Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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『種も仕掛けもある必然』

 

列車の上で風に煽られながら、スバルは作戦開始前のアロナの発言を思い出す。

 

 

《スバル様……──申し訳ありません、無人列車の簒奪失敗、代替案を提示しますが…》

 

 

《──砂狼シロコさんに多大なリスクを背負ってもらうことになります》

 

 

「……」

 

 

撃たれた左腕を擦る、アロナのハッキングを通す為には、スバルとカイザー兵の距離を1m程度まで近づけなければいけなかった。

撃たれる予定は無かったが、結果的には相手を油断させる事ができ、カイザーとアリウスの仲違いを引き起こせたのだから、安いものだ。

 

 

「痛くない、か」

 

 

役割は果たせた、今頃ノゾミとヒカリは好き放題してるだろうし、シロコは配置を終え帰ってきている頃だろう。

撃たれても負傷しても痛くない、それは不便なもので……わざとらしい演技にカイザーは騙されてくれたものの、このまま帰ってシロコに腕を見られれば問い詰められ、お説教コース。

 

平然としても痛がる演技をしても叱られる、中々に難儀である。

 

 

「というか案の定連携取れてなかったな、やっぱアリウスとカイザーがどっかしらでつながってる訳じゃない…──ってなると黒服も関与してない」

 

 

誰だ、そう空に問いかけるスバル。邪知暴虐を振りかざすディオニス王を糾弾するメロスの気持ちが今ならわかる、その後に信頼のおける友を互いの信頼の上だとは分かっているが身代わりにするのはいかがなものかと思うが。

 

しかし、全ての功績はアロナにあるというのに、傍から見ればスバルに近づいたカイザー兵が唐突に操られたようにしか見えない、これでまたスバルの身もふたもない噂が広がってしまう。これではその後の生活に悪影響が確実に出る事だろう。

 

 

「なんかアビドスで全部やること終わるみたいな雰囲気有るけど、別にキヴォトス自体はなんも変わんねぇってのも……青春っぽいか、青春っぽいか…?」

 

 

《特別な一日が日常に紛れ消えていく、そこにスバル様が特別な感情を抱けるようでしたら、間違いなく青春と言えるでしょう》

 

 

「おお、アロナのその言い方めちゃくちゃエモい」

 

 

全身にエモーショナルを満たす、そのまま突っ立ってエモさを味わうのも良いが、今はシロコを迎えに行く方が先だ。

列車の貨物を足場に、ぴょんぴょんと最前列まで辿り着く。列車が後退している以上爆弾を設置するには危険な前部へ行かなければならないのも、スバルがシロコに爆弾の設置を渋った理由だ。

 

速度300㎞越えの列車を前にして、列車の最前部で待機し、誰の目にもつかず後退する列車と同速度で走りながら、無人列車が近づいてきて、丁度爆弾の場所を通過したタイミングで爆破する、その起爆タイミングはこれまたシロコが調整するなんて芸当、シロコ以外にはできっこない。

 

この計画の主核が胸ポケットに小さく丸まったガラケーとこの場に居ない狼少女だとは誰も思いもしないだろう。

 

 

「っしょ、どっこらしょ、うんとこしょ…このハリウッドもビッくらポンの三点着地!披露の機会が来るとは……って、誰も見てないよな当たり前だけど」

 

 

《…愉快な決めポーズよりも先に、負傷箇所の止血をお願いします、スバル様》

 

 

「へーきへーき!なんてうそぶいて倒れたら二度とアロナに顔向け出来ないよな……──」

 

 

ちゃんとした止血方法は死に戻りの中で学んだ、以前の様にビニール袋でヨシ!とかやってた自分を浅ましく思える位には一人で治療出来る。

懐からアビドスの保健室から拝借した包帯を取り出す。

死に戻りによって肉の記憶……身体に刻まれた記憶は失われても、知識で賄える箇所は多くあった。ホシノの受け売りだが、自分だけじゃなくて他の人にも施せるくらい。

 

──『ここだよ』

 

ホシノの声、そして薄い記憶の影がスバルと共に止血の作業を行ってくれる。

危機的状況に、背後霊の能力でも発露したのかと心の中で一人ボケをして、記憶が形作る手順通りに止血を進め……──、

 

 

「……まっ、今の所はこんな感じだな」

 

 

セナに手当して貰った時のような、純白の包帯が傷口を覆っていた。

 

