Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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幕間
『ドキ☆可愛い子犬の足舐めタイム!』


──揺れ動く車内で、スバルがコップ片手に芳醇な珈琲の香りを楽しみながら悦に入っていた。

 

「俺ってさぁ、ぶっちゃけめちゃくちゃ有名人な訳じゃん?いやぁ、帰り道にファンに群がられたりすんのかな」

 

遂に訪れた連邦捜査部シャーレへの復帰。

送迎の車に乗り込み、いつぞやのループでスバルが命を預けていた運転手の顔が席に映っており思いがけない会遇に喜びを表したものだ。

 

プールデートをもってして、スバルの復調が認められた今、遂にアビドスから離れる瞬間が来たのだ。そして──、

 

『行ってらっしゃい、スバル。いつでも帰ってきてね』

 

『それと、いつでも呼んで。何処にいても、どんな時も、傍に駆けつける』

 

と太鼓判を押され気軽に送り出されたので、スバルも気負いをせずに済むというもの。

 

『あ、でも待って。頭撫でて欲しいな、今日は会えないんでしょ?』

 

『うん──後、二時間ぐらい。それからハグが一時間、褒め合いゲームもね。全部終わったら行っていいよ』

 

…嘘かもしれない。車に乗ってD.U地区へ戻ろうとした時も唸り声と歯ぎしりが凄かった。

ともかく、何も今生の別れという訳でも無い───が。

 

「…安全運転で頼むぜ!相棒!」

 

「へぁっ、あ、相棒…はい、相棒です…頑張ります…」

 

平和に生き長らえるのなら、この異様に緊張している運転手が事故を起こしたりしない事を希うしかない。

スバルとしては一度命を預けた相手、拒絶を感じる反応を見せられるのは中々に悲しい。

 

「相棒は連邦生徒会の部員…ってことでいいんだよな?リンちゃんが迎えを任せるぐらいだし。まぁそれでさ、俺が寝込んでる間ずっと頭の片隅にすっげぇ疲れた顔してるリンちゃんがぼんやり思い浮かぶ訳よ」

 

「は、はぁ」

 

「アビドスでイチャコラハーレムパラダイスして、好きなだけ好きなことしてた俺が言うのもなんだけど……俺が帰ってリンちゃんの疲れを何とかしたいって暴れたら、余計リンちゃん疲れるよな?」

 

「…七神首席行政官の負担であれば、本来請け負うはずのカイザーの対応と意思表明をナツキさんが行われたので、現在ある程度は余裕がおありだと思います」

 

「なんかしたっけか俺」

 

珈琲に口を付け、「なんかしたな、俺英雄だもんな」と小指を立てながら高貴さをアピールして苦味を飲み干すスバルにツッコミを入れる者はおらず、もしやこれからツッコミ役の欠損という最大の試練が待ち受けてるのでは無いか?

 

「深刻なアンチ不足」

 

「それは不足していていいのでは…?」

 

「いいツッコミ、菜月家ポイントプラス十点」

 

見た事がある道路を、見た事がある家屋が背後に流れていくのを眺めながら、脳内マップのページを軽く広げて次に見える建物を予知する。

当然、見覚えのある建物が視界を通り過ぎ、一安心。

 

スバルの挙動不審は今に始まったことでは無いが、この多動が連邦生徒会で悪さを働かない保証は無い。

あらゆる自治区への干渉を許可されるシャーレ、その実態はただの何でも屋。便利屋68の後輩になった気分はどうとも言えないが、活動方針は参考にしておこう。

 

「──────」

 

「まっ、これから売名、頑張ってみるか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうもこんにちは!!クロノススクール・報道部所属の川流シノンですっ!昨今話題の中心人物、ナツキ・スバル氏への突撃インタビューを行いたいと思います!!」

 

「連邦生徒会はいい加減ナツキ・スバル氏への報道の自由を認めろ──!!情報の隠匿を許すな!透明な政治体制はどうした!!口約束すら守れなくなったか!これは信頼問題に値するぞ!!!」

 

