アンケートご協力ありがとうございます〜。
アンケートの結果、接戦で大将お任せプランが選択されました。お任せプランはアンケートの投票数を参照して、なるべくご期待に添える代物を執筆させて頂こうかと。
書きたいだけの奴書くだけなので!!ほぼ蛇足だし!!前後のストーリーの流れぶった切ります!!!いえーーーーいっっ!!!仕方ないね!!!!!!
……サンプル全てを投下する訳にはいかないので、何個かボツにしてまーす。
《シャーレまでの御足労、感謝致します》
「ん゛んっ……か、構わない。未然に密輸行為を防止したと考えれば、む、寧ろ我々から感謝状を送りたい程だ……」
───かろうじて、送り届けることが出来た。
何故、かろうじてなのか。道の途中で何かあった訳ではない、寧ろ危険物を背中に背負って歩いていた。
《────》
「………なんだ」
《いえ、なにも》
彼が普段、アロナと呼んでいる遺産の、部屋に響く機械音の妙な間も今は敏感に感じてしまう。
耳の端まで真っ赤になってしまった自分が鏡に映った時は、叫ぶかと思った。
違う、コレはナツキさんからの酒臭さが原因で、決して背負っている最中に抱いた邪な思いが理由などでは無い。
もしそうだとしても、冷静さを保てている自らを褒めるべきであり、自分自身を蔑む必要など無いと思いたい。
《スバル様のお身体は管理出来ています、昏睡状態ではありますが命には関わらないかと。そこで──カンナ様にお願いがあります》
「お願い?……ふむ、この後の予定にもよるが、何を私に……?」
《目覚めるまで、彼の傍に居て貰えませんか》
「────」
「それは、アレが理由という事で」
《はい》
「──分かった」
《ありがとうございます。職務上の不都合は全て、私の方で対応させて頂きます》
命一つと、職務放棄なら何とも釣り合いの取れない取引か。
一日のサボりで彼の命を守れるのなら、幾らでも捧げられるというのに。
「…………」
首に回させた腕は、今は力なく垂れ下がっている。耳に入る寝息はすぅすぅと、風が耳の後ろに当たり続けていた。
こそばゆい感覚が背中に広がって、退院後だからか…骨ばった胸骨が、ゴツゴツと当たるものだから、少し心配になる。
だから、軽く触れただけで壊れてしまいそうな彼を、そっと。生綿を置くようにソファーへと寝かせた。
「…窓も空けておいた方が良いか。風通りが良いと酔いの熱も冷めやすい」
この部屋は、何処か安心感がある。
間取りだろうか、それとも眺めの良い張りガラスから見える青空が心を落ち着かせてくれているのか。
将来私室を持つのなら、こんな空間に住んでいたいものだ。
「………」
「────」
「…。どうして、あの様なことを」
「何か、後悔でも抱いてしまいましたか?」
返事が帰ってくることは無い。
聞こえるのは、静かな寝息と布と身体が擦れる音だけ。
「…………」
「ふと、思うんです。あれで終わりなのか、これで満足したのか」
「決して、貴方の思い通りの結末になる訳が無い。あの場は不幸の渦巻く世界で、不幸を拭うには足りないものが多すぎる」
「───何か、見落としている気がしてならない」
「もしそれがあの様な事をしてしまう、見落とした後悔というのなら…」
「…………」
「見落とした事だけしか分からない私は、貴方の何の力にもなれやしない」
たった、『気がする』だけ。
そんな気がするだけの私に何が出来る。
うんざりだ。水を差さないように、何も言わず口を噤むだけの時間は。
何を足場にしているのかも分からない暗闇の中、その上に立っている自分がいる。
足場にしているものが何なのか、何も知らないのに彼の寝顔に安心を抱いている。
愛らしい、可愛らしい、守ってあげたい。美麗さを愛として投げつけても、立っている位置すら違うのに。
「────」
「失礼します」
ソファーで眠る彼の前に膝まづく。
見えない闇の底から湧いてくる罪悪感を、神の前で懺悔する様に。
いつか、いつ頃か、どのくらいの時だったか。
カイザーの犯罪に目を瞑り始めた辺りか。
同じ様に、懺悔を捧げた。道の途中150wの灯りに向けて。
