Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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『アウトロー&アウトロー』

 

「アウトローって…ーーあのアウトロー?」

 

「ええ!勿論そうよ、アウトローは下賎な悪事を見逃さない、ーーそこの二人もさっさと散りなさい」

 

「……便利屋、お前ら如きが首を突っ込むな」

 

「はッ!三下の言うセリフは聞くに耐えないわね!」

 

「忠告はした、殺るぞ」

 

「ああ」

 

機械人間が放った弾丸が、かすかにアルの頬を掠った。

 

スバルが突き飛ばした二人が、ジリジリとアルへと距離を詰めていく。アルの得物はスナイパーライフル、わざわざ姿を見せたならその好機を見逃す訳にはいかない。

 

両方の機械人間の狙いがアルについたのを見て、拘束された生徒をこっそりと路地の外へとスバルが引きずって行くと……その出口で、ゴツンと誰かの頭とぶつかった。

 

責任は100:0、だとしても事態が事態の為、謝罪の言葉を早急に述べながら走り去ろうとする。

 

 

「ごめ……ーー「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃッ……すみませんすみません、ど、退いて下さいぃぃ!」」

 

 

「おわっ…!?」

 

情緒不安定な様子でスバルを押し退け進んでいく。

似たような見た目の生徒が多いこの世界で、スバルが見分けられる相手は限られている、所謂…モブ、というのだろうか、ヘイローも同じで格好も同じ生徒をよく見てきたが、今自分を押し退けて路地裏に突撃していった生徒には…茨のようなヘイローに目を奪われた。

 

その生徒が目指す先、それはアルに銃を向ける機械人間へ真っ直ぐに。

 

 

「アル様に触れるなァァァァアアッ!!!!」

 

 

「ーーは、な、なんだコイツッ!?むぐっ」

 

 

「あああああああッッ!!」

 

 

連射、連射連射連射。

野犬のように飛び掛り、悪役レスラーも真っ青のマウントを取った状態での顔面連打。トリガーが弾け飛びそうになるまで持っているショットガンを撃ち込み続ける。

 

ーー破壊したと理解出来たなら、次の目標へ。

 

 

「ひっ…」

 

「お前、お前お前お前か!!アル様に銃を!!!死んで、死んで下さいぃっッ!!」

 

「っ、待って!ハルカ!」

 

制止も空しく機械人間の頭が破裂する。壊れても尚その生徒の狂気は止まらず、残った身体部分も拳で破壊しようとしていた。

 

ーーそれを、アルが後ろから抱き締めて止めにかかる。

 

 

「ア、アル様!?」

 

「落ち着いて、ハルカ」

 

「うぅ、も、もも、申し訳ありません…アル様の手を煩わせる私なんて要らないですよね」

 

「ちょちょっと!本当に、一旦落ち着いてー!?」

 

 

ショットガンを自分の頭に突きつける等という異常行動を止めるに止めれないでいるアルを遠目に眺めていたスバル。

 

ーー現状があまり理解できない、ただ助ける声に応じただけだというのに。

生徒の猿轡と縄を解き、それでも尚立ち上がれないでいる彼女を背負ってわちゃわちゃしている二人へと近づいていくと……。

 

更に追加で、二人分の声が参入してくる。

 

 

「……やっぱりこうなっちゃったか」

 

「流石だね〜!ハルカちゃん!」

 

「…おいおい、随分と大所帯になってきたな…どっこいしょっと」

 

「ちょっと二人とも〜!見てないでハルカ止めてー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、ふぅ……ーー落ち着いた?ハルカ」

 

「ひぐぅっ…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

 

「それ本当に落ち着いてんの…??」

 

 

先程までのゴタゴタも一段落して、漸く落ち着いて話せる状況になった。

機械人間を蹂躙した狂犬の様な少女も、アルのコートの内側で震え泣いている。

 

「雨の日の子犬みたいだな、母性というか父性というか、保護欲が…こう、めちゃくちゃ湧き立てられる」

 

「クフフ〜…お兄さん、ハルカちゃんの事よく分かってんじゃん」

 