「カイザーグループとの通信記録を公開しないんですか!?噂によればカヤ防衛室長がカイザーコーポレーションとの繋がりがあるとされています!ちょ、押さないで、おい!黙るな───!!お前ら連邦生徒会はその隠蔽体質を改善する気は無いのか──!?そんなんだからカヤ室長の違法な活動成果隠しが起きるんだよふざけんじゃねぇ!!」

 

「報道記者、パパラッチマスコミ誰一人通すな!そろそろ車両が到着する!!銃火器の使用はナツキ氏への被害を想定し禁止する!!」

 

「──────何あれ」

 

──砂の大地を超えた先に待ち受けていたのは、人の波でした。

二度目の衝撃、二度と味わいたくなかった熱気。シャーレ突撃時にもこんな感じだった気がするが、何故か熱気の種類が別の代物だと感じる。

総理会見だとか、不祥事を起こした政治家がマスコミに詰め寄られるだとか、思い出すのはソレのみだ。

 

「え、え俺死ぬの?首狩られて大将首じゃー!って」

 

「死にませんって…!だ、大丈夫です。カンナ局長が何とかしてますし!」

 

「いや、えー…?美少女に群がられるのはいいんだけどさ、ヤクザ混じってない?」

 

美少女の美は美しいの美、となると今目に映っている少女達にそれが適用されるか否かで言えば、否。

見た目が良かったら何でも許せる、なんなら命を奪われても何ともなかったスバルでも、あの群れは普通に怖い。普通に。

 

人の目をしていない、アレでは記事になる情報に喰らいつく獣、メディアモンスターだ。

 

「なんか───悪いことしたっけ!?助けて相棒!」

 

「それではコレを。リン行政官からの指示です」

 

「……連邦生徒会の服?それにカツラ…───」

 

スバルの脳内に電流が走る。

もしやコレはアレではないか?コレをああして、ああしてこうするアレでは無いのか?スバルが最も得意とする最大の特技が、もしや活躍の機会を?

 

よしきたと、腕まくりのジェスチャーをした頃に、車がシャーレまでの道を逸れ別の車がシャーレ正面入口へと進んでいく。

陽動作戦という奴だ、ならばスバル達はこれから裏手にて変装し、侵入するという事。

 

何故か既視感しかない光景と作戦、何故か手馴れている変装、全部理由は頭に思い浮かんでいるが気にせず着替えていく。

メイク道具があれば完璧なのだが、いやメイクをしなければ完成品じゃないので表に出したくは無いのだが、致し方なく停車した車のドアに手をかけた。

 

「降りられますか?」

 

「こっから徒歩か…OK、頑張るわ」

 

「ナツキさんそれと──ぶふっ!?」

 

「似合ってるだろ、メイク出来てないのがちと気がかりだけど。自信はかなりマリアナ海溝」

 

「げホッ、げほっ…似合っ…てます。あと、リン行政官は裏口付近で同じく変装をしてなさるので、お見逃し無く。判別点は青い帽子です」

 

砂の孤島に囚われていた身からすれば、『学園生活』らしさを感じる機会は無く、社会に参加している気はしなかった。だがここまで人間が多いと別、少人数の時には最大限効果を発揮するスバルの大見得は、唯の足枷となる。

 

誰にも悟られる事なく、抜き足差し足忍び足で人混みをすり抜けていく。時折アロナの指示に従っては、遠目に見えるリンちゃんのヘイローを見て、心の中の不安げな表情をしたリンちゃんを励ます思いで足を早めた。

幾度の戦場と死線を超えてきた実力は、日常生活にだって活かされるもの、既に極まったアロナとの連携があれば容易な事だ。

 

「よっ、リンちゃん元気してた?」

 

「───!」

 

「お団子可愛いーじゃん。でも変装って割にはナイスなバディが隠しきれてねぇぜ」

 

「………こちらへ」

 

裏声を出し瞼をぱちくりとさせるリンちゃんの、手招きに応じてヒヨコが如く後を付いて行けば、比較的人気の少ない喫茶店へと舞い込んだ。

 