口の中の気持ち悪さを吐き出すように溜息を吐いて、道脇に横たわる自分の正義感を眺めていた。
「───」
火傷の跡は中々治るものじゃない。
あの夜の懺悔が自分の愚かさを免罪するだけのものだったから、この火傷は彼に張り付いた。
色恋も、欲望も───罪の跡を眺めながらどうして彼に向けられるのか。
「────」
「……私は、貴方の口から聞きたい言葉があるんです」
「…………」
「ナツキさん」
「…貴方は、不幸を…苦しみを、誰かのせいにした事はありますか?」
「私はあります。何度も、何百回だって」
「だから、ナツキさん」
「一言ぐらい、私のせいだ、と言ってくれてもいいんですよ」
何があっても、どんな事になっても、彼の口からは聞けない言葉を自ら口にする。
擁護するまでも無く、自衛するまでも無く。
ナツキ・スバルに与えられた苦しみの、その一つでも彼が原因だった事なんてないと言うのに。
「……私が差し上げた拳銃」
「…大切にして下さいね」
どうして───彼はこんなにも。苦しんだ顔で寝ているのだろうか。
■
じゃりっ。
「────」
じゃり、じゃり、じゃり。
じゃり、じゃり、じゃり、じゃり、じゃり、じゃり、じゃり、じゃりっ。
「────」
虫の這いずる様な音が、消えない。
土を掘っているだけの音が、気持ち悪い。
自分の意思以外で動く全てのものが、不快で怖くて仕方が無い。
そしてなにより───、
「────」
──肉の匂いが消えない。
焼け焦げた肉の匂い、熱と火薬がこびり付いた身体から放たれる異臭。
それは特段嗅ぎなれていないものでも無かった。
仕事上、敵対するのは大人達だけではなく、大人が雇った生徒とも戦闘を行うからだ。
けれど。
「─────」
けれど。
肉の匂いが、消えてなくならない。
それは骨の髄まで焼け尽きた臭い、柔らかい内臓が、脳味噌が、溶けて焼かれた臭い。
臭い臭い悪臭が、いつまで経っても消えないのです。手を洗っても、鼻を洗っても、記憶を洗っても、いつまでも。
「─────」
タンパク質、脂質、脂身脂肪、人体を構成する要素の一つ一つが焼かれて、荼毘に付せて。
細胞六十兆個の悲鳴を聞いた。
なくならないのは、匂いだけじゃない。
なくならないのは、悲鳴だけじゃない。
あの瞬間を記憶している全てが、無くならないのであって、
「…………」
これから待ち受けているものは、私から全てを奪っていくのだと、あの記憶は告げている。
暗い顔は見せない。辛い顔は見せない。
苦しむ顔は見せない。泣きそうな顔は見せない。
全ては、便利屋68の為に。
全ては、幸せに生きて欲しいみんなの為に。
なくならない、この罪業を背負うのは私だけでいいのだから。
「さっ、埋めなきゃね」
なくならない、痛みに喘ぐ男の声は。
なくならない、便利屋68で過ごした人生は。
なくならない、今まで過ごした記憶の数々は。
なくならない、ボストンバッグに入った死体は。
なくならない、なくならないよ。なにもかも。なくならない。
いつまで経っても。なくならない。
────いつまでも、焼けた肉の匂いが記憶からなくなってくれない。
■
『──死んじゃった?』
気の抜けるような音だった。
普段の自分の喉からは出ないような、誰かにイタズラされても出ないような音。
消えない。消えない。消えない。消えない。
人間一塊が、花火みたいに弾けて消えた光景が、瞼に張り付いて消えてくれない。
まだ生きてるみたいに跳ねる死体の、その硬直が理解不能の化け物みたいに映ってたまらない。
脳は理解を拒絶して、電気信号をストップさせる。身体は先に理解していた。だから先に動いて、アレを誰にも見せないようにボストンバッグの中に隠した。
『ぁ……』
アレ、を触った感覚は手に残ったままだ。
蒸発しきらなかった体液が乾いた肉体の隙間から染み出した、粘つくビーフジャーキーみたいな触り心地の胴体。冷たい顔色になっていったのは、自分か死体か。
爆発のせいで、頭部から弾かれた溶けた目は拾いきれなかったから、爆炎が晴れる前に踏み潰して消したんだ。自分でもあんな事が出来たのはびっくり。
あの場所には──まだ残ってたりするのかな。身体の一部とか。
