Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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ブルアカのストーリーは面白いので、是非ともお暇があれば読んでみて下さい。


『ルール上でのインチキ』

『──一つよろしいでしょうか、ナツキさん』

 

 

『疑似的な未来演算という話でしたね、シッテムの箱の権能は』

 

 

『そうだけど?』

 

 

()()()()()()()()()()()()、もう少し手の内を隠しておいたほうがよろしいかと』

 

 

『その箱にそのような力はありません、この場を用意したナツキさんに敬意と尊敬を払い、貴方のひた隠しにしている権能への詮索はここで止めておきます』

 

 

『ただ、あくまでも貴方は私にとって有益な契約相手であり、そして子供です、今のまま擦り切れることの無いように祈っています』

 

 

『私は、ナツキさんによく似た方の末路を知っていますから』

 

 

 

 

「…──」

 

 

黒服の車から降りると、爆発音と煙が立ち上り、平穏な先ほどとは打って変わって騒がしい、この騒音に車に乗っているときに気づかなかったのは、黒服の車の防音性は高すぎるせいだと分かり「どんだけ高級車なんだよ」と大人の財力を感じる。

 

スニーカーのひもを結び、屈伸をしてから腕まくりする。

 

今から行う、この行動の是非を問えば、バカだの間抜けだの返事が返ってきてもおかしくない。だがスバルにとって今からする行動は降って湧いてきた天運にして日ごろの積み重ねの賜物。

積み重ね、そう積み重ねてきた。

 

──あの死に戻りの後、スバルが死に戻った回数は■回。未だ数字は見えずともあの地点からの回数は数えてる。

 

 

「よし」

 

 

黒服の元に辿り着き、尚且つホシノを説得するまで、ハイランダー鉄道学園の内情を調べるために、朝霧スオウという存在を理解してスバルの『協力者』を見つけ、ネフティスの評議会で起きた悲劇を解明し、私募ファンドを蹴散らす準備を進めた。

 

 

それで分かったことは、この物語の中心にいるのはアビドスであって、アビドスじゃなかったんだ。

 

もう一つある、本当に物語の核に居たのは『雷帝の遺産』だ、ホシノ達を遠隔で吹き飛ばす超級の兵器。スバルがカイザー理事を真っ先に逮捕しなければいけない理由であり、私募ファンドの主目的。

 

ネフティスがアビドスからノノミを引き抜いた理由でもある、アビドスにはスバルの想像を超える厄ネタが潜んでいた。

 

 

『砂漠横断鉄道の権利?何それ…──?ユメ先輩が居た時に…?』

 

 

『その手紙…──』

 

 

ノノミが引き抜かれる前の事、ホシノに突き付けられたアビドス生徒会が二年前に結んだとされる、ネフティスから砂漠横断鉄道を買い取るといった内容の契約書が、生徒会長である梔子ユメの名義で締結されていた。

 

そしてそれは、『雷帝の遺産』を手にするのと同じ、なぜならば雷帝の遺産の正体とは、

 

 

 

──列車、であるからだ。

 

 

 

正確には列車砲、路線を走る破壊兵器を死に戻りの中で目にし続けてきた。あの兵器があれば、そりゃ理事だって調子に乗る事だろう。

移動可能、超長距離からの核爆撃以上の破壊力の爆撃、口が軽い理事から情報を得るのは簡単だったから助かる。

 

 

『貴様らの債権は我らカイザーの手元にあった、今となってはそれも荼毘に付したが』

 

 

その列車を動かせる利権をアビドスが握っていて、砂漠横断鉄道の権利がここにきてノノミの引き抜きまでつながってしまう事に、そもそも公的にはアレはまだ誰のものでもない、PMCがテロ組織になった理由も、アレを責任追及されることなく使用するため。

 

つまるところ、アビドスを舞台に繰り広げられる列車砲簒奪レースなのだ。

契約に関しては2年間の期限切れを迎えた場合、列車についての諸権利を含むアビドスの債権を私募ファンドとネフティスが共同購入しているため、ネフティスと私募ファンドのモノに。

 

存続すればアビドスのもの、そして契約を破棄ではなく、そもそも『アビドス生徒会』が存在しなかったとホシノが認めればネフティスのモノになる。

 

アビドスを根城にしたいヘルメット団に、利権に囚われず列車砲を使用したいカイザー、列車砲を手にしたいネフティスによる十六夜ノノミの引き抜きと、それを交渉材料にしての『アビドス生徒会の消滅』。

 

 

「契約期間切れによる債権の共同所有によって列車砲を手に入れたい私募ファンドは、目的の方向性が一致した朝霧スオウとの密約を結んでいるようです」

 

