<side : H>
チグハグが、頭の中に残ってて。
チグハグが、胸の中に残ってて。
チグハグが、心の中に残ってて。
ずっと、ずっと、ずっと。
永遠に、自分を呪う声が止まないのです。
永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に、永遠に。
終わらないチグハグが、固まらないチグハグが、壊れたものが、今でもチグハグのままで──。
■
『やったー!新しい後輩だよ!ホシノちゃんの、後輩〜!』
「そうですね、■■」
『シロコちゃんに、ノノミちゃん!シロコちゃんはあんなにトゲトゲしてたのに、とっても元気な子になって……ノノミちゃんも、本当に良い後輩だね〜』
「まぁ、シロコちゃんはお転婆が過ぎますけど」
『それを咎めるのも、先輩の仕事だよ!ホシノちゃんに伝えたみたいに、シロコちゃんにも……──伝わって、くれるかなぁ…』
「私が頑張ります、■■が教えてくれた事、ちゃんと受け継ぎますよ」
チグハグ、チグハグ、見るべきものが見えなくなって。
『え!さ、最年長!?ひぃん…あんなに可愛かったホシノちゃんも、いつの間にか3年生かぁ…』
「そうなんだよ〜、■■■■、おじさんにも後輩も四人出来たし、新しく委員会も作っちゃった」
『えへへ…ホシノちゃんの事、おじさんみたいで可愛いって言っちゃった事、気にしてたんだね…』
「しょげないでも大丈夫だよ〜、■■、おじさん嬉しかったんだからさー」
チグハグ、チグハグ、聞くべきことが聞こえなくなって。
「借金返済、これからも頑張ります、■■」
『──やっぱり、私はそっちのホシノちゃんの方が好き、おじさんなホシノちゃんも好きだけど、後輩にもカッコイイ所見せてあげてね』
「…分かってます、■■■■」
チグハグ、チグハグ、守るべきものを守れなくなっていく。
見るべき未来が、聞くべき想いが、伝えるべき言葉が、守るべきものが、チグハグな私はどうしたらいいのか分からないので。
分からないまま、見えないまま、聞かないまま、伝わらないまま、チグハグなままの私で、守るべきものを守るのです。
■
『──セリカちゃんが?』
少女の問いに、奥空アヤネは小さく息をのんだ。
何の変哲もない、とりとめのない問い。
戸惑いを含んだその問いは、後輩が連れ去られたという事実に対しては至極当たり前のモノで、アヤネ自身も急を要する問題だった。
だから返事をしようとする、ほんの少しの時間で済む、肯定の返事。
『────』
しかし、アヤネの喉は、彼女に声を返せなかった。
彼女から発せられる重圧が、アヤネの喉を締め上げていた。
決して人に向けていいものでは無い、彼女の中にあるヘドロの様な感情から漏れだして、それを感じとってしまう。
『……ごめん、すぐに向かうね、周りも探してくるよ〜、大丈夫!セリカちゃんなら不良くらいやっつけれると思うし!』
『っ……ホシノ、先輩…』
アヤネの固まった表情を見て、少女は慌てて顔を緩ませる。
チグハグなものを隠して、チグハグであることが幸せだと思って、チグハグだという事が自分だと信じて。
少女は、駆け出していく。
■
『……黒服』
『ククッ、お待ちしてました、暁のホルス』
悪い大人に騙される訳にはいかなかった。
二度と同じ誤ちを起こさない為に、二度と大切なものが傷つけられないように、二度と私の手から失われる事が無いように。
『──ナツキ・スバル?』
『ええ、彼の身柄を頂きたい』
『…お前が欲しがるような奴なんだ、ナツキ・スバルって』
『勿論です、彼はキヴォトス最大の神秘になりうる存在ですので』
『またそれか』
私のせいだ。
また、私のせいで誰かが傷つく。
手を出さないと言った筈の男の言葉は嘘で、帰ってみると大切なものが2つ失われていて、漸く気づく。
『──』
