二度めのゴブリン退治も無事に終わらせ、救出した虜の女たちを村に預けてから冒険者ギルドに戻ってきた魔法剣士一党は、受付で報告を済ませたあと、賢狼剣士の歓迎会を兼ねた依頼達成のささやかな祝賀会をギルド併設の酒場でしていた。
「「「冒険の成功に!」」」
魔法剣士は林檎酒、女神官は葡萄酒、賢狼剣士は蜂蜜酒を頼んで祝杯を上げる。
「……ふぅ、しかし、改めて思ったが斥候が居ると全然違ったな」
林檎酒を飲み干した魔法剣士が、今回の冒険の感想を口にした。
「ん……はい。それに、前衛がふたり居ますと安定しますね」
葡萄酒を飲んでいた女神官が、そう言って頷く。
「いえ、そんな……私は、斥候としてはまだまだです。それより、おふたりも大変素晴らしい腕前でした」
蜂蜜酒を飲んで赤らんだ頬のどこか色っぽい賢狼剣士が謙遜し、ふたりを逆に褒める。
「いや、俺のほうこそまだまだだ」
「わ、わたしというよりは、地母神さまがすごいんですよ」
魔法剣士も、女神官も、賢狼剣士同様に本気でそう思っているようだった。
変に増長するよりは、生き残る目があるが、まだまだかわいらしい駆け出しふたりの様子に賢狼剣士は笑顔を浮かべる。
その視線に気づいた女神官が恥ずかしそうに頬を赤らめ、俯き加減に話の流れを変えるように言う。
「で、でも今回は何もありませんでしたね?」
「……ああ、それは俺も思ったな」
魔法剣士も女神官が言わんとすることを理解し、同意とばかりに頷く。
最初の依頼から始まり、ふたりで請けた依頼では、途中に必ず何かしら予定外なモノと偶発的に遭遇していた。
魔法剣士が槍使い、魔女と一緒に行ったときは何も起きてないように思えるが、あれはそもそもみすぼらしい者たちとの戦いそのものが異常事態といえる。
だから今回のように依頼内容どおりに終わったことは、当たり前といえば当たり前なのだが坐りが悪いようなものを覚えるのだ。
「でも、まあ……これが普通なんじゃないか?」
「そ、そうですよね!」
魔法剣士の言葉に女神官も、納得したとばかりに頷く。
「冒険者記録で見てはいましたが……おふたりは、大変な冒険をしてこられたんですね」
「ああ、まあ、駆け出しにしては、って枕詞が付くが……」
賢狼剣士に魔法剣士は、そう返すと女神官と顔を見合わせて微妙な笑みを浮かべる。
「でも、とても気になります。お聞きしてもいいですか?」
「ああ、構わない。そうだな、あれは俺たちが初めて請けた依頼なんだが……」
賢狼剣士の要望に応じ、魔法剣士が初めてのゴブリン退治について語り、女神官も補足しながら話に加わる。
そうして話しているうちに、賢狼剣士の身の上話に触れることになった。
両親を亡くしたあとに育ての親として世話してくれていた叔母も流行り病で亡くし、家も自らの手で焼き払って故郷を捨てた天涯孤独の身であること。
昔から愛読していた英雄たちの冒険譚──かの自由騎士が森人の恋人とともに歩んだ旅、赤毛の冒険家の冒険譚など──感化されて故郷を出て冒険者となる道を選んでいまに至るらしい。
「わたしも少しわかります。わたしは、神殿の皆さんが家族みたいなものですが、成人したので独り立ちすることにしましたし」
「俺も文庫育ちで姉さんたちが居るが、冒険者に憧れて出てきたからな」
「そうだったんですね。ふふふ。私たち、似たところがありますね」
女神官、魔法剣士、賢狼剣士は、それぞれに共通点を見い出してまた絆が深まった気がした。
それからも賢狼剣士の過去の冒険なども聞き、冒険譚を肴に小さな祝賀会は盛り上がって終わった。
余談だが、魔法剣士と女神官の話を聞いて賢狼剣士は、より魔法剣士に好意的な視線を向けるようになったのだった。
§
祝賀会の翌日、今日も今日とて仕事にありつくため、冒険者たちがひしめき合っている冒険者ギルドのロビーに、魔法剣士一党の姿もあった。