 

「期限切れまでの足止めを担うほか、カイザーからも列車砲の簒奪を依頼されていて、その上で彼女はネフティスから公的に十六夜ノノミをハイランダー学園の理事長に据えるために現状三重スパイとして活動を続けています」

 

 

「最後に、朝霧スオウ自身の望みは小鳥遊ホシノとの直接対決、彼女との全力の戦いの為に…」

 

 

「──推定:トリニティ総合学園の現ホスト、聖園ミカが所有する武力集団アリウス分校との協定を結んだ、かと」

 

 

それだけではなく、更にそこにスオウとアリウスを結び付けた誰かが居て、その現ホストって奴もアビドスかスバルに干渉しようとしているうえに、救援に来てくれる『モモフレンズ同好会』の迫撃砲は現ホストの許可あってのもので…──。

 

 

「……うーん、いつ聞いても因果が複雑骨折してやがる」

 

 

「それに、ヘイロー破壊爆弾…──か」

 

 

ガスマスクの少女たちの正体を知る為にも、中々苦労した。

 

不明点の多さでいえば、地下生活者と同レベルのぽっと出キャラ。どこから来たのか、一体どこの誰の組織なのか、誰の差し金で何故あの爆弾を持っていたのか、謎を大量に抱えてやってきたくせに、何一つ答えを残さなかった集団。

 

アビドスへの侵入ルートも謎、スオウと手を組んでいたのも謎、そもそも彼女らの関係性が謎。

何が目的で、何を理由に、何のために。5W、ホワイダニットなんて言葉を並び立てたところで、スバルにシャーロックホームズのような頭脳は無く、目的を聞き出すためだけにとんでもない代償を払い続けて、収穫は一つ。

 

 

【命令された】

 

 

それだけだ、スオウに協力するように命令された、それだけ。

 

訓練され切った彼女らは、人間というよりアリの群、一人一人の命には執着がなく、目的を遂行するまで止まらないロボット。

感情を無視して動くように訓練を受けた、本物の軍隊。

 

 

「…………」

 

 

だが、感情を無くすことなんてできない、誰にだって『死』を目の前にすれば心の機微は現れる。

自爆特攻が自殺にならない世界で、当たり前のように自傷を重ねて、命令に従うだけの彼女らから、自己意思を奪った誰かが居る。

 

それこそがスオウとアリウスを結び付けた『誰か』だ。ゲマトリア所属の誰かが、この機会に相乗りしてアビドスの生徒を…──いや。

 

 

俺を、殺しに来た。

 

 

 

「少し、遅くなっちまうかもだけど」

 

 

いつか、麻痺が溶けた心を見に行きたい。誰かがお前らから奪った青春を取り戻してからになってしまうけれど。

 

 

「さてさてさーてアロナちゅわん、()()は時間通り来てる?」

 

 

「否定、現在列車は生徒会の谷を通過中」

 

 

「え?時間通り来てないの??遅れてたら俺死んじゃうんだけど!?」

 

 

「その心配はいらないかと、列車のスピードは現在270kmを超えていて、予定時刻より()()()()()

 

 

「──」

 

 

 

それは最早実質的な死刑宣告では?ナツキ・スバルは訝しんだ。

 

 

顔が歪むスバルに、アロナはこれから行う作戦の危険性を踏まえた上で淡々と、何事も無いように言葉を告げる。

 

 

 

「私は、スバル様にご自身の命を最優先にして頂きたいです」

 

 

「ですが、それはスバル様の願いの妨げになる、ですからどうかこの先もご自身の命を掛け金にするというのなら」

 

 

「──決して、振り返らないように」

 

 

「貴方の背中を見つめる全ての視線は、スバル様を酷く傷つけてしまいますので」

 

 

 

それが慈しみであれ、憐みであれ、ナツキ・スバルの走る姿の痛ましさに『痛み』を感じてしまえば、それはナツキ・スバルを縛る呪いになりかねない。

スバルのせいで誰かが苦しむというのなら、彼はきっとボロボロの背中まで隠し始めてしまうから、それだけは、それだけは──。

 

 

 

「…アロナの事は、見ててもいいの?」

 

 

「はい」

 

 

「私だけは、ナツキ・スバル様専用のサポートAIですので」

 

 

「…──」

 

 

 

機械音声が途切れ、スバルは砂舞う砂漠へと足を踏み入れる。遠くでまだ戦闘音が鳴り響いていて、油断すれば今からでも一瞬で死にかねない。

 

