Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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感想全部見させてもらってます!ありがとー!
誤字脱字報告もありがとです!文章ぐちゃぐちゃでごめんね…。


『サプライズフォックス理論』

 

 

『それじゃ、調停の為にも和平派と話してきて欲しいな〜。ヒフミちゃんの身柄の代わりに休戦中だから、色々……わだかまり?っていうのを解いてくれると助かるかも!』

 

『うん、お茶会はこれでおしまい。大丈夫だよナツキ・スバル。私は君の味方で、君が思うような未来には……きっとならない。だから……』

 

『また、私とチェスをしてくれる?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あー疲れた…」

 

「お疲れ様です、ナツキさん」

 

地獄の扉の向こう側から帰還し、疲れを瞼に表すスバルを労うリン。茶会が開催された理由である、『聖園ミカとシャーレ部長の対談』という目的は果たされ、案内人であったイチカは爽やかな笑顔で「お疲れ様っす」と労いを重ねる。

 

根城を離れトリニティ学園の中庭にて、ちらほらと人の気配が現れるようになった事に安心しながら成果を報告する。

 

「──ああうん、適当に判子押して…後は和平派と調停したいから、話し合いしてこいってさ」

 

「ナツキさんの脳内で変換して言葉にされるのは止めて下さい…。聖園さんの意図を曲解しそうになります」

 

「大体そんな感じだったもん、仕方ないって」

 

「まぁまぁ、お二人とも…。私としては連邦生徒会長の失踪から…長らくトリニティとの関係は断絶してたのを、シャーレの発足でこのような機会を設ける事が出来て感謝しかないっすよ。終戦の目処が立たなくて困ってたんすよね」

 

「…そんなら、ゲヘナをぶっ飛ばすなんて思想を垂れ流さなかった方が良かったと思うんだけど…?」

 

「ひゃわっ!?ナ、ナツキさん!その発言は…!」

 

「あはは、大丈夫っすよ。別に私は……というか私みたいな生徒は大体、早くこの争いが終わって欲しかったんで、どう言われても気にしないっす」

 

イチカの物言いは随分と、投げやりだなと感じる。学園全体を巻き込む二極思想の紛争の最中で、今のスバルの発言は万死に値すると言ってもいい。ウイもそうだったが思っていたよりも───この紛争に肯定的な生徒はいないのか?

 

「──誰も、こんな事望んで無かったんすよ」

 

「────」

 

酷薄に言い捨てて、イチカの糸目が軽く開かれる。その声色は即ち、落胆と呆れによるものだった。

銃を握る手はゆっくりと開き、しなやかな五指がテンポ良くアサルトライフルを叩き、そして杖代わりに体重を預けた。

 

銃、とは本来この世界では…現代のガラケーの様な身近な貴重品であり、愛用品。それを惜しむことなく地面へとキスさせるその様は、銃が持つ『使用用途』にうんざりしてしまったのか、それとも元から扱いが雑なのか。

 

「なら…ちょいとラフに話そうぜ、イチカ」

 

「ラフ、ですか?」

 

「例えばトリニティでどんな部活で、どんな事してたかとか。後…普段何してたのか…とか」

 

「──あははっ。強硬派にバレると怒られちゃいますよ。彼女らは平穏なお話をして……ふと、現実に戻っちゃうのを恐れてるんすから」

 

「………………」

 

どうしようもない学園だな。そんな風に吐き出しても良かったけれど、目の前の疲れきった生徒一人に向けていい言葉じゃない。

 

──聖園ミカには味方か否かを聞いたが、スバルの原動力は誰かの力になりたい、それ一点だ。言い換えるのなら『君の力になりたい』。

そう身体が勝手に動くモノが生徒達には秘められている、学校の先生の気持ちが勝手に分かってきたと自負しよう。

先程のやり取りだけで、聖園ミカを目の上のたんこぶとして扱うふんぎりをつける訳にもいかず、アリウスからスバルの詳細を聞かされているのなら、茶会で何かしらのアクションを起こしてもおかしくなかった。

 

意図を測れない相手は不気味そのもの、今こうして現状の不満を態度で表すイチカの様に、自己表現を行う生徒達を調べていけば探れる何かを見つけれるやも、

 

「それに、アリウス親衛隊だって睨みをきかせてますし」

 

「────!!」

 

「ヒフミ補佐官には頭が上がらないっす。あの子のお陰で今日の平和がある、実質的な向こうのトップが人質になりに来る……って、最初は正気かどうか…」

 

「……そういや、アリウスってのはトリニティの古い、統合前の学園だろ?分校がどうしてトリニティでの武力組織になんかなっちまってんだ」

 

