Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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誤字脱字報告いつもありがとうございますり
ご感想もたくさんいただき嬉しい限りです。
返信のペースは未定ですが、返せるときになるべく返していきます。

※最近、数は少ないですが…感想に理由の無いBADが付けられていることが多く、数が少なくとも不快な思いをする方や…感想の非表示もこの先もしかすれば有り得るかもしれないと思い、感想欄のGoodBAD欄を閉鎖しようかと検討しています。

経過観察の後、閉鎖するかどうか決定します。対策の程ありましたらご教授宜しくお願い致します…!


『ナツキ・スバルのリベンジ』

 

カーナビに表示されているアロナの顔が、初めて焦りに染まる。

 

「…!問題発生、予測により小鳥遊ホシノとアビドス砂漠を抜ける前に接触してしまいます、更に後方から先程の装甲車が接近中」

 

「はーー!?」

 

 

耳を澄ませば、後方から怒号と銃声が聞こえてきた。次に目をすぼめれば、視界の端に桃色の何かが建物を伝ってピョンピョンと飛び越えていった気がする。

 

「スバル様、このままでは予想される直線上の小鳥遊ホシノを突破できません」

 

「装甲車いけたのにアイツは駄目なの!?」

 

「一方的に此方が破壊されるかと、強度予測は特殊合金およそ3tレベル」

 

「お・か・し・い・だろ!!!」

 

 

そんなクソバカ硬い奴が先回り出来るくらい足速いのはダメだろ!!タンク系キャラは鈍足鈍重高火力が華だというのに…!3tて、人型の鉄の塊か!?いやアロナはそう言ってんのか落ち着け俺。

 

 

「オーバースペックも大概にしやがれ…!どうする、先に話し合い…は無理だな、先に撃たれて終わり…」

 

「車を捨てるか?いや本末転倒だ、突撃しても勝算0、白旗上げて降参しても目的は果たせねぇ」

 

 

20秒というものは、考え事をしているとあっという間に過ぎるもの。

どうするかと悩んでいる間にも、世界は歩みを止めない。

スバルに後退と減速の頭のネジは無い、減速した所で今の速度に先回り出来るやつを、街中で躱しながら抜け出せるとも思えない。

 

ーースバルの視線の先には、見覚えがあり過ぎる華やかな桃色の髪の毛を携えた、盾を構える少女が見えた。

 

もう、先回りが完了してしまう。

 

 

「ーーー…」

 

 

「…クソ!考えろ考えろ考えろ!避けれない逃げれない、生き残っても1分間この速度で走らなきゃカイザーの対応が間に合う…!」

 

 

小鳥遊ホシノは、死に戻りで見てきた中で…最も埒外の怪物、ヒナと張り合えるか、それ以上かの存在と真正面から戦うなんて無謀だ。

 

そう思い、顔を少しひしゃげた後…だからといって下を向く訳にはいかない、そう思い顔を上げた時。

 

 

「…スバル様」

 

 

アロナから、カーナビを通じて声が届く。

 

 

「ーー提案」

 

 

「『死に戻り』の名を、言って下さい」

 

 

「っーー?」

 

 

衝突まであと5秒。

 

 

「何を…何の意味が…!?」

 

 

4秒。

 

 

「決して小鳥遊ホシノに聞こえないよう、そして『伝える意思』を持って発言して下さい」

 

 

3秒。

 

 

「…ーー信じていいか?」

 

 

2秒。

 

 

「勿論です、スバル様」

 

 

1秒。

 

 

 

「俺はッ!!」

 

 

「■■■■してーー!!!」

 

 

 

ーー。

 

 

言葉にしようと、声を作ろうと、そう思った瞬間、それは訪れる。

 

違和感。

 

それを得てスバルは戸惑いと共に周囲を見渡した。なにかがおかしい、なにかが変わった、何かが訪れていると思い、その理由にすぐ気付く。

 

まずは、音。そして流れ出す血、最後には視界に広がる光景。

 

消失した音は、先程まで高鳴り爆音を鳴らしていた心臓の鼓動も失わせる。流れ出す血は凝固したのではなく、その動きそのものが止まっている。正面のホシノの僅かな動き。割れたフロントガラスを通ってぶつかってくる風、夜風が車内を駆け巡る騒乱の華やかさ。

 

 

その全てが、世界から完全に消え去っていた。

 

 

世界が、静止した。

 

 

錯覚じゃない。幻覚でも、死に際に見る走馬灯でも、アドレナリンが大量に出た時の覚醒状態でも無い。

どれでもない、どれでも無いのに静止していた。舌が動かない車が動かない腕が動かない目が動かない。

 

 

ーーなん、だ?

