Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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亜空間タックル様からファンアート貰っちゃいました〜イェイピースピース!!!!

見出しに掲載してるので、是非閲覧していってくださいね〜!


『凡人の牙』

 

「……」

 

 

「──それで、おじさんにどんな酷い事したいのかなぁ~」

 

 

「──まぁ」

 

 

「こっからだよな」

 

 

「……?」

 

 

「ああいや、頼みてぇことっつったら、全部解決した後ラーメンでもおごってくれよ、ただでさえ将来無望で無一文なのに、タダ働きまでやり始めたら明日すら生き残れない」

 

 

「うへぇ~……お互いに貧乏だねぇ」

 

 

「ほんと、互いに大変大変」

 

 

「ん、連邦生徒会からスバルの給料奪えないの?」

 

 

「奪うて、ちょっとホシノさん、お宅の子の教育はどないなってますの」

 

 

「そうだね……駄目だよシロコちゃん、まだこの子は無職なんだからお給料も出てないんだよ?」

 

 

「そっち!?普通は倫理教育の至らなさに平身低頭する場面じゃねぇの!?」

 

 

「頭を下げてスバルのお財布が満タンになるなら」

 

 

「とんでもない煽りと気遣いのダブルパンチありがとうございます!!はぁ、はぁ……突っ込み疲れたし体痛いし、ちょっち屋上で風浴びてくる」

 

 

「ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

施錠されていない屋上の扉。それは高校時代にあこがれた屋上の秘密基地を思い出させる、結局あの時は屋上のカギが開きっぱなしなんて非現実的なことは無く、飛び降りと事故、たむろするのを防ぐために三年間締まりっぱなしだった。

 

錆びたドアノブに手を掛けて、アビドス高校の屋上へと舞い戻る。爽やかな風は先ほどまでの、スバルにこびりついていた死臭を洗い流すように吹き荒れる。

清らかで、それでいて生ぬるくない普通の風、これすら味わえない状況に放り込まれていたことに苦い顔をして、『死』がまた『次』にスバルを送ってくれたことに、今だけは安心を抱いた。

 

手は血にまみれていない、誰もまだ死んで無い。まだ誰も、あの砂の下に埋まっていない。体は何処も焼け落ちてないし、視覚も聴覚も無事で──、

 

 

「…………」

 

 

もう、誰の声も頭に響いていない。

──ここまで来てまだ自分の心配か?

 

 

「仕方ないだろ、起きて泣き崩れなかったのが奇跡なくらいだぜ」

 

 

屋上のフェンスにもたれかかる。

青い青い空を眺めて、それが一瞬真っ赤に染まった幻覚が見えて肝が冷えた。

慣れたものだ、幻覚幻聴、寝ても起きてもスバルが忘れないようにいつまでも襲い掛かってくる。

 

それはあの日、この世界に来て死んでからずっとの事、泣き言をいうには少し遅すぎる。それでもポロポロと涙を零すのはやめられない。

絶望に底が無いように、悲しみにも底は無い、でも人間ずっと悲しんだままじゃ生きていけないから、真っ逆さまに落ちるより前に涙が受け止めてくれる。

 

だから涙は悲しい時に流れて、そして悲しむために流すものじゃなくて、それ以上悲しみに溺れない為のストッパーでもあるのだから。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

体育座りのまま空を見上げて、スバルが今も生きている事を感じる。ついさっきの事なのに、何処か遠い過去の出来事のように感じ取れてしまうあの地獄を、口の中で跡形もなくなるまで咀嚼して。

吸う息に苦痛が混ざっていない、進む足に怨嗟が纏わりついてない、未来を望む心は絶望に溺れていない。

 

それはスバルの精神が屈強だからだとか、これも乗り越えて先へ進もうなんて殊勝な考えがある訳でもなく。

 

──約束という理由があるから。

 

死を迎えて次に行く度に、スバルと共に世界を渡る約束が、スバルの愚かな失敗の数々を分け合ってくれている。

つまるところ、他責であって、理由という箔をつけたところで情けない弱さには変わりない。

 

手のひらを心臓に当てて、「よし」と軽く呟き深呼吸。

 

肺の中が、青春の風いっぱいに満たされた後。

 

 

「ただいま、アロナ」

 

