Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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いつも誤字報告、脱字報告ありがとうございます…!!
感想沢山ありがとー!確認はちゃんと確認させて頂いています、返信遅めで申し訳ない。


『攻略停止』

──肝が据わっている、その言葉の由来は……昔、肝は魂のあるところとされていて『据わる』は『落ち着いて物に動じない』を意味する。

つまりは何事にも魂、心が落ち着いていて物に動じない人間を指し示す言葉だ。

 

 

「わざと」

 

 

なら、この状況は肝が震えていると言った様子。

恐怖、緊張、舌が乾き目がしばしばとして、身体の底、魂が震える。そんな声でホシノがスバルの言葉をオウム返しすると、

 

 

「なんで?」

 

 

──それはそれは、底冷える様な、軽い笑いが混ざる声が飛んできた。

引き攣るような顔からそれは、決して笑みが本来持つ意味や意図からはかけ離れている事が分かる。

 

 

「アロナはカイザーの機械の身体をハッキング出来る。アリウスも襲ってきてたし…操って相打ちさせなきゃ、結構厳しかったんだよ」

 

 

「だから、いや、だからってさスバル。君は…死ぬんだよ?一発でも、急所に当たれば」

 

 

「それも大体予測出来てたからな、若干運ゲーだったけど」

 

 

「………いや、それは…」

 

 

いつもの口調が崩れる、確かにそんな事が出来るならホシノ自身も同じ事をしたであろう作戦は、あくまでも『弾丸が効かない』のが前提だ。

弾道の予測も不可能じゃない、別に自分でも出来るからこそ運ゲーだというのも分かる。

 

だとしても、おかしい。

 

言語化出来ない、おかしい、それは間違って、

 

 

「間違って……──」

 

 

「……」

 

 

否定するのか、よりにもよって自分が、小鳥遊ホシノが否定するのか。

同じことをする、戦略的には間違いない、その過程で行動に重大な被害が出ないというのなら負傷も問わないだろう。

 

──スバルに犠牲を強いた自分が、彼に間違っているというのか。

 

 

「───る」

 

 

「間違ってるよスバル。そうするしかなかったとは言っても、自己犠牲で成り立つ作戦は許容しない方がいい。いつか、スバルの中の基準が壊れる、例えそれが私たちの為でも、無茶をしたのが私のせいでも」

 

 

諭す風に話すホシノだが、当の本人の表情は暗く、そしてスバルに対してではない憤怒を抱いているようにも見え、「ああ」と返事はそのオッドアイを揺らすに至らない。

 

 

「全面的に肯定させてもらうが…最後の一言は違う。そうはっきり言えるぜ、ホシノ」

 

 

「…撃たれたその後は」

 

 

「その後は、まぁ、色々ありまして…こんな感じに」

 

 

「省かない」

 

 

「う」

 

 

目を泳がせるスバル、初手の語りもミスったが次の列車での攻防は何かと無茶…それも聞いたらぶっ倒れるタイプの奴が多い、既に雰囲気は最悪、スバルの口先が通用しない領域にまで達しているのだ。

 

なんと現場はめちゃくちゃ切れてるセナが部屋中の人という人に拘束されている始末、尋問開始の合図になったあのセリフがまさか皮肉ではなく、本心で言っているとは夢にも思わなかったスバルの大誤算である。

 

 

「退いて下さい」

 

 

「ま、まだホシノ先輩が話してるから!もうちょっと待ってってば!」

 

 

「待てません」

 

 

「……ごめんな、セリカ」

 

 

「謝るんならセナさんに頭下げなさいよ!!」

 

 

見ているだけでハラハラさせられるセナの振る舞いに、周りの皆が止めてくれているとわかっていても、スバルは身を震わせて肝を縮まらせてしまう。

 

ホシノはそんなスバルの臆病な様子に咳払いを挟んで、

 

 

「スバル」

 

 

「……マジで言わなきゃダメ?」

 

 

「うん」

 

 

これ以上、ホシノの強固な意思に抗う道はできるなら避けたい。

そんな風に状況に危機感を覚えるスバル。「一通り落ち着いた後に」と語り口を始めると、その後の顛末について話し出す。

 

簡素に簡潔に、何をして何のために戦ったのか、そもそも戦いは何故始まったのか、全てがノノミ救出に帰結するスバルの行動はというと、

 

 

 

「───────」

 

 

 

「……──」

 