しかもスバルにはとある悪癖があるのだ、自らそう望んでいるのか、結果的にそうなってしまうのかどうかは分からないが、スバルはいつも自らの命を率先して掛け金にする。

全て必要があることとはいえ、毎回の無謀が許されるのはいつも唾を吐きかけている運命様に微笑まれているわけではなくて──。

 

 

 

「おおぅ…ホシノ強すぎだろ、周りはほぼ全滅かよ」

 

 

「ホシノさんたちは既に高校への避難経路に到達済みです、しかしここへ中隊規模の軍が接近中、二分以内にあの場所へ」

 

 

「了解!そいじゃひとっ走り行きますか!」

 

 

 

スバルが足掻けば足掻くほど、スバルの救いたいものを救える力があるからだろう、連邦生徒会長が本当にどんなことを考えてスバルに色々託したのかは知らないが。

──生徒を救う事に関しては、あきらめの悪いスバルを選んでくれてよかった。

 

スバルじゃなきゃダメだったのか、スバルじゃなきゃダメだった。

 

スバルだからダメだったのか、スバルだから救えるのか。

 

 

「流石に減速してくれよ…?してくれるよな?あのクソガキ二人…──」

 

 

今だから言える、スバルだから沢山失敗して、ダメダメで。

──スバルだから、全員を救える。

 

 

「スバル様、着信が来ています」

 

 

「ん?」

 

 

「協力者のお二人からです、繋げますね」

 

 

否応が無しに、あの腹立つ元気溌剌わんぱく娘どもとの電話がつながった。

 

 

《おにーさーん、もうちょっとで到着するから準備してて下さいねー》

 

 

《パヒャヒャ!お兄さんの為だけの特急列車なんだから、無駄にしちゃだめだよ~?》

 

 

弾けるような独特な笑い声は、ハイランダー学園を知るうえで大体の人間が聞いたことがあるであろう悪ガキの声。

 

 

《そう思うのなら減速してくんね?お前ら基準で運転されると、俺の身体木っ端みじんになるんだけど》

 

 

《大丈夫だって!ロケットエンジン早めに停止させとくから!》

 

 

《大丈夫な要素どこよ、ノゾミとヒカリの手心の厚さってベニヤ板レベルとかじゃないの?》

 

 

《おにいさんが提案してきた作戦ですから、私達からすれば貴方の方が肝座りまくってる側ですよ》

 

 

《……ま、まぁ、ともかく報酬も色々用意してるから、全部解決したらシャーレに遊びに来てくれよな》

 

 

《わーい》

 

 

《シャーレで遊んでいいの?パヒャヒャ!やったぁ!》

 

 

「…………本当に大丈夫、なんだよな…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下生活者は、スバルをずっと見ているらしい。アロナから聞いたことだが、何とも不気味で気色悪い事だ。

 

 

「地下生活者ぶっ潰す、地下生活者ぶっ潰す、地下、生活者…──ぶっ潰す!!」

 

 

呪いのように汗水流しながら呟きつづける、今こんな大変な目にあっているのも、大変なことをしなきゃなんないのも、皆が不幸になるのも何もかも地下生活者のせいだ。

カイザーとか黒服とかトリニティ学園とか私募ファンドとか、全部知らねぇ、とにかく全部地下生活者のせい。

 

スバルの喉が渇いて仕方ないのも、お腹が減ってるのに満足に食べられないのも、寝不足で頭が痛いのも運動不足で微妙に体力が無いのも地下生活者のせいだし、寝て起きて寝癖が付いてめんどくさいのも多分、地下生活者のせい。

 

 

「うぐおおぇぇ…──」

 

 

重いバッグを引きずりながら、迫る死の足音から逃げ続ける。吐き気を催しながら顔を真っ赤にし、ふんふんと荒い鼻息を立てて歩き続ける。

 

明日には腕がバキバキだ、筋肉がもげそうなのに骨はしっかりと腕につながっていて、このままだとゴムゴムした腕になってしまいそうな気がしてきた。

 

 

「アロナ―!応援ソングまだー!?」

 

 

「……が、頑張れ頑張れスバル様!負けるな負けるなスバル様!」

 

 

「もっと尊大さをほめたたえるように、アロナの精いっぱいの愛を込める感じで!」

 

 

「カッコイイです、スバル様の努力している姿は尊ばれるべきです、こっちを見ていて欲しいです、帰ってきたらシッテムの箱の中に入って、頭を撫でる等の愛撫をお願いします」

 

 

「……ごめん、もう少しだけ愛情プライスレスで、砂漠が海に変わっちゃう」

 

 

「はい」

 

 

最近なんだか、アロナの愛をたっぷり受け過ぎて溺れかけてきた、冗談を言う余裕がある内に……──何とか悪い男に引っ掛からない為のお勉強をさせなければならない。

 

