Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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二章はこの一週間をグルグルするので漸く、チェックポイントに立てました。


『何のために』

「……ーー」

 

 

目が、覚める。

 

 

「……」

 

 

ーー違和感。

 

 

「………」

 

 

違和感。

 

 

「……」

 

 

違和感。

 

 

「………ーー!?」

 

 

目の前が見えない。手が動かない、足が動かない、口に何かを噛まされて言葉を話せない。

死んだ筈だ、スバルは確かに胸を撃ち抜かれて死んだ、死に戻りは発動したのだ。

 

なのに、いつもの天井が見えない。薬品の匂いも点滴も、柔らかい枕も何もかも、いつもの死に戻りとは異なる状況。

 

ーーまさか、と今の状態を考察して、理解する。

 

拘束されていた。しかも先程と同じ様に、目隠しと猿轡、手首を拘束する紐や身体に残った傷までも同じ。

怪我は腹をぶち抜いた弾痕だけのはずが、スバルの身体には抉れた肩の傷や、目隠しの布が擦れてチリチリと痛む顔の火傷跡が残っている。

 

ーーまさか、と今の考察から、結果を導き出す。

 

 

「ーー!!!」

 

 

死に戻りの、復帰点が変わっているーー?

 

セーブポイントとでも評そうか、スバルは一度コレを経験していた。

一度目のセーブポイントはコンビニの屋上、それからあの激動の一日を乗り越えて、流されるままアビドスに向かい死亡。

その後、スバルは『病室』へと、死に戻った。

 

油断していた失念していた。死に戻りは確かにスバルに備わった能力であるが、別にスバルが手網を握れている訳では無いのだと。

 

ーーまさか、と導き出した結果から、スバルはある感情を抱いた。

 

 

「……」

 

 

恐怖。

 

それは、恐怖の感情。

死に戻りによって与えられる遡行、それはスバルが取り零す全てを掬い(救い)あげる埒外の権能であり、無力で子供な、責任を果たせないスバルが選択肢を誤った時にもう一度選択をする機会を得れるもの。

 

だがこの権能にも唯一の弱点がある、いや…弱点と言うよりは、スバルがこの権能を一切制御出来ない事にも由来しているのだが、

 

ーー死に戻りは、セーブポイントより前に戻れない。

 

セーブポイントが更新されてしまえば、それより前には死に戻り出来ない。病室に死に戻った時も、スバルの心の中には、あの選択に辿り着く中で失われた誰かの幸せを取り零したのではないか、という恐怖であった。

 

その恐怖が、再びナツキ・スバルを襲う。

 

 

「おはよう」

 

 

「よく、眠れたかな」

 

 

不味い。不味い不味い不味い不味いーー、

 

 

「今から私が、君に、質問する、それ以外は求めてないから」

 

 

「口は外してあげるよ」

 

 

「っ」

 

 

過呼吸気味になる、この詰みに近い状況に、ではなく。

 

『ここまでの道のりに、間違いはなかったのか』

 

そんな自責が、息をさせない。

 

ヒナと会話していた時から、世界を放棄して死に戻る自分の権能とはゆっくりとだが折り合いをつけていこうと思っていた。

死に戻るなら、何一つ取りこぼさない。自分のせいで不幸になる人を、自分のせいで見捨てられていく人をスバルが責任を以て救い上げる。

 

スバルは物事の行く先を決めれる絶対者でも、善悪を処断できる裁定者でも、ましてや英雄でもない。

傷ついて、転げまわって、醜く誰かの手をかりて、最善でなくても次善を、最高でなくても誰にも知られず泣いている奴がいない道をーー、

 

 

「返事、できるかな?」

 

 

「はっ、はっ、はっ、はっーー!!」

 

 

「うーん、予想と全く違う…ーー私が死を覚悟させられたのは、君が初めてだったんだけど」

 

 

「な、なに、死ーー?」

 

 

「おじさんね、こう見えてもーーあ、目隠ししてるから分かんないか、君よりは小さいけど、強い方だからさ」

 

 

「君の何に怖がって逃げちゃったのか、今のところわかんないな~」

 

 

セーブポイント更新?何故?いや不思議じゃない、スバルが手綱を握れているわけじゃないんだから当たり前でこういう状況も予測できたはずだ。でも受け入れられないどうすればいい何か間違っていなかったか何が原因だ死に戻りの名前を言ったからかアロナはどこに携帯が無いこのままじゃまたカイザーが来る猶予は何分だ2分か3分かホシノを説得しろせめてここから全部救えどうやってどうする死に戻りを信用していいのかナツキスバルは今から何をする何をしたらーー、