 

 

「──分かった」

 

 

 

3アウト×部屋の人数分、であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変だっ……たぁ……」

 

 

 

いつものように、幾度の世界と同じように星空を眺める。

部屋での尋問は一時中断、ホシノの後に聞きたい事がある人も居たのだろうが、部屋の中は騒然とし、ホシノはノゾミとヒカリに確認を取りに飛び出して行く程、スバルの供述はパワーを持っていた。

 

あれ以上の継続尋問は、スバルより先に皆の方がダウンしてしまうと、明日に持ち越しとして解散となったのだが、

 

 

「明日もあんの??」

 

 

もう、もういいと思う、もう勘弁してください。心の中でイマジナリーホシノ達に、土下座すら満足に出来ない身体の代わりにイマジナリースバルが土下座をしまくっているのを想像する。

ボロボロになってしまった左腕、引きづってしか動かせない右足、ずっと吐き気が上ってくる身体、足元がおぼつかないのは当たり前だが、

 

 

「手を貸しましょうか」

 

 

「頼むわ」

 

 

傍にセナが居てくれている。一番スバルに振り回されている、薄幸の清楚系美人なセナ…──薄幸と言うにはパワフル過ぎるが、振り回されているのには違いない。言う事を聞かない患者の面倒など、本当は見る必要等無いのだから。

 

 

「食傷気味かもしんねぇけど、ありがとうセナ、迷惑かけてごめん。もう殆ど専属医師みたいな扱いになってきてるけど」

 

 

「私も明日、貴方をここに置いて戻る事が心配になってきました。私を心配させるとは…スバル、貴方は本当に迷惑な患者です」

 

 

「下の名前呼びうれぴー…迷惑な患者の手を取って、一緒に星見てる気分は如何なさいでしょーか」

 

 

「──綺麗だと思います」

 

 

スバルのルーティーン、アビドス高校に無事に戻れた時は毎回こうして屋上に出て星を眺めている。理由は単純、星が好き。

星座が好き、それを映し出す夜空も好き、そして星が好き。自分の名前に星の名前がある事がきっかけで調べて、案外ハマった。

 

一纏めに言うと落ち着くのだ、心が浮き足立って、一人で見る星も、誰かと見る星も、スバルの夢を踊らせる。

 

 

「………」

 

 

二人きりで抜け出したと言えば聞こえが悪くなるが、実態はスバルのワガママでセナに屋上まで付いてきてもらっただけ。

本来は元々いきずりの相手、スバルが怪我するたびに彼女へ迷惑をかけているから、忍びない気分になる相手とはいえ、

 

 

「セナは星とか見るか?」

 

 

「いえ、夜間の業務中は殆ど車内ですし、何よりゲヘナで星空は見えません」

 

 

「ふーん、なら俺と新しい星座を夜空に作ろうぜ。こっちの星座とか全く知らんから適当にやってみるけど……」

 

 

アビドスの夜空は強く星が輝いている、光を反射しづらい砂丘、無人になった住宅街も相まって夜は殆ど先が見えない。

以前とは違い『星が見える』現状に、若干の違和感と危機感を持ちながら、震える左手をセナに支えて貰い、そしてセナの手首を右手で支え空に線を書き始める。

 

一人が寂しい患者の相手に、もっと面倒くさそうにしていいとは内心思いつつも、興味のある顔で星を眺めるセナを見ていたら俄然楽しむ気が湧いてきた。

 

 

「ふんふふんふふーん」

 

 

「──これは、何か意味があるんですか?」

 

 

星夜の中でも目立ちたがり屋なきらきら星を探し、また別の目立ちたがり屋とを結んであげる。これでもうひとりぼっちじゃないなと、適当なカップリングを作るスバルの動きは乱雑で、とても意味のあるようなものには見えやしない。

 

意味があるかと聞かれれば無い、ただこうやってると気が楽になって、楽しめるからというだけ、スバルは乾いた笑いで、

 

 

「なーんにも、でも、こうしてないと」

 

 

「──なんか、色々忘れちゃいそうな気がしてさ」

 

 

「……」

 

 

だから、付き合わせてるだけなのだ。迷惑な患者がする事に、特に意味は無いし、言ってしまえば精神安定剤の処方の様なもの。

 

 

「──スバル」

 

 