人気が少ない、と言うと語弊が生じてしまうがそれ程の熱狂溢れる場から遠ざかり、スバルの目の前にはまるで初めから用意されていた様な速さで着席後、アイスコーヒーが到着する。

続けてリンちゃん、と。名前を呼ぼうとしたスバルの額に帽子の硬い縁がコツンと当てられて、

 

「いてっ」

 

「名前を呼ばないで下さい、困ります」

 

「そういう割には、俺が名前呼んだ時嬉しそうな顔してたけどなぁ〜?待ちぼうけしてたんじゃないの、俺の事」

 

「…当たり前です!アビドスの生徒会からの無茶な要望のせいで、本来貴方に処理して頂きたい事案がまる3週間遅れを……!!」

 

「──リンちゃん」

 

「っ、ど、どうされましたか…?」

 

「俺、マジで書類仕事無理だからそこん所よろしく!」

 

「────」

 

アビドスに滞在していたのがこの熱狂の原因だとしても、サンクトゥムタワーは復活したのだから、文句言う言われもないのにな。

そう思いながらも故郷日本も同じ事をしていた記憶が人間とはなんたるかを示している。

 

目元を指で指圧するリンちゃんが、テーブルを人差し指でコンコンと叩いて合図らしきものをする。

なんとも恐ろしい気配を漂わせるものだと片目を顰めていると、スバルの周りを連邦生徒会の服装をした生徒が取り囲み始めた。

 

「あ、あのー。これは…?もしや秘密の缶詰ホテルに連れ去られて労働奴隷にさせられる奴?」

 

「無理にでも、貴方には業務を果たしてもらいます。ご安心を…今から渡される書類に判子を押してもらうだけなので、内容は精査済み、黙々と宜しくお願いします」

 

「ちょま!なぁ!本気で嫌なんだけど!?『その人』だって事示せたんだからもう良くね!?」

 

「分かっています!私とてあの戦場へ背中を押した事への引け目も負い目もありますが!!それでもシャーレが成立する為の最低限はお願いするしかないんです!!」

 

「ぅ───これが癒しのオアシスで寛いでいた相手への仕打ち…!クソっ、リンちゃんのひでぇクマを見てたら仕方なく思えてきた…!!」

 

──さらばアビドス、我が心の楽園よ。

ピン。と尖ったリンちゃんの耳は、張り詰めた心の糸を反映しているかのよう。

なるほどお疲れ様と外から宥めるには、スバルは当事者が過ぎている。

 

「…電話しよかな、シロコ達に」

 

「──ナツキさん」

 

「うそうそ、美少女の頼みは断らないのが俺の良いところだって自負してるんで」

 

ここでウダウダ文句を言ってもどうにもならない。それに、スバルでは出来もしない『行政』という大敵と戦い続けてきたのだから、ただ肉体を酷使しているだけのスバルも頭を使う時が来た。

 

「なぁ、リンちゃん。互いに───良く頑張ってるな、ほんと」

 

「とりあえず!先に言うべきはお疲れ様!リンちゃんは立派な行政官です!」

 

「……………」

 

「………」

 

「───ありがとうございます」

 

「たまには、気ぃ休める時間が必要だと思う。その時間を作る為にも、喜んで働かせて貰うぜ」

 

「……女装のまま言われましても、頂いた言葉が咀嚼出来ません。既にその格好に用はありませんし、お脱ぎになられては?そして裏声も…」

 

「え、やだ」

 

「─────何故??」

 

「嫌なもんは嫌、この格好やめさせられるなら仕事も辞めます」

 

「…………????」

 

 

 

 

 

 

 

「疲れた」

 

《お疲れ様です》

 

「つーかーれーたー」

 

《本当に良く頑張りました、スバル様の尽力に涙が溢れそうになっています…!》

 

「つ!か!れ!た!それだけじゃ足りない!アロナたんがもっと甘やかして!!」

 

《はい!それではこの後シッテムの箱内部にて、出来る限りのサービスをさせていただきます!》

 