「ミカ様の意向っす。私らはそれ以外に何も、内紛の始まりだってエデン条約の凍結が始まり……だなんて言われてますが、それより前に火種はあちこちにありました」

 

「誰も彼も、この内紛がいつ始まっていつ終わるのか、どうして始まってどうして争うのか、なんて、分かっちゃいないんすよ」

 

「こんな………。こんなになるまで戦火が広がってんのに、そんな事が有り得んのか…?」

 

「ええ、有り得た今がそうです」

 

深く息を吐き出して脱力を肩の動きで表すイチカ。耐え難きを耐えてきて尚、トリニティは応えてくれなかったというのか、言葉にされた訳でもないのにその心労を察してしまう。

スバルがまた余計な言葉を頭から捻り出そうとする前に、イチカは表情を切り替えて「さて」と前置きする。口ごもってタイミングを失った今、イチカの司会進行に間を割るに割れず、耳を傾ける。

 

イチカの誘導に従って校門前まで歩き、その問題のある護衛とやらが到着するまで暇を潰す。道中、学園内の生徒から熱い視線をビシバシと受けていた。

好奇染みた視線もあれば、烈火のような敵意を向けるもの、未知の存在への恐怖からか連邦生徒会の服装を見て陰口を表立って話す、度胸があるのか無いのか分からない奴が居たりもした。トリニティの洗礼と言うには手柔らかすぎるか。

 

「ミカ様からは多分、和平派と話をつけてこい…って言われてると思うんすけど、アユムさんリンさんナツキさんは誰も和平派の根城を知らないと思うんで、これから先も私が案内するっす!」

 

「まぁそれに伴って新しい案内人もとい、護衛の人を呼んでまして…少し問題はあるんですけど……あー…来ちゃってますね…」

 

「その言い草だと、なんか問題ありげだけど…?」

 

「いやその、問題というかなんというか…──」

 

苦笑いの理由は分からないが、基本この前置きをされる場合は癖の強い生徒だった場合が多い。以前カンナが紹介したキリノの様に、良い所をふまえて尚欠点が無視出来ない相手……といった所か。

 

指した向こうに見えるのは、サーティワンのアイスクリームの様な薄ピンクと水色が混じった髪色、ソーダアンドグレープだろうか。ホシノ程では無いが目に見えて目立つアホ毛と星型のヘイローに、いかにもキラ星が似合いそうな明るい配色をしたアサルトライフル。

 

「──どうも!トリニティ元自警団、宇沢レイサ登場です!!!」

 

「……!」

 

「どうも!!無知蒙昧にして天下不滅の無一文、ナツキ・スバルだ!!」

 

「おお!お元気のよい返事ありがとうございます!」

 

「アイサツは基本のキだからな!欠かした奴からセイバイされるって噂だ!」

 

「今日は皆さんの護衛係として頑張りますっ!私が来たからには皆さんに悪党の弾丸一発……指一本もふれさせません!どーんと頼りにしてくださいね!!」

 

「おうよ!こちらこそ宜しくな!おいおいイチカ…こんな可愛い護衛の何処に問題があるってんだ?」

 

「むふ……そうですよ!可愛い……可愛い!?……私は自警団のエースにして、無敵のアイドルなんですから!!」

 

素晴らしい元気っぷりだ、スバルスカウターが親和率99.9%を指し示している事から、宇沢レイサの内包される因子は───、

 

「…………耳栓要ります?お二人とも…」

 

「私は慣れていますので」

 

「わ、私も大丈夫です…」

 

限りなく、中学生時代のナツキ・スバルに似通ったものである、と直感が告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──半ばスラムの様な街並みをのそのそと、傍から見れば無防備にも映る集団が闊歩する。身なりは立派だが貧相な武装しかしていない連邦生徒会の役員と、いやに厚着をしていそうな白いコートの男。後は護衛であろう二人。

 

長く続いた内紛により不足したのは、何より弾薬。今まで湯水のように使っていた代物が枯渇する事態は、整えられた街から内紛を続ける為に物資を奪い尽くした。

弾が無ければ武器での殴り合い、武器が折れれば建物の瓦礫を使って、それが砕ければ次は拳だ。

 

「……」

 

補給線を絶たずとも、互いの陣営は即座に物資不足に陥る。同学園、鎖国しての紛争などこうなる事は目に見えていた。というのに、憤怒の炎に巻かれた者はこの街並みを見てどう思うだろう。どうしてこんなことに、なんて嘆く資格があるのだろうか。

 

今や飢えた狼にしか過ぎない者たちが餌に手をつけない理由が、その集団にあるとするならば、嘆きの終わりを求めるのも仕方のない事。

 

「レイサは自警団、イチカは正義実現委員会……どっちも部活動でやる事は似てんのか。活動になんか違いとかが…?」

 

