そういえばそろそろ原作キャラで退場、あるいはゴブリン被害を受けてる女の子キャラを誰かしら助けるかどうか考えないとですね。個人的に原作で悲劇に見舞われたキャラが生存したり、被害に遭わなかったりするのは、ゴブスレ二次創作、というか二次創作の醍醐味のひとつだと思うんですが誰を助けるべきか悩みますね。
新たに狼人の賢狼剣士を仲間に加えた魔法剣士と女神官は、冒険者としての自分たちを知り合うためにゴブリン退治の依頼を請けた。
三人が引き請けた依頼はこうだ。
村の外れの洞窟にゴブリンが棲みついた。
村の若い衆が見回りをするも、野菜を、家畜を、やがて村の娘を奪われた。
これに血気盛んな村の若い衆が農具だの、古びた武器だのを手に洞窟に乗り込もうとするが村の長がそこに待ったをかけた。
わざわざ命懸けで危険なことをする必要はない。金を払って冒険者を雇おうと。
そして、依頼が出されたのが五日ほど前、ゴブリンを退治して村娘を救出してほしいというものだった。
それは、どこまでも定期的、あるいは典型的な依頼だった。
その依頼を請けて村に移動するにも徒歩ゆえに時間はかかり、村娘が攫われて七日が経過した頃、ようやく村に到着した魔法剣士たちは、村長からそれらの事情を聞かされた。
それから、移動の疲れを厚意から──女神官が農村でも信仰される地母神の信仰ゆえに──村長の家で数時間の休息を取って回復し、魔法剣士一党は、件の洞窟へと向かった。
鬱蒼と生い茂る森を抜け、ぽっかりと空いた空洞が見えてきた。
魔法剣士一党は、木々の茂みに隠れて洞窟の様子を窺った。
特に見張りはないが、入口の脇に汚物が堆く積もっていた。
「……あの量だと結構な数が居そうだな。少なくとも俺たちが最初に請けた依頼よりは、数が多そうだ」
「そ、そうですね……確か村長さんは、村の近くで見たのは四、五匹とおっしゃってましたが」
「だが、それは四、五匹が全部同じとは限らない。つまり最低でも四、五匹ってことだ」
魔法剣士と女神官は、僅かな経験から状況を類推する。
そんな後輩たちの邪魔をしないように話を聞いていた賢狼剣士は、この手の匂いには経験から慣れているのか、少し顔を顰める程度の様子で口を挟む。
「……どうやら、結構な規模の巣穴のようですね。あれを見てください」
そう言って賢狼剣士が指し示したのは、洞窟の入口の脇に建てられたネズミの頭蓋骨と、カラスの羽を組み合わせたトーテムらしきものだ。
「気になっていたが、あれはなんだ?」
「あれは、ゴブリンのトーテムです。ゴブリンの上位種、呪文使いが居る証拠ですね」
魔法剣士の問いに賢狼剣士は、油断なく洞窟を観察しながらそう答えた。
「えっ!? ご、ゴブリンって呪文を使えるんですか……!」
女神官が思わず驚きの声を上げるも、すぐに声を潜めてそう訊き返した。程度の差はあれど、魔法剣士も初耳だった。
「はい。少なくとも白磁の呪文使いよりは強力な使い手です。おふたりが知っているのは、普通のゴブリンで、生き延びたりしたゴブリンは経験を積んでいき、変異するんですよ」
村の力自慢は、村に来たのを追っ払ったことがあるなどと言うが、それは巣穴から落ち延びたゴブリンだ。
そういったゴブリンが〝渡り〟となり、巣穴を転々とすることで経験を積み、成長していくらしい。
「……まるで冒険者みたいだな」
「性質は同じですね。本質はまるで違いますが」
魔法剣士の感想に賢狼剣士は、苦笑いしながら頷きつつも否定もしておく。
「まあいい。つまり、あの巣穴には、少なくとも呪文使いのゴブリンが居るわけだ」
「はい、そうなりますね。普通のゴブリンも少なくとも十、上限は……わかりませんね」
最低でも十匹は下らない。魔法剣士は、賢狼剣士の推測した内容に眉を顰めた。
ゴブリンは、最弱の怪物だがあくまで怪物のなかではの話だ。
