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どうしてこうなってしまったのだろう?
ブラッドの私を呼ぶ声が聞こえ目を覚ますと、目の前に広がる光景に唖然としながらそう思った。
昨日まで挨拶を交わしていた隣人達が、血相を変えて私達の部屋を荒らしまわっている。ショーンおじさんが、倒れ込むブラッドを前にして声を荒げて何かを言っている。何が起こっているかなんて一目瞭然だった。
苦痛に顔を歪める彼を見て、咄嗟に体が動いた。
(ブラッド。そうだ、ブラッドが危ない。私が、私が守らなくては)
「ブラッド!!」
体や手にキツく縛られている縄に力を入れ、解こうとする。しかし、それを見たショーンおじさんが口を開いた。今まで聞いたことの無い、冷たく、卑劣な声だった。
「おっと、カーリー。無理だろうが、抜け出そうとするなよ。お前が何かしようものなら……」
ショーンおじさんが素早くブラッドを捕らえた。片腕でブラッドの首を絞め、もう片方の手に握られているナイフを彼に突き立てた。
「こいつがどうなっても良いってことだな?」
「……っ!!」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながらナイフをちらつかせ、ブラッドを盾にするショーンおじさん。首を強く締め付けられている所為かブラッドの表情は段々と悪い物になっていった。それに対して私はどうする事もできない己の無力さに吐き気がした。
疑問、失望、悲しみ、怒り。それらが頭の中をミキサーでかけるかの様にぐちゃぐちゃに混ざり合っていく。混ざり合って出来た言葉は絶望の一文字。
(どうしてだ……私はただ……)
あまりにも受け入れがたい現実に私は項垂れ、現実から目をそらすように待ち続けた。
この全てが錯覚か、悪戯なら良いと思って。
しかし、目の前に広がる卑しい欲望の塊達はそれを良しとはしなかった。
「な…なんで」
顔を青くしたブラッドが口を開いた。必死に肺に空気を取り込もうとするその姿にさらに心を痛めた。
「なんで……おじさん達はこんな事をするの…?」
彼もまた私と同じ心境だったのだろう。私が問いかけようとした疑問を彼はショーンおじさん、隣人達へと吐き出した。
「カ、カーリーは皆を守りたくて、お金を渡したんだよ…?ただ、おじさん達が今の暮らしを少しでも楽にしようと……」
そうだ、わたしはただ皆を守りたかっただけだ。ただショーンおじさんやグースお姉さんに恩を返したかっただけだ。私はそのお金を有意義に使ってほしかっただけで……。
自分の気持ちを訴えかければこんなバカなこと止めてくれるかもしれない。
そんな淡い気持ちを持って、私も彼らに訴えかけようとして……。
「これはチャンスなんだよ。ブラッド」
「ぇ………」
ブラッドの訴えに対して卑しい欲望が平然と放ったのは汚い言葉だった。
「お前らの家から大金をせしめて他の場所に移住出来るチャンスがな……!」
やめてくれ。
「ハハッ!!今の暮らしだと!?お前ら二人が何を考えてるか知らねぇが、他の奴らは違う!誰もがここから抜け出したいって考えてる!!お前らガキ二人の家から金奪って、ここから抜け出せるなら喜んでするさ!!」
やめろ、幼い彼にそんな恐ろしい事を、汚い
ブラッドの顔がどんどん深い絶望へと落ちていく。それは彼と初めて出会ったあの時とよく似ていた。
あぁ駄目だ。そんな顔をしないでくれ。私はそんな顔をさせないように守ってきたはずなのに。
私がしてきたことは全て、無駄だったなんて思わせないでくれ。
彼が項垂れ、涙を流した瞬間、何かがプツリと切れた。そして沸々とマグマの様に彼等への殺意が湧き出していく。
「ブラッドを離せ……!」
「おぉ、怖い顔だなカーリー。今にも俺たちを殺そうとしそうな顔だ」
「その子は関係ないだろう!」
「いやぁこのガキが居て助かったぜ。何せこうしてお前に手出しさせないように出来るんだからな」
「このっ……!」
殺してやる。