「貴方に恩を受けている方があの場に居て、貴方が傷付くことを酷く嫌がる方が居て、何故死体になりにいくのですか?私は死体を直せても、死体を治す事は難しい」

 

 

「治らない傷はあります、その傷は、予防するしか方法が無い」

 

 

中々に難しい話題だ、シロコやホシノ、アヤネやセリカはスバルの無茶を聞いた時、怒りよりも先に悲しみが来ていた。

アルは怒ってくれて、ムツキとカヨコは呆れて物が言えず、ハルカは…いつも通り。

カンナは手をフックに引っ掛けたと話し出した辺りで既にキレていて、一人部屋の隅で椅子に座り押し黙っていた所を思い出すと、まだ怖い。

 

今名を述べた皆は、それぞれスバルの無茶に対して…確かに、『傷』を負っている、心の傷、治せはしない負の感情。

 

 

「本音、言ってもいいか?」

 

 

「構いません、患者のメンタルケアも一応は対応出来ます」

 

 

「やりたくねー、マジで、感じなくても痛いの嫌だし、俺がやってる事でホシノとかシロコ達が悲しんでるとこ見んの辛いんだよ。方法がそれしかないって、俺が一番馬鹿野郎って言ってやりてぇ位」

 

 

「なるほど」

 

 

「じゃあなんで頑張るかって話になるだろ?」

 

 

何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、何度も想像を絶する死に方をしていると、段々と頑張っている理由すら希薄になってしまう。

 

命を救いたい、ホシノ達を救いたい、大いに結構、だがそれしか残らない人間にスバルが成ってしまった瞬間、セナの言う通り『治らない傷』は何をしても直せなくなる。

魂の死、心の死、スバルの努力の結果、それらが死に至る傷を負って戻らないホシノ達を、命だけ救ってしまえば、

 

 

「──星って綺麗だよな」

 

 

「…?」

 

 

「俺が好きな物って大体そうなんだよ、そこにあるだけで綺麗で美しくて、守りたくなる。今だって星は宇宙に浮かんでるだけなのに、勝手にそこにエモさ感じてる俺がいる」

 

 

「俺さ、ずっと他人から嫌われたくないって思いながら生きてたんだぜ?まぁ、それで空回りして失敗ばっかで、失敗って認めたくないとか、重度のアホピエロだったのに……」

 

 

「──自分でそんな事言える位成長して、好きな物(ホシノ達)に恩を受けてるってこと、好きで仕方が無い、大好きが溢れて仕方ない。えっと確か……薔薇はなぜという理由もなく咲いている。薔薇はただ咲くべく咲いている。薔薇は自分自身を気にしない。人が見ているかどうかも問題にしない。だっけか、この場合…」

 

 

「──セナが薔薇で、俺はそれを見て、好きに癒されてる、それが俺の頑張ってる理由」

 

 

花が枯れないように、花を守るのでは無く、花をドライフラワーにしてしまった時が、スバルの終わりでもある。

 

そうならないように思い出す、何度も何度も何度も何度も、死に戻りをした数だけ思い出す。

 

例えそれが自罰的なものでしかなくとも、思い出せなくなるよりはずっとマシだ。

 

 

 

「納得しました、貴方は弱くとも強くあれる、カッコイイですね」

 

 

「…セナって毎度実直というか素直つーか、同い年に勘違いさせそうな相手めちゃくちゃ多そうだよな」

 

 

「私は勘違いで無くても構いませんよ、私としてはスバル、貴方との時間は心地好く、そして温かい」

 

 

「……だからそういう所な?」

 

 

星空から腕を下ろして微笑み合うも、本当に分かっているのかと問いたくなる顔をしていたセナ、彼女におだてられると、おちゃらける暇も無く……スバルはぐうの音も出ずに押し黙るしかない。そうしてスバルからの反応、およびおふざけがないことを見届けるとセナは星夜の明かりを頼りにスバルの顔を見て、おデコを当てた。

 

 

「──ちょ」

 

 

「顔が赤いのと身体が震えていたので確かめましたが、熱は無さそうですね、怪我、体調が悪化するより前に部屋に戻りましょう」

 

 

「へ、へへーん、危ない危ない、そこら辺の男なら一発で堕ちる魅惑のおデコごっつんこも残念ながら俺には効かねぇ。こと恋愛ノベルのあるある展開に関しては本で予習済みだから──」

 

 

「──スバル?」

 

 

「だからなんでこんなタイミングに来んの!? それは聞いてねぇって!!」

 