 

「……」

 

 

学生時代、塞ぎ込んで知識の吸収も、他者からの施しも忘れてしまったスバル。

欺瞞と怠惰、蛮勇とウザさの殻をはぎ取って漸く、高校生ナツキ・スバルが異世界で芽吹きを見せる。

 

──感傷に浸っていられる時間は無い。

 

経験則上、物事が上手く運んでいる時は、それ以上の厄災が起こると身に染みていた。

 

 

「……!」

 

 

だからこそ、包帯を巻ききった直後の列車の揺れにも即座に貨物へしがみつく事が出来る。

 

 

「ぉあッ……」

 

 

縦揺れでは無く横揺れ、列車への攻撃を示す揺れには爆発が付いて回る。

 

 

 

「っ」

 

 

 

背後へ一瞥を送れば、視界に入ってきたのは──。

 

 

 

「ノゾミ!ヒカリ!」

 

 

「ご…めん…!」

 

 

 

火傷と傷を付けて、気絶したヒカリを背負うノゾミ。

 

それは、先にサブプランが崩壊してしまった事、シロコが無事に戻らねばスバルの命はここで終わる事を告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か!?ヒカリは…!」

 

 

「気絶、してるだけ!それより早く逃げなきゃ…!」

 

 

「逃げる──逃げる?」

 

 

「やばいのが一人いた!スティンガーミサイル、一撃で吹き飛ばされちゃって…──というかあんなのカイザーでも持ってないのに…!」

 

 

追跡者の存在を示すように、貨物の一部がスバルの頭上を通過する。爆破と共に列車は再度大きく揺れ──、

 

 

 

「ぁ」

 

 

 

「──させるかぁぁぁッ!!!」

 

 

 

ノゾミが、列車から足を踏み外す。

 

ヒカリと共に線路の上へと自由落下していくのをスバルがぎりぎりで二人の背を掴んだ。

止血をしていてこれほど良かったと思うことは無いだろう、包帯が固定具代わりに力の入らない左腕を支え、踏ん張る為の力を算出している。

 

 

「ぬぐぉぉぉぉ…!」

 

 

「っ、お兄さん!ヒカリを先に!!」

 

 

「す…まん…─そっち側は力入らねぇ!」

 

 

右腕でノゾミ、左腕でヒカリを掴んでいるスバルへの負担は奇跡のバランスで保たれていた。ここで両者どちらかを引き上げようとすれば、もう片方を地面に落としてしまう事になる。

落下の衝撃は問題ない、だが、落下した後に待っているのはアリウスによるリンチだ、爆弾持ちが誰かは分からないけれど、どっちにしたってどっちの手も離せない。

 

 

「今の…──揺れ、は…」

 

 

近い。

 

サブプランを盛大に破壊した張本人がすぐそこまで来ている証拠。

スバルもノゾミもヒカリも、シロコも今は対応できず、二人を引っ張っているスバルは格好の的。

 

つまりは、敵側から狙いたい放題という訳だ。

 

 

「……!」

 

 

魂を削るような身体への負荷をよそに、スバルの視線はとある人物に注がれる。

四車両後ろ、見たことも無い恰好をした女生徒が部隊を率いて歩みを進めていた。

 

 

「──標的発見」

 

 

「ガスマスク…じゃない?」

 

 

初めて見る生徒、アリウスの生徒は全員白装束にガスマスクしか見た事がなかったのに、今スバルを感情の無い目で見つめている生徒は黒いマスクをつけて目元を露出させていた。

 

内側に黒いパーカーを着飾って、更に目を引くのは軽々しく持ち上げているデカブツ。成人男性の身長ほどある巨躯の砲塔は、銃弾等という生易しいモノを放つ口をしていない。

グレネードランチャーが子供の玩具に見えるほど大きな口径は、ノゾミの話していたミサイルを放つためのモノだと分かる。

 

 

明らかに今までのアリウスの兵とは、一線を画す雰囲気、部隊長とも違う別格さを醸し出す黒マスクの少女が担ぐスティンガーがスバルに狙いをつけて──。

 

 

 

「まずッ」

 

 

 

一ミリの迷いもなく引き金が引かれる。カイザー兵にすらあった命を奪う事に対する葛藤を一切感じさせない断行は、スバルの最後の保険を切らせるに至ってしまう。

 

 

 