 

 

「さて」

 

 

「君は、ヴァルキューレ警察学校に関わりがある?」

 

 

「ぁ……あ、ある…」

 

 

「君は、カイザーコーポレーションと戦争を引き起こしたナツキ・スバルかな」

 

 

「……」

 

 

身体を軋ませながら、首を縦に振る。

 

 

「君が、ここに来た理由は?」

 

 

「ーー…ホシノに、助けて、欲しくて…俺だけじゃ…何も、できないから」

 

 

「違うでしょ、カイザーPMCを潰すために、私を利用したいんだよね?」

 

 

「…」

 

 

「違う」

 

 

「ーー()()()()()、理由は言える?」

 

 

「そ、れは…」

 

 

言えない、今のためらいはスバルの中で明確に死に戻りというものに対して答えを見つけられていないから、あらゆる選択肢を先取りして、今までヒナや便利屋を『頼って』いるのか『利用している』のか分からないから、

 

ーー後回しにしていた答えが、掘り出されていく。

 

 

そして、足音が近づくと、乱暴に目隠しを取られた。

 

 

「ーー目を見て」

 

 

「…」

 

 

「……うん、やっぱり」

 

 

「こっちは間違いなかった、やっぱり君はカイザーより恐ろしい人間だよ、カイザーが命を狙っている理由もわかった」

 

 

「ーーー」

 

 

「純粋な善人の皮を被りながら、悪意もなく人を利用しようとする」

 

 

「臆病者で弱者を装いながら、根底にあるのは『自分の勝利』」

 

 

「何より、今君は何に怯えているのかな、目の前の私じゃなく『何』を見てるーー?」

 

 

そんなつもりじゃない、そんな存在じゃない、俺はただの引きこもりの、ニートの、元高校生で…。

 

 

「私はもう二度と騙されない、って誓ってたんだよ?悪い大人に騙され続けて、こうなっちゃった訳だし」

 

 

「ーーなのに、私は君を助けたいってあの瞬間思った、カイザーの基地に爆弾を突っ込ませる危険人物で、その状況を使ってアビドスからカイザーを撤退させて…ヘルメット団もアビドスから消えた、君のような存在と敵対したくないから」

 

 

「最後に、カイザーへ『殺害』の手段を選ばさせて」

 

 

ーー不味い。

 

 

「君は、…いや、お前は、何の目的でアビドスに来た」

 

 

ーー不味い。

 

 

「答えて」

 

 

ーー不味い。

 

 

「ナツキ・スバル」

 

 

ーー返事を、しなくては。過去を思い出せ。

 

正答が、ある筈だ。さっきみたいに啖呵を切れ。正解がある、ホシノはまだスバルという存在の矛盾に気が付いていない、だから。

 

 

「おれ、は」

 

 

瞬間ーー。

 

スバルの全身を爆炎が包み込む。

 

 

「が…ぁッ!?」

 

 

「なーーカイザー…!?そっか君を…!」

 

 

「……なるほど、今は君を死なさない方がいいみたいだね」

 

 

想定外だ。

スバルの予測していた時間よりも1分程度早い。

死に戻りは絶対の権能、襲撃時間が変わるはずが無いのに、今また別の動きをしたという事は今の一瞬で、状況が変わる何かがあったという事。

 

そして違ったのは会話の内容だけ。

 

 

「く…そったれ…」

 

 

今回は拘束が外れない、幸運の女神はいつまでもスバルに微笑んでくれない。

 

 

「小鳥遊ホシノ、ナツキ・スバルを寄こせ、それで契約条件を果たせる様にしてやる」

 

 

「……ここに襲いに来る意味は無いでしょ」

 

 

「いやーー早くソイツには死んでもらわねばならん、カイザープレジデントから即刻排除の命令が出た」

 

 

「ーー約束、果たす気が無くなったかな?」

 

 

「ちっ」

 

 

 

ホシノが部屋からスバルを抱えて飛び出した。片手でスバルの背中を掴み、片手でシールドを使いスバルを守る。

 

襲撃してきたのはカイザーの戦闘ヘリ二機とそれに搭乗している8名の機械兵士、生身の人間相手には十分すぎる戦力、いや、過剰ともいえる戦力だ。

銃弾の嵐が外に飛び出したホシノを捉えるが、全てはじかれたうえで、カイザー兵の視野からホシノの姿が掻き消える、ただその影を残すのみ。

 

