ゴブリンスレイヤー【魔法剣士の異聞録】   作:星屑の騎士

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初めての原作主人公登場なので初投稿です。

今年は、ゴブスレ二次創作がもっと流行ると個人的に嬉しいですね。

今回は読者の皆さんが何気に不安だった、ゴブスレさん関係の話です。

↓へのご協力よろしくお願いいたします!

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小鬼殺し

その男の朝は、早い。

 

 辺境の街近郊の牧場。そこの納屋を間借りして寝泊まりする男は、朝の霧も濃いなかに起床し外に出た。

 

 その男の風体は、異様だった。

 

 薄汚れた鎧兜。擦り上げられて短い剣。縁の研がれた円盾。

 

 駆け出しの冒険者ですら、彼よりは良い装備をしているだろう。

 

 しかし、彼こそは在野最優の第三位、つまりは銀等級の冒険者──その名をゴブリンスレイヤー。

 

 名は体を表すがごとく、ゴブリンを専門に退治する風変わりな冒険者だ。

 

 先頃には、五年前から世話になっている受付嬢に頼まれ、ゴブリン退治に赴いた新人冒険者たちの救助にわざわざ向かったほどには執拗、あるいは偏執的にゴブリン退治に血道を上げている。

 

 その一件、結局のところ新人四人の一党は、ゴブリンスレイヤーが到着した頃にはすでに全滅しており、命は助かったのが虜の女たち合わせて数人だったが……。

 

 しかし、これはよくあることなのだ。

 

 よくあっていいことではないが、ままあることでゴブリンスレイヤーは、五年──否、十年前から見慣れている、ありふれた結末だった。

 

 骰子は、《偶然》にも《必然》にも回るもの。

 

 神々とてその行く末はわからず、操作もできないのだ。

 

 それらをゴブリンスレイヤーは、知ったことか、クソ喰らえと秘めていたりもするのだが……。

 

 辺境の冒険者ギルドでは、その在りかた、装備や言動から『なんか変なの』『ギルドの名物というか珍品』と評されており、大半の冒険者からは嫌厭されているが本人はどうでもいいと、本当に興味がなかった。

 

 そんなゴブリンスレイヤーの朝は、牧場の見回りから始まる。

 

 ゴブリンは、事前に襲う場所を偵察しており、足跡を隠すゴブリンは、ゴブリンスレイヤー曰く、『まだいない』ため兆候を見逃さないためだ。

 

 牧場の見回り、周囲を囲む石垣などの彼が地道に築いた守りの点検などが終われば、次にゴブリンスレイヤーは鍛錬に移る。

 

 ゴブリンの背丈の高さに設置した的に、さまざまなものを急所の喉を狙って投擲するのだ。

 

 手を変え品を変え、ゴブリンスレイヤーの手から放たれた得物は、面白いようにゴブリンの喉の高さを想定した的に命中していく。

 

「……ふむ」

 

 この鍛錬にどこまで意味があるのか、見れば笑う者も居るだろう。

 

 しかし、冷酷なまでに機械的に、慌てず騒がずゴブリンを始末する、そんな機構となることこそゴブリンスレイヤーの望むところだ。

 

 少なくともこの鍛錬のおかげで、ゴブリンを仕留める技術にまで昇華できている。ゴブリンスレイヤーには、それで充分だった。

 

 そもそも彼は、冒険者になってこの五年、冒険者に……ゴブリンを殺すために十年を懸けたが、無駄だったことなどひとつもなかった。

 

 ゴブリンスレイヤーからしたら、無駄なことすら無駄だったという知識を得られるのだから厳密には、無駄ではない。

 

 ヒトが有益だと言っても自分が無駄だと思えば捨て、逆にヒトが無駄と言っても自分が有益だと思えば使え。師の教えであり、常日頃からゴブリンスレイヤーが心掛けていることだ。

 

 何投も繰り返し繰り返し投擲していたゴブリンスレイヤーだったが、何かを感じて手を止めた。

 

 気配などというものはない。少なくとも彼にはそんなもの感じ取れない。

 

 すべては目で見て、耳で聞いて、鼻で嗅いで、舌で味わい、肌で感じて確かめるものだ。

 

 詰まるところ気配とは、違和感──勘働きだ。

 