「──アロナ!!」

 

 

「っ?」

 

 

 

スバルの胸元からバイブレーションの音が鳴り響くと、列車の先頭から赤い光がスバル達の頭上へと展開された。

黒マスクの少女、そして彼女が率いる部隊とスバルとの間に爆炎の壁が両者を分断する、赤い光の正体は「フレアか」と、最後のあがきに対する冷静な分析を終え、部下に面制圧の銃撃を指令する。

 

 

「…………」

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃ち方止め」

 

 

 

撃っている間に違和感に気づいた。走行中の列車の上だというのに視界を塞ぐ煙が霧散しない、まるで消えても消えても湧いて出てくるような煙の壁を前にして、時間稼ぎだ、と言わんばかりに強硬する黒いマスクの少女。

 

重い武装を抱えながら、矢継ぎ早に屋根を渡ると、スバル達が元々居た場所にはこれでもかと発煙筒が並びたてられていた。

 

 

 

「探して」

 

 

「了解」

 

 

 

早くしないと列車同士の衝突に巻き込まれる、そう思いながら現場に残された血痕を指でなぞると──、

 

 

 

「……命中はしてる」

 

 

「まだ近くに、てかこの場から離れられてない」

 

 

 

屋根の上に残るおびただしい血痕は、列車から飛び降りるような形で途切れていたが、少し考えればフェイクだと分かる。

ならあの少年は何処に行ったのか、猶予はあの煙幕で発生したとはいえ、標的は絶賛撃墜させた女学生二人を引き上げるのに精いっぱいだった。

 

──車両ごと吹き飛ばすか?

 

 

 

「そんな必要もない」

 

 

「出てきなよ、弾、無駄打ちさせないで」

 

 

「……──」

 

 

「遺体持って帰れって命令だから、早く」

 

 

 

少女はそこに佇むだけだが、潜むスバルにとっては詰みの一手に等しかった。

腹部に命中した銃弾、そこから流れ出す血を何とか手で押さえるのも限界がある、何よりスバルの最後の保険、切り札はそう長く持たない。

 

 

 

「──」

 

 

 

「──…ゴホッ…ぉえ…ゲホ゛ッ゛…」

 

 

 

──遂に、血を吐き戻すのと同時に魔法が溶けてしまう。

 

 

 

「……なるほどね」

 

 

「くっそ…!」

 

 

 

少女が目にしたのは、何もない空間から唐突に血まみれの標的である少年が現れた光景であった。

 

──光学迷彩。

 

高度な、なんて言葉では表せない魔法の領域、何の違和感もなく流れる背景に合わせて変化する光学迷彩など、キヴォトスに存在するはずが無いが…──。

 

リアルタイムで敵の動きを把握し続け、3Dマッピングすら可能なシッテムの箱の力により、その魔法は現実へと昇華する。

だが効果時間は数十秒、つまり少女のその場での傍観が最も効果を発揮してしまい、スバルの居場所は暴かれた。

 

 

 

「俺を、殺すのか」

 

 

「うん」

 

 

双子の片割れはスバルの背後に居る、気絶した方も胸の内側で匿っている。

 

 

「なんでだよ」

 

 

「それが命令」

 

 

「っ…命令されりゃ人も殺すのか!?」

 

 

「殺す」

 

 

「は──」

 

 

血を吐き出しながら膝を崩し倒れていくスバルは、それでもと下から少女をにらみつける。

分かっていたことだ、アリウスの生徒は人を殺すのに邪魔な感情の機微を排されていることなど、分かっていた。

けれど、何でもいい、何でもいいから別の答えが彼女の口から現れないかと、あり得ない幻想を抱いていたスバル。

 

 

その夢をへし折るかのように断言する黒マスクの少女。

 

 

血の気が引いて、隈が死体に浮かぶ土色のようになりつつあるスバルの目と、少女の目が会って、スバルはそこに浮かぶ『色』を見た。

 

 

 

「vanitas vanitatum et omnia vanitas」

 

 

 

何の色も浮かんでいない、絶望も喜びも何一つない無。

 

産まれてきた理由さえ見失った、絶望にさえ見放された少女の目を。

 

 

 

「お兄さんッ!駄目だよ、起きて!」

 

 

「駄目っ、駄目だってばぁ!!」

 

 

 