子供程度の身体能力で武器を手に、悪知恵を働かせて集団で襲ってくると考えれば、その厄介さはわかろうものだが、これがわかっていないから新人は死にやすい。
──わかっていても死ぬときは死ぬのだが……。
魔法剣士は、ここで訊いておくべきかと問いかける。
「なら、呪文使いには気をつけるとして、あとはどんな上位種が居る可能性がある?」
「そうですね……
「
「似たようなものです。二メートル以上あるゴブリンのことですね。特殊な能力はないですが、大きく、力があります。巣穴の長、または用心棒をしていることがありますね。洞窟の入口が掘り広げられているので、居る可能性は高いです」
女神官の問い返しに賢狼剣士は、小さく頷く。
大きいとはそれだけで強いものだ。
女神官は、「それは本当にゴブリンなんですか?」と思うもそういうものなのだと納得するよう努める。
「あとは、普通のゴブリンも毒を使ったりするものも居ますから、気をつけてください」
賢狼剣士は、あまり何もかもを気に病んでも動けなくなるからと、そう言って話を終え、頭目である魔法剣士に視線を向けた。
「そうだな……隊列は、斥候、神官、魔法戦士の順でいこう。索敵は任せた」
「はい、お任せください!」
「奇跡が必要なときは、指示を出す」
「は、はい! 任せてください!」
意思を共有させ、一党は隊列を組んで洞窟へと足を踏み入れるのだった。
§
血臭と腐臭、淫行の匂いが混ざり合った酷い匂いにも、鼻で呼吸するうちに慣れていた。
夜目が利く賢狼剣士を先頭に、松明を手にした女神官、魔法剣士の順で洞窟を進んでいく。
「こ、これで匂いで気づかれたりしないんですか?」
「はい。過去の冒険で実証済です」
女神官は、認識票と一緒に首に提げた小袋をおっかなびっくり見つめる。
これは、賢狼剣士が調合した匂い消しだ。
売っているものより安価で済むが、効果時間は市販のものより短い。だが、ゴブリンの巣穴に挑むぶんには充分な時間が確保できる。
女性陣ふたりは、これを身につけることで体臭を誤魔化していた。
「まあ、経験談なら安心だな」
油断や慢心は禁物だが、効果が実証されているなら最初の冒険のようなことにはならないで済むと、魔法剣士は頷く。
実際、以前なら押し寄せてきてる頃合いだが、いまだにゴブリンが現れる気配はない。効果があるのは間違いなかった。
「──止まってください」
スンスンと鼻を鳴らし、狼耳をピクピクと震わせた賢狼剣士が静かに、しかし鋭く制止の声を小さく洩らした。
女神官、魔法剣士もそれに従って足を止めた。
「……どうした?」
魔法剣士も声を潜めて問いかけながら、小剣の柄に油断なく手をかけた。
女神官も緊張の面持ちで、錫杖をしかっと握る。
「ゴブリンです。距離はまだありますし、向こうはまだ気づいていませんが、こちらに向かってきます。数は……足音から二匹かと」
賢狼剣士の報告に魔法剣士は、素早く算段をまとめた。
「……よし、こちらから仕掛けよう。そこの岩陰に隠れて、俺が一匹、そちらが一匹を仕留める」
「わかりました」
「おまえは、万が一に備えて奇跡の準備を」
「は、はい!」
指示を受け、それぞれが動き出す。
松明の火を消し、魔法剣士と賢狼剣士は、一本道の左右の岩壁に背をつけて身を寄せ、女神官は魔法剣士の隣で同じように身を潜めた。
そうしていると、しばししてペタペタという足音とともにゴブリンが洞窟の暗闇から滲み出るようにしてやってきた。
何かを話しているのか、潜んでいる魔法剣士たちに気づいた様子はない。
ゴブリンが目前を通過する瞬間、魔法剣士と賢狼剣士が動いた。
躍りかかった魔法剣士の小剣が、賢狼剣士のシミターが、それぞれゴブリンの喉を真横から斬り裂いた。
驚きの声を出す暇もなく、喉を裂かれたことで断末魔さえ上げることなく、自らの血ぶくで溺れ死んだ二匹のゴブリンは、倒れ伏す際に魔法剣士と賢狼剣士が支えて静かに地面に倒した。