冒険者たちが次々と依頼書を引き千切って受付に向かうが、魔法剣士一党は焦らない。
まだまだ駆け出しで仲間も充実していない魔法剣士たちが請けれる依頼の種類は、そう多くない。ましてや白磁と黒曜の依頼は安いゆえに急がなくても大半は残っているのだ。
(……お? これなんか良さそうだな)
魔法剣士が目をつけたのは、水薬などの材料となる薬草の採取依頼だった。これなら自分や女神官も知っている薬草だし、危険も少ない。
(もちろん、野生の獣や怪物なんかと偶発的遭遇する可能性はあるが、森の歩きかたなんかは文庫で教わっているし、危険はある程度避けられる)
危険をゼロにはできないからこその冒険だ。あとは、そのときになってやれることをやればいいと魔法剣士は、その依頼書を掲示板から千切って受付へと持っていった。
§
採取自体は、魔法剣士も、女神官も、賢狼剣士も知識があったため、薬草の群生地を探すのに手間取った程度で見つけてしまえば問題なく終わった。
「たくさん採れましたね」
「ああ、幸い獣や怪物にも遭遇しなかったしな。そっちはだいじょうぶか?」
「はい、おかげさまで。匂いがキツくないもので助かりました」
採取した薬草の詰まった袋を背負い、魔法剣士一党は並んで言葉を交わす。多めに採取したのは、必要数を超えて採取した場合、一定数に応じて追加報酬が出るからだった。
「──……から……寄越せ……だろ!」
魔法剣士一党がホクホク顔で街道を進んでいると、不意に微かな怒声が聞こえてきた。
魔法剣士は、即座に盾を構えて腰の剣に手をやり、女神官を守れるように位置取る。
女神官は、ビクッと体を震わせるが錫杖をしっかと握ってキョロキョロと辺りを見回す。
賢狼剣士は、そんなふたりよりさらに前に出て盾を構え、狼耳をピクピクと揺らし、鼻をスンスンと鳴らす。
「……どこだ?」
「はい、少し待ってください……えっと、街道をこのままちょっと進んだ先、ですね」
魔法剣士の確認に賢狼剣士は、只人より遥かに優れた聴覚と嗅覚で出どころを捉えた。
「……よし、慎重に確認しに行こう。もしかしたら盗賊かもしれない」
「はい、わかりました……!」
「案内を頼む」
「はい、お任せください!」
魔法剣士の決定に女神官は、ぎゅっと錫杖を握って頷き、賢狼剣士は先導を引き受けた。
そして、賢狼剣士を先頭に女神官を背に庇いながら進み、魔法剣士は街道の分かれ道付近で複数の人影を捉えた。
ここまで来れば獣人ならずとも声や姿を確認できた。
「いいから寄越せってんだよ!」
「──嫌よ。なんであなたたちみたいなヒトたちに渡さないとならないのかしら?」
槍を手にして胸甲をつけた少年──魔法剣士と変わらないから成人したてか──がひとりの女の子に怒声を上げていた。
女の子も魔法剣士と変わらぬ歳に見えるが、女神官や賢狼剣士で美少女慣れしている彼から見ても類い稀な美しい少女だった。
黒の外套を羽織り、白の上着に黒いスカート、黒のとんがり帽子といった魔術師らしい格好。
黒いリボンが特徴的な腰まではある長い銀色の髪、愛らしさと理知が同居した蒼氷色の瞳の神秘的な少女は、大柄な少年を前にしても冷静な表情で静かに言い返している。
その動じなさに槍を手にした少年に率いられているらしい、ふたりの少年はおどおどとしていた。
「な、なにがあったのでしょうか?」
「……痴話喧嘩、には見えないしな。たぶんだが、あの三人組が銀髪の女の子が持ってる鞄を奪おうとしているんだろう」
女神官の問いに魔法剣士が答えるが、それより気になることが彼にはあった。
「? どうかしましたか?」
魔法剣士の様子に気づいた賢狼剣士が問えば、彼は武装した少年たちを──もっと言えば彼らの胸元から視線を外さずに言う。
