Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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『砂塵の闇、孤立無援』

 

「三白眼!ギザ歯!ケモ耳に…うべべべべ」

 

「スバル」

 

「ごべ、ごべんばばい!目線が!この目が悪いんです!!」

 

160超えの身長に、キヴォトスにおいて中々見れなかった大きな凹凸ッ!!あの横乳丸出しバカは置いといて、漢ナツキ・スバル、ヒナに最初助けられてなかったら彼女に一目惚れしていた自信がある。

 

共に三白眼の目つき悪い悪人面、属性的には彼女も悩む所があるのかもしれないが、スバルにとって同種発見嬉しいな、程度しか考えていない。

 

ケモ耳だ、何と希少な属性。いや別にこの世界だとヒナや道行く人々にも種族的な要素なのか、角が生えていたり羽やら何やら生えているが……やはり王道のケモ耳は至高にして最高。

ケモ属性に関しては人耳アリ派とケモ耳オンリー派が居るが、スバルはケモ耳そのものが好きなタイプ。なので人耳もありよりのあり。

 

「YKN、ケモ耳サイコー、触ってもいい?」

 

「……コホンッ、その、ナツキさん…まずは謝罪から…」

 

「謝罪なんて水臭い事は捨てまっしょい、ナツキ・スバル…今は目の前のケモ耳をモフりたくて仕方がない」

 

「…………ーー自己紹介も、まだ、でしたね…!!ヴァルキューレ警察、公安局長の尾刃カンナです…!!この度は…ーー」

 

「いんや、本当に謝罪は大丈夫だ…2人とも俺に頭何か下げないでくれ」

 

「「……!」」

 

 

スバルが逆に2人へと頭を下げる。

当たり前だ、と心から思っていた、警察という立場を考えれば彼女らがシャーレを守っていたのは業務として当たり前で、彼女らがシャーレのビルを守ってくれていなければとっくの昔に詰んでいた。

 

そんな業務中にスバルが突撃して、勝手に暴れて勝手に怪我してしまい、それでスバルに謝罪をしなければいけないなんて……日本のモンペを思い出してしまう。

 

 

「怪我したのも何もかも俺の責任だ、カンナが背負うモンじゃねぇよ」

 

「…ですが」

 

「ですがも禁止、それでも謝りたいなら今頭を下げてくれた分で十分! だからこれ以上は気にすんな、俺から逆にありがとうって言いたい位だったのに」

 

「…ーー分かりました、これ以上は水の掛け合いですね…では早速、質問があります」

 

「なんなりと」

 

「……その、仮面…えっと、落書きは一体?」

 

「ウチの超有能サポートAI作、作品名『ナツキ・スバル』、身元バレ対策の一環だ」

 

「そ、そうでしたか」

 

 

部屋を出発する前に、チャチャッとアロナがガラケーにアスキーアートとして書いてくれたのを模写してみた。本当に落書きにしか見えない、なんか身体も腕も寸胴だし首も無いし、顔は (◠ڼ◠) で特徴を捉えてるのは唯一髪の毛位しかない。

せめて三白眼は書けるだろと思っていたが最早そんなレベルでは無く、圧倒的な画伯力に恐れ慄いたが…無下にする訳にはいかないので使わせて貰っていた。

 

 

「なんか分かんねぇけどバレないんだよな」

 

「誰も顔を合わせたくないのでは…?」

 

「多分大正解だけど口に出したらダメよダメダメ」

 

 

軽口は叩けば叩く程気が緩む、ナツキ・スバル伝統(一代目)しんみりしてしまう関係解きほぐし方が功を奏したのか、重苦しい顔で頭を下げていた目の前の2人から、肩の力が抜けてきたのが分かる。

特に隣の子にはそこまで気負いして欲しくない、今までの銃殺経験から、銃を撃つことに慣れていても、人を傷つける事に慣れている様子は無いと分かっていた。

かすり傷未満で済むから撃てる、そうじゃなきゃ撃てない、なんて子も……ちゃんといるんだろう。

 