スバルの血を浴びて、涙目になりながらも必死に傷口を抑えるノゾミ、抑えても抑えても止まらない血に、頭の中の何かが切れそうになってしまうのを必死にこらえて黒マスクの少女の前に立つ。

 

スバルをかばう姿勢をとっても、何の意味も無い程に状況は絶望的。

 

 

 

「スバルお兄さんッ!!!」

 

 

「………何もしなくても死んじゃうか、まぁ、自分の手でやっとかないと」

 

 

 

黒マスクの少女が拳銃を取り出し、スバルに向けた時、ぐいっと足元が引っ張られる感覚を味わい、その箇所を見るとスバルが己の足へ手を伸ばしていた。

 

まだ何か抗う気かと、早く殺すために引き金を引く直前、スバルの掠れた声が耳に居届く。

 

 

 

「なま…え…は…──?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

──何を言っているのか。

 

 

この状況で、死に掛けの状態で、死を目の前にして何を言っているのか。

いつもなら断末魔だとか、恨み言だとかしか聞いてこなかったせいで、色の無い視界に少しだけ妙な色が沸き上がる。

 

そして妙な色は違和感へ、遂には意味のない行動へと少女を駆り立てる。

 

 

 

「戒野ミサキ」

 

 

 

その音色が、倒れ伏している少年に届いたかは分からない。

 

 

 

「…………」

 

 

 

例え今の行為が虚しくとも、何の意味も無くても関係ない、元々すべては虚しい。どこまで行こうともすべては虚しいものなのだから、何も変わらない。

無駄な時間を過ごし過ぎた、猶予、といっても彼にとっては死ぬまでの少しの時間であろうが、猶予を与えすぎた。

 

──もういいか。

 

 

 

「……はぁ、じゃあね」

 

 

 

引き金を引く、ただそれだけの行為に、それ以外の意味を見出すことは無く。

 

 

 

 

「────」

 

 

 

「じゃあな、ミサキ…──また会おうぜ」

 

 

 

「──なんで」

 

 

 

黒マスクの少女──ミサキは、驚きで目を見開いた。

 

引き金を引いた、それなのに少年の声が聞こえたからか?

それとも、何故か自身の視線がいつの間にか空に向いていた事か?

あるいは、空から降ってきている列車の残骸が、己を押しつぶさんと迫っていた事か?

 

その全てが、『想定外』となってミサキに降り注いでいたのだ。

 

 

 

「さぁな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アロナ!!』

 

 

スバルの叫びに応え、列車の機能に搭載されていたフレア装置を起動し、スティンガーミサイルを誘爆させた直後。

 

 

「──根性ゥゥッ!」

 

 

「うわっ!?」

 

 

スバルが選んだのは、自分自身を外に投げ出す勢いで二人を屋根に戻すことだった、反動を活かしノゾミとヒカリを屋根に引き上げたスバルは、列車から落下する寸前で左腕を──、

 

 

「──ぎッ…」

 

 

貨物を運ぶフックに差し込む暴挙。

ミチミチと肉が生で裂ける音を響かせて、重力に従い宙ぶらりんのまま列車へと張り付く。

 

 

「わお!?何やってんのお兄さん!??っ、すぐ引き上げるから!」

 

 

「た…──のむッ…!」

 

 

見た目は少女でもキヴォトス人であることには変わりなく、スバルの何倍もの力で一瞬にして屋根に引き上げるノゾミ。

流石に無茶しすぎのスバルに、いつもの調子のいい口調も鳴りを潜めそのまま「無茶しすぎだよ!」と伝えるしかない。

 

 

「助かった!撫でてやりたいところだけど、こんな手で撫でられたくないよな、さっさとアイツら来る前に隠れんぞ!発煙筒もあるから猶予は作れる!」

 

 

「え、ええ…い、痛くないの?それ、てか弾当たってんじゃん!なんで平然と──」

 

 

「全部後でだ!通用するかは分かんねぇけど、今から一芝居して何とか時間を稼ぐ、稼げば…──全部何とかなる!!」

 

 

「アバウトすぎるのもどうかと思うけど?」

 

 

 

──諸々の準備を終え、今回の主役女優へのインタビューをスバルは問いかけた。

 

 

 

「ちなみに演技の自信のほどは?」

 

 

「──見てて腰抜かさないでよね、お兄さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スバルの最後の保険にして切り札、光学迷彩。

