Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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『恋路のゆく果て』

 

──幸いな事に、目覚めの朝日は無事に降り注いでいて、崩壊した天井から水平線近くの太陽からの日光が差し込んでくる。

スバルが目覚めたのはその程度の時刻、アロナのアラームが無くとも起きれたのは嬉しいが、正確な時刻が分からない。

 

目を擦り辺りを確認する、皆も起き始めと起きかけが半々で、ノゾミとヒカリに至っては制服を着こなし、出発の準備をしていた。

 

 

「……おっはー…」

 

 

「おはよ、お兄さん」

 

 

「おはよー」

 

 

「…………起きんの早ぇな……」

 

 

「自分たちの電車ぐらい自分たちで管理しなきゃね!手続きとかもあるし先に出発しとくよ、私達だけじゃお兄さんは心配かもしれないけど…これでも仕事人だからね。あんまりお兄さんに甘える訳にもいかないのさ」

 

 

「…気ぃつけろよ」

 

 

荷物と銃を背負って体育館を出て行ったノゾミとヒカリ、彼女らを心配した所で…スバルよりは圧倒的に強く、油断が無ければ基本アリウス相手も心配が無い実力はあると知っている。

背を叩いて叱咤出来れば良かったが、覚めきらない頭ではそれも難しい。スバルも目を覚ますために、一人体育館から外に出て───運動場に寝転がる巨獣に目を向ける。

 

 

「で────っけぇな…!?」

 

 

その巨躯が打倒され、地面を隆起させながら暢気に日光浴している姿には精神力が削られる。そんなスバルの隣に、目覚めに気が付いたシロコが小さく笑いつつ「おはよ」と言い、朝の散歩を開始する。

 

 

「…男ってのは自然に、デカいロボットに惹かれちまうもんなんだよな。ちなみにもう見慣れたけど、シロコ達の銃を見た時もめちゃくちゃ感動したんだぜ?『かっけぇ』って」

 

 

「そっか、スバルの世界じゃ銃は当たり前じゃないんだよね?キヴォトスの外がどうなってるか知らなかったけど、不思議」

 

 

「あー、いや。なんつうか、キヴォトスの外とかそういうんじゃなくて、マジの別世界つーか……」

 

 

「ん、どっちにしたって互いに全く知らない世界同士、私も理解しきれてないから今はそれじゃダメかな」

 

 

「───構わないさ。確かに、シロコの言うとおりだわ」

 

 

シロコの順応能力の一端を担う部分を垣間見て、自身の根底にある消えない侘しさを飲み下した。気を紛らわせるためにビナーに目を向け、この巨大ロボットを作成した人物とは気が合いそうだと思う一方、一度は全身を砂にされた敵である事には変わりなく、この巨大ロボを使って歴史に名前を残す功績でもやってのける気なら喜ばしいが、今の所…朝の粗大ごみ処理にしか使えなさそうなのが何とも言えない。

 

 

「そもそもビナーって名前がずりぃわ。セフィロトの樹のセフィラの名前をこんな巨大シュレッダーに付けるとか、俺のセンスとタメ張るな」

 

 

「ん…こいつ、何なのかな。唐突に私たちの学校壊して……──そうだ、今のうちに壊しちゃっていい?」

 

 

「やめとけやめとけ、ホシノが直々に壊し切れないって言ってんだ。なんか勝手に修復するらしいし……──勝手に?っ、アロナ!」

 

 

《ご安心を、現在再起動の兆しはありません。何か異変があれば──私が、対象:ビナーの指揮系統を破損させます》

 

 

「──流石」

 

 

アロナが大丈夫というのならと、シロコの手を借りてビナーの近くにまで寄って白い機械の身体をポンポンと叩いてみる。

ひんやりとした冷たい鉄の感触に、過去の死の冷たさを思い出す。アロナによる助力が無ければ精神が崩壊したまま、何百回も死のループを繰り返していただろう。

 

──正体不明過ぎるコイツが、地下生活者からの刺客と考えるには余りにも不明点が大きい。

 

 

「こんにゃろっ、いてっ」

 

 

「蹴りたいなら代わりにやるのに……よいしょ」

 

 