…そうだ、こいつは今完全に油断している、まさか私がこの縄を解くなんて思っていない。素早く抜け出してナイフを奪い取り、ブラッドを助ける。それからここにいる全員、私の手で……。
私の動きを悟られないように少しづつ縄に力を入れていく、奴の表情は未だに余裕そうな顔をしている。
プチプチと静かに縄の切れる音が聞こえる。もう少しだ、もう少しで……。
あと少し、もうすぐ縄が解けるだろうといった所で、目の前に違和感を感じた。
違和感の正体はショーンおじさんではなかった。
ブラッドだった。
ボギンッ
何かが折れる音がした。それと同時に耳が劈くような叫び声が部屋中に響き渡った。
「ぎゃあああアアアアアッ!!!?」
私を含めた全員が声の主にへと視線が集まった。
皆の視線の先、そこには。
「ヒッ……ヒイィィ!?俺の、俺の腕がぁぁぁ!!」
片腕があらぬ方向に向いたショーンおじさんだった。
血はボトボトと流れ落ち、鼻につく鉄臭い匂いが部屋中に広がる。隣人達も何が起きたのか、訳も分からないまま目の前の出来事に口を閉じられないままでいる。
「ブ、ブラッド…?」
痛みに悶える彼の直ぐ傍で立ち尽くしている少年に何が起こったのか、問いただそうと声をかけるも、聞こえていないのか反応が無い。
彼の様子がおかしい。
そう思っていた矢先、ブラッドが静かに動いた。
彼がショーンおじさんの方へ向き、そして。
ギュッ
「がっ!?」
ブラッドの腕がショーンおじさんの首を勢いよく掴んだ。しかし、その腕は私が知っているブラッドの物では無かった。
その腕は全ての色を吸い込むような黒色に変色しており、殻の様な物で覆われていた。
「あがががががっ」
首を掴む腕は段々と強くなっていく。腕を折られ、首を掴まれ、どうする事も出来ないショーンおじさんの苦痛に歪む顔は青ざめていった。
ブチブチブチ
血管が千切れる音が聞こえる。肉が、筋肉が、人ならざる力によって千切れていく。ゆっくりと、それは周りに見せつけるように思えた。ショーンおじさんはもう、声も出なくなっていた。
ブチィッ
トドメと言わんばかりにブラッドが勢いよく首を握り潰した。
空中に弧を描くように飛ぶ頭は部屋中に血を撒き散らしながら隣人達の方へ鈍い音を響かせて落ちた。
苦痛に塗れた表情で絶命したショーンおじさんの目は永遠を見つめていた。
「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」
何が起こったか今更理解した隣人達の一人が叫んだ。
叫び声に反応してブラッドが歩き出す。ゆっくりとした歩幅はしっかりと隣人達の方へと向かっていった。
私はその場から動く事も、彼に言葉をかける事もできなかった。
「あ"っっ?!」
ブラッドが腕を横に振るう。それだけで隣人の一人の頭が弾け飛んだ。
「う、うわぁぁぁぁ!!?」
頭が弾けた拍子に飛び散った血が隣人達に掛かる。それによって気を取り戻した人達からブラッドから離れ、逃げ出した。
「ぎゃっ」「あっ」「ぎぃっ」「ぐぇっ」
逃げ出した人から次々とブラッドが異形の腕を振るって殺して周り、断末魔が響いていく。その光景はまさに地獄だった。
「ひぃぃぁぁあ!!嫌っ!いやぁぁぁぁぁ!!」
瞬く間に隣人達は残り一人、グースお姉さんだけになっていた。壁に追いやられ、腰が抜けたのかその場から動かないまま狂ったように叫び続けた。
狂ったグースお姉さんの元にブラッドは立った。表情は俯いたままで、未だに分からないままだった。
「やめて、やめてぇ……」
必死になって命乞いをする彼女。顔は涙でぐしゃぐしゃになり、股下から黄色い液体が流れて床のカーペットに染み込んでいた。
「やめっぷぎゃっっ」
グチャ
一心不乱の命乞いも意味を成さず、異形の手によって涙に濡れた顔は潰されてしまった。
そしてやがて、冷たい静寂が訪れた。部屋の中にはおびただしい死体の山と血の海が広がっている。
私は隣人達の血に濡れたブラッドの姿をただただ見続けてることしかできなかった。
解釈違いとか発生してしまうかも知れない…。もしあれば申し訳ないです。