受け入れられなくても、理解出来るのなら…寛容出来る。

 

 

「カンナ公安局長」

 

「…ヒナ風紀委員長、彼との面会の場を用意してくれた事、感謝します」

 

「今は謹慎中よ、ナツキ・スバルの唯の……ーー友人でしかない、それと感謝を述べるべきは、今ので許してくれたスバルに対してね」

 

「勿論です、ナツキさん…重ねて感謝を」

 

「今日は本当によく感謝される日だな……有難く受け取っとくぜ?代金は俺の心へ着払いにしとくから心配しないでくれ」

 

 

責任者というものは大変だな、と今の光景を見て尚更感じるスバル。何せ一応スバルに弾を命中させた本人が、名だたるメンバーに萎縮して話せていない代わりに、カンナが表立って話しているのだから。

 

ヒナもカンナも今や一般人では無くなったスバルも、皆揃いも揃って「責任を負う者」。だからこそ、残る負債には口頭だけでの問答で終わらせず、功績で答える。

 

 

「本題に入りましょう、カンナ局長…ーーアビドス高校を襲撃するカイザーについて、スバルに全ての情報を共有しなさい」

 

 

「ーーおい、お前は先に帰っておけ」

 

 

雰囲気が一変した、ヒナからとんでもない要求が飛ばされる。カンナは縮こまっていた生徒を帰らせてその要求と対面した。その中で許して和気あいあいの歓談をするつもりでいたスバルの表情が固まり、『コレ』がヒナの目的である事を理解する。

 

 

「貴方達がカイザーに1枚噛んでいる事は分かってる、貴方の意思かどうかは知らないけれど……恐らくは、防衛室長の命令でアビドスにわざと支援を送っていないわね?あの高校を完全に孤立させてる」

 

「はーー、マジ?」

 

「…………隠していても仕方がありませんねーー、この話をするから人気の無いここを選んだのか、流石だな空崎ヒナ」

 

「貴方もトップがアレでは大変だと思う」

 

「ゲヘナの治安には敵いませんよ」

 

「ちょっと〜?2人だけの空間に入るの止めてね〜??俺全くついていけてないよ〜〜?」

 

 

急な強者オーラとかっこいいセリフを吐き合う2人に思わず嫉妬、スバルもそんな感じで会話に混ざりたくても事態をよく理解していないから口を挟めない。

 

 

「以前、連邦生徒会にカイザーと手を組んでる裏切り者が居ると言っていたでしょ、スバルが気絶した後色々…ね、正体が防衛室長だと割れた、そもそもキヴォトスでヴァルキューレ警察を自由に動かせるのは彼女しかいないし」

 

「……はッ!!そういえばそうだった…!!何から何までおんぶに抱っこだな俺!?ってことは、この状況…もしかして大ピンチ?カンナは直属の部下って事でしょ?」

 

「まぁ、そうですね」

 

「カンナもカンナで何でそんなに淡白なのぉ…?」

 

 

裏ボスの部下はクールなのが常識だが、ここまで淡々と事を進められると逆に肝が冷える。「ここで貴様ら全員生きて返さなければいいだけだ」なんて、あの顔で言われればスバルの心臓が止まってしまうだろう。

 

 

「選択肢が、この世の全員に平等に与えられている訳では無い、たった1つを選ばねばならない時も、選ぶことすら出来ない時もある」

 

「私はそういう人間です、それは今ここでも同じ、1度汚れた手は幾ら洗っても綺麗になりませんので……ーー汚れを落とすには、手を切り落とす(責任をとる)しかない」

 

「アビドスに関わる全情報の共有だな?1日時間をくれ、そうすれば持ち出せる」

 

「話が早くて助かる、それと自由に動かせる足もお願い、連邦生徒会名義だとカイザー側に動きが筒抜けになるから」

 

「ーー…ぁ」

 

 

ヒナの今の発言でハッとする、考えてもみれば過去にホシノに辿り着けた時は徒歩か自転車、1度たりとて車両と航空機では成功していない。行く先行く先でヘルメット団が車両狩りをしているか、カイザーが防空網を敷いていた。