残ってるか。だって五体満足揃ってないもん。
『────』
非道でも外道でも、心が冷たく冷めている訳でもない。ただ出来るならやるだけで、やれる事をやるだけで、みんなの為にやれない事なんてないだけだからさ。
みんなの為なら、ありとあらゆる犠牲を払える。
心も、身体も、願いも、魂まで。
起きた事に取り返しはつかない。
きっと、みんなに全てを隠しきる事も出来ない。
ヤバそうな依頼だっていうのは、最初から分かっていた事だけど、それでも断る方のリスクが大き過ぎた。
生死を問わない、対象の奪取。
その依頼内容が示す結果も、ある程度は予測できた筈。
『……楽観し過ぎちゃったな〜』
『──ムツキ!派手にやりすぎよ!』
『アルちゃん……ごめんごめん!ちょこまか動くから、つい思い切っちゃってさ〜』
悟られないように表情を沈める。知られないように明るく笑う。今一瞬を乗り越える為に全力を尽くす。
どうしてこんなに頑張れたのかは分からない、火事場の馬鹿力かな、多分。
『ターゲットはどうなったの?』
『うーん。爆炎に紛れて逃げられちゃった』
『何してるのよ──!?ちゃんとあの子捕まえられないと、カイザーにどんな事されるか…!』
あ、ダメだ。泣きたくなっちゃうな、アルちゃんの顔見てると。
こんな唐突に終わると思ってなかったし。
ダメか、まぁダメだよね。
みんながこれからも生きていくには、コレは知られちゃいけない。
神様は味方してくれてる。火薬の匂いが真実を覆い隠して、これ以上無いってくらい晴れてる太陽が視界を遮ってる。
『────』
『……ムツキ……?何かあったの……?』
「───あはっ』
『なんでもないよ、アルちゃん』
分かっちゃうか、アルちゃんは。
この分だとカヨコっちは最期まで分かっちゃうだろうな〜、どうしよっか。
ハルカちゃんは社長の元に残す、ハルカちゃんしか社長を守りきれない。
カヨコちゃんは、まぁ、社長優先か。
『─────』
そのままそこに居ちゃうとね、全部台無しになる気がして。
『ムツキ───!?』
柄にも無く、飛び出してきちゃった。
冷静に考えた訳じゃない、殺人を理解した時点で何もかも無茶苦茶で、心の全部、壊れていく音がしていくのに。
ただ──みんなの為に、そこから走り出した。
■
──私は、別に何ともない。
でも、ハルカちゃんに、カヨコちゃんに、アルちゃんに人殺しの友達は要らないんだ。
「…………」
辛い。辛い辛い辛い辛い。
無条件の理不尽と不条理に耐えられるほど、人の心は強く作られてない。
耐えてないけど、動いてるだけ。
直前までの、どこか泰然と殺人を受け入れていた心境は掻き消え、今は別れという名の死へ向かっていく辛さを必死に堪える。懸命に、みっともないほど懸命に土を掘り続ける。
「……あはっ、隠して、どうしよ〜かな〜」
「自首?」
「───クフフ、ばっかみたい」
気分的には、道端に飛び出した猫を轢いちゃった感じ。思いのほかショックは少ないけど、実態は人殺しだし。
蛆虫が湧いてる音がする、死体じゃなくて、脳味噌の中に。どうしようも無い病巣が巣食ってるせい。
───恐怖。
怖いって感情が、久しぶりに湧いてくる。
これからどうなるのか分からない、それが怖くないのは、みんなと一緒に居れたからなのかも。
「──…はぁ…」
大きくあいた穴に、ボストンバッグを投げ入れて。
そしたらまた、穴に土を被せていく。
じゃりっ。じゃりっ。
───そんな土をすくう音だけが雨の振る中で辺りに響いて。
汗を手で払うと、そこにはもう何も無かった。
「──室長!」
「…え、…あはっ、そっちが来ちゃう〜?」
「あ、あの。あの、私…」
ハルカちゃんが私を見つけちゃったか。
運命も分からないな〜、てっきり、肩に手を置いてくれるならカヨコっちかと思ってたけど。
「ムツキ室長が…悲しそうで、後をつけて…」
「五時間も〜?結構頑張って逃げたんだけどなー♡」
「アル様も悲しんでます、そ、それでムツキ室長が…どうして、逃げたのかも分からなくて」
「分からないけれど、私は皆さんの悲しんでいる原因を…と、取り除きたいんです。誰のせいですか…!私が、私が全部吹き飛ばして…!!」
