Re:ゼロから始める青春物語   作:カピバラバラ

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おわぁぁぁぁぁぁぁ!!!(ブルアカ新ストーリ視聴)

……。

ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?

……。

お、おぉぉ、ぉぉぉぉ……──(涙ポロポロ)


『訪問者達②』

 

「……よし」

 

──ノックが三回、コン、コン、コン。と、規則正しいリズムが保健室の扉を叩く。響く音はスバルの鼓膜に礼儀正しく入場してきた。

 

体を起こし、ガラス容器に入れられた水をコップに注ぎ、ぼんやりと、覚め切らない意識を水で呼び覚ます。

二度寝をするまで秒読みの眠気、安息の塊である布団様から脱出を試みる高難易度ミッションを成し遂げ、声を上げた。

 

「入ってどうぞー!今日は──どのお姫様がお入りかな?」

 

「んん゛っ……お姫様…でなくて、残念でしたか…?」

 

スバルの顔と、カンナの顔が互いにゆでだこの様に赤く染まる。

別に、自分の言動を恥じているわけではないのだが、相手が相手、キャラじゃない。

 

なんというか、自分と適切にコミュニケーションを取ってくれる相手にはめっぽう弱いのだ。ひきこもりになるレベルで人付き合いが超苦手のスバルの、ごまかしともいえるひょうきんな態度の仮面、その一枚下を見せざるを得ない相手は、

 

「カン──ナ」

 

「あの日以来顔を見せられなくて申し訳ありません。カイザープレジデントは取り逃がし、後始末に追われ検挙にあげるのが精いっぱい……貴方の期待に応えられず、不甲斐ない姿を…」

 

「い、いい!別にそんぐらいいいから!それよりも、そ、その髪…!?」

 

ふるふると指を震わせて、指し示すは彼女の黄金色の髪。風に揺られる『筈』だった長さを保っていたカンナのロングは、風で揺れることの無いショートへと様変わっていた。

 

これでアビドス前からアビドス後にかけて、髪を切ってしまったのは二人目だ。ホシノは焼き焦げたせいでやむなくだったが、カンナも何かしらの理由があるのだろう。

けれどスバルの鼻息を荒くさせ、精神を高揚させる理由がそこにある、ショートヘアーになったカンナは、以前の見た目年齢から数歳若返った風に見えるのだ。

 

「ああこれですか、逃げるプレジデントを追おうとした際、背後から髪を掴まれたのでやむなく───」

 

「──似合ってる、最高に。ありがとう、晴天に負けないぐらいのグッドスマイルを君に。エナジー充填アイラブユー」

 

「朝からホントに元気ですね…!」

 

「YKN、YKN、やっぱりケモミミがナンバーワン。気軽に言うと夜中背後から襲われかねないからカンナだけにこの言葉をプレゼント」

 

投げキッスをしたりと、いつにもまして様子のおかしいスバルを前にカンナは本題を忘れそうになりながらも「お元気で何よりです」と返し、

 

「今回は近況報告をしに来たんです。中々の期間、ナツキさんは意識を失っていましたし」

 

「それなら……たいていの事はアロナに聞いてるけど、近況ってなら教えてくれ。カンナがあの後カイザーにちょっかいかけられてないか俺心配」

 

「その様子ですと、『ある』と答えれば飛んで行ってしまいそうですね…」

 

「……あるの?」

 

「ありません」

 

「……──」

 

「あ、り、ま、せ、ん」

 

詰め寄るスバルを高圧的な目線でいなすカンナ。

胸ポケットから取り出したハンカチで、スバルの首から垂れていた寝汗を拭きスバルの膝立ちをなだめ寝かす。

 

事後処理は、列車砲の被害を免れたアロナがスバルの代弁者として活動し事なきを得ていた。本人曰く《お気になさらず休んでいてください》と言い切れる程なので、本当にスバルは何もしなくていいのだろう。

 

今、スバルの手にアロナは居ない。シッテムの箱があるシャーレの部室に戻って、このアビドスの物語の中で解放、育成された機能を存分に活用しているらしい、リンちゃんがそんな感じで言ってた。