自分が逆にダメージを受けたスバルのキックとは違い、鉄が赤熱しながら破られるシロコのキック、やはり同じ世界の住人ではないのを直視すると、彼女らの能力があればどこまでやれるのか気になったりして、

 

 

「うーん、把握は出来てるけど、限度は知らない。シロコ、ホシノとシロコ、みんなが本気でコイツの事殴り続けたら破壊できたりしない?」

 

 

「ん、私達よりホシノ先輩の方が力が強い。だからホシノ先輩が無理なら無理、それに…拳より銃の方が強いし」

 

 

「い、いや、素手で鉄ぶち抜いといて銃の方が強い訳───今更だけどシロコ達の銃って俺の世界と変わりないのに、普通に鉄貫通してるの何なの?」

 

 

「気合」

 

 

「──気合」

 

 

これも神秘のなせる業か、もしスバルにもその『神秘』が宿れば、黒服の言う通り超人的な能力を発揮できるのか否か。そうなれば作戦の幅も広がるというものだが……無機物にすらヘイローが浮かんでいる世界で、純粋な人間であるスバルが何の転移特典も無いのはいささか懐が寒すぎる。

 

 

「神秘にヘイローに───せめて理屈に沿っといてくれよ…」

 

 

埒外の力を発揮する代物が常に管理外、いつ爆発するか分からない爆弾を全員が抱えていることになる。未だに何故ホシノだけが例の暴走を引き起こすのか、『キヴォトス最高の神秘』の基準は何で測っているのか、黒服という専門家を欠く今では思考の意味もなく、

 

 

「……俺一人で本当にやれんのか?」

 

 

「心配なら、私だけでもついてくよ?」

 

 

「シロコが一番大事なんだってば、ホシノを助けに行く以上、真っ先にやることはホシノを叩きのめす事だから」

 

 

───作戦については一抹の不安を抱いたままだ。

ポケットからアロナを取り出し、ストラップを指に引っかけてくるくると回しながら天高く放り投げる。セットしておいたタイマーが空中で鳴って、アロナが設定していた起床時間を過ぎたことを告げた。

 

空から降りてきた携帯をキャッチして、自分の唯一の価値と希望であるアロナの作戦を反芻する。

作戦その1:戦力になる人間は全員で列車に乗り、生徒会の谷へ。この点に関しては車で移動できる風紀委員も含めての事。生徒会の谷に車で侵入するのは難しく、アコたちにも昨日のスピーチ、その後のミーティングで納得してもらい済みだ。

敵戦力の配置やら量は、ループ中に把握していた敵の全戦力から今までの過程での敵を引いてアロナが算出、本職の前で本職顔負けの指揮案を並べるのは罪悪感を刺激しないでも……いや、どっちかというと心地よかった。

 

───作戦その2:スバルはカンナと共に車で議会に突撃する。

 

 

「誰も、ホシノの事を甘く見てる奴はいない。色んな言葉を吐き捨ててるカイザーでさえ、ホシノと真っ向勝負はしないんだ。──その上で、生徒会の谷は全面戦争になる」

 

 

「私募ファンドとカイザー、それに…朝霧スオウ。ホシノを止めるためだけに、全戦力が一箇所に集中する」

 

 

そうなれば、必然的に議会の守備は薄く、弱くなる。それこそカンナ一人で制圧出来る程に。

全てを賭けた全面戦争を囮とした、スバルとカンナによるノノミ奪還は、シロコ達がどれだけ持ち堪えられるかによるもの。

 

 

「───シロコ、ホシノを預けていいか」

 

 

「勿論」

 

 

「何があっても、状況がどうなっても、俺はノノミを助けるまでその場に行ってやれねぇ。───情けないけど、これが俺の精一杯、ぶっちゃけアロナ無しだと今回俺の価値は………あ違った、アロナね、アロナの精一杯はこれ以上最適解が無いらしくて───」

 

 

 

「スバル」

 

 

 

「今は二人きりなんだから、嘘つかなくてもいいのに」

 

 

 

唐突に、目を細めて笑うシロコに『あの姿』を幻視して、スバルの心臓はハムスターの様に脈動する。

「ぁ」とか弱い鳴き声を出して、幻が目から消えるまで立ち尽くす。自分が今抱いている感情に整理がつかず、再度彼女を見つめ返して柔らかい笑顔に心を撃ち抜かれた。

 