 

 

時間すら引き伸ばされる、体感する時間が永遠永久が如くに伸びていき、世界の静止を理解するには十分な猶予が与えられる。

提案した本人であるアロナも、静止の世界に囚われていた。

 

突如やってきた理解を越えた現象。神経の通わない体は欠片も動かすことができず、スバルはただ混乱を抱えたまま思考だけを走らせ続ける。

 

理解不能。理解不能、理解不能。

 

 

ーーでも、信じてる。

 

 

原因は分かっている、死に戻りを、あの名前を言おうとしたからだ。確かにこの現象は何が起きているのか訳が分からない。

でも、ナツキ・スバルは他者を信じられる。アロナが信じていいと言ったのならば、スバルはその言葉を信頼できる。

…ーーそう思考を走らせていると、その感覚の終焉は唐突にその姿を現した。

 

 

――なんだ?

 

 

疑問と疑惑に塗れながら、イメージで首を傾げる。

スバルの意識に割り込むように、その場にソレは現れた。

 

黒い点。

 

丸、球体、立体、点。1次元とも2次元とも3次元とも4次元ともとれる黒いナニカが、瞬きの自由すらないスバルに訪れる。

 

黒い、白い。暗い、明るい。怖い、優しい。暗闇、眩しい。痛い、暖かい。苦しい、幸せ。

 

相反する矛盾の感想が心になだれ込む。

ただでさえ異質なそれは、更に特異である姿を見せた。

 

黒いナニカでしか無かったモノが、さらりと形を変えたのだ。

 

何もかもが停滞した世界で、スバルが耳にしたのはーー、

 

 

 

【あいしてる】

 

 

 

魂を甘く撫でる、魔女の声。

 

黒点は人の形に。言葉を紡ぐ口は動かず、それでも脳に声が届く。

 

黒影から手が伸び、そしてスバルの背中を押した。

 

 

 

「ッ!!!」

 

 

触れられた瞬間に、内臓をシェイクされた。物理的に内臓全てがミックスされる、内臓が壊れて何故痛いのか、説明できる人間はいるだろうか。それの答えは簡単で、そんなことを考える必要性なんて無い、の一言。

スバルを襲った激痛には理由付けなど欠片も要らない。ただひたすらシンプルに、身体の内部を破壊される激痛に苦しみながらーー、

 

 

「ーーぁ」

 

 

何が起きたのか分からないまま、小鳥遊ホシノが視界から消え去っていた。

 

 

「うぎッ゛…ーーがぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ゛!゛」

 

 

「ぁ、ぅ゛……あ゛がッ…」

 

 

「…ーーアロ、ナ…!」

 

 

「ーー依然追跡されています!スバル様、自動運転に切り替えますか!」

 

 

「ぅ゛…ぁ…た゛のむ゛…!゛」

 

 

急カーブがあるならいざ知らず、このまま直線を走るだけならばアクセルをアロナに任せてもいい。

それよりも、今破壊され尽くした身体の内部の無事を確かめようと…激痛に悶え苦しみ、胸を鷲づかんで漸く気づく。

 

 

「死んで、ねぇ゛…!゛」

 

 

痛覚が麻痺しかけているというのにこの激痛、意識を引き戻さなければ生きているかどうかも分からない程に痛い。神経を熱した鉄針で引っ掻かれている様な悪夢の激痛。

 

そして何故、ホシノが今ので車を避けたのか。それすら分からない、微かに痛みに悶えながら見えたのは…玉の様な汗をかきながら飛び退くホシノの姿だった。

 

 

「げホッ…ぐ…アロナ、今のは…!」

 

「…申し訳ございません、スバル様、先程の発言の因果関係不明、私があの発言に至った理由が分かりません」

 

「………」

 

「恐らくはシッテムの箱の解析を進めた結果、内蔵された情報から逆干渉、侵食され…記憶領域の書き換えが行われています」

 

 

嫌な言葉が聞こえた、胸を掻き毟り、未だ身体を犯す痛みに耐えながら思考を回す。

アロナが自己分析出来ない事態、それも外部からではなくシッテムの箱、つまりは内部から。

 

 

「ーーシッテムの箱まで曰く付きなの??」

 

「事故物件住み込みのメインOSナツキ・スバル専用サポートAIです、いえーい」

 

「イェーイ!じゃねぇ!!!可愛いけどね!?連邦生徒会長マジでろくなもん残さねぇな!?今の所アロナ位だよ!居てくれて嬉しいの!!」

 

「ありがとうございます、ですが余り興奮なさると出血が進みます、残り52秒の逃走中に失血による気絶など起こさないようお気を付けて下さい」

 

「急に突き放すの止めよっか、アロナちゃん」

 

