プロムン作品の設定資料集が欲しい今日この頃。
夢を見ていた。
それは温かくて、懐かしい夢。
僕がまだ何も知らない、幸せだけが包まれていた頃。
僕は瓦礫や廃墟が広がる荒野に居た。昔、皆と住んでいた、僕が生まれた場所だ。とても危険な場所だって皆、口を揃えて言ったけど力を合わせて生きていけば大丈夫だと、よくお父さんに言い聞かせられていたっけ。
流れる風の気持ちよさを感じていると声が聞こえた。聞き慣れた、僕を包み込むような柔らかい声、お母さんが僕の名前を呼ぶ声だった。
その声に誘われて振り返る、優しい笑みを浮かべたお母さんの隣には手を振るお父さんも立っていた。
僕は手を振り返して二人に駆け寄り、抱きついてーーーーーー。
景色が変わった。
さっきまで感じていた肌の温もりも、大好きな匂いも、全て無かったかのように消えていた。
瓦礫の山からは血が流れ、火の手が上がっていた。そして周りから、耳を劈くような悲鳴が聞こえてくる。
誰かが涙を流している。
誰かが諦めている。
誰かが逃げ惑っている。
誰かが最後まで抵抗している。
誰かの血が流れている。
誰かの頭が潰れている。
誰かの命が消えていく。
地獄の様な惨状に立ちつくすことしかできない僕は、こっちに近づいてくる何かに気がついた。
「………誰?」
僕の目の前まで来て止まった
目の前に来ただけで特に何かしてくる気配はない、黒い何かは僕を観察しているように見えた。そこから逃げ出そうと思えばすぐに逃げ出せた、だけど僕は一歩も動かずじっと見つめ返した。直観的に分かっていた、彼には敵意が無いことに。
それから一体どれだけ見つめていたのだろうか、周りの
そうだ彼は僕の友達だ。今より幼い時に出会って、それで、僕が、死………。
そこまで思い出すと、自分の中の違和感に気がついた。
(あれ?僕は………)
その後、どうなったんだっけ?
何で皆死んじゃったの?
誰が僕たちの家を壊したの?
どうしてお父さんはおかしくなったの?
何で僕は裏路地に住んでるの?
僕は確か外に住んでいたはずなのに。
疑問と困惑が脳みそをグチャグチャにかき回していく。僕は大切な事を忘れているのか?思い出そうにもそこだけ穴が空いたみたいに記憶が喪失していた。
混乱する僕を見て、僕の友達が口を開いた。
「わすれたのか?」
ノイズの入った声はぽっかりと穴の開いた脳に入り込んでは沈んでいく。何を言っているかはハッキリと分かった、彼は真実を語っているのだ。
「おれの心臓をおまえに」
黒い手が僕の胸を指さした。
あぁ、そうだった。僕は彼にーーーー。
ーーーーー
目を覚ませば、いつもの鈍色の空……が見える事は無く、古臭い茶色の天井がぼんやりと目に映った。
(あぁ、そういえば昨日は…)
寝ぼけ眼のまま周りを見渡した。この部屋の住人はもうソファにはおらず、代わりにキッチンの方から音が聞こえた。どうやら朝ごはんの準備をしているらしい。
ベッドから出て、音が聞こえるほうへと歩いていくと、想像していた通りの人物が僕を背にして鍋をかき混ぜていた。
昨日の暖かな香りが広がって、僕の食欲を駆り立てる。朝食の準備は万全のようだ。
「おはよう、カーリー」
「あぁ、起きたのか。おはよう、ブラッド」
彼女が赤い髪を揺らしてこっちへと振り向いた。柔らかい笑みを浮かべて挨拶する姿に自分の母親と重なった。
「朝ごはん、と行きたいところだが。先ずは顔を洗ってきな」
「あ、うん………分かった」
もうお母さんはいない。少し考えて悲しい気持ちになったけど、いつまでも泣いてちゃ駄目だと自分に言い聞かせた。
顔を洗うために洗面所に向かう、その時カーリーの黄色い瞳が僕の背を追うようにじっと見ていたのだが、僕が気づくことは無かった。
「「いただきます」」
食事の挨拶を終えて、パンを齧り付いた。昨日はスープをつけて食べていた為、何もトッピングされていなかったが今日は違う、なんと目玉焼きが乗っかっているのだ。
その目玉焼きを口に運ぶ、濃厚でまろやかな黄身の味わいが口に広がる、塩胡椒の加減も丁度いい。
「うまいか?」
同じくパンを齧っていたカーリーが聞いてくる、そんなの当然だ。