ほとんど音もなく片付けたことで、他のゴブリンに察知されることはない。静かに身構えていた魔法剣士と賢狼剣士は、何事もないことにひと息ついた。
「お見事です」
賢狼剣士の賞賛だ。
「いや、そちらこそいい腕だな。さすが一年冒険者やってるだけはある」
魔法剣士は、心からそう評した。
賢狼剣士の身のこなしは、獣人だけあってしなやかで素早い。剣の扱いも戦士職に相応しいものだった。
何よりすごいのは、斥候としての能力だ。向こうが察知するよりも先に察知できるのは、松明の火を消せば見てのとおり、機先を制して奇襲することができる。
「お、お疲れさまでした」
「いや、たいしたことないさ」
「そんなことは……おふたりとも、すごかったです。わたしなんてやることなかったですから……」
「
「だな。奇跡があるというのは、心強いものだ。動きに思い切りが出るからな」
女神官を賢狼剣士、魔法剣士がフォローを入れる。
「は、はい……!」
ふたりの言葉に女神官も緊張しながらも、微笑んだ。
「……? 何をされているんですか?」
ゴブリンの死骸の脇にしゃがみ、懐を漁っている魔法剣士に賢狼剣士が首を傾げる。
「ああ……集団で武装してる輩と戦う際に学んだことだが、殺した相手の武具を奪っておこうと思ってな」
一振りの剣では、五人も斬れないという。実戦では、血脂に濡れ、武具や骨に当たって刃が欠けるからだ。
魔法剣士は、二回め以降も五人以上を相手することもあり、実戦のなかでどこぞの騎士が落ちていた木の枝を武器にしたことをエピソードから着想を得たのだ。
邪魔にならない程度には、武具はいくらあっても構わない。仮に使わずとも、売れば金にもなる。悪いことはなかった。
ゴブリンとはいえ死体を漁るのは、女神官的に思うところもあるが、必要なことと思えば微妙な表情になるしかない。
こうしてゴブリンといえど鎮魂を許してくれるのだから、女神官も文句を言う気はなかった。
「なるほど……すごいです」
賢狼剣士は、魔法剣士のやりかたにまったく嫌悪感もなく、むしろ好感と賞賛しかないようだった。
魔法剣士は、それにむず痒さを覚えながらも、ゴブリン二匹の死体を漁り、粗末な短剣を一本、棍棒を一本鹵獲できた。
上等な品とはいえないが、使い切り、かつゴブリン相手なら充分な品だろう。
魔法剣士は、短剣を腰に挟み、棍棒を右手に、小剣や長剣は温存し鞘に収める。
「さて、呼吸は問題ないな?」
魔法剣士の確認に女神官、賢狼剣士も頷く。
「よし、なら先に進むぞ。感知は任せる」
「はい、お任せください」
頼りにされて嬉しいのか、尻尾をピクピクと震わせ、賢狼剣士は先頭を行く。
女神官、魔法剣士の順であとに続いた。
先へ進むなかでゴブリン二、三匹と遭遇することもあったが、賢狼剣士が先んじて察知することで、奇襲によって始末することができた。
それまでに魔法剣士は、ゴブリンの武具でゴブリンを殺しては、武具を交換したことで自らの武器は最初しか消耗していなかった。
いまは、新たに奪った粗末な短槍──ゴブリンの体格なら長槍──を右手に、腰には粗末な短剣を二本挟んでいる。
「……そろそろ最奥です」
鼻と耳に意識を集中させた賢狼剣士がそう告げた。
魔法剣士や女神官には、まだわからないがここまでの索敵で賢狼剣士の技量に疑いはない。
「どう、しますか?」
「……考えはある」
松明の火を囲うようにして灯りが漏れないふうに壁を作り、女神官が発した問いに魔法剣士はそう返して考えを口にした。
「その前になかのゴブリンたちは、あとどれくらい残ってる?」
「そうですね……十と三匹でしょうか」
「ここまでに十一匹斃してますから……全部で二十四匹、ですか」
賢狼剣士、女神官、それぞれの言葉に魔法剣士は、子供がいなければな、と心のなかで付け加える。