 常日頃から磨けば自分のような凡人にも会得できる、まさに得難い技術。それが違和感を覚えたのだ。

 

 ゴブリンスレイヤーは、投擲の手を止めて腰に佩いた擦り上げられた剣の柄に右手をかけた。

 

 そして、ゴブリンスレイヤーは、ほとんど音もなく駆け出した。

 

 牛乳を溶かしたような朝靄を肩で切り、違和感のある方向に進んでいけば見えてきたのは、ひとつの陰影だった。

 

 小柄、長耳、地に伏せたような体勢。それは、まさしく──少なくともゴブリンスレイヤーにとっては……。

 

「ゴブリンか?」

 

「──その問いかけには、頑として抗議するよぉ……」

 

 答えたのは、ゴブリンではなく、ひとりの少女──のように見える森人だった。

 

「ゴブリンか」

 

「この状況を見て、続く言葉がそれかい……? 女の子が倒れているんだから、もっとかけるべき言葉があるんじゃないか……? いやはや、噂に違わないねゴブリンスレイヤー……」

 

 ゴブリンスレイヤーのあんまりな態度に、森人の少女──森人を外見年齢で判断するなど無意味だが──は、呆れたような言葉を力なく返した。

 

「……ふむ、行き倒れか?」

 

「……情けないことに、まさしく、だよ」

 

 悩みに悩んで出た女性にかける言葉にしては落第点だが、もう突っ込む気力もないのか、森人の少女が力なく答えると、応えるようにおなかの虫が鳴った。

 

「うぐぅ……ひ、ひもじい。死ぬぅ……」

 

「……そうか」

 

 ほとんど不死の森人が空腹で死ぬのか、ゴブリンスレイヤーにはわからなかったが、本人がそう言うのならそうなのだろうと受け入れる。

 

 長い緑色の髪を頭の左右で結い、子供っぽい見た目でタレ目。フード付きのゆったりしたローブを着ている。駆け出しの冒険者だろうと、思うが肩に担ぐようにして持ち上げた際に零れ出た認識票は、ゴブリンスレイヤーと同じ銀の輝きを放っていた。

 

「私は樽じゃないんだよキミぃ……この抱えかたには断固として抗議するね」

 

「そうか」

 

「むぅ……あっさり受け流したね。さては私を見た目どおりの年齢だと思ってるね? 私はまだ成長途上なんだ。子供のような見た目だがいずれこの場にいる誰よりも大きくなれるはずだよ。キミよりは、歳上だと思うから大人のレディとしての扱いを要求するぅ……」

 

 おなかが空いているのか、抗議も抗議としてはあまりに弱々しい。ゴブリンスレイヤーは、この森人の少女をとりあえずは母屋へと連れて行くのだった。

 

 これがゴブリンスレイヤーと初めて一党を組むようになる、森人魔法使いとの最初の邂逅だった。

 

 

 

 

 

       §

 

 

 

 

 

 母屋に連れて行き、すでに起きて朝食の支度をしていた赤毛の幼馴染──牛飼娘、彼女の伯父でこの牧場の主に事情を説明し、了承を得て──森人魔法使いが銀等級ゆえに比較的あっさり許可を得れた──森人の少女も朝食の席に着いていた。

 

「──いやはや、一時はどうなることかと思ったけど、ご馳走になってしまったね。ありがとうございます」

 

 最初はゴブリンスレイヤーに、最後は牛飼娘と牧場主に、森人魔法使いはしっかりと頭を下げた。

 

(同じ銀等級の冒険者で、こうも違うものか)

 

 牧場主は、苦手なゴブリンスレイヤーが連れてきた森人の冒険者に最初面食らったものだが、悠久の時を生きる森人らしい振る舞いに複雑な心境となる。

 

 対して牛飼娘は、照れくさそうに両手を体の前で振る。

 

「そ、そんな気にしないでください。むしろ森人さんに普通のシチューとパンで申し訳なかったですし」

 

「いやいや、普通はおおいに結構なことさ。温かな日常というのは、冒険者にとって貴重な時間だよ。なぁ、ゴブスレくん?」

 

「……俺か」

 

 水を向けられ、我関せずのゴブリンスレイヤーは、面食らったように──兜を被っていてわからないが──正面に座る森人魔法使いに顔を向けた。

 