 

「おかえりなさいませ、スバル様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ゲヘナ学園

 

 

 

「はぁーーーー……」

 

 

「……」

 

 

「はーーぁーーー…」

 

 

「ぁーー…はぁ」

 

 

重く、長く苦しいため息が、その本人の憂鬱感を表すようにどんよりと空間に満ちる。

えいやほらさと手動で軍隊を誘導しながら、タブレットで別部隊の準備を整え、鮮やかな手並みで配備していく姿とは裏腹に、ため息の量はどんどんと増えていく。

 

その姿を見て、生徒の一人が声を上げた。

 

 

「──あのさ、アコちゃん、そんなため息つきながら準備されちゃ、こっちまで士気が下がるんだけど?」

 

 

「……仕方ないじゃないですか、委員長の頼みとはいえ、何でわざわざ宣戦布告されたばかりのアビドスなんて僻地に遠征して、しかも委員長を誑かした奴の為に……」

 

 

「誑かした……奴──ぅ……ぁぁぁああ!!もう!!!」

 

 

「…重症ですね」

 

 

「そう思うならなんとかしてよ、チナツ」

 

 

アコ、イオリ、チナツは表向き謹慎処分となっているヒナの代わりに、スバルが向かったアビドスへの支援をお願いされていた。

ただでさえ、スバルのせいで委員長が謹慎を食らう羽目になったと言うのに、何故そいつの為に動かねばならぬのか。

 

アコは悶々と、いやフツフツと湧いていた怒りに身をまかせ、地団駄を踏みまくる。だが、怒りのままに身をまかせて、約束を反故にすれば、最も悲しむのは委員長。

 

もはや気分は悪逆卑劣、外道にしてド変態、にっくきナツキ・スバルに委員長を人質に取られてるような気分だった。

 

 

「はぁ〜……」

 

 

そうしてまた、ため息のループに入る。

 

自分の優秀さが恨めしい、もう準備が終わってしまった。もっともっとゆっくり遅延させてたっぷりとナツキ・スバルが苦しみ切った後に、すがりつきたくなるような救世主として登場し、愚か者に委員長への忠誠を永遠に誓わせる……──なんて素晴らしい計画だろうか。

 

そうだ、委員長を顎で使った罰だ。もっともっと苦しんで、苦しみに苦しみまくってから、ヒナ委員長の足を舐めて這うほどの忠犬へと仕立て上げる…!

 

 

「…それはそれで、嫌ですね」

 

 

それをやっていいのは私だけ、ナツキ・スバルにはもっと惨たらしい席を……。

 

 

「──アコ行政官!」

 

 

「なんですか、出発前ですよ?」

 

 

「そ、その!ぁ、ぁあの!ナツ、ナツキ…」

 

 

「…落ち着いてくれませんか?そんな──ナツキ??」

 

 

「ナツキ・スバルから!本部に直接の通信です!!アコ行政官、対応お願いいたします!!」

 

 

「──」

 

 

絶好の機会だ。

 

どうせ頭の足りない人間が単身戦場に行っても、すぐに助けを求めることになるなんて、わかりきっていた事。チャンスだ、ナツキ・スバルの本当の姿をここで確かめておける絶好のチャンス。

 

 

「分かりました、繋げなさい」

 

 

「はい!」

 

 

インカムを操作し、我が物顔で乗り込んできたナツキ・スバルと通信を繋げる。

 

 

《こちらゲヘナ学園──》

 

 

《よっすよっす、アコっち元気にしてる?》

 

 

──思わずタブレットを地面へと叩きつけてしまった。

 

 

《多分今、ヒナに頼まれて遠征の準備してくれてると思うんだけど……──あー、先に言っとくとマジで助かる、ありがとな》

 

 

《…それを、何処で》

 

 

《秘密、まぁその救援のことなんだけど……──到着した後、部隊を俺に貸して欲しい》

 

 

《は?》

 

 

《ちょっと厄介事が立て込みすぎててさ、正直俺一人だけじゃニッチもサッチも行かない状態なんだよ》

 

 

《俺の手一人だけじゃ救えないもんが多すぎる、だから、ヒナも力を貸してくれたんだけど……やっぱ、まだ俺には色々足りてねぇから》

 