「そのなかの二匹は、上位種ってやつなわけだ。……よし、算段はまとめた。やれるかやれないか、他に案があれば遠慮なく言ってくれ」
自分とは違う考えが必ずあると思い、魔法剣士はふたりの顔を見回してそう言い、作戦を開示する。
「──といった感じだが、どうだ?」
「わ、わたしはやれます。効果もあると思います」
「私も問題ありません。それでいきましょう」
ふたりの意思も聞き、魔法剣士の指揮の下、一党として行動に移った。
§
「──冒険者だっ!」
先頭で洞窟の最奥──最も広い洞をそのまま利用した広間へと踏み込むと同時に、魔法剣士は大声で叫んだ。
もちろん、ゴブリン相手にその名乗りに意味はない。
だが、言葉を発することに意味があった。
その挑発は、匂いも音も、気配や松明の火もなく唐突で、浮き足だったゴブリンたちの注目を集める。
「──《いと慈悲深き地母神よ、闇に迷えるわたしどもに、聖なる光をお恵みください》……!」
魔法剣士がサッと身を横にずらせば、その後ろに控えていた女神官が祈りを捧げる。
敬虔な信徒からの魂削る祈りは、慈悲深き地母神へと届き、光の奇跡をもたらした。
神の威光はここにあり。燦然と輝く錫杖の光が、広間の闇を退ける。
挑発によって注視していたゴブリンたちの視界が白く焼ける。
一時的に視界を失ったゴブリンたちに対し、光を背にした魔法剣士と賢狼剣士は、照らされた広間を素早く見渡す。
ゴブリンが十一、デカいのが一、杖を手にしたのが一、虜の女が三人。
(女の数が聞いてたのより多い。村娘はひとりだから、あとは旅人か何かってところか)
魔法剣士は、状況を把握し、意味のない言葉を喚き散らしている──ゴブリン語があるかは知らない──ゴブリンシャーマンに狙いを定めた。
「《
意味のない言葉を喚くゴブリンシャーマンとはわけが違う。
魔法剣士は、真に力ある言葉を紡ぎ、呪文を為す。
魔法剣士の体内で荒れる魔力がスパークを起こす。
射線には、ゴブリンを三匹、最奥のゴブリンシャーマンを収める。
「《……
突き出された左手からゴブリンたちへと稲妻が放たれた。
まずは呪文使いからというセオリーのひとつに則って投射された雷電竜の咆哮は、ゴブリン三匹を巻き込み、ゴブリンシャーマンの身を正確に貫いた。
ゴブリン三匹、ゴブリンシャーマンが紫電によって焼き尽くされる。
そのあいだに賢狼剣士は、素早い身のこなしで躍りかかり、シミターの刃で喉元を斬り裂いてゴブリンを一匹、また一匹と仕留めていく。
残りゴブリン六匹、ホブゴブリン一匹。
魔法剣士は、手にした粗末な槍を最も手近なゴブリンに突き刺して手放した。
魔法剣士は、素早く小剣を抜き、ゴブリンが立ち直る前にさらに一匹の喉を斬り裂いて殺す。
賢狼剣士は、獣人特有の身体能力でより速く接敵し、シミターでゴブリンを二匹斬り殺していた。
「っ……はぁっ……!」
そこで女神官の祈りが限界に達し、《聖光》の輝きが途絶える。
魂削る祈りは、そう長いこと続けられず、また連続して使用するには呼吸を整える必要がある。
光が収まり、二匹のゴブリンとホブゴブリンが視界を取り戻す──よりもさらに素早い動きで賢狼剣士が一匹のゴブリンを蹴倒してシミターの切っ先を喉元に突き刺した。
生きて視界を取り戻したのは、僅かに一匹のゴブリンとホブゴブリンのみだった。
「ゴブリンを頼む!」
「はい! お任せください!」
魔法剣士の指示に賢狼剣士は、驚く速さでゴブリンの前に立ちはだかり、腰を落として盾を構え、女神官への進路を阻んだ。
それを気配で察し──彼にはなんとなくわかる──魔法剣士は、小剣を鞘に収めると代わりに長剣を腰の鞘から抜き放った。
長剣を右手に握り、ホブゴブリンの前に立ちはだかると腰を落とし、左腕に括った盾を構えた。
魔法剣士も対峙してわかるが、ホブゴブリンの体長は、かつて相対したトロルと比べても勝るとも劣らない。
(だが、所詮はゴブリンだ……!)
