昔は勇者。今は魔王専属の料理人 作:冬眠前のクマ
『さて、じゃあ今日こそ張り切って他国を滅ぼすかなー!ユーシャ黒い水。前と同じ奴な!』
目覚めて早々物騒な事を言っているこのロリは、ウチの魔王様である。そして後ろで、腕組み彼氏ヅラで頷いて人類死すべしとか言っているのが魔王城の番犬でメイドのケルベロス。
その近くで、ちょこまかと動いているのが俺ことユーシャだ。今は魔王や幹部どもにコーヒーを配っている。コーヒーぐらい自分で作ってくれと思うのだが、そう言うと俺が作ると違うとか言う言い訳をされるので言わない。俺がコーヒーを渡すと、大抵の幹部は慣れた光景だからか頷くか一言お礼を言うか無言なのだが一人だけ口煩い奴がいる。
『また汚らしい黒い水を皆に配って調子取りか。低俗な人間にはお似合いの姿だな』
名前はガルシア、ネクロマンサーで、魔王軍幹部。アンデッドやゾンビなどの軍団の総指揮官を一応任せられてるらしい。
「はいはい。どうぞ」
うるせえガルシアさんは無視し、そのまま魔王への接待を続ける。眠そうにしながら見た目通りのお子様な魔王様は朝からテンションが高い。
『うげっ、苦っ!ユーシャ。こんなのじゃ飲めないぞ。いつものって言ったじゃん』
一口飲んで困った顔で吐き出しそうな魔王様に、俺は首を振る。今日のはいつものよりわざと苦くしたのだ。だから、ガルシア。鬼の首みっけ!みたいな顔でニヤニヤ笑うな。
「砂糖が諸事情で無くなってさ、代わりにほら」
懐から小さな瓶を出すと、そこから小さなブツブツとした不恰好な塊を魔王の手に乗せる。
『何だコレ』
不思議そうな顔をしてる魔王に少し説明をした。と言ってもざっくりと嘘も交えた物だが。
「これは俺の故郷に伝わる物でな、砂糖を使った甘いお菓子だ。苦いコーヒーを飲んだ後にそれを齧ると苦味が消えるんだ。ほら、もう一度飲んでみろ」
言われた通り魔王は恐る恐るコーヒーを啜る。そして先程と同じ様に苦い顔をした後、金平糖を齧る。すると……。
『うおおおお?苦く無い!コレなら飲めるかも』
「良かったな」
楽しそうにコーヒーと金平糖を行ったり来たりする魔王を見つめながら俺はそっと離れた。
いやぁ、昨日徹夜でコーヒー飲みながらどうやって魔王倒そうかなって考えてたら突然甘い物が食べたくなった。前世ではそんな時はコンビニまで走れば気軽にスイーツを調達出来たのだが、今はそうは行かない。そんな時、前家で作った金平糖のレシピを思い出したので作ってみる事にした。中々大変で夜中にやる事じゃなかったが、そのお陰で無事甘い物を食べれたので良しとしよう。今度はケーキが食べたいな。
だから、魔王の砂糖が無いのはそう言う事である。高級品だしな、砂糖。中々買えないのがネックだな。
「ボクにもちょーだい」
珍しく話しかけてきたと思ったら菓子目当てだった。まぁ、良いや。えっと、この人は。
「君が、捕虜の勇者君?ボクは魔王軍の魔道具担当だよ。名前は……今度で良いか。用があったら、誰かに聞いて聞きにおいでよ。このお礼に出来る事ならやってあげるからさ」
魔道具か、いちいち魔法使うの面倒だし。魔道具作って貰うのもアリかな。それを武器に改造するのもアリだし。