「こういうのが好みだと語っていらっしゃったので」

 

「その売り文句万能過ぎない?盾にされたら俺何も言えなくなっちゃうけど?」

 

 

愛しのサポートAIとイチャつくのはここら辺にして、先程のは明らかに不味かった。

 

ーー本気で、洒落にならない。

 

幻覚にしろ何にしろ、アレは何度もやっていいものじゃない、アレが来て死ぬだけで済めばいいが…身体を這いずる不快感は、魂をも削り潰してくる。

こんなものを何度も味わえば、精神が先に死んでしまう。

 

死に戻りを知らない1番初めにこの苦痛を味わっていたら……とっくの昔に、廃人に変わっていた気さえする。

 

「うぉらッーー!待てやコラー!!!」

 

砂漠に突入し、カイザーが車を走らせる為に舗装した道路を進むスバル、チリチリと砂がぶつかってくるのと同時に、車輪にも砂が混ざるせいで、そのぶつかっている音が煩い。

 

そんな騒音の中でも、銃声と怒号が後ろから聞こえてくる。バックミラーを覗き込むとーー、

 

 

「ぎぇ、まだ追ってきてんのかよアイツら…ーーおい!!ボンネット!ボンネットにヤバいやつ乗ってるって!」

 

「あん!?」

 

 

小鳥遊ホシノが、装甲車の上に乗っていた。

 

 

「ちっ…確認しようが無いな、まぁいいこのままお前とっ捕まえたら終わりの話だー!!」

 

「知らねーぞ!?お前らがどうなっても責任取らねぇからな!!」

 

「うっせー!!」

 

 

不幸続きの状況での唯一の僥倖は、小鳥遊ホシノが平地では車の速度に追いつけない事だ。建物を使っての先回りだったのだろう、ホシノにとってあの車が追いかけっこの生命線。

 

「……」

 

ジャージの内側には、カンナから貰ったガンホルダーと防弾ベストを装備してある。拳銃を引き抜いてタイヤに命中させさえすれば、この鬼ごっこは終わる。

 

「ーー当てられねぇな」

 

珍しく冷静に判断が出来た、スバルの腕前では試すだけ無駄、カーチェイスも以ての外だ、失敗して道路からはみ出れば砂にハマって終わり。

オマケに背後からはどんどん弾が飛んでくる、今は命中していないから良いものの、タイヤや後ろに積んである爆弾爆薬達に当たりでもしたら……これまた一巻の終わり。

 

 

「…直線上の鬼ごっこでの勝敗は…子供の頃から決まってる」

 

「アロナ、スピード上げれるか?」

 

「可能、しかし基地への突入時、スバル様の離脱が更に困難になります」

 

「やってくれ、リスクだのなんだの今更過ぎるし」

 

「了解しました…ーーしっかりと座席に掴まっていてください」

 

「分かっ…おぶっ!?」

 

 

アロナの自動運転により、装甲車に乗り上げた以上のスピードが発揮される。乗用車である筈の車体が悲鳴を上げ、自身の加速でバラバラに分解しそうになる程に。

 

「…!」

 

「ちょっと借りるよ」

 

「あ?ぉわッ!何だおまーープゲラッ!?」

 

「リ、リーダー!クソッ!何だお前ーー」

 

「全員邪魔」

 

上部に乗っていたホシノが、車のサイドウィンドウを素手で突き破る。運転席に乗っていた生徒を砂漠へとぶん投げ、中の全員を一瞬で気絶させる。

すぐさまハンドルを握ると、アクセルをべた踏み。

 

「到着まであと26秒」

 

残り時間を聞いて、スバルはカンナに提案された次の手を思い返す。スバルの功績を、その悪逆な所業を世に知らしめる次善の策。

 

 

「……配信、開始…!」

 

「了解いたしました」

 

 

公安局の市内放送、スマホのSNSという場への映像投稿、連邦生徒会への画像付きメール。あらゆる手を使って『ナツキ・スバル』という存在をキヴォトスに、カイザーコーポレーションに知らしめる!

