」
「ああ、おはよ。さっさと顔洗ってこいよ」
「ん、ん」
ノソノソと俺の部屋着をパジャマ代わりにするリョウを洗面台に誘導する。コイツのだらしない姿を知っているのは自分だけという優越感に浸りつつ、俺は台所に戻ってお粥の食感と味を確かめる。
「ま、中々に上出来だな」
「それ、お粥?」
「おう。腹持ちは良いし、消化も早いからな」
「そうなんだ」
リョウは俺の言葉を聞いているけど。自分で作るつもりは毛頭無いということを俺は知っている。べつに作ってもらおうとは思っていないが、せめて少しだけ食費は工面してくれ。
……コイツって元カノだよな?
そんな疑問を持ちながらミトンを両手に装着し、だぼったい部屋着姿のリョウの待つ居間と寝室を兼ねた部屋に土鍋を運び、漬け物や炒り卵を運ぶ。
「「いただきます」」
いつものように声を揃えて、そう俺達は言う。
リョウのお椀にお粥を装って、お好みの具材を取るように説明しながら自分の分のお粥をお椀に装い、ペースト状にした梅干しをスプーンで小匙一杯分ほど掬い、ぐるりと一周させるようにお粥と混ぜる。
「うん、美味い」
お米特有のほろ甘さと梅干しの酸味の混ざった、なんとも心地好い味を楽しみつつ、クールな澄まし顔の緩んだ朝のよわよわフェイスのリョウをこっそりと眺める。お粥とキュウリの漬け物を交互に食べて、今度は紫蘇を食べたかと思ったら、カッ!!と両目を見開いた。
「すっっっぱい…!」
「おっ、マジか」
ガリッ、ゴリッ、と。
俺はニンジンの浅漬けを食べながら麦茶をチビチビと飲んでいるリョウの姿に「かわいいな」とか「そういうところも好きだな」なんて思う。