 

「まずは私の立場から、結局の所…役職を下ろされることは無く、汚職に関しても告発、そしてリン代行がカイザー案件の仲介者を必要としていたこともあって依然局長のまま続投を余儀なくされました」

 

「良かったじゃん!って言いてぇが、あんま浮かない顔してんね」

 

「……─はは、まぁ、本心では辞職と投獄が落とし所だったもので。そうしたとて責任を放り投げただけに過ぎませんが、やはり背負うべきものを外されてしまったのは…」

 

「大丈夫。カンナはもう、自分を責めなくていい。それに…責任ってのは背負ったら、背負ってる間は重くて苦しいくせに、顔を見合わせることもできなくなる。人間、真っすぐ前を向いたまま後ろを見るなんて不可能だし」

 

「だから──気楽にいこうぜ!俺は、カンナに背負ってもらってても、カンナの顔が見れなきゃ嫌だ。気楽に、時たま降ろして喫茶にでも足運べるくらいが丁度いい」

 

「…………」

 

──職業柄、不思議と相手の吐き出す言葉の色が分かる。犯人を問い詰めていくと、保身の為にギャアギャア騒ぐもので。

汚いものと綺麗なモノ、明暗がはっきりと分かれているからこそ、

 

「───相も変わらず綺麗ですね、貴方は。あの日から何一つ変わっていない」

 

「ノンノン、変わってないってことノーよ。ちゃんと上昇志向で変わってますとも」

 

「ええ。お互い、しっかりと成長できています」

 

明るくて綺麗なものは、ひときわ目に留まるのだ。

狂犬と呼ばれていたのは不本意だけど、今なら、綺麗なものを守れる番犬ぐらいにはなれるだろうか。

 

「ふっ」

 

「あら可愛い笑顔」

 

「最初は、怖いだのなんだの申していた気がしますが?」

 

「気の迷いって奴、そんなに可愛い顔で笑える相手に失礼な事言えないさ」

 

「そういう軽口が絶えないから……色々と、苦労をなさってる自覚を持っておいた方が良いですよ」

 

なりたい自分になろうなんて、考えたことも無かった。

なりたい自分になりたくても、私は私を裏切ったから。

 

誰にも知られずに消えていった本音、誰にも知られずに始まった贖罪、誰にも理解されないであろう後悔と贖罪。

 

「……」

 

「ナツキさん」

 

「ん?」

 

「こんな私が、地域の治安維持やパトロール、ボランティアを行う生活安全局を志望していて……本当は荒事が苦手な、市民に寄り添うお巡りさんになりたい夢を持っていただけの人間だったとして」

 

「私に、貴方は『今更』という言葉を、贈ってくれますか」

 

慰められたい訳でも無い、自戒したいわけでも無い。ナツキ・スバルへ銃を渡し意思を送った時の様に何かを望んでいるわけでも無い。

悪戯な好奇心が、悪戯な質問をしたくなっただけの、そんな一間。

 

彼にとって、相手をする必要も無い一間に、

 

「────」

 

「変われてるよ、今更なんて言わせねぇ。大変な事が沢山あって俺も変わった、変われたんだ。少しづつ、ほんの少しづつ…長い時間をかけてちょっぴり、な」

 

「今更俺は、暗い話をしたくないよ、カンナ。悲しみを推し量るだけ量って終わらせたくないし、だからジメジメした話はここで終わり。せっかくだしもっと明るい話でもしようぜ」

 

「例えば──カンナの夢の話、その続きでも…どう?」

 

───たった、その一間で人生が変わることもある。

私が行った『今更』の数々、それが寄せ合わさって作られた一瞬。

 

「ほんと、相変わらずですね」

 

それは、明るい未来の話をするには、十分な時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カンナって普段どんな仕事してんの?」

 

「仕事…となると、やはりD.U.各区画の事件対応ですね。重火器を当たり前に振り回す人と、普通の平穏…ナツキさんのように、そんな当たり前を拒否する方との共存は難しいので」

 

「あー…秩序と平穏、規則って奴が無い世界はそりゃ怖い怖い」

 

