今日は特別な日。だから書いてみました。まだ皆んなが生きている時のお話。
最近、ブラッドがいそいそと忙しそうにしている。
理由は分からない、何かの準備をしている様子だったが、気になった私は何故かと聞いた時には。
「ふふーん、内緒!」
と、笑顔で返された為、まぁ悪い事では無いのだろうが…。何だが置いてけぼりにされている気分だ。
複雑な気持ちのまま、警護の為研究所の廊下を一人歩く。そんな時、ドタドタと忙しく鳴る足音が一つ、この足音はーー。
「あっ!カーリー!ぉめっ……じゃない!おはよう!」
エリヤだ。いつものように大きな荷物を腕に抱えて笑顔を振り撒いているのだろう。
「あぁ、おはよう。……随分とデカい荷物だな、手伝うか?」
私が荷物を持とうとすると、何故か逃げるように後退るエリヤ。
「いや、大丈夫よ!というかゼッタイ駄目!カーリーに見られたら大変だもの!」
「??何でだ?」
「……内緒!!」
「???」
ドン!!と効果音でも付きそうな迫力でそう返された私は訳も分からず、困り果てた。ブラッドといい、エリヤといい、一体なんなんだ…?
「それじゃ、私はガブリエルの所で一緒に準備しないといけないから!またね!」
「あっ、おい!だから私も……」
大丈夫〜〜!そんな声は小走りで走り去っていくと共に、小さく消えていった。
嵐みたいな奴だなアイツは……。
まぁ、追いかけても仕方ない、警護を再開しよう。
それから歩いていると小さな人影が二つ見えた。リサとエノクだ、あの二人も何やら騒がしそうにしているように見える。
「あ、カーリーだわ!ど、どうしたのカーリー?ここには何も無いわ!…ほら、エノクも何とか誤魔化して!」
「リサ、そんなに隠そうと必死になると返って怪しいと思うよ」
「お前たちもか………」
紙で作られた装飾を後ろに隠すリサ、彼女達が作ったのだろうか、派手な見た目のそれは何かを祝う為の飾り付けのような……。
「…もしかして、皆で何か祝うつもりなのか?」
「………!!!」
雷に打たれたような可笑しな顔につい吹き出してしまった。やっぱりあの子と同じ、子供は何かと分かりやすい表情をしてしまうらしい。
「随分と分かりやすい表情だな……」
「あはは…ごめんなさいカーリーさん。リサが…」
「いや…、それはいいんだがな。何で今日に限って皆、私に隠し事をしているのか気になってな…。エノクも知っているんだろう?」
「………本当にカーリーさんは何も分からないの?」
「全くだな」
私が即答すると、エノクは困ったように眉を潜めた。何でだ?私がおかしいのだろうか?
「いや、大丈夫だよ。きっとそのうち分かると思うから」
「そうなのか?」
「そうよ!きっと今日の夕方くらいには分かるから!」
「そんな具体的な”きっと”は初めてだな…」
謎は深まるばかりだが、どうやらそのうち分かるものらしい…私限定で。
「そんな訳で僕達は行くよ、まだ準備が終わってないからね」
「それじゃね!きっとブラッドが教えてくれる筈だから!」
「あぁ、分かった」
「ほら、行くわよエノク!」
「引っ張らなくてもついていくさ、リサ」
そうしてパタパタと小さな二つの背中は歩き去っていった。
………夕方か、まだそれまで時間があるし、他も見て回るか。
それからも他の人と会ってみても皆、同じ反応ばかりで忙しそうだった。本当に私だけが何も伝えられていないらしい。
ミシェルと出会っても……
「ご、ごめんなさいカーリー。この事だけは言えないの……」
「そうか……」
「ほ、本当にごめんなさい………」
「………」
「………お、怒ってる?」
「いや……怒ってはないが…」
「お金とかも、今持ってなくて…」
「要らんが???」
なんて、特に何もしていないのにビクビクされたり……
「今は何とも言えないね~、僕もそのことは最近知ったんだけどさ、カーリーはちょっと…いや、ちょっとどころじゃないか、全くの鈍感だからね~?」
「死ね」
「え?直球?せめて伏字は入れt」