───判子を押すだけ、判子を押すだけの三時間。大量の文字が並んだ書類の内容が気になっても、無言で判子を押し続ける三時間。

それが終わって、漸く解放された。未だ冷めやまぬ外の空気感をよそにテラス席で肩の力を抜く。

 

地獄だった、未来永劫ライン工場の仕事とか出来ないと頭と身体で理解してしまった。

書類の内容もほぼ分からないのに、ひたすら自分の手で可決を押す不安感は想定以上で、質問しても素人の言葉は必要とされない。

 

ここに建物を立てる〜だとか、ここでこんな品を出したいだとか、このクラブを成立させたいだとか、シャーレの権利どうこうだとか、パッと見で判子を押せばいいだけの仕事に対し謎の几帳面さを出してしまったスバル。

 

流れ作業の筈が──閲覧→読み込み→理解→質問とプロセスを挟んだ事でかなりの時間を浪費した。

 

名は体を表すとよく言ったものだが、ナツキ・スバルはナツキ・スバル。

超人の後釜だとか、アビドスの英雄だとかを期待してた連邦生徒会生徒からの視線は、それはそれは痛かった。

 

───余りにも凡俗、凡人。

 

求められているものを全てこなして来た『風』に見える化けの皮が、今や少し分厚くなりすぎたのかもしれない。

 

「かぁなぁりぃ、疲れたぁ…」

 

死に戻りを活用しての行動には、未来予知的なメリットが存在するからこその強みがある。

但しこういった日常的な生活には何ら影響を及ばさず、失敗失態を覆せたりも出来ない。

 

つまり、もう少し立派な人間になる必要があるのだ。行動で自分を表せる様に、シャーレの部長としての───。

 

「………アロナぁー、シロコに電話掛けて〜」

 

《了解致しました》

 

「……──」

 

《──もしもし、スバル。どうかしたの?》

 

「早っ……あ〜えっと、声聞きたかっただけって言ったら怒る?」

 

《ふふっ…可愛いね。怒らないよ別に。こっちも声を聞きたかった、スバルが居なくなってからみんな落ち込んでるから》

 

「……たったの数時間だぞ?そんなんじゃこれからが…」

 

《スバルも寂しくなって電話掛けてきたんだから、お相子様だね》

 

「────うん」

 

それから、暫く話し込む。

たった数時間、それだけの間を離れた男の、切ない気持ちとやらを赤裸々に語るのだ。

 

それを聞く相手もまた、優しさに満ちた相槌を打つ。その時間がひたすらに続いて、伸びて、流れていく。そして───。

 

「ナツキさ───」

 

「お!よし、また今度な、シロコ。……どうかしたのか?辛〜い書類仕事は終わった筈だけど、リンちゃん」

 

「失礼しましたお電話中でしたか。…そのですね、許可が必要なものは一通り目を通してもらいましたが、ナツキさん宛にゲヘナから連絡が…」

 

「ゲヘナから?」

 

「──アコ行政官から、ゲヘナへ足を運んで欲しいとの旨の連絡が来ました」

 

「あー…………。忘れてたぁ……」

 

残念ながら、その一時もすぐ終わりを迎えた。

アコとは何かと貸しの借り合いがある、それにスバルが賭けに勝った時の約束も。来て欲しいというのなら足を運ばなくては。

 

けれどそれではアロナたんのメンタルカウンセリングをスキップするのと同意義、携帯に映る嫉妬で頬を膨らませたアロナの頭を撫でに行けない時点で、モチベーションは皆無。

 

「リンちゃん、何か内容とか伝えられてない?何のために来い〜だとか」

 

「えっと……それが、ですね……」

 

「なになに、苦い顔しちゃって。リンちゃんにそんな表情似合わないぜ☆」

 

「──『部隊をお貸しした際、銃器の欠損が見られたので約束の履行をお願いします。何でもして下さるんですよね?』と……」

 

「─────」

 

はぁ。

アイツ、アイツやりやがった。

 

「─────」

 