 

死に戻りを繰り返し、感覚がマヒしていたせいで疑問を持っていなかったが……余りにも事前に準備が出来すぎていた気もする。

 

頼るべき先の連邦生徒会に、既にカイザーの魔の手が伸ばされているのならーー、

 

 

「もしかしなくても、俺ってだいぶ詰んでる?」

 

「もしかしなくても詰んでます、私の上、防衛室長が目指しているのは首席行政官の立場ですので」

 

「最悪も最悪だな!?目の前で国家転覆の暴露される経験は流石に初めてだよ!?クソ、得られる情報の数百倍問題が湧き出てきた…!」

 

「そうでも無い、スバルがアビドスの問題を解決出来ればスバルは連邦生徒会長の『その人』であると連邦生徒会側から認証が下ると思う」

 

「その肩書き、俺が1番欲しくない奴なんだけど」

 

「必要なのはその肩書きよ、カンナ局長……ーー独立連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの話は防衛室長から聞いてない?」

 

「…ーー!!!シャーレ、か」

 

 

カンナの三白眼が大きく開かれる、その手があったか、と言わんばかりにヒナの顔を見つめ、彼女の現状把握能力に賞賛が出そうになった。

 

 

「………空崎ヒナ、どうしてそこまでナツキ・スバルに肩入れする、自治区の管理を手放してまで手を貸して…」

 

 

「特別な理由は無いわ、唯の人助け」

 

 

「……」

 

 

「あの〜その、やっぱしもうちょい分かりやすく……」

 

 

へにょへにょっと手を上げるスバル、シャーレだのなんだの、化学実験器具の名前を言われても脳内に想像出来るのはペトリ皿の様なもので、今の所何がどうなって解決に至るのか分からない。

その人なんて肩書き、背負わせたきゃ背負うが……スバルが最も踊らされた肩書きだ、いい思い出も無かった。

 

問われたヒナは、一呼吸置いて……ーーシャーレの実態について話し始めた。

 

 

「ーー連邦生徒会長は、『その人』にある部活を就任させると命じてある、それが独立連邦捜査部S.C.H.A.L.E」

 

 

「キヴォトスにおける特異点、この世に存在してはいけない特権が付与された部活動、あらゆる規約、法律、規制、罰則、その全てに縛られる事無く『捜査』という名目で介入が許された超法規機関」

 

 

「スバルが、スバルだけがシャーレの部長になれる可能性があるの、シャーレの権限は連邦生徒会長と同等、幾ら防衛室長だとしても逆らう事は出来ないし、このキヴォトスでその権限に逆らえる組織は存在しえない」

 

 

「唯の部活に、三大学園を含めたキヴォトス全学園を好き勝手に動かせる権限を与えた……それが、連邦生徒会長が残した狂気の産物」

 

 

「独立連邦捜査部S.C.H.A.L.E」

 

 

「…………」

 

 

「……ーーあのさ」

 

 

ーー今、分かった。

 

何故スバルの背に背負う名が膨れ上がり続けているのか、何故連邦生徒会の首席行政官…日本の総理大臣レベルの人間がナツキ・スバルを頼っているのか、何故カイザーがナツキ・スバルにテロ組織を作り上げてまで対抗しようとしているのか。

 

そんな権限を一部活……それどころか条件を考えれば、一個人に付与する馬鹿が居たのだ。

 

 

 

「連邦生徒会長って、どんな奴?」

 

 

 

ヒナとカンナが顔を向き合わせる。色々彼女を表現出来る言葉はあるのだろう、天才だとか、キヴォトスにおける頂点だとか、キヴォトスの管理者だとか。

 

噂話は様々、そのどれもが規格外であり、常識を超えている。しかしキヴォトスには様々な者が居るのだ、外の人間から見れば全員が人外だと思えるだろう、スーパーコンピュータを脳内に備えているような超天才、都市を経営する圧倒的な個人の能力の高さ、銃弾でもかすり傷にすらならない化け物。