「他に小鬼を殺し回ってる冒険者が居るのかね?」

 

「……そうか」

 

「そうだとも。それで、どうなんだい?」

 

「……ああ、そうだな」

 

 それが自分の言葉に同意したものと、聡明な森人魔法使いは理解するが、やれやれと首を横に振る。

 

「ん〜……キミはあれかい? 言わなくても通じる、わかってくれるっていうクチかい?」

 

「いや……」

 

「そうだろうとも。かの知識神やその学徒とてそうはいくまい。ならば言うことがあるんじゃないかい?」

 

 うんうんと頷きながらの森人魔法使いの言葉にゴブリンスレイヤーは、悩んだように天井を見上げ、しばらくしてようやく牛飼娘に顔を向けた。

 

「……今日も旨かった。ありがとう」

 

「い、いいよいいよ! あたしが好きでやってることだから」

 

「うんうん。青春だねぇ。いやはや、若いっていうのはいいものさ」

 

 顔を赤くしながらも、嬉しそうな牛飼娘の様子に森人魔法使いは、うんうんと頷く。

 

「おまえの……」

 

「うん?」

 

「おまえの話しかたは蜥蜴人譲りか?」

 

「おや? どうしてそう思ったのかな?」

 

「……昔……昔、そういう言い回しをする魔術師が居たんだ」

 

 どこか懐かしい林檎酒(シードル)の香りを嗅いだ気がして、ゴブリンスレイヤーは、イヤーワン時代を思い出してそう搾り出すように言う。

 

 その言葉に牛飼娘も、あの魔術師──〝孤電の術士〟(アークメイジ)を思い出した。

 

 森人魔法使いは、どこか愉快げに顔を笑ませる。

 

「ほう、そうかい。それはとんだ異端学徒だな。会ってみたいものだが、辺境の街に居るのかい?」

 

「いや……遠くに旅立ったままだ」

 

「それっきりかい。まあ、探求にしろ、探究にしろ、ひとつどころには留まれないものさ。未知なる道へと踏み出したその魔術師に幸あれってね」

 

「ああ」

 

 森人魔法使いは、何かを察したのか幸あれと祈り、ゴブリンスレイヤーも同意するように頷く。

 

「生憎と、私のこれは自然と身についたものだよ。まあ、森人のくせに弓や精霊術に傾倒しなかった時点で、私もある意味で異端なのさ」

 

 森人は、生来の野伏、斥候、精霊術師の才能を持つ。森人魔法使いのように、真言呪文に傾倒する森人は、いないわけではないが珍しい。

 

「まあ、それでも信仰に目覚める森人よりは、珍しくはないね」

 

 森人にとって精霊同様、神とてともにあるもの。

 

 忠告は聞くが、けれども神の下僕となることはない。

 

 ゴブリンスレイヤーは、諸々の話に「そうか」と頷く。

 

「それで、おまえはなぜ倒れていたんだ」

 

「見てのとおり空腹さ」

 

「その、すごい冒険のあととか、ですか?」

 

 いままで話を聞いていた牛飼娘が、遠慮がちに口を挟んだ。銀等級の冒険者が行き倒れるほど消耗するなど、どんな冒険をしたのかとおっかなびっくり問いかけたが、森人魔法使いは純粋な少女にバツが悪そうに頰を掻く。

 

「ん? いやいや、違うさ。単に珍しい本や巻物を買ってたら、いつの間にか、ね」

 

資源(リソース)管理は大事だぞ」

 

 ゴブリンスレイヤーの忠告に、森人魔法使いは苦笑いを浮かべる。

 

「それはわかっているんだけどねぇ……お金は只人の発明として有益なものだが、収支が釣り合わないのが難点だ」

 

 だからこそ管理が大事なのだが、森人魔法使いは、とある森人の里出身でより多くの魔法──もっと言えば森に居るだけでは知れない知識を知るために里から飛び出したという経緯を持つ。

 

 魔法、学間を学ぶ以前にお金が必要なため冒険者となり、いくつものパーティに入ってさまざまな依頼をこなしてきた。

 

 それから早数百年。銀等級にまで上り詰めた森人魔法使いだが、生粋の魔法オタクで基本魔法関連になるとなりふり構わなくなる。

 

 今回も珍しい魔法の巻物を見つければ大金を出してでも買うが、巻物はコレクションなので基本使わないらしい。

 