「──あの男たち、冒険者だ」
「えっ!? ……うそ」
「……確かに認識票が見えますね」
女神官は驚きながらも、賢狼剣士は冷静に少年たちを注視すると、確かに三人の少年の胸元では、白磁等級を示す小板が確認できた。
「ど、どういうことですか?」
「……あの魔術師が実は犯罪者、なんてことはないよな」
「何事も見かけで判断するのは禁物ですが、少なくとも彼女は違うのでは? 彼女もおそらく冒険者のようですから」
賢狼剣士は、魔法剣士の言葉に銀髪の女の子の豊かな胸元を確認してそう言う。彼女の言うとおり、少女の地母神に勝るとも劣らない胸元には、細い鎖を通した白磁の認識票が視認できた。
「だよな……なら依頼人と冒険者間の何がしかのトラブルか、あるいは……あの冒険者たちが冒険者崩れ──ならず者かだな」
「えっと、騙りってことですか?」
「それか、冒険者でなくなった奴だ」
魔法剣士の言葉に疑問を示す女神官は、息を呑む。
冒険者でなくなった者……それは冒険者では珍しくない、とまでは言わないが決して少なくない存在だ。
請け負った依頼が失敗したり、不備があったり、命惜しさに依頼人を見捨てたり、その他にもエトセトラ、エトセトラ……何がしかの理由で冒険者を続けられなくなった者たちが巻き返しに犯罪に手を染めるのだ。
そして、それは白磁等級や黒曜等級の冒険者に多い。ゆえに一緒くたにしてはならないが彼らは、信用信頼がされにくいといった一面があるのだ。
「どうしますか?」
「……事情はまだ明確にわからないし、依頼に関係ないから無視してもいいが、そんなのは冒険者じゃないし、男でもないよな」
魔法剣士の言葉に女神官は、仕方ない人ですねといった微笑を浮かべるが、そこに拒否感は一切ない。彼女としてもあの少女を助けてあげたいと思っていたのだ。
──方針が決まればあとは決断的に。
魔法剣士は、賢狼剣士を護衛につけて女神官に一定の距離を取らせてついて来させながら渦中へと近づいていった。
渦中の人物たちもこの距離まで近づけばさすがに三人の存在に気づき、それぞれ視線を向けた。
「な、なんだよおまえら!」
「そっちこそなんだ。女の子ひとりに男が三人で寄ってたかってみっともないだろ」
「おまえには関係ないだろ!」
「いや、ある。気になったんだからもう無関係じゃないよな」
槍を手にしたリーダー格らしい男が怒声を上げるが、魔法剣士は冷静に返す。
少ないながらも修羅場を経験している差か、まったく動じない魔法剣士にリーダー格の男が怯む。
「それで、何があったんだ? おまえたち、冒険者みたいだがこの女の子が何かしたのか、依頼に関係あるのか?」
魔法剣士の問いに『なぜ自分たちが冒険者とわかったのか?』と怯む三人の少年。こういった注意深さも経験の差であった。
「あの、いいかしら?」
「ああ、もちろん」
それを見たからか、銀髪の女の子の問いに魔法剣士が促す。
「私は、この先の街の冒険者ギルドに向かっていたのだけれど、そこをこの人たちに呼び止められて、鞄の中身を渡すよう迫られて拒否していたら──」
「いまに至る、と。おまえたち、冒険者のくせになぜこんな真似をする?」
「う、うるせぇ! 仕方ねぇんだ! 依頼に失敗しちまったからな! だが、そこの女が俺たちの依頼に必要な薬草を持ってるのを見たんだ! だからそれさえあれば……!」
銀髪の女の子の話に納得した様子の魔法剣士が訊けば、リーダー格の男は鬼気迫る様子でそう言う。
改めて見れば三人とも、少なからず体と鎧に汚れや傷が見られる。おそらく採取依頼で無遠慮に森などに入り、獣か怪物に追い散らされたのだろう。
そして依頼に失敗した矢先、銀髪の女の子が彼らの依頼に必要な薬草を持っていたのを偶然見たのか、こうして強硬手段に出たのだ。
いまならまだ巻き返せる、と。