 

キヴォトスの日常は、人外魔境が渦巻く神秘の坩堝。ーーそんな世界で、失踪しただけで犯罪が急増し…違法な兵器の流通量が各自治区で2000%も増加してしまう存在が居るらしい。

 

 

誰もが辿り着けず、誰もが彼女をそう呼んでしまう相応しい言葉があったーー、

 

 

 

「「ーー超人」」

 

 

 

今、ナツキ・スバルは理解した。

そして脳裏に浮かぶはあの言葉。

舌が溶ける程甘く、脳を壊す程優しく、魂を掴んで離さない、

 

 

【あいしてる】

 

 

 

「……」

 

 

指先一つが、皮膚一枚が、爪の甘皮一枚が、髪の毛一筋が、汗の一粒が、唾液の一滴が、言葉の一つが、呼吸の一息が、感情の一欠片が。

 

 

「なら、顔の1つ位見せやがれ」

 

 

ナツキ・スバルの全てがあいされている。

残された狂気から伝わってくる『愛』が、ナツキ・スバルの全身を覆っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『随分と、お・そ・い・帰りですね、ナツキさん』

 

 

『まずは、手紙の書き方についてでも』

 

 

『ーーお話ししましょうか?』

 

 

「グスン……」

 

 

白い紙とひたすらに向き合うスバル。

こんな経験は……小中学校以来だ、涙をすすりながら白い紙が真っ黒になるまで書き上げる単純作業。

 

様々な美辞麗句を並べ立て、心を脚下照顧し、清廉潔白な身になった事を証明するための…ーー。

 

 

「反省文なんて…反省文なんて!グスン…」

 

 

それ即ち「ごめんなさい」であった。

 

流石のスバルもあの冷酷な笑顔の前にふざける勇気は無く、詰められるがままに詰められ、病室でシクシクと一人寂しく反省中。

ヒナの事は庇ったのでお咎めなし、ヒナとカンナと明日また同じ場所で会おうと約束して解散。

 

アビドス攻略戦は順調……とは言えない、足は用意してもらえるし、アビドス高校の状況を知れても結局鍵を握るのは……。

 

 

「……」

 

「小鳥遊、ホシノ」

 

 

彼女との対話だ。

それで漸くスタートライン、カイザーの事も何もかも解決の目処が立っている訳じゃない、奴らの事だ、遠慮無く発砲してくるだろう。

 

襲撃はどうする、動きを変えたから…もしかしたら今晩やってくるかもしれない、あの悪夢の足音がまた聞こえてくるかもしれない。

カイザーPMCをどうにかするって、どうするんだ?どうにかするしかない。

 

ホシノが抱えているものは何なんだ、あの目を未だに思い出せる、誰の目とも違う、小鳥遊ホシノの目。

解決出来るのか、解決しなくちゃ始まらない。

スバルが救えるのか?スバルが救うしかない。

 

 

 

『選択肢が、この世の全員に平等に与えられている訳では無い、たった1つを選ばねばならない時も、選ぶことすら出来ない時もある』

 

 

 

ーーあと何度、死に戻りするのか。

 

 

「……」

 

 

「……はぁ」

 

 

強く、手に持っているボールペンで手の平を突き刺す。

強く強く、血が出る程に。

 

時々無意識にやってしまうようになったコレを、意識しながら突き刺していく。ググッ、と強い抵抗がボールペンに返ってくるが、構わず押し付けていくと……流れる血が手の平から溢れそうになった。

 

反省文が台無しになる前に、A4用紙の上から手を引いてティッシュを持ってくる。

 

 

「……」

 

 

ーー痛みが鈍い。

か弱い存在として重要な痛みに対しての反応が、弱者の武器であり防衛本能がゆっくりと鈍化してきていた。

流れ出すナツキ・スバルの血が、ナツキ・スバルのモノだという自覚を得づらくなっているのだ。点滴を外してもそこまで痛くない原因でもある。

 

ホシノとの会話以来、スバルがスバル自身を拒絶し始めて…ーー今はまた、穏やかに治りつつある……のか?