──とはいったものの、正体はそうではない、本質は映像の投影であり…──短時間ではあるものの、種の無い手品を披露出来る代物だ。

 

死に戻りの回数を記録する、変化し続ける戦況を常にマッピングしたりするアロナの『観測機能』はオーパーツそのもの。

アビドス高校に辿り着けたときも、アロナが居なければマッピングによる攻略なんて、もっと回数を要しただろうし、ともかくアロナは記録した情報を映し出す事に長けている。

 

 

そんなアロナにとって、光学迷彩もお茶の子さいさい…──とは言い難いが、お茶の子さいさいと言えるほど最も明細に映像を映し出せるのは、スバルの醜態であった。

 

 

 

「──なんで」

 

 

 

「さぁな」

 

 

 

「あぁでも、名前、覚えとくぜ」

 

 

 

倒れていたスバルは、確かにスバルそのものだ。しかしあれほどの重傷を喰らっていたわけでも、血反吐を吐いて死ぬ寸前でもない。

発煙筒で煙たかったのも功を奏したのか、スバルに重なって映し出される『重症のスバル』が映像だと気づかれることは無く、迫真のノゾミの演技も相まって中々の時間を稼ぐことができたのだ。

 

 

時間を稼げばどうなるか、全部どうにかなる。

 

 

 

「まだそんなに動けて…──!」

 

 

「まだまだ元気いっぱいだよバカ野郎!!」

 

 

 

どうにかなるその理由は、いつもスバルの性根の特徴にも起因がある、何てったってスバルは『目立ちたがり屋』で、大した役でもないのに幼稚園の時は一番注目されようと突拍子もない事をしまくった事も…──恥ずかしながら。

 

すると観客は勘違いをしてしまう、『あの子が主役?』と。別にそんなことは無いのだけれど。

 

 

それは今も同じ、良く目立って良く目立つことをするから勘違いされがちだか、計画の内スバルは囮でしかない、囮以外の役割が無いしょうもない役回り、主役とは程遠いモブなのだから。

 

 

 

「全員体勢を立て直せ、標的を…」

 

 

 

状況は分からない、だが今自分がこけている事は把握出来る。周りを見渡せば部下も同じ状況で、落ちてくる列車から逃げるか巻き込まれながら標的を狙うかなら、命を捨ててでも命令を達成する、それが身体に刻み込まれた教訓だ。

 

 

 

「──」

 

 

 

それも、今は命を捨てて達成できるかどうか。

 

 

 

「…──スバル、ただいま」

 

 

「おかえりなさい、だな、シロコ」

 

 

 

引き金を引いたのに、スバルがまだ言葉を話せていたのは、ミサキの照準があらぬ方向に吹っ飛んでいったから。

 

ミサキという少女がすっころんで空を見上げているのは、後退させていた列車を、その必要性が無くなって急停止させたから。

 

必要性が無くなったのも、空から列車の残骸がミサキに向けて落下しようとしているのも、シロコが作戦を成功させたから。

 

 

元より線路の破棄は勿論、ここで戦闘するアリウス兵を逃すつもりなんて、スバルには毛頭なかった。爆弾持ちが居る以上、ここで戦闘不能程度にはなってもらわなければ困ってしまう。

あらゆる必然は、中身を知らない敵からすればまさに手品であり、奇跡でもある、もう生き残る事だけを目標にしていたスバルではないのだ。

 

 

 

「ッ──!」

 

 

「ん、スバル…捕まってて」

 

 

「ああ、ノゾミもしっかり手握っとけよ」

 

 

「はいはーい、ヒカリの事ちゃんと背負っててよねー……──これ、始末書どんだけ書かないとだめなのかな…」

 

 

 

最早殺意の塊のようなスティンガーも、こうなっては邪魔な錘でしかない、訓練された兵士のミサキがバランスを崩したのも、あの人一倍でかい武器が仇となった。

シロコ達は一足先に塊になって先頭車両へと飛びのくも、ミサキ含めたアリウス学徒はそうもいかずに──。

 

 

 

「────」

 

 

 

何を言い残すでもなく、瓦礫の山の下へと消えていく。決して致命傷でなくても、命令を達成するには致命的な拘束を喰らい、車両の屋根が重さに耐えきれず崩落するのと共に撃沈していった。

 

 

 

「ふー~っ…──」

 

 

 

「勝っ…──たぁ……」

 

 

 

 

 

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