「いいの、大丈夫だよ。ハルカちゃん」
「ぅっ……だい、じょうぶ…?」
「悪いのは全部私だから、ハルカちゃんは社長の元に戻って。ハルカちゃんなら、誰よりも社長の事を守り続けれるでしょ?」
「──それとも、アルちゃんを今よりも〜っと悲しませたい?」
どうか、どうにか、バレないといいな。
多分、いや絶対。逃げた理由が分かればみんなで分かち合おうとするから、アルちゃんは見捨てないから、ハルカちゃんは諦めないから、カヨコちゃんは足掻き続けるから。
人の命を四等分、それで罪の重さは四人分。
軽くもならないし、重くなるだけなのに。
「──ムツキ!!」
「ムツキ」
「…あ〜あ。見つかっちゃった」
見つかっちゃったなら、どうしようもない。
私の一番の対策は、みんなに見つからない事だけだったし。
「…ムツキ、どうして勝手に居なくなったの」
「………」
「……分かってるわ。カヨコが、何が起きたのか考えてくれたから」
「…ふぅ〜ん」
「───私達な…」
「駄目だよ、アルちゃん」
「っ」
その選択肢は、最初の最初から存在しない。
それだけは、選択肢にすらなってない。実行犯は私で、みんなは事故。それだけで終わりで済む簡単な話なんだから。
それは無い、それだけは、駄目。
「けどアレは!あれは…!」
「……あれは、ムツキの責任じゃない!便利屋68の社長である、私の責任よ!」
「言うと思った、だから逃げたんだよ、アルちゃん」
「ムツキ。逃げても解決しないから、追ってきた」
カヨコちゃんの言う通りだから、逃げたのも最初の段階に過ぎない。便利屋68を辞めて、カイザーの陰謀が何を引き起こすかは分からないけれど、三人だけでも影響外に。
それから、それから────。
「うーん」
「カヨコちゃんの言う通りかも♡」
「なら…!!」
「だとしても、駄目。責任を果たすのは、手を出した本人じゃないと」
「責任、ね。それが責任の果たし方なら、みんなで止める」
「………クフフ」
「誤魔化さないで、ムツキ」
ああ、もう。全部予想してた通り。
予想してた通りの、最悪。けどもう、私と同じ高さの人生で、みんなは生きていけない。
「────」
「…………」
「っ…もう…!」
「もう駄目なんだよ!?わかってる?人殺しって言葉の意味っ!」
「誰が悪い、誰が背負うじゃない!コレはもうっ…もう…!!」
「みんなには、背負わせられなッ───」
海の中みたいな、溺れたままの視界の先で。
顔を振り上げたその先で、ハルカちゃんが二人を突き飛ばしてた。
人生最悪の日に、エンドロールが流れる早さで、世界の時間は過ぎていって。
───ハルカちゃんの身体には、大きな穴があいちゃった。
「………え…?」
じゃりっ。
「……ぁ」
音が聞こえる。
虫の湧いた音が、蛆の沸いた音が。
肉の焼ける音が、命が消える音が。
──土を、掘り返す音が。
消えない匂いが、こびりついた匂いが、なくならない。
なくならないのなら、まだ。
まだ、そこにある。
「─────」
「にげ、逃げてッ!カヨコッ!社長っ………」
首も無い、足も無い、腕も無い、何も無いものが動いてる。
動かされてる、動いてるのか、分からない。
分からないものがそこに居る。
訳の分からないモノがそこに在る。
黒い影を纏って動き出した死体が、二人を飲み込んだ。
「──────」
和解も後悔も何もかも、果たす前に終わりがやってきた。
一体何が起きているのか、一体誰を殺してしまったのか。
なくならないものは、いつまで経っても無くならない。
どんな理由でも、何が原因でも、人を殺してしまったのなら。
「───あはっ」
罪は消えてなくならない。
暗闇に包まれる視界の最期は、そんな暗闇が世界中に広がっていく光景を捉えていて。
初めてで最期の、私の人殺しは。
──殺戮に変わってしまったのだと、見届けた。
■
「─────」
「───────」
「………おや、起きられましたか。ナツキさん」
「良い夢は……見られましたか…?」
『便利屋68ヴァージンキリング』
綺麗な現実と悪夢はまだまだ終わらない。(投票割合は明るい話側が優勢だったので、多分明るい話多め)