青髪のアレに煽られたり……
「え?私が主犯格?」
「大体そうだろ、今日はみんなの様子が変だぞ。私に隠れて何コソコソしているかは知らんがな」
「私じゃないわよ、ブラッドよブラッド!………まぁみんなに呼びかけたのは私だけど」
「ブラッドが?」
「とにかく!カーリー!貴女は今日はおとなしくしていて!もうすぐだから!」
「はぁ……?」
終いにはカルメンに部屋に居るよう言われてしまった。
「………」
暇だ。ブラッドもみんな出払っている所為で話相手もロクに居やしない。灰皿に積もる煙草の数が増えていくばかりだ。
「………」
こんなに静かなのは久しぶりかもしれない。それこそ、ブラッドと出会う前の頃がこんな感じだったな。
「………」
あの子と出会ってから色々な事が変わった。あの時の私じゃ、こんなことになるとは思ってもいなかっただろう。心の底から信頼できる家族が出来て、ただ生き残るためだけのものだった力を、誰かを守る為に使える意味に変えてくれた仲間達。
私は本当に運が良かった。そしてーー。
「カーリー!!」
部屋の扉が勢いよく開かれた。そこには慌ただしい様子のブラッドが立っていた。まぁそんな様子とは裏腹に、顔には笑顔を浮かべていたのだが。
「どうした、何かあったのか?」
「こっち来て!」
「お、おい……」
私の手を掴むと、引っ張るように何処かに連れていくブラッド。どうやら皆が私に隠していた事が分かるようだ。
あれよあれよと連れられ辿り着いたのは何てことはない、いつもの会議室の扉の前。
「ほら、カーリー!入って入って!」
「分かった分かった…」
期待半分、不安半分。そんな気持ちを抱え扉を開けると。
「……?何だ、真っ暗だぞ。おいブラッ
パーーーン!
「「「「「「「「「「カーリー誕生日おめでとう!!」」」」」」」」」」
突然の点灯と同時の軽い破裂音、そして部屋中に広がる祝福の声。
そうだった、今日は私の………
「誕生日おめでとう、カーリー」
ブラッドが、私の隣で微笑んだ。そしていつの間にか何やら箱を持っている。丁寧にリボンでラッピングされた箱だ。これは……。
「これ、僕からの誕生日プレゼント。あまり上手く作れなかったけど……」
「……開けていいか?」
「勿論」
妙に緊張した気持ちでスルスルと丁寧にリボンを取る、箱だけになったその蓋を開けると、そこには。
「これは……マフラーか?」
入っていたのは赤い、肌触りの良い布で作られたマフラーだった。
「うん。裏路地って肌寒いでしょ?だから、丁度いいかなって」
「ブラッドが作ってくれたのか…」
そっと首に巻くと、温かさと心地良さが私を包んだ。心が芯まで温まるように感じたのは気のせいでは無いだろう。
「…気に入ってくれた?」
「…あぁ、ブラッド。本当にありがとう。一生大切にする」
「ふふふ…嬉しいな」
「ちょっとカーリー!私達の事も忘れちゃ駄目よ!」
リサが声を上げた。周りを見ると、皆同じようにプレゼントを持っていた。
「…もしかして皆が持ってるそれも…」
「当たり前よ!カーリーへのプレゼントよ!」
「おめでとうカーリー!これからも宜しくね!」
「……おめでとう、カーリー」
「おめでとうございます。カーリー、これからも頼りにしています」
「おめでとう!カーリー!これは私から!」
「お、おめでとうカーリー。わ、私はこれ……」
「お誕生日おめでとう御座います。こちらは私から」
「誕生日おめでとう〜。君の為に特別なコーヒーを用意したんだ〜、あとこれ、プレゼント」
「俺からも、誕生日おめでとう。病人の身だから、プレゼントはカルメンに選んで貰ったけどな」
「私とエノクからはこれよ!大切にしてね!誕生日おめでとう!カーリー!」
「誕生日おめでとう、カーリーさん。これからもリサの事、宜しくお願いします」
笑顔を見せる皆からそれぞれプレゼントを受け取る。きっとどれも大切な宝物になるだろう。
……あぁ、私は本当に。
「幸せだ。ありがとう、みんな」
改めて誕生日おめでとうカーリー!!