 

──背後から見れば、スバルとセナが顔をひっつき合わせてるようにしか見えない状況。

運悪く、というか最早運命の悪戯で、タイミングよくシロコとホシノが屋上の扉を開けてスバルを呼び戻そうとしていたのだろう。

 

まさか二人も、扉を開けて最初に飛び込んでくる光景がこうも勘違いしやすいものであれば、

 

 

「──スバル」

 

 

「ガチトーンやめよ!? な!?」

 

 

「うへぇ〜、今時の若い子ってこんな積極的なんだ、そっか」

 

 

「おい!ホシノもおじさん装いきれてないから!! その『そっか』に含み持たせないで!?」

 

 

躙り寄ってくる二人に対し、逃げようとするスバルの背中をつまみ、二人へと向き合わせるセナは、

 

 

「おや、丁度良かった、スバルとの用事、元い患者に対するケアも終わったので部屋に戻ろうかと思っていた頃なので」

 

 

「用事?」

 

 

「私と星座が作りたい。そう言って手を取ってくれましたよ」

 

 

「──スバル??」

 

 

「お前、俺寄りに見えて普通に容赦なく俺を切り捨てるよな!?」

 

 

立場を弁えてるのか弁えていないのか、中途半端ながらもセナの残した爆弾発言により、無事スバルはホシノとシロコに両脇を固められてしまった。

全部話すまで逃がさない、そんな姿勢にスバルは悶絶。知っている筈だ、散々ラノベで予習してきたのだから、こんなシチュエーションへの対策方法を知らないスバルでは無い。だがいざ実践となると、

 

 

「二人きりで何話してたの?」

 

 

「へ、変な事話してねぇって! 俺はホシノ達の為に生きてるって事を話してただけ! 勿論、勿論全員好きだ、全員等しくラブチューニューだってば!!」

 

 

「は?」

 

 

「え?」

 

 

 

その場しのぎにすら、ならないのであった。

 

 

 

「詳しく話そっか」

 

 

「なんで!?」

 

 

「分かってないかー、おじさんでも今のは流石にだと思うよ〜?」

 

 

「いやだから、別に目移りなんかしてないって……──シロコの事、大好きだし愛してる。相棒はアロナだけどリアルパートナーはシロコしかいない」

 

 

「………………他のみんなは?」

 

 

「そりゃ、大好きだけど…」

 

 

「ん、連行」

 

 

「だからなんで──!?」

 

 

 

まるで重罪犯のように、両脇をガッシリと組まれて屋上から退散させられるスバルなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あつ」

 

 

暑い。

 

いや、熱い?

 

 

「ぅ…?」

 

 

いや、寒い。

 

 

「ぅぷっ゛」

 

 

何もしていないのに、口から血が湧き上がってきて。

 

それを地面に吐き捨てた。

 

血は形になって、怨嗟の声をスバルに漏らす。

 

 

──役立たず。

 

 

 

「スバル」

 

 

 

瓦礫の上に立っている。

 

砂漠の上に立っている。

 

死体の上に立っている。

 

 

瓦礫の下に、山のような死体が。砂漠の中に、山のような死体が。山のような死体の中に、山のような死体が。

 

瓦礫の下から声が聞こえる、砂漠の中から声が聞こえる、山のような死体から沢山の声が聞こえる。

 

その全てが、スバルに対する怨嗟の声だ。

 

一つとして失う訳にはいかなかった、やり直してる訳じゃ無い、記憶が告げる、お前のせいだと。

 

 

 

「スバル」

 

 

 

足りないものを血潮で埋める、それでも足りないのなら五体を、それでも足りないのなら魂を、未来を切り開くために必要なものに命を懸ける。守りたいものを死なずに守る。

 

結局、何一つ出来ないままだ。約束は破って、その後は皆が不幸になって。

 

■■■を、置き去りにし続けて。

 

息をする度に、自分の愚かさを証明する罪が肺を満たしてくる。

罪の味は血に良く似ていて、そう、口の中が血でいっぱいになって死んだ時に似ている。

 

 

「スバル」

 

 

ヘイローが消えた、消えてしまった■■■を抱き上げ、開かない瞼に気が狂いそうになった。

 

そしてカンナから貰った拳銃を、自分の頭に向ける。

 

何の役にも立たない愚かな人間、何も守れなかったマヌケな男、狂う事すら出来ない半端者。

責任を背負った背中は、とっくの昔に死骸が埋めてある。

 

どうしようもなかった。方法が分からなかった。原因を突き止められなかった。

 

 

「スバル」

 

 

──それが彼女らが死ぬ理由になって欲しくなかったから。

 

敵のせいにした、相手を恨んだ、世界を呪った。ナツキ・スバルの怠惰のせいで、傲慢のせいで死んだ全員をスバル以外の誰かのせいにして。

 

 

成長した?自分で自分の事を咎めれる様になってきた?