約束の仕方が甘かった、部隊を無傷で返すという事は、捉えようによっちゃ装備もその無傷の範囲に含まれる。

スバルとしては、人員の欠損や怪我を想定していたからこそ、そこまで意識を巡らせなかったせいで───わざと銃器を壊していたとしても、スバルに反論の手は無い。

 

 

「──望み通り行ってやるよこんちくしょうがっ……!!!!」

 

「……ゲヘナ行きの飛行船に乗る前に、変装は解いておいて下さいね…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────」

 

「あっれぇ?聞こえませんでしたかぁ?ナツキ・スバルさん?」

 

「────」

 

「わ・た・しの、足を舐めろ、と言ってるんです。下卑た視線を向けながら、惨めったらしく。豚のように」

 

「────」

 

「別に私だけじゃありませんよ?委員長にも、これから任務が終わって帰ってくるイオリとチナツにも、です!あーはっはっ!!」

 

「────」

 

スバルは、いやナツキ・スバルは──幾度の死に戻りを経ても、見抜けなかった事がある。

この女の性格の悪さだった。限度が無い、キヴォトスを救った英雄に靴を舐めろと、そう言ってるのだコイツは。

 

『え?賭けで私が負けた命令権?なーに言ってるんですか、そんなものありませんでしたよ?』

 

『いえ──無かった事にしなさい。これは命令、です!』

 

最初、ゲヘナに足を踏み入れた時に目に焼き付いた噴水広場のど真ん中で、天雨アコは悪役令嬢ばりの高笑いをしていた。

時系列を逆手に取り、呼びつけたスバルへ驚愕の要求を押し付けたのだ、順番的はこちらが先なのだから先に言う事を聞くべきはスバルだと。

 

「─────」

 

許せるものか、別にアコ以外の足を舐める事は別にいい。けれど言う通りコイツの足まで舐めてしまえば、スバルのストレス数値は爆発してしまう。

 

何とか、何とか見返してやりたい。一矢報いたい、全身全霊でコイツの思い描く未来から脱してやると、あの永劫の一週間でも発揮されない様な脳内回転数が、スバルに一つの選択肢を思い浮かばさせた。

 

「───無傷の定義、だ」

 

「はい?」

 

「俺は部隊全体の損害じゃなく、個人に対して…言葉通りの意味の『無傷』。つまりそもそもあの約束自体に互いの認識における語弊があった」

 

「な、なんですか急に饒舌になって……!?」

 

「つまりはノーカウントって事だよ!!俺とアコじゃ判断基準が違う!そこを擦り合わせ無かった時点で!!あの約束は意味を果たさねぇ!!」

 

「ぐっ──!?そ、ぐぅ……!し、知りませんそんな事!貴方の勝手な主張を受け入れる理由もありませんし!!」

 

「だったらその壊れた銃器っての見せやがれっ!!アロナならいつどんな時に、どんな風に壊れたか分析出来る!カイザーとの戦いも記録してるから、もしお前らがわざと傷つけたって事が分かったらタダじゃおかねぇぞ!?」

 

「チィッッ!どうして貴方はこういう時に限って察しが───い、いや!風紀委員の組織内部情報は……!」

 

「うるせぇ──!!!俺は!シャーレ部長だぁぁぁっ!!!」

 

「ちょっ、それはズルくありません!?」

 

ぎゃあぎゃあと騒ぐ内に、争い疲れた両者が肩で息をする。

水掛け論の始まりだ、終わらない闘争程虚しいものはなく、次第に折衷案を出し合って。

 

───提示されたのは、コイントス。

キラリと開く貨幣が、今や両者の命運を決める運命の輝きになっていた。

 

「三回中、出た表の数だけ俺がアコの望みを選んで受け入れる!」

 

「裏が出れば…貴方の命令を聞く……」

 

最初の話し合いは何処へやら、水掛け論の末、本題から脱線しまくった結果命令権の争いへと変わり果てる。

コイントスBO3。儚くも美しく終わりを迎えたアビドスの物語の蛇足を描くのは、口喧嘩しかしない両者の醜さ。

 

非を認めるも認めないも、たった一枚の硬貨に託され────コイントスが、始まるのであった。

 