 

「ま、まぁ、そうだよな。もう嘘って分かってんだからわざわざ誤魔化す必要も…………」

 

 

「…………」

 

 

「なんか、今日のシロコ、いつにも増して可愛いな…女神っぽいっつーか、艶めかしい?」

 

 

「ん、それは…多分、私も隠すのやめたからかな…」

 

 

「隠すのやめたって───何を?」

 

 

その言葉への返答は、長く彼女と共に歩んできたスバルなら先んじて予測出来ただろうに、何故か頭の中が真っ白になる。──アレであれば、あの言葉なら、今からスバルは酷く惨く、彼女を裏切る羽目になる。

 

何度も聞いてきて、何度も受け入れて、全て裏切ってきた。

 

胸に手を当てて、シロコは無言でいるスバルの前で宣言する。してしまうのなら──、

 

 

「スバルの事、好きだよ。みんなの前でも……言い続けるから」

 

 

知っているさ、分かってる、ありがとう、俺も愛してるよ。

 

 

「頭の中がスバルでいっぱいになって、大切な戦いが後に控えてるのにスバルの事を考えてる。それが幸せになるくらい、ね」

 

 

同じ事を言おうと思ってたんだ、皆を平等に守る気でいたのに、心の中の天秤は目を逸らせないくらい傾いてる。

君は、俺に命の優劣を決めさせてしまう。

 

 

「ん……心酔してる、信じてる、大切にしたくて、それに……」

 

 

「──愛してる」

 

 

「………………」

 

 

──喜んでくれると、思った。

それで喜んでくれる、何もさらけ出せない彼にとっての、せめてもの居場所になれる。

 

何も話せなくても、昨日決めたように傍で彼を笑っていられる存在に。そう思って、

 

 

 

「───」

 

 

 

そんな思惑は、彼の浮かべた表情一つで打ち砕かれた。

 

顔が霞んで見えた。

私が感じて、見て、味わっている全てが曖昧に消えていく。恋が見せる幻惑、夢が見せた誘惑、見たくないと叫んだ私は泣いていて、

 

 

「ごめん」

 

 

それ(告白)には、応えられない」

 

 

まるで遺言を語るように、文を読み上げた彼の顔は、泣いても笑っても苦しんでもない。

 

──ただ、抱えているものの違いを知って、

 

 

「……い」

 

 

「言い続ける!スバルが、自分を許せるようになるまで、『これ』を受け止めて傷つかなくなるまで……」

 

 

「違うんだ、もう傷つく事は辞めた。シロコが伝えてくれる全部が、幸せで形作られてるって分かってるから、俺は傷ついたりなんかしない、絶対に」

 

 

「それでもさ、俺…弱いだろ?物理的に」

 

 

「いつか撃たれて死ぬかもしれない」

 

 

「それは!そんなの、絶対させない」

 

 

「んじゃ、転けて死んだら?誰も予想しない、それこそ夜中にトイレに行こうとして、運悪く足が滑ったあとに打ちどころが悪くて───とかさ」

 

 

「…………」

 

 

「その程度なんだよ、俺の命って。散歩に行ったら死んじまう様な世界が悪い……って責任転嫁する訳にもいかない」

 

 

「だから、シロコ」

 

 

「──俺も、死ぬまで君のことを愛してる(諦めてくれ)

 

 

 

 

 

──泣きながら、抱擁を求めた私は、

 

 

叶うことの無くなった恋の末路に、何も手向けるものが無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナツキさーーーん!!ナツキさん何処ですかー!!ネフティスにアビドス生徒に正当な権利があるって認めさせるだけの資料!集め───って、シロコ先輩と一緒に居たんですか……──」

 

 

 

「…………あの、二人とも?」

 

 

 

「その、このどうとも言えない雰囲気は……?」

 

 

 

「──何でもないよ」

 

 

 

「戻ろっか、スバル」

 

 

 

「そうだな、戻って準備して…ホシノもノノミも、救い出そう」

 

 

 

 





──今回は短めですがこの辺りで。
告白と返答、このやり取りは何回もやってきましたが、同じ事をしてきた理由は……──この作品において、メインヒロインが誰であれ、どんな運命的な相手と出会ったとしても、その恋路がどうなるかを決める為でした。
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