【本編完結】山田リョウを餌付けした未練タラタラな元カレくん 作:SUN'S
チクタク、チクタク、と進む時計の秒針を見遣る。
「リョウは練習してる頃か」
そんなことをポツリと呟いてしまったせいか。
俺の頭の中はリョウのことばかりになってしまい、アイツの喜びそうな料理でもするかと彼女にプレゼントされて以来、ずっと愛用しているエプロンを装着して、磨りガラスのドアを開いて台所に立つ。
「具材は何にするか」
リョウの美味しそうに食べる顔を想像しながら冷蔵庫の扉を開け、じっくりと食材を吟味する。豚肉は、この前の料理で使ったし、今回は牛肉にしとくか。
タマネギをみじん切りにして、サラダ油を敷いて軽く熱していたフライパンに移して、じっくりと飴色になるまで弱火で炒める。その間に牛肉を更に小さく切り分け、包丁を二本使って肉繊維を引き伸ばすように叩く。
包丁で叩かれて肉の繊維が解れた牛肉をボウルへと移動して、ニンニクやショウガ、塩コショウを加えて、とにかく捏ねる。
グチュッ、ニチャッ、と鈍くて生々しい音を聞きつつ、ちゃんと粘り気が出るまで捏ねて、そこに飴色になるまで熱したタマネギを投下、さらに牛肉と合わさるように捏ねまくる。
「そろそろだな」
手のひらに少しサラダ油を垂らして、タマネギと牛肉の混ぜ合わさったミンチになったタネを掬い上げ、形を形成しながら空気を抜くために肉のタネをペタペタと左右の手を行き交うように叩きつける。
フライパンにサラダ油を敷いて、そこに肉のタネを並べて、じっくりと焼いていく。表面を焦がさないように中火にガスコンロの火力を調整し、その隣に小さめのフライパンを置き、とろけるチーズを仕込んだ肉のタネをフライパンの真ん中に設置する。
まだ帰ってくる気配もないし。
「ソースだけじゃあれだし、大根おろしも作るか」
しっかりと土汚れを掃除した大根の葉っぱの部分を包丁で切り落とし、ボウルと卸金を持って居間に移動して、ボウルを両足で固定しながら大根を卸金で豪快に削る。
ゴリゴリと大根を削る度に、甘いような香りが俺の鼻に漂ってくる。まったく、リョウが来る前は俺だけの分を用意すれば良かったのに、アイツのせいで趣味の料理がどんどん上手くなるな。
そんなことを考えながら台所に戻り、フライ返しを使って肉のタネをひっくり返し、じっくりと煮込むためにケチャップやソース、デミグラスソースなどいつでも使えるように準備しておく。
「ただいま、リキ」
「…おう。おかえり」
ノソノソとギターケースを背負ったリョウに返事を返しながら、香ばしいジューシーな香りを放つ肉のタネ──ハンバーグに向かって各種ソースを浴びせる。
事前に和風用のハンバーグは別に取り分けておき、こっちはソースと絡めることなく、チーズ入りハンバーグ一緒に余熱で内部も焼いていく。
「お風呂はどうする?」
くるりと後ろに振り返って、そうリョウに問う。
しかし、それよりも俺の視線を奪ったのはストッキングを履いていない魅力的な生足だった。日焼けしていない色白ながらも健康的な脹ら脛に太股、リョウの外見も合わさって妖艷さな雰囲気を醸し出している。
「まずはお風呂よりご飯を頂こうか」
「お、おう、わかった」
落ち着け、クールになれ。
そう自分にマインドコントロールじみた言葉を掛けつつ、お皿にハンバーグを移していく。リョウは何を掛けるのかは分からないため、ちゃんと彼女のためにチーズ入りと和風も用意している。
「「いただきます」」
いつものように言葉を発する。
リョウはフォークとナイフを使い、小さく切り分けたハンバーグをデミグラスソースに浸け、パクリとハンバーグを口に含んだ瞬間、とろりと蕩けた表情を浮かべた。
「はあぁ……すごく美味しい」
「そ、そうか」
俺は彼女のエロスに当てられてしまい、ドギマギしているというのに平然と食べ進めるリョウに何だか申し訳ない気持ちになりつつ、二つに切り分けたハンバーグに大根おろしを掛けて食べる。
うん、美味いな。