「無駄だ。ギルドは決して馬鹿じゃない。こんな手で依頼を達成させても、ギルドには遅かれ早かれ露見する。こんな真似をした時点でおまえたちは、もう冒険者として詰んでいるんだ」
おまえたちは冒険者じゃない、と言われた少年たちは、絶望感や怒り、悲壮を綯い交ぜにした、追い詰められた者特有の切羽詰まった表情を浮かべる。
「うるさい……うるさいうるさい! 黙れ! まだ、まだ俺たちは終わっちゃいないんだ! 依頼は成功させてみせる! いいから薬草を渡せ!」
リーダー格の男が槍の穂先を突きつける。残りふたりの男たちも短剣や弓矢をもたもたと構えた。
「おまえ、同じ新人冒険者のくせに生意気なんだよ! ちょっとかっこいいからっておっぱいは小さいけどかわいい神官の子だけでなく、おっぱい大きくてかわいい女の子まで連れて! おまけに女の子助けて、感謝されて、いい身分だよな! その子も俺たちがもらってやるよ!」
もはや破落戸やならず者と変わらぬ言動だった。
女神官が涙目で控えめな胸元を庇うように両手で押さえ、賢狼剣士は迫力のある笑顔を浮かべ、銀髪の女の子も豊かな胸元を庇いながら冷たい視線を彼らに向けた。
魔法剣士は、冷たい目になると長剣を抜いて、振り上げた。
左斜めから斬り上げられた長剣は、リーダー格の男の槍の柄を切断し、穂先を斬り落とした。
「なっ……!?」
経験の差から生じた反応速度の違いにリーダー格の男が呆気に取られる。
木製の柄だったゆえに斬ることができた槍に一瞥をくれ、魔法剣士はリーダー格の男の股間を右足で蹴り上げて弓を持った相手のほうに蹴り飛ばす。
「おっぎゅぅ……っ!?」
「うわっ……!?」
リーダー格の男と弓持ちの男が悲鳴を上げるのには構わず、ふたりが巻き込んで倒れた隙に魔法剣士は、短剣を手にした男に斬りかかった。
「ぃ、ぎゃっ!?」
仲間ふたりの惨状による体と思考の硬直、経験の差、間合いの違いから短剣持ちの男はあっさり吹き飛ばされた。
さらに魔法剣士は、大柄なリーダー格の男の下敷きになってもがく弓持ちの男に長剣の切っ先を突きつけた。
「うっ……」
「諦めろ。おまえたちは、もう冒険者としては終わりだ」
魔法剣士の断言に弓持ちの男は、仲間ふたりを見て、突きつけられた刃を見て、力なく項垂れた。
それから三人の少年は、また悪さをしないように装備品と認識票をすべて剥がされ、支え合って去っていった。
これから彼らを待っているのは、おとなしく村に帰るか、ならず者に身を窶すか、何がしかに殺されるか奴隷にされるか、少なくとも冒険者として再起することはもちろん、明るい未来は待っていまい。
「──改めまして、助けてくれてありがとうございました」
事態が落ち着き、銀髪の女の子がそう言って静かに頭を下げた。
「いや、同じ冒険者として見過ごせなかっただけだ」
魔法剣士がそう返せば銀髪の女の子は、微かな笑みを口元に浮かべた。
「それで、あなたはこれからどうするんですか?」
出番こそなかったがいつでも奇跡を嘆願できるように備えていた、女神官がそう訊ねる。
「そう、ですね……私は、この先の街にある冒険者ギルドに用があるのです。私も冒険者ではありますから」
そう言って銀髪の女の子は、豊かな胸に揺れる認識票──白磁等級の小板を指で摘むようにして小さく翳す。
「そうだったのか……仕事って訊いてもいいか?」
「はい。助けてくれた以上、あなたがたには話してもいいでしょう。採取と配達、これを同時に遂行するといったものです」
魔法剣士の問いに銀髪の女の子──銀髪魔法士はそう答えた。
つまり薬草を採取し、冒険者ギルドにまで配達する。そういう依頼だったらしい。
「そうか……なら冒険者ギルドまで俺たちと一緒に行かないか?」
「……よろしいのですか?」
「ああ、もちろんだ。な?」