 

《3分57秒後、俺はシャーレの部長兼、連邦生徒会長の遺産管理者になる、アコなら、俺からどれだけの恩を取り立てられるか分かるはず》

 

 

()()()()()、だから到着後は俺に任せて欲しい……頼む、欲しいもんがあるなら何が何でも手に入れるし、ゲヘナ学園を犬の真似しながら首輪つけて一周しろって言われてもやってやる》

 

 

《アコ、それに…風紀委員だけが頼りなんだ》

 

 

「……」

 

 

「…………──」

 

 

「………………───」

 

 

《──分かりました》

 

 

「「え!?」」

 

 

その返答に最も驚いたのは、側近で話を聞いていたイオリとチナツの二人、恨みごとを常日頃聞かされてきた身からすれば、こんな無茶振りな要望は一切耳を貸さないと思っていたのだが……。

 

驚きと共にアコの顔を見つめると、今までに見たことないほどのあくどい顔をしていて、「「ああ…」」と諦めの呟きが出る。

 

 

《っ、本当に助かる、この先一生の命の恩人だよ》

 

 

《その代わり、な・ん・で・も、聞いてもらいますからね》

 

 

《勿論、それじゃ時間も無いから切るぜ、すまん》

 

 

通信が切られ、地面に投げ捨てたタブレットを拾い上げる。

 

 

「…………アコちゃん…それでよかっ……──良くないよね、何してんの」

 

 

「ふ、ふふっ、ふふふ…!!」

 

 

「駄目ですイオリ、こうなったらもう何も耳に入らないですよ」

 

 

「言質…とりましたからね、ナツキ・スバル─!!!」

 

 

三下悪役のような、少し下品じみた笑い声を上げて、より一層、部隊の出発に力を入れるアコなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヒヒッ』

 

 

 

 

──今のスバルが突き詰めるべき対象は、三つある。

 

『生徒の命だけを奪い去る爆弾』『十六夜ノノミの死因』『地下生活者という存在の正体』

 

犯行はアロナの通信を妨害されて、チームとの無線機が繋がらない時に行われた。名だたるミステリー作家も、顔を歪めて唾を吐き、お手上げだと言わざるを得ないゴリ押しと速攻。

 

犯人は恐らく地下生活者、実行犯及び手引きは朝霧スオウ、そして謎のガスマスクの集団。

動機は不明、犯行に使われた凶器はセリカとアヤネに巻き付けられていた爆弾であり、ゲマトリアが関わっている際にしか登場してない事から中々に特別製の珠玉の品だと予想される。

 

スバルが目の当たりにした、評議会の惨状はスオウによってセッティングされた舞台だ。ノノミの骸をあれほどまでに汚した理由なんて、特に無いんだろう。

 

さて、こうやって述べてみて、一つ分かった事がスバルにはある。

 

 

 

「お前のこと、大っっ嫌いなんだけどさ」

 

 

 

顔を見ればぶん殴りたくなり、思い出せばむかっ腹が立って仕方ない、嫌われ者のナツキ・スバルをもってしても、この男を超える嫌われっぷりを表現するには、新たなるウザさの進化をせざるを得ない。

 

 

 

「お前のこと、大っっっっっっ嫌いなんだけど」

 

 

 

毎回毎回、絶対に忘れずにそう前置きする。そうしなければ心のどこかでコイツを受け入れてしまいそうになるから。

 

 

「……それはそれとして、お前が一番色々知ってんだよなぁ」

 

 

「ククッ」

 

 

ゲマトリア所属であり、爆弾の正体を知っている男でもあり、なんなら地下生活者っぽい存在について最初に言及していたのは、黒服だ。

今思えば、この男との対談を少し無駄にしすぎたと思う、立場的には真っ向から対抗しているのにも関わらず、興味がある『程度』でスバルに肩入れする男を毛嫌いし過ぎていた。

 

 

()()に行かせてもらうぜ、黒服」

 

 

「──俺の役に立って欲しい」

 

 

「クックック……!ああ、やはり貴方は興味深い」

 

 

コイツの呼び出し方は分かった、『興味を引くこと』なら何でもいい。そのハードルは世界が天秤に掛けられるほどに高いが、今のスバルなら無限の手札があるのだ。

 