『ごめん、ホシノ先輩……二人で風にあたってくるって、外に出てから…』
『ううん、シロコちゃんのせいじゃない』
また、私のせいか。また、騙されたのか。
■■から貰ったものを後輩に渡したかった、■■から受けた優しさを後輩に伝えたかった、■■から信じてもらった私の手でアビドスを救いたかった、■■から命を奪って生きてる私を誰かに見て欲しかった。
■■が目指したものを作り上げたかった、■■が語った夢を叶えたかった、■■が今のアビドスを見てあどけなく喜んでくれるようにしたかった、■■が生きていたらまた同じようにアビドスを取り戻したかった。
■■になりたかった、■■のように優しくなりたかった、■■みたいに後輩へ教えられたらよかった。
■■、■輩に、■メ■輩、■メ先輩に、会いたいです。
『───』
チグハグ、チグハグ、守るために
チグハグ、チグハグ、バレないように。
チグハグ、チグハグ、夢を固めて。
チグハグな自分を、チグハグな夢を、チグハグな未来を、完成へと近付けていく。
『ユメ先輩』
声にもならない、呻き声をあげて。
『──もう、誰も、二度と』
『
チグハグ、チグハグ、ズレていくのです。
■
『俺は、俺だよホシノ』
『見た通りのナツキ・スバル』
ナツキ・スバルという存在に、出会ってしまった。
『銃を向けられたら怖くて泣き叫びそうで、身の丈に合わない無茶ばっかりして』
『痛いのも我慢できない、碌に覚悟もない、特別な何かもない」』
『誰かの手を、借りねぇと…1人で立ち上がれもしない』
『──死にたくねぇ』
『死にたくねぇ!!俺は死にたくない!俺は!死にたく!!無い!!!』
『助けて…欲しい…!』
ひたむきに、前を走ろうとする背中が、ユメ先輩に似ていて。
『まだ、俺のせいで泣いてるやつが…いる、からぁ…』
そうやって、泣いてる姿も何処か重なってて。
『ホシノちゃん』
私は、彼の手を取ってしまった。
柔らかい肌、直ぐに傷つく身体、彼はただの人間だ、撃てば殺せる。
──爆弾を積んだ車を走らせた、殺さないと。
──謎の悪寒は、私に死をイメージさせた、殺さないと。
──特攻後の計画的な配信、恐ろしい、殺さないと。
──私を、アビドスを利用しようとしている、殺さないと。
騙されない為に、アビドスを奪われない為に、後輩を守る為に、とっくに決めた覚悟を振りかざして。
振り、かざして。
『ホシノちゃん』
そうできなかった自分は、どこまでもチグハグだった。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
チグハグ、チグハグ、守るために
チグハグ、チグハグ、バレないように。
チグハグ、チグハグ、夢を固めて。
チグハグな自分を、チグハグな夢を、チグハグな未来を、完成へと近付けていく。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
騙されない。
騙されるものか、もう二度と信じないと誓ったのだから。
「俺もお前も理想も夢も、抱くだけが一丁前で、叶わねぇのに手を伸ばしてるとこ、そっくりだろ」
うるさい。
「諦めてるからだ」
「全員幸せになる未来なんて無いって、蹲って」
「後輩より、その悪い大人って奴を信用してどうすんだ」
うるさい、黙ってて。分かってる、分かってるよ。
「……ーー君の理想は?」
「全員、笑顔で飯食う事」
今更過ぎる、なんで、今になって。
なんでこんなにまで、『なっちゃって』から、来るんだ。
「理由が、それ?」
「ああ」
もっと早く助けてほしかった。もっと、もっと早く、ユメ先輩が生きてるときに、ユメ先輩と一緒に生きていた時に。
どうして、どうして、そう言ってくれる存在が、こんな事になる前に、来てくれなかったの?
どうして、今になってチグハグを暴きにきたの?