「ナツキさんも、やはりそういった恐怖することが?」

 

「そりゃ勿論。四六時中、命が羽より軽いと怖がりさんになっちまうわな」

 

カンナが部屋を訪れて数時間、ありきたりな雑談を、将来の夢等の話を交え、話題も一通り絞りつくされる。

舐めプを晒した結果投獄されて、鉄格子の向こう側で無様晒しているカヤ防衛局長の話だったり、スバルが寝ている間に最後のあがきで到来したカイザーの武装ヘリがホシノにワンパンされたり。

 

一ミリも知らない何処かの誰かの失態は置いといて、スバルには目下早急に解決すべき事案があった。

 

「……──なぁ、カンナ。最近俺の尊厳に関して深刻な悩みがありまして」

 

「神妙な目つきですね、尊厳ならいつも安売りしている風に見受けられますが」

 

「いや、まぁ、結構本気で悩んでる事があってさ。その、生理的なものといいますか……トイレとか風呂とか、今の俺じゃどうしようもない部分が…ね?あるわけですよ」

 

「ああ…」

 

「セナに、男として見せられない姿見せっぱなしって訳で、なにより毎日ゲヘナからアビドスまで通わせちゃってるしで…セナに対して辛くないか?って聞くに聞けない」

 

「本人的には多分大丈夫、だとしても!やっぱりさほらあれその、色々メンタルゲージが削り落とされる感覚がしていって、いつか甘えん坊のナツキ・スバルが爆誕しちまう前に何とかしなきゃなんねぇ」

 

「これは俺への試練!そして皆への決意表明でもある!けど俺の口から話したら絶対レスバ負けするから、何とかアロナと案をこねくりまわした結果!」

 

拳を強く握りしめ、男気を決死の覚悟で振り絞らんと喉を締めるスバル。

前述の文だけですでに彼の男としての何かは損なわれているのだが、カンナとしても病院送りにする相手のその後を知っている事もあり、上についている方の両耳を軽く手で塞ぐ。

一呼吸おいて、眼をパチパチ渇きを癒し、

 

「その他諸々、俺の口から俺の事を聞けない相手に対して」

 

「───カンナに、頼みごとがあります」

 

 

 

 

「…………」

 

「……──」

 

「──はぁ」

 

──非常に気が滅入る。非常に、とても、凄まじく、気が滅入る。

あんなことを人に頼むナツキ・スバルが悪いのか、あんなことを人に頼むしかない環境が悪いのか。

 

「どっちとも、だろうな」

 

考えてみれば、ナツキ・スバルという男の英雄的行動に心を動かされない訳が無い。

『連邦生徒会長の遺産』……ナツキ・スバルはアロナと呼称しているアレが、彼の活躍を映像として保存しリン行政官を通じ散布したように、彼の行動が彼自身にも制御できない影響を引き起こすことは多々あるだろう。

 

それは火急の事態においては、人が持つ限界を超える結果を引き寄せるが、平時ではただの倒錯と心酔による『迷惑な行動』。

 

「……余韻が抜けきらないのは分かる、しかし彼自身がその行為に対しどう思っているかを尊重できない時点で──」

 

「貴方方の善意は、負担へと変わってしまう。分かるか?」

 

「う、うへぇ…おじさんの耳が壊れちゃうかもなぁ~」

 

「ん…」

 

「何故私まで呼ばれたのか、説明をお願いします」

 

「私これからバイトの時間なんだけど?」

 

「私も今からリサイクル品を回収してもらいに…」

 

「様子を見るに、所謂…尋問、でしょうか☆」

 

顔を並び立てる彼女らは、カンナの呼びかけによって一つの教室に集められていた。

磨かれた綺麗な床に膝を擦るホシノとシロコは、火の息でも吐きだしそうな気迫のカンナに詰められている。

微動だにしない瞳がカンナが抱えている問題の深刻さを物語っており、セナもセリカも、その場にいる誰もが文句を呟きながらも話を聞き入れていて、

 

「でも、どうして公安局長の君が…いや、多分スバルが君に何かしらの頼み事をしたんだろうけど」

 