「ーーリード外した瞬間に相手の喉元喰らいつきにいく子犬だけど」

 

 

今現在、後にやってきた二人の内の、色白で細身の生徒が誘拐されかけていた子の看病をしていた。

あの後互いに敵意が無い事を、アルとスバルはアウトローの流儀を語り合いで確認していて、互いに情報の交換にまで関係は及んでいる。

 

『アウトローはやっぱ、悪を成しながら同じ巨悪を討つってのがカッケェよな…!そこに含まれるダンディさ、高貴さを俺に語らせれば本一冊書き切れるぜ?』

 

『貴方…ーー分かってるじゃない!そうよ、そうよね!やっぱり生粋のアウトローには、分かり合える同じ生粋のアウトローが惹かれ合うのね!』

 

『社長、多分その子殆ど映画の事を話して…ーー』

 

『【借りは返すぜ、俺はフェアな男だ】…俺の名はナツキ・スバル、そうさ!必ず恩は返すぜ?陸八魔アル!』

 

『ふ…期待しておくわ!(か、カッコイイ〜!!)』

 

『…………ーーはぁ』

 

 

そんな一幕を終えた両者の絆は、言葉で言い表す事は出来ないモノでつながっている。

戦闘が終わり、その後にスバルはすぐ様、『ナツキ・スバル』の自己紹介を四人へと嘘偽りなく話した、己が『外』から来た人間であり、脅しでも銃を撃たれればミジンコよりもか弱く死ぬ事を伝えてある。

 

勿論、重要過ぎること……ーースバルの目的は話してはいないが。

 

 

「全く、ゲヘナだからってやってくれたわね…カイザー…!」

 

アルとスバルが路地裏に駆け込んだ理由は、両者とも同じモノ、それはあの『助けて』という叫び声であった。

近場に居たスバルの方が先に着き、誘拐を阻止。アルは到着後状況を見て、取り敢えずあの機械人間の脳天へと発砲。

 

ーーちなみに、その話を聞いたアルは『中々のアウトロー』だとナツキ・スバルを認定していたのであった。

 

 

「筋弛緩剤、カイザーグループもこんなのに手を出すなんて…ーー誘拐は本気だったって事か」

 

 

「えと、カヨコ…さん、その子の看病してくれて助かった、その、容態は?」

 

 

「軽い挫傷と打撲、それ以外は薬の効果さえ消えれば大丈夫」

 

 

「…!良かった、拘束外しても動けねぇぽかったから心配したんだ」

 

 

「貴方の手の傷も応急処置なら出来る、割れたままの爪じゃ銃も持てないよ…ーーあ、ほら社長、ハルカが爆発しそうになってるから頭撫でてあげて」

 

 

「いんや、あんまり時間を掛けてられねえからさ、絆創膏だけ貼ってたら元気満タン、いや100倍アン〇マン!ってなわけで気遣いだけ貰っとくわ、それに俺銃撃てないし」

 

 

便利屋68との会話は済んだ、彼女らが所謂ーー『何でも屋』である事も、依頼があってこのゲヘナ学園の自治区に訪れていた時に、本当に偶然悲鳴を聞いて助けに来てくれたことも教えてくれている。

 

未だに全身が麻痺している生徒は便利屋に預ける、身体の動くがままに助けたのはいいものの、スバルにはやる事があるのだ。

 

一度助けられて恩を作った矢先に、飛行船乗り場までの足を貸してくれなんて…『アウトロー』に頼む訳にもいかない。

 

「へ〜?お兄さん、何処に急いでるのかなー?」

 

「ムツキ………さん、ごめん、さん無しで呼ぶがムツキ、そうなんだよ…マリアナ海溝よりは浅いけどバミューダ海域よりは深い理由があってだな、まっ、気にしなくても大丈夫だ」

 

「クフフ、私は『何処に?』って聞いてるんだけど……お兄さん、ヘイローも無いし、そんな手で何処まで行かなきゃいけないのかな?」

 

「…ーー飛行船乗り場、ちょっと寄らなきゃいけない自治区があんだよ」

 