「こう、なる前なら」
「掴んでみてもよかったかも」
私のせいでユメ先輩は死んだ。
私がユメ先輩を殺した。
私がアビドスを終わらせた。
──私がユメ先輩と出会ったから。
──私がユメ先輩に声をかけたから。
──私がこの世界に生まれてきたから。
全部、私のせいだった。
私のせいで後輩が不幸になった。
私のせいでセリカちゃんは苦しんだ。
私のせいで二人が連れ去られた。
私が後輩を苦しめてる。
全部、私のせいだった。
チグハグな私が、チグハグなまま、チグハグに生きてきたから。
こうなってしまう、その前に、誰か、
──私を、消して欲しかった。
──────
『ホシノの態度が柔らかくて感動してんだよ、初対面思い返してただけ』
『それは君が爆弾詰めた車で爆走してたからだけど』
騙されるな。
──────
『大ありだぜ、逆にホシノは俺が『あーはいはい大体知ってるから任せて引っ込んどけ』とか言ったら撃つだろ』
『
──────
『ホシノ……達の、責任でも、ねぇだろ…』
『なんで、なんでここまで、こんな目に合わなくちゃなんねぇんだ…!!』
『理不尽を当たり前だって、受け入れ続けちゃうとさ、心が麻痺して、壊死していくんだ』
『だから、うん、そうだね…』
『
騙されない、騙されるか、信じない、信じてなるものか。
最後の最後、尻尾を出すその時まで。
『ホシノはアビドスの問題はアビドスのせいだっつってたけど……ーー俺は、それだけが原因とも思わねぇ』
『何処かで、誰かが、どんな些細な事でも……』
『手を…、差し伸べれた瞬間があると思う』
『
──もう、いい。
『目の前で子供が転んだら、手を差し伸べるだろ?目の前で困ってる人がいたら、少しは助けようかなって思う筈だろ?』
──もういい、分かったから。
『──だからさ、ホシノ、見放されるのはこれで終わり』
『俺が…助けてもいいか?』
──もう、疑わせないでよ。
『
『
『──そうだ、でも、ちょっと違う』
『俺とホシノと、シロコも、俺を助けてくれる全員で、だよ』
──もう、疑うのも疲れたよ。
『
『
『ああ──、勿論』
『ホシノが助けて欲しいってなら、俺は神にだって噛み付いてやる』
──ああ、早くこの地獄が、終わりますように。
──チグハグな私が、見つかりませんように。
──願わくば、チグハグな私が、終わりますように。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
チグハグ、チグハグ、守るために
チグハグ、チグハグ、バレないように。
チグハグ、チグハグ、夢を固めて。
チグハグな自分を、チグハグな夢を、チグハグな未来を、完成へと近付けていく。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
『…──ホシノ』
『どうしたの、スバル』
『──無茶すんな』
──────…。
『…ユメって人は、ホシノの先輩なんだよな』
『……そうだね』
『……』
『良い、先輩だったんだな』
『──…』
『後輩は先輩の背中を見て育つ、今のホシノを見て、俺は今ユメの背中も見てる』
『──良い先輩だな、ユメは』
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
チグハグ、チグハグ、守るために
チグハグ、チグハグ、バレないように。
チグハグ、チグハグ、夢を固めて。
チグハグな自分を、チグハグな夢を、チグハグな未来を、完成へと近付けていく。
チグハグになって、チグハグのまま、チグハグなものが多すぎて、元の形がわからないぐらいにチグハグになって、新しい形になっても、まだ。
チグハグのまま生きていく。
チグハグのまま終わっていく。
幸せな、ユメを目指して。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あれ…こんな時間に……」
いつもの通りに、深夜まで遅く徘徊し、アビドスに異変が無いか監視をしていた。
「──スバル?」
屋上から一望できる光景に、彼の姿が映ってしまった。
明日は遊撃戦、この夜風で彼に風邪でもひかれたりしたら、作戦に支障が生じてしまう。
「……」
後をつけて、スバルの行き道を追い続ける。
夜風に混じる砂がいつもより敏感に感じて、銃を握る手がいつもより鈍くなって──、
「────」
「──」
「黒服」
その時に感じた痛みよりも、その時に感じた悲しみよりも、その時に感じた苦しみよりも、その時に感じた絶望よりも。
「やっぱり」
「最後の、最後まで…信じきる前に」
「踏みとどまれて、良かった」
──良かった、と思う安心の方が大きかったのは、何故でしょうか。
駄文でした。