「……今回の件とナツキさんとの関連性は否定させてもらう。これは極々個人的な理由に基づく行動で、頼み事は一つ」

 

──その頼み事の重要さを示すかのように、その頼み事が幾つもの選択と試案を乗り越えて選ばれたように指を立てる。

そして脇に抱えていた紙束を一枚一枚丁寧に手渡す。A4用紙の、何の変哲もない白紙の紙をまじまじと見つめる皆は頭にはてなマークを浮かべていた。

 

「……はぁ」

 

ここからが本番だ。声を掛けて、彼女らを集めるのも苦労したが今から行う事に比べれば、非常に楽と言える。──いや、楽というほどでもなかったか。

 

『頼むカンナ!俺の尊厳の為、ひいては将来の俺の身の為、犠牲の犠牲になってくれ…!!』

 

何処かの忍者漫画で聞いたことのある台詞を吐いた彼は、涙ながらにこう語った。

 

『この赤子の様に震える俺を!その窮地から救う方法!それは!』

 

「んん゛っ、では、今から『自己分析アンケート』を皆さんに執筆してもらい、自身の精神面への変化を自覚すると共に、ナツキ・スバル氏との自己分析アンケートの交換を…」

 

「「「「「「────」」」」」」

 

「それさ」

 

「絶対」

 

「多分ですけど…」

 

「ん、スバル発案」

 

「絶対関わってますね☆」

 

「お答えしたいところですが失礼します、時間がありませんので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事で、アンケートを書いてくれたのはホシノさん、シロコさん、ノノミさんの三人でした。その他の方は後々、セナさんは封筒で輸送すると」

 

「お疲れ様、ありがとなカンナ」

 

───何故、こんな突拍子もない事をスバルは始めたのか。

にやける彼の顔に理由があるのか、大事そうに抱えている遺産に答えがあるのか、皆と仲が良いのは分かり切った事なのに、こんな初対面の交友会でやりそうな芸をさせた甲斐はあるのか疑心を抱くカンナ。

 

そんな後ろ頭をかくカンナに対し、スバルはカンナが手元で握っていた白紙の紙を一枚盗み取り、目の前へと差し出した。

 

「……──私も書け、と?」

 

「そうでございやす保安官様、朝に色々と話しただろ?やっぱしカンナも自分の変化って奴に気づいとくべきだと思うぜ、変なミスする前に。自分の物差しだけで自分を見てると、いつの間にか歪んでったって気づけない」

 

「ふむ…一理は、ありますか。分かりました、私も書いておきます」

 

「書いておくって事はこれから仕事?」

 

「はい、恐らく今日以降、中々顔を見せることが難しくなると思いますので…」

 

「なら──」

 

体を起こし、再び緩慢な動きで立ち上がる。

少し前、誰かの手を借りなければ立ち上がれなかった時からすれば大きな前進で、完治までの道のりが見えたことに安堵のため息を吐き、スバルの手を自身の手で覆うカンナ。

 

病人、負傷者への対応は慣れたものだ。元々目指していたものが、今は遠いだけで未だに私の中に眠っているからこそ、優しさを行使できるだけの自信がある。

 

「ありがと、助かる」

 

施し、指導、その裏に潜むものは自身と相手の優位の差を露わにしてしまう。『自分なり』を一生懸命に過ごすしかないのであれば、尚更。

彼の行為を称賛しているものもいれば、煩わしく、もっと言えば悪だと認識しているものもいるからこそ、力のない、私達に比べたらか弱すぎる手を優しさで包まなければ。

 

同程度の年齢の、唯の子供。身近で見ればそうでしかない彼から目を離したくない理由は痛い程分かる。過保護な連中に理つけた中には、自分への戒めも含ませた。

 

「なら、お仕事頑張れよ局長さん!朝は夢の話ししてたけどさ、別に今のカンナが悪いって訳じゃない、寧ろめっちゃ良いことしてる」

 

「立派に、市民、ましてや国家の安全を守る公安としてのカンナへここはいっちょ───」

 