「うーん…難しいっすねぇ…。志や活動方針で言えば大きな違いはありません。が、正義実現委員会は……」

 

「…………ナギサ様の番犬、手足とも揶揄されていた部活動ですからね。宇沢さんとスズミさんの二人は、公権力的な側面が合わなかったとは思います」

 

「うぐっ、わ、私は別に何処に行っても馴染めたと思いますけどね!」

 

「無理すんなレイサ。その人それぞれって言葉もあるんだし」

 

「遠回しに私じゃ駄目って言ってないですか!?」

 

限定的だが保たれた平和を盾に雑談をくっちゃべり、呆れ顔のリンを放置して和気あいあいの談笑を続ける中で、やはりと言うべきか以前のトリニティの姿を懐かしむ言葉が出てくる。

 

「正義実現委員会か…。俺が中学生だったら絶対入ってたな。名前のインパクトだけで百点満点だよ」

 

「環境はとても良かったっすけど、そう良いものでは無いっすよ。日常的なパトロールはともかくとして、立場的に他の部活や組織との望まない対立も多かったですし」

 

「───……ツルギ先輩やハスミ先輩とも、今こうして離れ離れになっちゃってますし」

 

「……荒波に揉まれ己を知るってのも学生の本懐じゃん?望まない事が多くても…きっと後から見れば───」

 

「そう、言いたいんすけどね」

 

「……まぁそうだよな。まだ言えねぇ、だから俺がここに来た」

 

「お〜。カッコイイっすね!私もそんな事言ってみたかった…なんて、あははっ…」

 

「……イチカ」

 

昔ながらの先輩の名前か、イチカは挙げた名前を呼んで深々と思い出に浸るように掌を見つめる。内紛がもたらしたのは何も生徒の本懐を奪う事だけでは無かった、表面上を目にしただけでも痛ましいというのに、元々の生活を奪われる悲しみをスバルは測れると思わない。

 

先輩も友人も親友も、他人は他人。ドライな様でいて、だからこそとスバルは述べたい。他人だから、所在が自分以外にあるからこそ、他人と自分を繋げる過程が必要になる。

 

その重ねてきた太い太い繋がりが、見えない大きな力で勝手にちぎられた。人との繋がりだけじゃない、お気に入りのお店や漫画、食事に遊び、今まで保ってきた繋がり全てが泡沫になるなんて、それ以上に辛いことなんてないのだと思う。

 

「ほんと、平和って良いっすね。今日一日が天国みたいっす」

 

「……こうなるとレイサが護衛についてくれた意味無さげだけど」

 

「うぇぇ!?ナツキさん!そんな酷い事を仰るのなら、この宇沢レイサ…災厄の狐に勝利する元気が湧いてきませんよ!」

 

「──はい?災厄の狐?なんで??」

 

「あ、そういえば言ってませんでしたね。最近あの七囚人の中でも最悪のテロリストが無断でトリニティに侵入しちゃってまして、あちらこちらの家屋に爆弾が……」

 

「早く言ってよ!?ワカモかぁ……ワカモかぁ…!本当に最悪だな…」

 

──感傷もぶっとぶ程の情報が耳に入ってくる。

よりにもよって奴だ、よりにもよって初デスを奪われた災厄の狐だ、歯を食いしばり天を仰ぐ資格がスバルにはある。破壊テロ爆破嫌がらせが趣味の範疇の、シリアスを作りながらシリアスをブレイクする素質を持った最悪の敵。人それぞれという言葉を真っ向から嘲笑う奴。

 

散々生徒の可能性について言及し、それを元に励ましを送っていたがアイツだけはどうしたものかと頭を悩ませる。絶望の縁で疑心暗鬼の中に居たホシノの手による死と、ノリと暇つぶしと趣味での死、思い返せば返すほど、理不尽とは何かを体現している。

確かにこのスラムと化した街はワカモにとって絶好の遊び場だろう、奪えるものは奪い尽くせるし、誰も咎める事は出来ない。その上、扇動が得意な彼女にとっては内紛で揺れる生徒を誑かすのも簡単な事この上なし。

 

人を傷つけるのはどうだとか、悲しみを産みつづけるのはアレだとか、半端な世辞を踏み潰して快楽を求めるワカモとも……スバルがいつか手を差し伸べる機会が訪れてくれたら良いのだが。

 

「おや、何かあの狐との縁があるんすか?」

 

「ナツキさんがキヴォトスに来た当初、災厄の狐がシャーレを爆破しようと企んでいまして…──ナツキさんはそこでかなりの迷惑を掛けられたようで」

 

「迷惑で収まったら良かったけどさ、ほんとのほんとに…クソ、なんでワカモなんだよ……」

 