口にまだパンが入っていたので肯定を表すようにぶんぶんと首を縦に振る。それを見て満足したのか、少し微笑んで再び食事に戻った。
スープが入った皿を飲み干した後、昨日僕が密かに決めていた事を口にする。
「カーリー、僕に何か出来ることは無い?」
「………出来ることか?」
手を止めて僕の方へ向く、その顔は眉をハの字にしていて困惑しているようだった。
「そう、例えば…カーリーがしてる仕事の手伝いとか!」
「あー………それはだな………無理かもしれないな」
腕を組んで悩み始めるカーリー、どうやら仕事の手伝いは難しいらしい。そういえば仕事と言えば今まで彼女の事について聞いてなかった気がする、丁度いいや。
「カーリーの仕事って何してるの?」
「フィクサーだ。まぁ、簡単に言えば何でも屋だ。もうあれこれ二、三年は経つな」
何でも屋か…。確かに仕事によっては危険な物もあるかもしれないし、当然か。でも、仕事以外で手伝えることと言ったら何だろうか。
「別にブラッドはまだ子供なんだから、無理に手伝わなくてもいいんだぞ?」
「住まわしてもらっているのに、何もしないのは僕嫌だ」
「しっかりしてるなぁ………」
笑いながらも困り果てたカーリーは僕の熱意に諦めたのか。
「分かった。それについては後で考えとく、それよりもブラッド」
「何?」
彼女の白い手が僕に向かって指をさした。
「???」
自分に何かあるんだろうか、そう思って自分の体を見ても特におかしなところは無い。参ったな、ホントに分かんないや。キョトンとしていると彼女の方からため息が聞こえて、
「服、買いに行くぞ」
と言った。
ガチャガチャと鍵をかける音だけが聞こえる、相変わらず廊下は静かなままだった。
服かぁ、確かにこんなボロボロの布切れ一枚だけじゃ心もとないな、着替えもないし。家に帰ればあるだろうけど、できればもうあそこには帰りたくない。
「いいかブラッド」
彼女の黄色の瞳が僕を見下ろし、昨日出会ったばかりの時のような険しい顔で僕に忠告してきた。どうやら真面目な話らしい。カーリーと目を合わせる。
「外に出たら、絶対に私から離れるんじゃないぞ?ホントは私一人で行こうと悩んだんだが……」
「分かったよ、カーリー。絶対に離れない」
それだけ言って、彼女の手を握りしめる。昨日の温かい肌の感覚が蘇る、この温かさが好きだった。
カーリーも手を握り返して、外に出ようと廊下を歩きだす。その時、後ろの方から扉の開く音が聞こえた。
「よう、おはようカーリー」
僕たちが出てきた部屋の隣の部屋から中年くらいの男の人が出てきた。やつれた顔をして顎に髭を蓄えた人だった。
「おはよう、ショーンおじさん」
カーリーとは顔馴染みだったらしい、二人は挨拶を交わした。それからショーンと呼ばれた男性が僕の方を珍しそうな顔で見つめてきた。
眉間にしわ寄せた顔が少し怖かったのでカーリーの後ろにサッと隠れた。
「その子はどうしたんだ?」
「この子はブラッド。路地裏の隅に一人でいたから保護したんだ、ほらブラッド、この人はショーンおじさん。いい人だから大丈夫だ」
カーリーが言うには信用できる人らしい、それなら安心だ。
「は、初めまして………」
「あぁ、初めましてブラッド。ショーンだよろしくな」
ニコリと笑って手を差し出して握手を求めてくる。
「よろしく………」
握手に応じてショーンさんの手を握る。カーリーとは違う、男の人らしいゴツゴツした手の感触だった。
「で?今からこの子の引き取り先を探しに行くのか?」
「いや、この子と一緒に住むことにした」
そうカーリーが言うと驚いた顔をしていたがすぐに笑顔に戻った。
「そうか、まぁもし何かあったら言ってくれ。きっとグースも協力してくれるだろう」
「ありがとう、ショーンおじさん。さぁ、行こうかブラッド」
カーリーに手を引かれてその場を後にする。
「うん」
「気をつけてな」
ショーンさんは僕たちが見えなくなるまで手を振って、それからまた自分の部屋へと戻っていった。
この世界の食事や家電とかイマイチよく分からない。意外と普通なんですかね?