「へぇ?」

 

「こっからマジ遠いんだ、制限時間もあるからサッサと失礼しなきゃ…ーー」

 

「それじゃ、そこまで乗せていってあげよっか?ね?アルちゃん!」

 

「マジ?」

 

「よしよしハルカ…ーーえ?なんですって?」

 

ーーまさかまさかの渡りに舟、わらしべ長者、棚からぼたもち、人に良い行いをすれば自分に返ってくるとよく言ったもの。

一切そんなつもりは無かったのだが、向こうから足を提供してくれる誘いをくれたのだ。

 

この上ない幸運を噛み締め、ムツキへと向き直った。

 

ーーだが。

 

「ん〜…それより前にっと」

 

ありがとうございます、と感謝の意を伝えるよりも前に。

ムツキのライフルがスバルへと向けられる。

 

 

「ッ!?」

 

「……!!ムツキ!何をして…ーー」

 

「アルちゃんまだ分かってないのー?」

 

「ーー社長、もしかして気付いてない?」

 

「え?ええ?な、何が?」

 

「…はぁ、この子の見た目で、何か思い出さない?」

 

「え……?」

 

困惑するスバルを他所に、動けないでいるスバルの顔や全体図をマジマジと観察するアル。

 

数十秒スバルの事をジロジロと観察して、頭の中である一つのピースとピースが合体した。

 

 

「……『黒髪黒目のヘイローを持たない生身の人間…』」

 

「カイザーの誘拐依頼対象…ーースバル、貴方…」

 

 

 

今までの雰囲気は一変し、便利屋68としての、アウトローとしての視線がスバルへと注がれる。

 

ーー結局コイツらもかよ、倫理を期待した俺が馬鹿だったと。

この詰みの状況から何とか逃げ出したいスバルだったが、袋のネズミよりも酷い四面楚歌状態で足掻ける気がしない。

 

カイザーカイザーと、さっき機械人間の事を呼んでいて、彼女らはカイザーの依頼を受けたというのだ。救世主だと思っていた相手がまさかの勘違いで助けただけなんて…。

そうして圧倒的戦力の差に、スバルは諦めの表情を浮かべてしまう。

 

 

「ッ頼む、アル!ここで見逃しちゃくれねぇか…!俺は、俺はまだ…!」

 

 

まだ何も進捗が無いのだ、必死の命乞い、みっともなく地面に額をつける寸前で……。

 

 

「ーーふふっ、スバル、そんな事しなくていいのよ」

 

 

「…?」

 

 

「アウトローが結んだ絆をそう易々と捨てると思って?いい?私は生粋のアウトロー、そして貴方というアウトローがどんな人間かは分かってる」

 

 

「ーー助けて、という声に咄嗟に反応出来る人を、私は『悪』だとは思わない」

 

 

羽織っているコートを手でバサりと一度払い、スナイパーライフルの銃底を地面へと立て、スバルの肩に手を置く姿はまさにアウトロー。

 

「銃を下げなさいムツキ、今からカイザーとの契約は破棄!!この件の裏で糸を引いているカイザーをぶっ潰しに行くわよ!」

 

「さっすがアルちゃん!そうこなくっちゃね〜!」

 

「またそんな事急に決めて…でも、社長がそういうなら仕方ない、か………」

 

「ーーアル、いや、アル様…!!アンタ本当のアウトローだよ、マジでカッケェ!ほ、本当に攫うっつーつもりは無いんだな…?」

 

「一度吐いた啖呵を飲み込まない、それもアウトローの流儀ってモノよ」

 

互いに最高の印象を持てた出会いだったのだろう、スバルは本人の思わぬ所でクリティカルヒットを叩き出していた。

基本的に便利屋68が依頼遂行よりも他の事を優先……更には依頼相手を裏切る事等有り得ない。

 

モジモジと土下座しかけた醜態を思い出しながら、アルへと手を出し、和解の握手を求めた。

その手を強く握り返してくれた事で、漸くスバルに安心が訪れる。

 

「…ぁ、でも送ってくれるって言っても…車とかはあるのか?」

 