直線に伸ばした手の甲と指、それをデコの前へと持って行き「敬礼」とその敬意を表すスバル。

 

目を見開いて、スバルのポーズを眺める。それから胸に取り付けた公安局のバッジを見つめ首を軽く横にひねり、満足そうな笑みを浮かべ、

 

「──行ってきます。今日も市民の安全と平穏を守りに」

 

見送りの敬礼へ、襟元を正した。

 

ガラガラパタンと、番犬の旅立ちの足音を聞き守ったスバルは渡されたA4用紙に目を向ける。自分の問題点を、みんなに知って貰わないといけないから。

 

《ゆっくりと、お座りください》

 

「わぁってるわぁってる、こけて頭打ったりしないしない」

 

《……》

 

「え?もしかして本気で心配されてる?そんな感じでコロっと逝っちゃう系男子だと思われてる?」

 

《ノーかイエスで答えるならイエスです》

 

「アロナも容赦無くなってきてお父さん悲しいよ…もしかして、まだアロナに列車砲撃たせちゃったの根に持ったりしちゃってたり!?」

 

《──スバル様》

 

「めんごっ」

 

無論、自身が居る場所へ引き金を引かせてこの結果となったので、スバルとしてはアロナに頭が上がらない。死に戻りを知っている唯一の相棒へ、自ら死のトリガーになりかねない行動をさせたのだから怒りはごもっとも。

 

「にしても…千回以上か、流石に限界ギリギリだったのかも。アドレナリンドバドバで分かってなかったけど、怪我の調子だってこんなんだし」

 

《幾千もの死に戻りを完璧に計測することは難しく、正確な回数を記憶できないのが悔やまれます》

 

「お陰様でみんなの事はよく理解できたよ。俺からの一方的なものだけど、これからはその一方通行を無くしていける」

 

そう、何故スバルがこんな妙ちくりんな事をし始めたかというと、スバルとスバルを友人と思ってくれている相手との理解度の差に問題があった。

 

距離感を間違えている、それは正確に言えばスバルの方だ。どれだけ演技派男優を極めたつもりのスバルであっても、記憶の累積によって対人コミュニケーションの取り方にどうしても変化が起きてしまう。

それ即ち───馴れ馴れしさの限度を超える瞬間があってしまう、というシチュエーション。

 

まさか黒服に対しても若干デレる対応をしてしまうとは予想外、シロコからの恋愛感情を本心を潰し死に戻りを理由に否定しておいて誰も彼もに命の友っぽい発言を続けていると、いよいよ未来が危ないと。

 

「……」

 

それにこんな自分にあり得ない程距離詰められたら、幾ら地獄の一週間を過ごした仲と言えど不快感を覚えられる可能性が、更に言えば未来出会う少女たちに──。

 

「それはマジでダメ、真っ当な青春送ってやるって決意して自分からゲームオーバーに突っ込むとか何事よ。初日はまさにそれだったし……ヒナはよくこんな奴相手にしてくれたな…ゲヘナってやっぱヤバい奴ばっかなのか?」

 

《あ》

 

「んえ、アロナの『あ』怖すぎるんだけど」

 

《い、いえ、些細な事ですが…イオリさんとの約束が…》

 

「父さん母さん、息子は異世界で立派に…立派に国の行政局で働いてテロ組織から高校を救って、世界の危機に立ち向かいました…。そんな自分でも、今度ゲヘナ、という土地で美少女の奴隷にされる変態になってしまうようです」

 

《それは最早スバル様自ら変態行為を望んでいるのでは……?》

 

流石は尊厳安売り男、自ら雁首差し出すとは肝が据わっている。これでまた一回、ロリにどん引かれた回数が増えた。

 

「やかましいわ、自分」

 

けれどまぁ、そこら辺の対策諸々を考えてこの計画を立案したのだから全然問題なし、この計画が上手くいけばの話だが。

 

「名付けて!『カッコいいところ見せすぎたから、自己分析を含めて汚い部分をさらけ出し、好感度を調節しよう大作戦!』略してヒーローギャップ大作戦」

 

《────》

 

「くっくっく、上手くいく気がしねぇー!」

 