 

 

「…アロナ、ありがとな」

 

「私はスバル様のサポートAIですので、当たり前の事をしたまでです」

 

 

いつものように、携帯に向かって話しかける。

 

 

「マジで助かった、なんつーか、視野が狭くなってる事を指摘してくれる奴って本当に大切だからさ、アロナもヒナも、居なかったら今頃…俺、酷い事になってたかもしんねぇ」

 

「…私の提案はお役に立ちましたか?」

 

「マジマジの大マジ助かり!シッテムの箱が持ち歩けたら永遠と撫でまわしてたぜ!!いや〜やっぱし人生持つべきは、強い幼女と可愛い幼女とカッコイイ幼女だな!」

 

「それではスバル様が幼女趣味と噂されてしまいますが」

 

「うーん……あながち否定出来ねぇ!?!?ま、不味いッ!これはスタ〇ド攻撃だ!!俺の性癖を変えられているぅぅーー!?」

 

「……スタ〇ド…?」

 

「ヒナとかアロナとかが大好きになっちまう魔法をかけてくる、見えない魔法使い…インビジブル魔の手的な奴ね」

 

「ーー()()()()()()という事は、今現在スバル様は別に私や空崎ヒナさんの事が…ーー好きでも嫌いでも無い、どちらかと言えば嫌いよりという事でしょうか?」

 

「ストーーーップ!!ストップストップ!違うよ!?好き、いや大好き!!大大大好きですアロナ様!!いつもいつも不甲斐ないナツキ・スバルのサポートありがとうございますぅぅーー!」

 

「それなら良かったです」

 

「うむむーー…日に日に人間味増してきてない?アロナちゅわん」

 

ガラケーに映る文字からは、声は伝わってこずとも顔文字が混ざっていたり、文章の句点から感情が見て取れる。

初めて出会った時は比べ物にならない程、アロナとの対話はバリエーション豊富になっていた。

 

「日にちで申し上げれば、まだお会いしてから1日ですが……ーー176度目の私は、以前とは違いますか?」

 

「ーーそうだな、ああ、すっかり幼女先輩っぽくなってるよ」

 

「分かりました、シッテムの箱の深部の解析を進めておきます、変化しないはずの次元並列体の変容は如何なるリスクがあるか分かりません」

 

いつも通り、たわいもない会話とも言えない会話をする。

確認作業の様な、まだまだ機械と話している気にしかならないアロナとの会話。

 

ーーいつか、アロナにも自我のシンギュラリティ的なうんぬんかんぬんが起きたりするのかな。

 

 

「そうだ、アロナ…連邦生徒会長がどんな奴か当ててみようぜ」

 

「当ててみる、どの様に?」

 

「いやさ、今日衝撃の事実知っちゃって……こう、見る目が変わったというか…色々知っとかなきゃなんねぇんだ」

 

「という訳で!!チキチキナツキ・スバルの良い所クイズを開催するぅ!!!」

 

「ーー何故そのような事をする結論に到ったのか計算できません」

 

「連邦生徒会長が俺に惚れてる可能性があるっつー事は!俺のイケメンアーンドゥ、褒め称えられるべき箇所を上げて、『惚れられる部分』を探すことで〜?」

 

「so!連邦生徒会長のクソ悪い男の趣味を暴いていくのデスッ!」

 

「……………………」

 

「だァ〜れが悪い男の趣味の煮こごりだぁ!?」

 

「スバル様の自己申告です、私の考えではありません」

 

「マジレスぅ…」

 

「よし、それじゃまず俺から、身長は一応173cmあるッ!!謎に剣道やらなんやら嗜んでたから身体付きもいい!!キャー!スバル様〜!カッコイイ〜!!」

 

「……ーーか、カッコイイー」

 

 

それから空が満天の星空になるまで話し合い、

 