「地下生活者の事について、黒服個人と話し合いたい」そう告げるだけで黒服はカイザーを置き去りに、真っ先に俺に会いに来た。

 

──そして、黒服と会う事をシロコとホシノに告げた。今二人は車の外で警備している。

 

効率的に言えば、ホシノはシロコというストッパーが居る限り暴走までいかない、その後に納得をさせられるかどうかは、スバルの腕前。

 

 

「俺がきれる交渉のカードは三つ、『ゲマトリア所属の黒服個人と、互いに危害を加えず中立でいること』『俺への研究の為の干渉は第一項に触れないこと』『小鳥遊ホシノの神性について』」

 

 

「ふむ」

 

 

「一つ目はまぁ、分かるでしょ、二つ目はお前の好き勝手にやれってこと、そんぐらいじゃ俺には痛手にもならないぜ?そいで、三つ目は……」

 

 

「──お前が、ホシノに手を出す理由そのものだ」

 

 

結局の所、こいつは悪であって敵じゃない。しかも黒服は『大人』、善悪を規定する立場の人間は悪だの正義だので物事を判断しない。

だから黒服という男が、何を望んでいるかを突きつける。根っからの研究職なこいつは、『手がかり』を欲しがっている。

ゲマトリアに所属する個人個人が抱く、『崇高』って奴をな。

 

 

「未来予知っつーかな、シッテムの箱がどんなもんか、お前は知らないだろ?近い能力があるって事はサービスで教えとく、エマージェンシーでバタフライエフェクト的なマルチバース観測機みてぇな」

 

 

「クククッ、その不可思議の遺物の正体は一切分かりませんが……未来予知ときましたか、クックック、いずれにせよ興味深い、して…要求は?」

 

 

「俺が代わりになるから、ホシノから手を引け、それとお前らの組織の中で、傷を付けずにホシノ達から命を奪える爆弾があるのは分かってるから、それの詳細も」

 

 

「次にアヤネとセリカを爆弾を外した上で、引き渡せ、その後に契約通りに約束する事してやるよ」

 

 

「──最後に『地下生活者』について、全部、教えろ、0から100までお前が知ってること全部だ…!」

 

 

「……!」

 

 

「……──」

 

 

スバルの内なる憤怒を受け、黒服が両肘を内蔵されたテーブルにつき、炎が揺らぐ瞳を伏せ深く考え込む。

と、いっても返ってくる言葉はスバルの予想通りだろう、どれだけの日数をこの男と過ごしてきたと思っている。

 

 

「ククッ…クククッ…」

 

 

「「分かりました、契約を結びましょう」」

 

 

「──!」

 

 

「おっとっと、偶然たまたま、台詞がシンクロしちゃった、ごめんごめん」

 

 

「「ククッ!貴方は実に興味深い…!」」

 

 

二度目のハモリ、一言一句違わないだけではなく、イントネーションすら完璧に捉えた二重奏。

そのハーモニーが車内に広がった時、初めて黒服の表情が──、

 

 

「へへっ」

 

 

「──歪んだな?見たかったぜ、その顔が」

 

 

「ククッ…」

 

 

スバルが座席から立ち上がる。背を向けるスバルに対して、黒服は再度、そして最後に一言浴びせる為に、普段とは打って変わっての炎の揺らぎを見せて問いかける。

 

 

 

「ナツキ・スバル」

 

 

 

「私は、貴方の事を理解出来るでしょうか?」

 

 

 

「…出来る出来ないじゃなくて、やってみろって言いたいところだけど」

 

 

 

「──黒服、お前には一生分かんねぇよ」

 

 

 

 

それだけ残して、振り向かず車外へと飛び出す。

黒服がどんな表情をするか、見てみたかったものだけど。

 

 

「さて…」

 

 

「ナツキ・スバル」

 

 

「どういう事か、教えてくれるかな?」

 

 

「──勿論」

 

 

対岸の火事が、あと一歩の所までに来ている。

まだ少し、ナツキ・スバルはその牙を磨かねばならない。

 

 





同じ場面ぐるぐるしてるなー……と思いながら書いて、でも原作様も……っと思いながら見返して、猫先生の技量にたまげる今日この頃。
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