気分はアロナの父親、スバルの死に戻り回数が増える度に情緒が育っているのは気の所為じゃなかったので、実質スバルが育てたと言っていい。

AIであるアロナがシッテムの箱から独り立ち出来るかは分からないが、スバルの様な男に引っ掛かってはこの先心配。

 

 

「よいしょッとぉ!アロナのお陰で元気湧いてきた!」

 

 

バッグを背負い、走って進む。ここまでして何を運んでいるのかと自問自答をして、この中には捨て置けない必要なものがあるから耐えろと返事を返す。

 

地下生活者に勝つには、あらゆる奇想天外を押し通す事こそが勝ち筋だ、過去のスバルの死に戻りも、『対応にラグがあった』。

 

それ即ち、地下生活者も黒服の様に、異形ではあるがただの人間に過ぎないという事、干渉できない空間に引きこもり、常に世界を俯瞰して観測しながら逆にあっちは干渉してくる──そこで終わり。

 

 

「超人でもなんでもねぇ引きこもりジジイが……笑い方もキメェし、反応速度もジジイなお前が俺に追いつけるかよ」

 

 

スバルの行動に対する対策も基本的には後手、後手を選んでいる訳では無く、スバルの突拍子の無い行動に奴がついていけてない。

人を殺そうってやつは、殺されるヤツより圧倒的に真剣に、全身全霊で望むものだ。黒服の話通り大人の殻を捨てれる子供おじさんなら、事が上手く運ばなければイラついて馬脚を露わす。

 

その為にも、迅速で常識に当てはまらない戦略で、地下生活者の思考を追い越し続ける。

 

 

本来敵対するはずの、ハイランダー学園の手を借りるなんてわけないさ。

 

 

「───ぞ!」

 

 

「居たぞ!ナツキ・スバルだ!」

 

 

「やべ」

 

 

遠くから兵士の声が聞こえた、救援も何もかも対抗手段を持たない今が一番無防備、一番死にやすい状況と言ってもいい。

 

砂の丘を駆け出して、転げ回るままに落ちていく。バッグを大切に抱えて目指す先は一つ、ノゾミとヒカリが電車を走らせ通過する駅だ。

彼女らは元々、ネフティスとの業務提携でアビドスの鉄道を工事していた所を、カイザーが急にテロ組織化した事で作業の中断を余儀なくされてしまった身。

 

二人の存在を知れたことこそ、降って湧いてきた天運にして日ごろの積み重ねの賜物に他ならない。

 

協力とは名ばかりに、仕事が出来るようにカイザーをアビドスから追い払うから、その代わりに列車を一本走らせてくれとスバル名義で一報入れただけ。

 

乗り込む訳ではなく、無断乗車させてもらうのでノゾミとヒカリには何ら関係の無い事になる、幾つもの条件を重ねた上で承諾してもらった。

 

 

「包囲ーー!!方角そのまま!逃げ道を潰し続けろ!」

 

 

「用意周到なこって!」

 

 

 

──残念だけど、お前らは俺を逃げ道に案内してんだよ。

 

壁を作るように並列しながら進軍するカイザー兵を背に、スバルは目的の場所へと走り続ける。

勿論足の速さは比べ物にならない、射程距離に入るのも時間の問題だが……──奴らがスバルを逃すのも、時間の問題だ。

 

スバルの周囲の砂が、射撃音と共に跳ね上がり…威嚇射撃としては近すぎる位置の着弾にヒヤヒヤしながら、たどり着く。

 

切り立った崖を背に、周囲を見渡すその頃には、数十歩の距離にまで相手は接近していた。

まさに袋小路にして、猫に追い詰められた鼠、残念ながら窮鼠猫を噛めない哀れなネズミだが。

 

 

「もう逃げられんぞ、ナツキ・スバル」

 

 

「逃げるなんて心外な、このナツキ・スバル様がお前ら三下如きに尻尾巻いて逃げるとでも思ってんのか?」

 

 

「………ほう、そうでは無いと?」

 

 

「──いいや、大正解!」

 

 

「は……──なッ!?」

 

 

呆けている間に、カイザー兵の前からナツキ・スバルの姿が消える。そんな訳が無いと、スバルが身を投げた崖の下を全員で覗き込んで……。

 

 

 

「ッケホっ……──じゃあな、また……会おうぜ!次は冷たい牢屋でな!!」

 

 

「────追え、絶対に……!逃がすな……!!」

 

 

 

走行中の列車の上に横たわるスバルから手を振られ、それを眺める事しか出来なかった。

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