「あちゃ〜…。まぁ私らもアイツは内紛に一切関係ない癖に、ここの所一番両陣営に迷惑をかけてるって認識なんで、早めに出ていって貰いたいんすけど……」

 

「けど?」

 

「──何故か、災厄の狐を中核とした新しい武力組織が作られちゃって、トリニティ全員が苦労してるんです。追い出そうにも、トリニティの和平派と強硬派が混じった組織みたいでどうしようもないというか」

 

「ほんっっっとに何してんのアイツ!?」

 

イチカは指をピン、と立て「そこで」と何かの企みを口元に含ませる。災厄の狐というランダムエンカウントエネミーを前にして、何か秘策があるのか、トリニティ生徒の特徴でもある大きな翼をはためかせ、

 

「ミカ様から事前に告げられてる事なんですが、その災厄の狐を今から捕まえに行きましょう!」

 

「───」

 

「和平派との調停の第一歩には、それが良いって申してたんで」

 

「イチカ、悪い事は言わない。俺らじゃ無理だ、少なくともこの五倍…いや十倍ぐらいの戦力が無いと捕まえきれない。倒すのならともかく、捕まえるのは無理」

 

「その戦力のアテがこの先に待ってるとするのなら、ナツキさん的に災厄の狐の捕縛……出来ちゃったりします?」

 

「…それは頭数?それとも、ヒナみたいな一個人か?」

 

「それは───」

 

イチカが目で捉える先に、スバルらもその人物の姿を見た。けれど今歩いていた大通りはついさっきまで人影も無く、いつの間にか居たその生徒の外見は血に濡れていて、ちょこざいなホラー映画よりかよっぽど産毛が逆立った。

 

血色が悪い、いや薄白い肌は健康と不健康の境目で、クマの大きさで勝手に比べ合っていたリンとウイを超えるド級の黒さが目元にこびり付いている。人と認識するより先に頭に浮かんだジェイソンをとっぱらってよく見ても、やはりホラー映画の怪物役にしか見えない。翼には羽らしい羽が生えておらず、翼骨に破けたビニールの様なボロきれが張り付いている風に錯覚する。

 

口元でブツブツと何かを呟き、血で染めた服を揺らしながら舌を垂らし、何があればそんな目つきになるのかスバルの目つきの悪さを鼻で笑える極悪顔を晒す相手を見て、イチカは満面の笑みを浮かべた。

 

「後者っす、ナツキさん」

 

「………ケヒッ…」

 

「…お久しぶりですね、ツルギ先輩」

 

「くひっ、ひひひッ…!ああ…」

 

「な、なぁイチカ…ずっと不気味に笑ってんだけど、イチカの先輩っていつもあんな感じ…?」

 

あまりの見た目の恐ろしさに、アリウスが何か細工したのではと勘ぐる程の表情で笑うツルギ。先程まで騒がしくボリューミーな声を上げていたレイサも萎縮してしまい、スバルも肝っ玉が縮み上がる。

スバルに問われ、細目を更に細くして指先を顎に置き、イチカはあの不気味な笑いの真意を答えた。

 

「あれ照れてますね、なんでか分かりませんけど」

 

「照れ──?」

 

その真意とやらに困惑している最中「きぇぇぇっっっっ!!!」と奇声をあげてツルギが突進し、文字通り目に見えぬ速さとやらでイチカの目の前にまで接近する。

 

「なんですかぁ!?!?」

 

「なんなんだよっ!?」

 

「………本当に、久しぶりだなイチカ。元気にしていたか」

 

「うわぁ!いきなり落ち着くな!」

 

「…すまない…。少し緊張していて……きひひっ…ひヒッ…」

 

レイサほど間近に見なくて良かった、スバルなら確実に身体の下部を熱く濡らしていたかもしれない。近くで見ると更に風貌の恐怖度が増し、過去史上一番の絶叫を上げるのを気合いで防げてよかったと思う。

 

「──剣先ツルギ。元正義実現委員会部長、現和平派のリーダーをしている………えっと、貴方はその…」

 

「お、俺か?まぁ見てくれの通り、まちかねたシャーレの部長って奴さ」

 

「……いえ……その……」

 

「ん……?」

 

「その、その……そのっ…──き、きぇぇぇぇぇぇえッっ!!!」

 

「だからなんなんだよ急に!?」

 

「あー……なるほど?なるほど!?えっとですね、ナツキさん」

 

「見た目がタイプだから照れてるっぽいっす。一目惚れっすかね、私の後ろで隠れてたら解決しますよ」

 

「──────」

 

「「────」」

 

「……ひとめぼれ…?」

 

 





サプライズフォックス理論 : 突如現れた災厄の狐が大立ち回りをして、計画が狂ってしまう場合、その計画を考え直した方が良いという事。
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