一瞬、何か軽い音をスピーカーが拾ったかと思うとーー、

 

 

「なんっーー」

 

 

ーーヘリが一機、墜落する。

 

 

「……」

 

 

「化け物め、プランBだ、サーモバリック弾使用許可、校舎ごと吹き飛ばせ」

 

 

《了解》

 

 

ヘリのもう一機がその場を離れる、上空から熱源探知し建物の中を疾走するホシノをサーモグラフィでとらえながら指示を出し続け、打ち出された発射物の到着を待つ。

 

一方ホシノに振り回され続けるスバルも無事ではなかった。

 

 

「オごッーー!?」

 

 

「少しの間我慢してて」

 

 

どういう軌道で動いているのか分からない、胃の中身が上に振られたかと思えば右に振られ、視界はジェットコースターの何倍も酷い。到底人間が出せる速度じゃない。

しかも今、ただの投石でヘリを墜落させたーー?

 

 

「……ーーあれは…まさか、校舎ごと…!!」

 

 

そして、遠い彼方の空にミサイルのようなものが目に入ったホシノの動きが、さらに加速する。

天井と両脇の壁、地面の四方向を足場とし立体的な軌道で部屋に突入していたカイザー兵三名を鎮圧。

 

指揮官らしき男をわざと残し、残すはヘリを操作している兵のみ。

 

 

「ナツキ・スバルは私が預かっておくよ、君達は彼が生き続けている限り安心できないんでしょ」

 

 

「……カイザーコーポレーションすべてを敵に回して勝利を掴めるとでも?」

 

 

「勝つのは私じゃない、この子だ」

 

 

「ーーその通りだな、貴様は既に負け犬だ、これ以上堕ちるモノもなかったか」

 

 

「……」

 

 

「それに……やはりこの程度の戦力では敵わぬな、後学の為にも貴様がこの後の爆撃にどう対応するのか見させてもらおう、この体は破壊して構わん」

 

 

「いいよ、ちゃんと持ち帰って理事に伝えておいてね」

 

 

指揮官との会話を終え、その頭部を打ち抜いて破壊する。

 

屋上へ駆けあがると、スバルをいったんその場において、フェンスを足掛かりに跳躍する。見た目からはかけ離れた筋力と膂力によってフェンスは破壊され、その推進力は直にホシノへと。……その鳥の羽のような軽やかさと描く軌道の鮮やかさを見るに、逆に見た目通りといったところか。

 

ーー小鳥遊ホシノという存在の躍動をスバルは目にする。

 

ヒナとはまた別種の、あらゆる生物とはかけ離れた境地に存在する理外の超越者。

砂漠の中の砂金の中から、更に一握りにも満たない極上の一粒、それが空崎ヒナと小鳥遊ホシノという存在。

 

 

「ふっーー」

 

 

ーー直接、ヘリに手を掛けた。

 

ぶら下がった状態から、操縦幹を握るカイザー兵の眼前に更に跳躍。

高度はホシノへのロックオンの為に下げてたとはいえ、生身の身体で浮遊するヘリに追いつくなどと狂気の沙汰だ。

 

 

「馬鹿な!?」

 

 

「これで、最後」

 

 

ホシノの散弾がカイザー兵を撃ちぬいた。コントロールを失ったヘリを素手で殴り飛ばすと、校舎への直撃するはずのルートを強引にずらしーー、

 

 

ヘリは、原形をとどめないまま住宅街へと墜落していった。

 

 

「ーーあれ、が」

 

 

あれが、小鳥遊ホシノ。

スバルが助力するまでもなく、あらゆる戦略と策力、兵力差を己という理不尽で解決する最強の札。

 

ヘリから飛びのき、ホシノがスバルの前に着地する。

 

 

「ふぅ…」

 

 

「っ、ホシノ!まだアレが…!」

 

 

しかしカイザー側からの攻撃は終了していない、スバルは屋上に連れてこられた事で先ほどの『爆撃』の単語の正体を目にした。それはホシノはその超人的な視力で先に気づいていたミサイルだ、現代人なら歴史で、第二次世界大戦を生き延びた人間はその目で見た事があるであろう小型ミサイル。

 