《本題は、スバル様の本来の姿を知って貰う事で真の意味で相互理解を果たすためのものですから》

 

ああ、そうだ。今のナツキ・スバルだって本物だ。彼女らの前で心を偽ったことは無いし、疑問にはなるべく答える姿勢でいる。

──ならばこの世界に来る前のナツキ・スバルは偽物か?いいや、そうじゃない。

 

過去が無ければ、今も無い。今が無ければ、未来が無い。当たり前の事だとしても、スバルの未来を考えるとするのなら、自ずと過去を知りたくなる。

それをただスバルの手で明かすという事、今の所過去の事は口にはしているけれど、

 

「俺がなんで、どうして、引きこもりのクソニートになったのか。人生の方向性を決め切れなかった、選択できなかった俺まで知って欲しい」

 

《──素晴らしい選択だと思います。その決断に応じ、スバル様の恥ずかしがりながら作戦名を叫ぶ姿は録画録音させて頂きました》

 

「なぁそれ必要あるかなぁ!?必要ないよね?決断に応じて何ハッチャけてんの!?」

 

そうだ、そう、情けない姿を晒したくはない。けれど情けない姿がナツキ・スバルという男の本性だ。

 

頼って、頼って、一人歩きできるようになってもどうにも手が届かない位置にあるものがあるからまた頼って、少しづつ継ぎ足して歩いていく。

 

みんなにはただ、その自覚を持って欲しいだけ。ナツキ・スバルは転がり落ちそうな坂を前にして、誰より先に一歩進める人間なんかじゃなく、一緒に転がりながら支え合う……寧ろ背を押すだけ押してくたばっちまう様な人間だってことを。

 

「…今の俺が何言ったって謙遜とか、なんか事情があるんだとか勘違いされるからな」

 

《同感です》

 

「……──やっぱりアロナたん、めちゃくちゃ口調ラフになってね?これ以上俺をメロメロにさせようって魂胆だろこんにゃろう」

 

《その魅力を与えたのはスバル様です、ので、責任はスバル様が取って下さい》

 

「っ、可愛すぎんだろ…!!」

 

胸がずきゅんばきゅん撃ちぬかれてゆき、ベッドの上で朽ち果てる。そうか自分の責任か、こんな小悪魔を生み出したのは自分だったのか。

 

そうかそうか、ならば仕方あるまい。この小悪魔の責任はしっかりと親としてナツキ・スバルが果たさなくては──!

 

「アロナたん、好きな食べ物はある?俺ってそっちの…画面の中の世界にもいけるって事は、食べ物とかも持ち運べると思うし」

 

《食べ物…は特に。しいて言うのなら、いちごみるく…》

 

「いちごミルク!よし、身体の調子もそこそこ治ってきたし、ホシノかシロコの手ぇ借りて買い物行ってみるとしますか!」

 

《無理はなさらないように、私はスバル様の体調を害されることが何よりの不幸です》

 

「了解!」

 

相棒の我が儘を聞くのも、また相棒の役目。

そう思ったのはどちらだったのか、その疑問が互いの談笑の間に挟まることは無かった。

 

「さてと」

 

「──まずはホシノの奴から読み込むとしますか」

 

変化、と言われれば最もその単語が該当する相手、小鳥遊ホシノ。

変わりすぎてアビドス高校全員から数日の間、本当に大丈夫かと心配され続けたらしい小鳥遊ホシノが、どんな自己分析をここに綴っているのか。

 

スバルも、一人一人に向けて交換の為の自己分析シートを作らないといけない。未来の為、予習というものが必要なのだ。

 

「────」

 

──今は、まだ考える必要も無いな。

遺書の練習なんて、したくてするものじゃないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で交換会しまーす!」

 

「こういうのって普通対面せずやるもんじゃないの!?おじさん恥ずかしい事書きすぎてるけどその紙に!」

 

「鬼!悪魔!人でなし!!なんで公開処刑しようとしてんのよ!」

 

「──────」

 

「アヤネが死んでる…ん、私は大丈夫だけど」

 

「左に同じく、です☆」

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