 

「「せーのッ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──揺れ動く視界で、スバルはコップ片手に芳醇な珈琲の香りを楽しみながら悦に入っていた。

 

朝もこんな感じだった気がする、なんならD.U区画でアイスコーヒーを飲んだし、今はドブ水みたいな不味いコースを口に運んで、

 

「オーホッホッホ、どうザマス?今の気分は───」

 

「後で……必ず……ぶん殴ってやります……」

 

「愚かな下賎の民の声は聞こえませんわねぇ!それよりも、貴方の入れた珈琲不味くて仕方ありませんわ!淹れ直して下さいまし!!」

 

絶賛、アコに肩を揉ませていた。

結果は三回裏。命令権の数はスバルの完全勝利で決着をむかえる。

 

初手の命令はこの程度でいい、既に牽制のしあいは始まっているのだから。

ここで苛烈な命令をし過ぎると、アコからの逆ギレが酷い。

 

「必ず、必ず土を舐めさせて……」

 

「土を舐めさせられたら、その数倍酷いものを舐めてもらおうか!例えば……辛酸、とか」

 

「───────」

 

「人の顔が歪む瞬間を見届けるのは気分が良いな、自分ながら最低だが」

 

やはり、天雨アコは賭けに弱かった。

正直あそこまでもつれ込んだ時点で、どちらが負けとか勝ちとか些細な事なのだが───それはそれ、勝てば気分が良いものだ。

 

「───ただいま〜って、アコちゃん何してんの!?なんでナツキ・スバルが!?」

 

「っ!イオリ!イオリ今すぐこの男を拘束して下さい!卑怯な手で私を貶めたんです!」

 

「アコ行政官……また彼に迷惑を掛けて……」

 

「またってなんですかまたって!私は!この男が酷い目に会わないと満足出来ないだけなんですよ!!」

 

「お前……本当に酷すぎねぇ…?前まであんなに俺にデレデレしてたじゃん、俺悲しい〜」

 

キッ、と睨みつけられる顔には僅かな涙が浮かぶ。自業自得とはいえここまで情けないと、なんだか申し訳なさが一周回ってきた。

一周回っても別に───何かしてあげる訳では無いのだが、そもそもスバルはここへ恩を返しに来たかっただけなのだ。

 

アコと喧嘩するつもりも、こんな心が痛む事もしたくは無い。

 

「嘘つき!?」

 

「ほんとほんと」

 

まぁ、とにかく。

風紀委員会の為になることを、スバルはしたいのである。

感じている恩はそれ程に大きい、大小で表せないぐらいには、アコにもイオリにもチナツにも、そしてヒナにも感じているからこそ、

 

「…………」

 

「うーん…………」

 

「はぁ、まぁ、いいか」

 

「ヒナはまだ帰ってきてねぇんだよな、だったらイオリ、チナツ。何か俺にして欲しい事ってあるか?」

 

「何で私は省くんです!?私にも!恩恵を受けれる権利があります!」

 

「えー。して欲しいことかぁ…私は特に無いかな。強いて言うなら小鳥遊ホシノに特訓を付けてもらいたいぐらい?めっちゃ強かったし」

 

「私も、日常生活品は経費で落としてますので特には」

 

「くっ…ならばチナツ!この男に……──犬の真似をしろと言って下さい!行政官命令です!」

 

───酷い権力の濫用を見た。

同じ行政官でも、リンちゃんとアコでは余りに清廉さが足りていない。感情は憐れみの域に達し、スバルの心はアコを赦し始めてしまう。

 

「それは流石に───」

 

「いいよいいよ、やるさ。チナツもコイツの面倒見るの面倒臭いだろ?」

 

「え゛っ、で、ですが犬の真似等、シャーレ部長の貴方が風紀委員の命令で行ったとあれば…!」

 

「まぁそこら辺はコイツの責任じゃね?反省文書かせられるのは、どっちかって話」

 