 これで銀等級まで上がれたのも、普段は冷静沈着で依頼中はしっかりしているからだった。

 

 まさに良くも悪くも熟練の呪文遣いなのだ。

 

「とはいえ、私も銀等級だからね。お世話……迷惑をかけっぱなしというわけにもいくまい。だが、私は見てのとおり華奢で可憐な森人だからねぇ。牧場で働いて返そうにも、肉体労働ではあまり役に立てない、ばかりか足を引っ張るだろう。そこで、だ。ゴブスレくん」

 

「なんだ?」

 

「キミに体で返そうと思うよ」

 

「えっ!?」

 

 唐突な──森人魔法使い以外にとっては──話に誰よりも牛飼娘が反応した。

 

 顔が真っ赤な牛飼娘の様子に森人魔法使いは、心情を察した。

 

「ん? ……ああ、いやいや、そういう意味じゃないから安心してくれたまえよ」

 

 失言失言、と苦笑する森人魔法使いは、訂正して言う。

 

「キミの冒険に同行させてくれたまえよ。これでも戦うのは得意だ。任せてくれたまえ」

 

「そうか」

 

「おや? 拒否しないのかい?」

 

 長年ソロでやっていると小耳に挟んでいた──森人の耳は早いのだ──森人魔法使いは、ゴブリンスレイヤーの反応に意外そうだが、ゴブリンスレイヤーからしたらどうということがない。

 

「おまえが自分でそうすると決めたのなら、俺がどうこう言えるものじゃない」

 

「そうかい? ならキミの冒険に同行していいんだね?」

 

「いや……」

 

「おや?」

 

 またもや意外な反応に、未知を尊ぶ森人魔法使いは愉快げに首を傾げる。

 

 ゴブリンスレイヤーは、しごく真面目に言う。

 

「冒険じゃない。俺が行くのは、ゴブリン退治だ」

 

「……ふむ。キミは、冒険者というものに夢を見ているんだねぇ。いや、揶揄するつもりはないよ。──それでも、さ。それでもいいと言ったなら?」

 

 そのあたりの機微をなんとなく察した森人魔法使いは、少しまぶしいものを見るように目を細めるも、なお言い募った。

 

「……好きにしろ」

 

「ああ、好きにするとも。この私、千年の時を生きる森人の魔女がキミの力となろう」

 

 ゴブリンスレイヤーの承諾に、そこは悠久の時を生きる森人らしい所作で応えた。

 

 しかし、一転して森人魔法使いは、楽しげに笑う。

 

「よろしく頼むよ、ゴブスレくん」

 

 

 

END

 

 

 

 




ゴブスレさんのエミュ難しい!でも、少しでもゴブスレさんっぽさが伝えられていたら嬉しいです。

しかし、初めて主人公不在の話書きましたが、自分にとっては書きづらかったですね。楽しかったですが大変でした。

さて、今回登場した森人魔法使いは、募集にに提供していただいたキャラのひとりです。年齢や装備などに変更を入れてありますが、だいたいは提供されたとおりです。

別作でフェルンを書いたりしてたからフリーレンっぽい感じでも書いたりしてました。ミミックはたぶん食われません。四方世界は、ミミックに限らず冗談で流せない怪物ばかりですからね。

提供していただいたかた、ありがとうございました。お名前を出していいのかわからないので、ここでお礼をさせていただきました。

こんな感じで今後も、変更をいろいろ加えたりしますが登場させていくのでよろしくお願いします。

あと、作者は頭が宜しくないのでゴブスレさんの手練手管が思いつかないので、今後はなんか画期的な呪文の使いかたでゴブリンをあの手この手でしばき倒してると思ってもらえればと思います。森人魔法使いは、銀等級なので女神官ちゃんの穴埋めは充分でしょうし。

森人魔法使いのおかげで、牛飼娘さんとゴブスレさんの距離が縮まる可能性も出ましたしね。受付嬢さんはこのまま敗北するかもです。

あと、巫女キャラは、自分の考えてたぶん、募集から来たぶんで、刀使い、弓使いで分けて出したいところですね。なんとかしなければ。

それではまた次回!

受付のお姉さんの外見のイメージは……

  • エノメ(不徳のギルド)
  • ルナ(このすば)
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