 

 

それが出来ているのなら、もっと早く救えてるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

「──スバル!」

 

 

「っふ、ぅ、ふっ、ふっ゛……はっ、ぁぁ、ぁ゛…ぉ…ぇ゛…」

 

 

「お兄さん大丈夫!?っ、救急医学部のお姉さん呼んでくるから!」

 

 

「だぃ…だい、じょぶ、ゲホッ、つーか…あれ?」

 

 

ハチャメチャに暑い、飛び起きて周りを見渡せばいの一番にシロコの顔が見えたのは僥倖だが、何故かノゾミまでいる。

それは流石におかしかった、昨日スバルはシロコに連行された後……──何をされたかはよく覚えていないが、寝る所を同じにされてシロコと寝ていたはず。

 

なのに何故このチビガキ、じゃなくてノゾミと、

 

 

「んん?ホシノ?アヤネ?カンナ??な、何してんの?」

 

 

なんと、覚えのないメンバーが勢揃いしていた。

 

 

「…スバル、凄く…うなされてたけど…」

 

 

シロコはホシノと同程度に早く起きる、ホシノと同程度という事はこの中でも最速にあたる位置だ、起きたのはいいものの、隣で寝ながら苦しむスバルを見ていられず起こそうとしたが、声をかけても全く起きないスバルに大焦りしていたようで、

 

 

「あ〜、ちょい怖い夢見ただけ、てかぜってぇお前俺の上に乗って寝てただろコンチクショウが、なんか暑いと思ったわ」

 

 

「そうだけどぉ……──本当に大丈夫?もしかして私のせい?」

 

 

「いーや、子供湯たんぽでぐっすり寝れたさ。ヒカリはどうした?もしかしてまだ目覚めないから暇になって遊びに来たって事か、我ながらガシッとノゾミの心を掴んで──」

 

 

手をわきわきとさせ、ノゾミを持ち上げようとして、若干涙目になっているノゾミに驚いたスバル。

どうしたのかと、何か己の変態性に触れて、余りのキモさに涙目になってしまったのかと心配したが、

 

 

「……ナツキさん」

 

 

「何ですか不法侵入者、警察たるもの誠実さを売りにしなきゃだ、人が寝込んでる間にひっそり枕元〜とか何処でそんな教育を…」

 

 

「巫山戯るのも、涙を拭いた後にして下さい」

 

 

「──涙?」

 

 

言われて目元に手を当てると、びしょびしょだった。

これも感覚が失われている影響なのだろう、泣いている自覚すら無くふざけ散らかそうとしていたというのなら、場の雰囲気が凍りついてることにも納得がいく。

 

 

「びしょびしょじゃん」

 

 

借りてる毛布で涙を拭う、遠慮は無用と手ぬぐいのように使い、ノゾミの涙も軽く払ってあげて、顔を綺麗にしてから立ち上がった。

 

のは、いいものの、すぐに毛布にぬくぬくと包まれに行く、朝の砂漠は冷たいのだ、感覚が錆びようが身体の震えがそれを示していて、くるまった後に隣の心配そうな顔をしているシロコの頭に手を添える。

 

軽く引き寄せ胸板と毛布でサンドイッチ、頭を撫で、シロコの不安を解消するのと同時に、スバルの不安も遠くに押しのけると、

 

 

 

「なんか、物理的に暗くね?」

 

 

 

窓の外、眺める景色がやけに真っ茶色。

 

目を細め、何故外の景色が茶色なのか、何故朝日の差し込む筈の教室が物理的に暗いのか、その原因を突き止めた。

 

 

 

「──なんじゃこりゃ…!?」

 

 

 

空を仰いでも見えるのは砂。昨夜の嵐の前の静けさ、星が見える夜の正体。

 

吹き荒れる砂嵐が、世界を塗りつぶすようにアビドス高校を包んでいた。

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