守るべきものがあるアコと違い、人様の靴を舐め6年間。嫌われずに済むために何でもしてきたスバルにとっては苦でもなんでもない。

寧ろ自分のせいでゴタゴタと話が終わらない方が嫌で、つい要求を飲み込んだ。

 

さぁ何でも来い、と膝を地面につける。プライドもへったくれも無い、ただひたすらにアロナの元へ帰りたいスバルの一意専心を舐めるな。

 

ここでいくら恥を晒そうと、アビドスズとアロナが居る限りスバルの精神に何らダメージは無いのだから────。

 

「で……では、3周回ってワン!」

 

「はいはい、くるくるくるっ……──ワンっ!」

 

「ぶっ、あはははは!!これですよコレ!私が望んでいたのは!さぁ!そのまま頭を低く、忠誠の証として私の足を───」

 

「アコは嫌」

 

「はい??」

 

「犬の真似だからな、主人はチナツ、お前は嫌な奴。ドゥーユーアンダースタンド?」

 

「─────チナツ」

 

「む、無理です!流石に無理です!!」

 

「チナツ!!」

 

「ぅ、うううっ…──私……のは嫌、行政官のは…ナツキさんが…。っ──!」

 

チナツの視線は一直線。

自分は関係ないですよ、そんな何処吹く風でいるイオリの方向へ。

 

「へ?」

 

「イオリ!頼みます!!」

 

「へ??え?」

 

「ご主人様の言う通りにって奴か……仕方ねぇ、頂きます」

 

「え?」

 

───それでは、実食。

訓練か任務終わり、イオリの前でひざまづき、泥が跳ね汚れが付いたブーツを脱がす。

凄まじい熱量がそこから解放され、スバルの顔面に襲いかかった。素晴らしく芳醇な香り、朝のブラックコーヒーが如き深み。

 

ミシュラン査定人としてここは星三つ……いやいやまだ焦るな、まだ本命に口を付けていない。

狙いはただ一つ。銀鏡イオリの───剥き出しの、足!

 

褐色でなめらかなカーブを描く、全世界の女子高生が羨む最高の逸品がそこにある。

何の添加物も必要無い、天然の要素で完結したこの世で一つだけの……美術品とも言える美しい足を前に、スバルの理性は失われる。

 

「ひゃっ…ぁう……んっ…」

 

「なんふぁへひゅにていこうかんないふぁ」

 

「う、うぅっ…」

 

「あ、あ!助けて委員長!こっちこっち!委員───委員長?」

 

「…………なに……してるの。貴方達」

 

 

「「「「─────」」」」

 

 

「突撃!クロノススクール・報道部所属の川流シノンですっ!飛行船内でナツキ氏を見たと噂を耳にしてゲヘナに来てみれば、素晴らしいスクープ写真でした!ありがとうございましたー!!それではっ!」

 

 

「「「「─────」」」」

 

 

 

──翌日。

スバルの醜態がネットニュースの一面を飾ったのは、言うまでもない。






キチゲ解放の一話だった……スバルくんはこんなことしない気が……まぁ……いいか……二次創作だし……。




???(書きたいだけの奴)サンプル見出し

くらーい話。

『便利屋68ヴァージンキリング』

『殺人鬼・ナツキスバル』

『失意の太陽汚濁に塗れ、天空は堕ちる』

『一人ぼっち砂狼シロコの膝枕』

『特別放映・ナツキスバル死亡シーン100選!』

『雛鳥によるヤンデレ体験《啄んだ餌は呑み込むまで離さない》ノーカット版』


あかるーい話。

『便利屋68のナツキ・スバルだ!』

『空崎ヒナの天下無双』

『終わりなき恋愛闘争必勝法・狼少女は諦めない』

『あまあまシスターズの小悪魔的誘惑』

『セナ部長!新鮮な死体です!!』

『雛鳥によるヤンデレ体験《啄んだ餌は呑み込むまで離さない》お試し編※R-18Gシーンカット規制版』





……なんだこの同人感。

何のお話投稿するか決めちゃいま〜す。

  • くらーい話がいい!
  • あかるーい話がいい!
  • へい、大将のお任せで!
  • どっちも見たいよー!
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