基本的に建物や塹壕、戦車にこもる人間をあぶりだす広範囲対物兵器、間違えても一個人を目標に発射していい代物ではない。

 

ーーつまるところ小鳥遊ホシノは、個人で戦術兵器以上の評価をカイザーから得ているという事。

 

 

カチャン、と金具のような何かが地面に落ちた音を、スバルの耳が拾い上げる。

 

 

その音の出どころは、スバルの真横から。

 

 

「手榴弾ーー?」

 

 

「離れてて」

 

 

まさか、と思いついた方法は、とても正気ではない代物。

 

 

「おいおいおい…!!」

 

 

だが、そのまさかだ。

 

急いで貯水タンクの後ろへと身を隠す。ホシノが身に着けた装備品を全て取り外していき、手榴弾を携帯していた防弾ベストにピンを抜いた手榴弾を挟み込む。

 

スバルが予測するに、男の子なら誰もが一度、アクション映画モノを見れば想像するド派手アクション。

ーー爆発の衝撃による跳躍だ。

 

 

微塵の焦りもなく、起爆時間を心の中で口ずさむホシノは、停滞していた盾を構えつつ助走をする。

 

 

 

「ここら辺、かな」

 

 

 

経験、実践によって積み上げられた必然の奇跡。

最強の存在が、誰よりも高純度な訓練で磨き上げた技量を意のままに操る、それは当の本人からすれば当たり前の事でーー。

 

凡百の人間からすれば、世界を、運命を味方につけた怪物だと思えてしまう事だろう。

 

アビドスの空を、小鳥遊ホシノが疾走する。

 

 

 

「落ちろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

スバルの頭上にコテン、と何かの鉄片が衝突した。

それは今目の前で繰り広げられたあり得ない現象の結果であり、おとぎ話の中の存在が飛び出してきた様なものであり。

 

 

「さて」

 

 

スバルの、絶望の福音が鳴らされた瞬間だ。

 

 

「アヤネちゃんとセリカちゃんの為にも、君を契約相手に引き渡さないといけない」

 

 

「…向こうは、守る気ねぇって言ってただろ」

 

 

「私と約束してる奴は、契約って面だと破ることは無いからね、ーー大人として破れないって言った方が正しいかもしれないけど」

 

 

「だから君は私が守る、カイザーと契約主は一枚岩じゃない、ただの取引相手だから…アイツは、カイザーに引き渡すことよりも君を観察する方に傾く」

 

 

「生贄になれってか」

 

 

「……否定は、できないかな」

 

 

「その後はどうする、ホシノもアビドス高校の奴も望んでない事を突き通して、お前はーー」

 

 

「私も、ここに残る気は無いよ」

 

 

「ーー…言うと思ったぜ」

 

 

 

抗う力は、無い。

このままスバルは抵抗虚しくホシノに引きずられて…バッドエンドに一直線。

不可逆の状態で死に戻りのセーブポイントが更新されればどうなる?死に戻りは、スバルが手繰れる釈迦の蜘蛛の糸ではなくなっているのだ。

 

一度、また一度無駄にした、また死んでしまった。177度目の死に戻り。

ヒナに背中を押してもらったスバルも、カンナが託したスバルも、あの世界では死んで、何の意味もない肉塊に変わってしまって。

 

スバルはーー…スバルは、無視するしかないのだろうか。生まれる犠牲を、無駄にしていく全てを。

 

もしくは、この事実を誰かに伝えれば、スバルは解放されるのか。

 

 

「ーー」

 

 

ーー…自己犠牲に視野狭窄、俺が言えたことじゃないけど。

 

 

泣きたいって思ってること隠して頑張ってる奴の目の前で、

 

 

…弱音吐くわけには、いかねぇよ。

 

 

まだ、立ち上がる選択肢があるんだろう?ナツキ・スバル。

 

 

「ホシノ」

 

 

「なに」

 

 

「ホシノと俺って、結構似てね?」

 

 

「ーー?」

 

 

「何言って…君のような怪物と同類にされたくないけど」

 

 

「怪物怪物って、別に俺はただの高校生の、親泣かせ引きこもりクソニートだ、で…ホシノはちゃんと学校に行って、後輩守ろうとしてて、日夜誠心誠意頑張ってる華の高校生、でも似てる、なんでだと思う」

 

 

「………ーー」

 

 

「俺もお前も理想も夢も、抱くだけが一丁前で、叶わねぇのに手を伸ばしてるとこ、そっくりだろ」

 

 