魔法剣士の提案に銀髪魔法士が問い返せば、彼は頷くとともに女神官、賢狼剣士に視線を向けた。
「はい! わたしたちもギルドに帰る途中でしたし、また何かあったら大変ですから」
「私ももちろん構いません。旅は道連れといいますし。これも何かの縁でしょうから」
「なるほど……そういうことでしたら、よろしくお願いします」
魔法剣士、女神官、賢狼剣士からの誘いに銀髪魔法士も納得し、頷くとそう言って一礼した。
「ああ、こちらこそよろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
ふたりもそう返し、改めて自己紹介したあと、四人は辺境の街の冒険者ギルドを目指して出発した。
§
それから魔法剣士たちは、特に何事もなく冒険者ギルドに戻ってきた。
まず魔法剣士一党は、銀髪魔法士に少し待ってもらい、三人の少年から剥いだ装備品を武器屋で売り払った。
そこまでの品ではないが、新人ゆえにあまり使われてなく新品に近かったこともあり、駆け出し冒険者にとっては、臨時収入といっていい額が手に入った。
「ああ、これを渡しておく」
魔法剣士は、そう言って臨時収入の一部を銀髪魔法士に手渡した。
「宜しいのですか?」
「ああ。迷惑をかけられたんだしな。迷惑料、っていうには少ないかもしれないがあって困るものじゃないだろう?」
「そうですか……そうですね。ありがとうございます」
迷っていた銀髪魔法士だが、魔法剣士の言葉に納得し、その銀貨数枚を鞄から取り出した財布の革袋に仕舞った。
そして、魔法剣士、女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士の四人は、改めて受付に向かって依頼達成の報告に加え、例の少年たちについての報告も行なった。
「それは……なるほど。お疲れ様でした。そして、ありがとうございます。ギルドとしましても、白磁等級や黒曜等級の人たち、何より冒険者ギルドの評価が落ちかねない件を解決してくださり、とても助かりました」
報告を聞き終え、提出された採取した薬草と認識票を受け取った受付のお姉さんは、そう言って一礼したあと、微笑を浮かべた。
冒険者ギルドと冒険者の評価は、持ちつ持たれつだ。
冒険者ギルドの評価している冒険者だからこそ依頼人は信用し、冒険者が評価される行動してこそ冒険者ギルドの評判になる。
この循環作用に軋轢を生むような者は、ギルド職員だろうと冒険者だろうと長続きしない。
〝看破〟の奇跡を監督官から受け、さらに銀髪魔法士からも報告があり、疑いなしとされたことで依頼料の増額が約束され、今日のところは採取依頼の分のみが支払われた。
それから魔法剣士、女神官、賢狼剣士、銀髪聖女の四人は、ギルドに併設された酒場の一席に集まっていた。
各々が頼んだ酒や料理を前に乾杯し、喉を潤す。
「それで、これからどうするんだ?」
「そうですね……今回、無事に昇級はできました」
魔法剣士の問いに銀髪魔法士は、そう言って胸元に揺れる小板に指先で触れる。
地道に経験や信用を積み重ねていた彼女は、今回の一件を経て白磁から黒曜へと昇級したのだ。
「ですが、さすがにひとりでは限界があるとわかりました」
「確かに魔術師……後衛職の単独行は、無理がありますよね。わたしも神官ですからよくわかります」
「それに女性の単独は、何かと危険です」
「むしろ、いままでよくやってこれたものだ」
実感が伴った女神官や賢狼剣士に続き、魔法剣士の言葉に銀髪魔法士は頷く。
「採取依頼を中心に安全かつ単独でもこなせる依頼を請け負ってきましたから。ですが今回の件でこれ以上は、無理があると理解しました」
「ちなみになんで単独でやっていたんだ?」
「……私の見かけだけで近づいてくるヒトが多くて」