筋肉や脂肪は大したものだが、トロルのような硬さも、再生力もない、大きいだけのゴブリンに過ぎないと魔法剣士は、その碧眼に鋭い光を宿して睨みつける。
巣穴に乗り込んできて好き放題されたことに苛立ったホブゴブリンは、そこ不遜な相手に対して棍棒を振り上げると、魔法剣士へ叩きつけた。
否、正確には叩きつけようとした。しかし、魔法剣士は、振り下ろしと同時に右に体を逃がした。
盛大に空振った棍棒が直前まで魔法剣士が居た地面を叩きつけられた。ヒビが入り、破片が舞い散る。
魔法剣士は、摺り足で間合いを詰めると無駄な力を抜いて長剣を振り抜いた。
トロルの首すら刎ねた古流刀殺法の大地斬は、上位種といえど所詮ゴブリンでしかない耐久など容易く斬り裂き、見事にホブゴブリンの胴を深々と両断した。
まさに
背骨に達するほどに両断されたホブゴブリンの上半身が、自重を支えられずに後ろに倒れていき、ボキリッと鈍い音を立てて背骨が折れ、完全に真っ二つになった。
ホブゴブリンは背中から上半身が地に落ちて倒れ、直立したままの下半身の断面からは血と臓物が噴き出している。その下半身もやがては力を失って、どうっと音を立てて崩れ落ちた。
長剣を振り抜いた体勢で残心していた魔法剣士は、短く息をつくと構えを解いた。
「──す……すごいです! すごいですっ! お見事でした! どうやったのか私でもかろうじてわかる剣技でした!」
と、最後のゴブリンを始末した賢狼剣士が興奮気味にそう言って、魔法剣士を褒め称える。
「いや、たいしたことじゃ……」
魔法剣士は、照れ隠しに謙遜するが、本人に自覚は薄いが生死の関わる実戦で無駄な力みを抜いて技を振るうなど、それだけでも一角の人物だろう。
同じ近距離を得意とするからこそ、その難度をこの場の誰よりも理解している賢狼剣士は、魔法剣士への賞賛が止まらなかった。
賢狼剣士は、物語の英雄に憧れて冒険者となった経緯がある。だからこそ、その英雄さながらの技を振るえる魔法剣士を尊敬する。
あとになって思えば賢狼剣士は、このときから魔法剣士に惹かれていたのかもしれない。
「あの、こちらを手伝っていただけますか?」
そこに女神官のどこか不機嫌そうな声音が響いた。見れば彼女は、ゴブリンの慰み物にされていた虜の女たちを看病している。
「あ、すみません!」
賢狼剣士は、ハッとなると女神官の下に向かい、女たちの看病を手伝い始めた。
魔法剣士は、看病はふたりに任せて、この広間を調べ始めた。
長剣でゴブリンの死体を突いて回り、しっかり死んでいるか、死体に擬装しているものがいないかを調べていく。
普通のゴブリン、ホブゴブリンの死を確認した魔法剣士は、最後に焼け焦げたゴブリンシャーマンの死体を長剣で突き刺した。
その瞬間、ゴブリンシャーマンは悲鳴を上げた。どうやら《稲妻》を喰らってもまだ死んでいなかったようだ。
出目がよかったのだろうが、それもここまで。喉を貫かれ、頚椎をへし折られては、定命の者が死に抗うことは不可能だった。
「……上位種は、普通のゴブリンよりしぶといんだな」
嫌気がするといったように魔法剣士は、吐き捨てた。
「だが、おまえなんかより他の怪物や悪党のほうがよっぽど手強い」
それがここまでの戦いの感想だった。
呪文が使えるゴブリンシャーマンは、結局使う前に始末できたというのもあるが、混乱時に喚くだけなら知恵者とは呼べまい。
魔術師の恐ろしさは、火の玉やら稲妻やらを投げるだけに非ず。その知識、知恵なのだ。
ホブゴブリンは、下手にデカくなったぶん、よっぽど与しやすかった。再生力もないことも考えれば、トロルの劣化存在だ。
ゴブリンが厄介なのは、その数だと魔法剣士は考える。
(小柄なのが大量に襲いかかってくるのに比べたら簡単だったな)
魔法剣士は、ゴブリンたちにしっかりトドメを刺し終わったあと、ゴブリンシャーマンが座っていたヒトの骨で組み上がった玉座を蹴り崩した。
その裏には、腐った木でできた扉があった。
見覚えのあるそれを魔法剣士は、蹴り破った。
木片が内部に吹き飛び、足を踏み入れればそこには、子供のゴブリンが五匹ほど蹲っていた。
魔法剣士は、心が冷めるのを感じながらもそれを見下ろし、小剣を抜くとそのゴブリンの子供たちを殺し尽くした。
そうして、魔法剣士一党は、総数二十九匹ばかりのゴブリンを皆殺しにしたのだった。
END
といった感じで2回めとなるゴブリン退治も終わりました。普通に蹴散らせましたね。魔法剣士くんのなかでは、ゴブリンはやはり雑魚敵と格付けされました。
でも、下手に技とか術使う上位種よりも、小柄なゴブリンがわらわら押し寄せてくるほうが厄介という認識も持ってます。
やっぱりゴブリンは面倒ですね。そのくせ報酬は良くないから、これは冒険者ウケ悪いのもわかるというものです。
今回、賢狼剣士が頼りになることもわかりましたし、一党としても前進できたので報酬以上のものを得たという感じですね。
それでは、また次回!
受付のお姉さんの外見のイメージは……
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エノメ(不徳のギルド)
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ルナ(このすば)