「っ…ーーお前…」

 

 

()()()()()()()

 

 

「全員幸せになる未来なんて無いって、蹲って」

 

 

ホシノがしてきた、想像もつかない苦労を考えると、こんな煽り文句を一言でも言いたくねぇけど。

今は一旦、頭冷やせ。

 

 

「後輩より、その悪い大人って奴を信用してどうすんだ」

 

 

「ーー何も、何も知らない君が…ーー」

 

 

「少なくとも今は部外者じゃねぇ、生贄つったろ、なら俺もアビドスの一員ってことでいいよな!」

 

 

「そんな暴論が通る…ーー通る、か、私の身勝手に、君を巻き込んでるし」

 

 

「ーー質問の答えを返すぜ、ホシノ」

 

 

「……」

 

 

「ここに…」

 

 

「来た、理由はーー」

 

 

ーーホシノを納得させる、説得する。

 

そうじゃないだろ?

 

ナツキ・スバルは、誰かのために必死に頑張るのは、自分が見捨てられたくないから。

異世界に来てまで、愚かで無力で誰からも好かれない元のスバルに戻りたくないから。

失望されたくないから、何百回無駄に死に戻った。

最初から最後まで、スバルは不幸になる誰かを救うために奔走しているのに、『自分の勝利』がいつまでも根底にあるというのなら。

 

答えは、今まで得てきたものの中にはない。過去に置いていこうとして、手元に残し続けているもの。

 

決して、他人から見て納得できるものでも、許容できるものでもない。

 

ナツキ・スバルのエゴを押し通せ。

 

 

 

「イラついてるから、だと思う」

 

 

「……は?」

 

 

「俺は、俺の『責任』を忘れようとして、理由もなく背負わされた責任にイラついて、投げ捨てたくてもできないことにまたイラついて」

 

 

「投げ捨てて、不幸になる奴が増えるのにもイラついてる、自分だけじゃなくて、他の奴らのも」

 

 

「…それを解消するために、ここに?」

 

 

「ああ、そうかもしれねぇ」

 

 

「ホシノを、アビドスを救いたい、それは俺がイライラしてるからだったんだよ、俺と同じ年齢の奴らが身の丈以上に責任を背負ってるのもみてられねぇんだ」

 

 

「だから俺は俺の『責任』を全うする所から始めたくて、同じように責任を負ってる奴を応援したいってのはおかしいか?」

 

 

「理不尽に背負わされるなら、身勝手に分け合っても良いと思ってる」

 

 

「それを許さないこの世界にイラついてるから、運命様上等だって吠えて、全部救って全部に勝つ」

 

 

「それも全部、イライラ(後悔)を無くすため」

 

 

「エゴって奴だよ、ホシノ、俺は俺の為に、俺が泣きたくないからここに来た」

 

 

「それに、なんと今なら先着一名様で俺の手を握ってくれる奴を探してる、俺と一緒についてきてくれて、俺の理想を叶えてくれるやつ」

 

 

「……」

 

 

「……ーー君の理想は?」

 

 

「全員、笑顔で飯食う事」

 

 

「……は」

 

 

その時、ホシノが何を想起したのかスバルには分からない。

 

それでも、かすかに鉄仮面だった顔が揺れ動いた気がしてーー、

 

 

 

「理由が、それ?」

 

 

「ああ」

 

 

「おじさんには.…ちょっとわからないかな、狂ってるよ、ナツキ・スバル」

 

 

「年頃の男の子は、そういう言葉大好き」

 

 

「……」

 

 

「………ーー前なら」

 

 

「……」

 

 

「こう、なる前なら」

 

 

「掴んでみてもよかったかも」

 

 

諦めと達観のため息の後、ショットガンの銃底が振りかぶられる。

 

ーーまだ遅くない、そう伝えきる前に、気絶させられる。そう察したスバルは、それでも尚ホシノから目をそらさなかった。

 

視界が、暗闇に覆いつくされる。

 

 

 

 

「ーー…」

 

 

「どういうつもりかな」

 

 

 

される、前に。

 

 

 

「ん、こっちのセリフ」

 

 

「先着一名、ホシノ先輩が握らないなら」

 

 

「私が貰う」

 

 

 

如来の蜘蛛の糸が、ナツキ・スバルの手元に降りてきた。

 

 

 

「シロコちゃん、退いて」

 

 

「ん、勝負しよ、ホシノ先輩」

 

 

 





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