「…………も、もも勿論」

 

「アルちゃ〜ん?見栄張らない!でも車ならあるよ?そこにね」

 

「そこって……ーー機械人間が誘拐に使おうとしてた車かよ!?」

 

「悪い事したんだから、悪い事し返されるなんて当たり前でしょ?ほら乗った乗ったー!」

 

運転座席に乗り込む、明らかに自分より年齢の低そうなムツキが手慣れた手つきでエンジンを掛ける姿に思わずギャップで萌えそうになる。

自分が17歳な事もあり、基本年下が多いこの世界では、大概スバルが最年長。

 

だからこそ迷惑を掛けたり恩を売ったり等に罪悪感がより強く現れるのだが、便利屋のメンバーは全員が全員自分よりも圧倒的に年上で、頼りになれる相手だと錯覚してしまう。

 

 

「どっこらせい、っとぉ、何度も言わせてもらうが、本当にありがとうな、アル、ムツキ、ハルカ、カヨコ……さん」

 

 

「…何で私だけさん付け…?」

 

 

「いや、そのなんか…ーー圧倒的なオーラといいますか、どちらかと言えば姉御と呼びたいくらいっす」

 

 

「……そう」

 

 

※ナツキ・スバル(17歳) 鬼方カヨコ(18歳)

 

 

「それで、何でスバルは飛行船乗り場に行きたいの?カイザーが貴方を誘拐対象にしてるって中々の事よ、何か事情が?」

 

「あ〜…それはなぁ、アレ、カイザーって所に狙われてる理由は俺も分かんねぇけどよ、多分勘違いだと思いたいっつうか、勘違いで間違いなのかを今から確認しに行くっつうか」

 

「あはは、何ソレ〜…ねぇ、スバル、それって私達に話せない事なのかな?これから一緒に飛行船まで行く仲なのに〜?」

 

「うぎ……うぐぐ…そりゃ、そうだな、ここまでして貰って何も話さないって訳には行かねぇ…か」

 

「よし、聞いてくれ!今から話す事の根拠だとか、どっから知ったんだとかは一切無しで聞いてくれよな!このナツキ・スバルの武勇伝を…ーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーカイザーコーポレーション。

 

 

キヴォトスで様々な事業を展開している大企業であり、スバルが車の窓から外を除けばあちこちにカイザーのグループ企業のロゴを見つける。

ロゴはとても特徴的で、王冠を被ったタコを模しているものを基本にPMC、銀行経営、リゾート開発、兵器の販売等様々なグループ企業が独自のロゴを有している。

 

スバルが目撃した悪行の通り、カイザーの経営方針は『儲かればそれでいい』というもの、言ってしまえば日本の企業の根っこにある精神と何ら変わりは無いが……ここではソレ(金儲け)に使われる手段のレベルが違う。

 

詐欺に誘拐、武力行使は序の口で、ヤクザも真っ青な手口を使って利益を追い求めるカイザーは、ヤンキーの生徒とは違いそこに遊びは無い。

キヴォトスの行政や経済に深く関わっている彼らとは……。

 

「切っても切れない縁って事か……」

 

車内で窓をずっと眺めながら、さすらう旅人の様に呟く。

スバルは今、現実から逃避している、それは別に心を折る出来事があったという訳では無い。

 

ただ、今は心を少しさすらいたいだけなのだ……。

 

 

「……」

 

 

ふと、騒がしい隣へと視線を向ける。

 

 

「ーームツキぃぃ!?!?待って、待ちなさいってば!ほ、本当にこのままシャーレに突撃するの!?」

 

「それが一番手っ取り早いんだもん!ね?カヨコちゃん」

 

「……悪いけど社長、カイザーの目論見を潰すには最善だと思う」

 

「ええ、えええええぇぇぇ……!?」

 

「わ、私アル様の為なら、全部、全部消しちゃいます!!」

 

 

 

 

 

「どうして、こうなった」

 

 

そう、隣には混沌も混沌(カオス)、パーリナイトダンスもビックリな光景が広がっていた。

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