反省文の様に真っ黒に塗りつぶされるまで、アロナと駄べり。

 

また空が明るくなるまで会話を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てな事がありまして」

 

「……その酷い隈の原因がそれ?」

 

「マジで申し訳ないと思ってる…」

 

 

最終的にスバルの性癖発表会になってしまった昨晩……いや、朝のことを思い返して語りつつ、再び集合地点に舞い戻る。

今度はちゃんとリンに外出許可を貰って、病院を出てから安心安全にヒナの護衛を付けた。

 

ーーちなみに、謹慎中だというのにこっそり風紀委員の書類仕事をしているらしく、ヒナを引っ張り出すせいで、見ず知らずの男が委員長を誑かしてるとアコからの鬼電が鳴り止まなかったのは…秘密のお話。(アロナがブロックしてる)

 

 

「俺の事は『不摂生なボーイだな……悪い子ちゃんめ』程度に思っといて」

 

 

「今の話を聞いてそのセリフを吐ける人は、頭の検査を受けに行っておいた方が良いのでは?」

 

 

「カンナの低音ボイスが無いはずの女の子部分にズキュンズキュンくるぜ………もう少しだけ罵っ…ーーウソウソウソ!!冗談!」

 

 

「はぁ…深夜テンションも大概にして貰いたい、徹夜で資料をかき集めた自分が情けなくなるので」

 

 

「ーーそうだな、それじゃ、色々教えてくれるか?」

 

 

「分かりました、まずは此方を…ーーアビドス高校の現状です」

 

 

スバルに渡される数枚の書類。そこにはアビドス高校の状況が綴られていて、アビドスが抱える問題の殆どが乗っているかのように思えた。

 

指を文章の下になぞらせ、一言一句丁寧に確認していく。見逃し1つが1つの命を落とす、だから丁寧に、丁寧に。

 

ーー丁寧に、その惨状を読み込んでしまう。

 

 

 

「……ーーこ、れが?」

 

「……ああ」

 

 

 

目を背けたくなる現実が淡々と述べられていた、それはスバルが乗り越えるべき困難が増えている訳では無い。

 

アビドスがこれまでに辿った道のりが、『目を背けたくなる現実』だったからだ。

 

 

【アビドス高校:キヴォトスの中でも最大級の歴史を誇る巨大学園 数十年前のある時期から頻発し始めた大規模な砂嵐により引き起こされた環境の激変は、自治区の砂漠化を進行させた、多額の資金を投入し事態の好転を目指すも成果は無く、それにより膨らみ続ける借金のせいで学園の経営は悪化、現在は『20億』を超える借金をカイザーコーポレーションにより課されている】

 

【以前は株式会社セイント・ネフティスの介入もあったが、大規模な鉄道開発事業は失敗に終わり撤退、その影響が自治区にトドメを刺し、元から人口減少に歯止めがかからなくなっていたが、それでも少なくとも残っていた生徒の殆どが転校・退学する、人口の流出にも歯止めがかからず地区全体が衰退、消滅寸前にまで達した】

 

【以下 現存するアビドスの生徒名簿・概要】

 

 

「……」

 

 

ペラりペラりと捲る手は止まらず。

何枚も何枚もアビドスの衰退が綴られた最後の資料……何度も、何度も何度も何回でも助けを求める声が自治区の『アビドス対策委員会』から奥空アヤネという名前と共に届いていた。

 

最後に連邦生徒会やヴァルキューレ警察に要請が届いたのは一週間前、それ以降は1日1通送られていた筈の手紙も来ていない。

 

 

【奥空アヤネ 失踪中 経過時間一週間 小鳥遊ホシノによる捜索願い届け未受理】

 

【黒見セリカ 失踪中 経過時間一週間 小鳥遊ホシノによる捜索願い届け未受理】

 

【砂狼シロコ 在学中】

 

【十六夜ノノミ 仮退学 アビドス生徒会の認証が済み次第退学】

 

 

 

「…ーー」

 

 

 

【小鳥遊ホシノ 在学中】

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