魔法剣士の疑問に銀髪魔法士は、言い淀むがそう教えてくれた。どうやら自分で自分の外見について触れるのが恥ずかしかったようだ。
「あ、でもわたしもわかります。信頼できるヒトとでないと、男性と一緒に冒険なんてできませんよね」
女神官がフォローするように言う。
実際、彼女は華奢な体つきをしているが、それでもかわいらしく特に同年代の異性の目を惹きやすい。
「多いですよね。男性冒険者はもちろん、男性の依頼者も」
賢狼剣士は、とびっきりの美少女で魔女や受付のお姉さんに並ぶほどの豊かな胸もあり、年齢問わずに男性の目を惹きやすい。
そんな輩とどうして信用も信頼もないのに冒険なんてできようか。冒険では、ともに野営して夜を明かすことも珍しくないというのに。
「はい。おまけに誘ってくださるかたがたが、殿方だけで構成されたパーティなこともあって身の危険を感じましたから……私も同じ駆け出しですから言えた義理ではないですが、白磁や黒曜だけのパーティでそれはちょっと」
と、目を伏せて憂いを含んで言う銀髪魔法士。女性冒険者には、女性冒険者ならではの悩みや苦労があるようだ。
「ですから、その……宜しければあなたがたのパーティに入れてはいただけませんか?これでも賢者の学院をそれなりの成績で卒業してますから、魔法はもちろん、知識などでも役に立てるかと思いますよ?」
赤い柘榴石の嵌った杖を手にした銀髪魔法士の申し出に魔法剣士たちは、顔を見合わせた。
「俺たち……というか俺でいいのか? 俺も黒曜等級だが……」
「女性も一緒ですし、そちら地母神の神官ですよね? 何より先ほどの一件から信用も信頼もできます。少なくともいままで誘ってくださったかたがたより遥かに」
魔法剣士の問いに銀髪魔法士は、そう言って口元に微笑を浮かべる。
魔法剣士と女神官は、過去に話したことを思い出していた。
一党に欲しかった役割の一角、専業の魔術師で、戒律も秩序善とあって問題はない。
気が合うかはまだわからないが、少なくともいままで会話していて不快なこともない。
何より魔法剣士たちも一緒に冒険してみたいと考えていた。
「なら、口調は楽にしてくれ。それが条件だ」
「なるほど……ええ、わかったわ。これでいいかしら?」
「ああ。改めてよろしく頼む」
「わたしも一緒に冒険できたら嬉しいです!」
「私も歓迎しますよ。とはいっても私もまだこの一党では新参ですが」
「ええ、ありがとう。微力ながら力になるわ。こちらこそよろしくお願いするわね」
大なり小なり笑顔を浮かべてそう言葉と握手をそれぞれ交わす。
それから改めて酒を注文した四人は、杯を掲げた。
「改めて今回の冒険に」
「新しい仲間に」
「今後の私たちの冒険に」
「私を助けてくれたあなたたちに」
乾杯、と杯を軽く打ち合わせて飲み干した。
こうして新たに銀髪魔法士を一党に加え、魔法剣士たちの冒険はまだまだ続くのだが、その前に四人で交流を深めていくのだった。
END
というわけで、三人めの仲間は銀髪魔法士。作者考案オリキャラでイメージキャラとか特にない感じで書きました。
でも外見イメージとか決めたほうがいいんですかね?作者は絵心がないんですよねぇ。いちおう外見イメージに合いそうなキャラを探してみます。
それではここまでありがとうございました!お気に入り登録、感想、評価などいただけましたら嬉しいのでよろしくお願いします!
また次回お会いいたしましょう!
受付のお姉さんの外見のイメージは……
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エノメ(不徳のギルド)
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ルナ(このすば)