 

スバルの十八番、ハッタリとやせ我慢の二重コンボだ。

 

 

「あーあーマイクテス…ーーしてる時間は無いから夜遅くにどうもー!!ナツキ・スバルの深夜ラジオの時間でーすッ!!!」

 

「なんと!今話題のテロ組織にぃぃーー!?」

 

 

ーー尻に浮遊感。そして背骨をたたく衝撃。

 

後方からの衝撃はこの状況において起こせる相手は1人しかいない。

 

 

「い、いま話題のテロ組織の、ーー基地を1つぶっ潰してやる!なぁーにが『ナツキ・スバルを最終目標に』だよ!!連邦生徒会長の後釜舐めてんじゃねぇ!」

 

「前言ったよな!?ぐぉえ…ーーお前らの敵は俺だってッ!」

 

勇ましいセリフとは裏腹に、この高速移動の中衝突された反動で、車体がぶらついてしまい吐き気を催してしまう。

だがここで決め切らなければ、スバルのキヴォトスでのあだ名はゲロ魔人だ。

 

 

「俺以外に目移りしてんじゃねぇ!!アビドス潰す前にお前ら全員、1人残らずキヴォトスから叩き出してやんよ!」

 

 

「到着8秒前です、銃弾にご注意を」

 

 

「これも!!前言ったことだけど!!」

 

 

発狂したかのような叫び声が前方から聞こえてきた後に、肩にじんわりとした熱さと、痛みが走った。

 

次いで弾丸が頬を掠め、防弾チョッキ越しに重い重い衝撃がやってくる。全部が全部、表情を大きくゆがめ、盛大な叫び声を無様に上げたいくらいのもの。

 

防衛設備は車をボロボロにする、混乱する兵士はナツキ・スバルの身体に深い傷を残す。1発でも命中すれば大爆発を起こす後部座席の爆弾達に心を病む。

 

ーーそれを、おくびにも出さない。

 

 

 

 

「『俺は銃を向け合わなくても話し合ってやる』」

 

 

「先に破ったのは、お前らだ」

 

 

 

 

「ーー配信終了!!!」

 

 

 

同時に、右側のヒンジドアを蹴破ってーー、

 

 

「ーーぉ」

 

 

時に。

ジェットコースターの平均速度は時速約102㎞だという。

最高速度は120、130そこらだ、過激な奴でなければその程度、生身でその速度を味わった時の恐怖心を、幼いころのスバル記憶が覚えている。

 

ーー過激な奴、そう、過激な奴も乗った覚えがある、名前は出てこないけど…強がりで乗った後はヘーキヘーキと鼻を鳴らしたスバルは、二度と乗らないと誓っていた。

 

特に意味のない思考。今の命を懸けている状況のスバルと、遊園地でキャッキャしてるスバルとは何ら関係なくてーー、

 

 

「死ーー」

 

 

そう、自分より圧倒的に硬い地面に時速160kmを超えて衝突するなんて、それこそジェットコースターから放り出された時位で。

 

 

 

 

「ナツキ・スバル」

 

 

そして、来るべき衝撃は来ず、体に感じる感触は柔らかい手。

 

 

「……ぅ」

 

 

「……ーー?」

 

 

無傷?

 

 

「お前は…」

 

 

「お前は、一体何だ」

 

 

「答えろッーー!」

 

 

気がつけば、小鳥遊ホシノに抱き抱えられていた。次に訪れるのは狙い通りであって、予想外の大爆発、その衝撃からも守られる。

鼓膜が破れそうな爆音の中、かすかにホシノの問いが耳に届いた。

 

そして向けられるのは何百回と見た、ショットガンの銃口。

 

怖い、怖い怖くて怖くて仕方がない、死ぬんだ、トリガーが引かれたら、スバルは、

 

 

 

「俺は…」

 

 

「俺は、俺だよホシノ」

 

 

「ぁーー?」

 

 

「見た通りのナツキ・スバル」

 

 

「銃を向けられたら怖くて泣き叫びそうで、身の丈に合わない無茶ばっかりして」

 

 

「痛いのも我慢できない、碌に覚悟もない、特別な何かもない」

 

 

「誰かの手を、借りねぇと…1人で立ち上がれもしない」

 

 

「……死にたいの?」

 

 

「ーー死にたくねぇ」

 

 

「死にたくねぇ!!俺は死にたくない!俺は!死にたく!!無い!!!」

 

 

「助けて…欲しい…!」

 

 

「まだ、俺のせいで泣いてるやつが…いる、からぁ…」

 

 

 

顔の穴という穴から液体を流し、スバルは叫ぶ。

 

だから、死ぬ訳にはいかないと。

 

 

 

 

「ーー」

 

 

 

『ホシノちゃん』

 

『疑念、不信、暴力、嘘…』

 

『そういうものを当たり前だと思うようになったら』

 

『いつか、自分を見失っちゃうよ』

 

『だからね、ホシノちゃんーー』

 

 

「ーーーー」

 

 

「ーー…」

 

 

「……」

 

 

ーースバルに向けられた銃口が、ゆっくりと降ろされる。

 

 

「あ…ほ、ほし…ーー」

 

 

そして、振りかぶられスバルの頭へ。

 

的確に意識を奪う打撃は、適度に緩められた命を失わないモノ。

 

 

 

 

「まだ、お前には聞くことがある」

 

 

 

 

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