ゴブリンスレイヤー【魔法剣士の異聞録】   作:星屑の騎士

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こちらではお久しぶりになります!GWは家で過ごすかたも多いかと思い、休日のお供になれれば嬉しいです!

今回は、知ってる人は知ってるキャラが元ネタのオリキャラが登場します。


それでは、お楽しみいだけたら幸いです。


雨天の出会い

「白磁等級向けの依頼は……安いなぁ。ドブさらいとかもしたくねぇし」

 

「あんまり贅沢言ってられないぜ?」

 

「でもよぉ、俺らと同じ新人で活躍してる冒険者がいんだろ? なら俺らだってやれるって! あ、これなんてどうだ?」

 

「ゴブリン退治ね。いいじゃない、いかにも新人向けって感じでさ。一気に追いついてやりましょ」

 

「あ、いいな。俺らも負けてられないし、ゴブリン……」

 

「ダメよ、受付さんが言ってたじゃない。あたしたちは、まずは下水道から! 他人は他人! ウチはウチ!」

 

「ドラゴンだ、ドラゴン退治はないか!? ここいらで武勲のひとつでも……」

 

「やめとけって。装備が足らねえよ。山賊退治当たりにしとけって。報酬も悪くない」

 

「おいこら、その依頼は俺が目をつけてたんだ!」

 

「先に取ったのは私たちのほうだ。他を当たれ」

 

 魔法剣士が女神官と出会ってから一ヶ月が経ったある日の冒険者ギルドでは、今日も今日とて依頼しに来た依頼人、仕事を求める冒険者などで朝から賑わっていた。

 

「い、いつ見てもすごいですね……」

 

「冒険者にとっては、死活問題ですから」

 

 圧倒されている女神官に、賢狼剣士は、慣れたように言う。

 

(やはり、一年の違いは大きい、ですよね。わたしもいつかは、慣れて、このヒトみたいになれるんでしょうか?)

 

 僅か一歳違いの賢狼剣士の落ち着いた様子に、女性として魅力的な容姿に、女神官は内心憧れていた。

 

 そんなかわいらしい様子の女神官を、賢狼剣士は微笑ましげに見つめていた。

 

「……私たちも他人事ではないわよ? まだまだ駆け出しの私たちは、いつ食い扶持を失ってもおかしくないのだから」

 

 ふたりの様子と冒険者たちの争奪戦を交互に眺め、銀髪魔法士は、そっと嘆息する。

 

 そんなことになれば女の子的には、娼婦にならざるを得ない可能性も出てくるため事情はより深刻だった。

 

 まあ、幸い女神官も、賢狼剣士も、銀髪魔法士も、各々優秀な能力を持っているため、仮に冒険者を続けられなくなったとしても娼婦にならずとも働き口を選べる程度には、余裕があるのだが。

 

 それでも、そのくらいの覚悟を以ってことに当たるべきだ。

 

 さて、三人の美少女の姿はあれど、一党の頭目たる魔法剣士の姿はそこにない。ならばどこに居るのかというと──

 

「──戻ったぞ」

 

 依頼書の争奪戦に参加していた。

 

 荒れ狂う冒険者の波を潜り抜け、行き来してきた魔法剣士が依頼書片手に戻ってきた。

 

(……なんか変なの居るなぁ)

 

 その際、普段は見たことなかった薄汚れた鎧兜、円盾や粗末な剣を装備した冒険者が端っこに座っているのを見て、魔法剣士は、表に出すことはしないが内心その変化に気づいていた。

 

 周りの同じ新人がヒソヒソと話していた冒険者だが、魔法剣士は時間の都合で今日まで見ることがなかったその冒険者──ゴブリンスレイヤーを観察し、他の新人冒険者が同じ新人と言って気づかなかったことに気づいた。

 

(──銀等級!?)

 

 ゴブリンスレイヤーの胸元で揺れる銀の小板は、自分の憧れる槍使いや魔女と同じ等級。つまり見た目に反し、あのリビングアーマーのごとき冒険者は、在野最上位の冒険者ということだ。

 

(……まあ、他人は見かけで判断するなっていうのは、冒険者の基本だけどな。それにしたってあれは……)

 

 周りが敬遠しているのもわかる、と魔法剣士は思うが、自分には関係ないかと思い直して思考の外へとやった。

 

「お、お疲れさまでした」

 

「お疲れさまです」

 

「……お疲れさま」

 

 美少女三人のねぎらいに、魔法剣士も男として情けないところは見せられないと、背筋を張って「おう」と応じた。

 

「で、だ……今回請けようと思う依頼は、これなんだが」

 

 そう言ってさっそく依頼書を見せる魔法剣士に、女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士も覗き込む。

 

 一枚の依頼書を囲んで見下ろす四人は、依頼内容に目を通した。

 

 

 

 

 

       §

 

 

 

 

 

 魔法剣士一党の請け負った依頼は、採取依頼だった。水薬などは、消耗品とあってこの手の仕事はほぼ毎日のようにあったのだ。

 

 そのうえで採取依頼にしたのは、つい先日に新人ながらになかなかの激戦を乗り越えたあとということもあり、体力や装備の消耗を限りなく少なくするためだった。

 

 結果、問題は特に起きなかった。

 

 銀髪魔法士は、単独で採取依頼を中心に請け負っていただけあって体力や知識に不安は見られなかった。

 

 一年先輩である賢狼剣士もそのあたりは問題なかったが、匂いの強い香草などがある付近は、やはりつらかったようだがそこは仲間。フォローすれば問題はなかった。

 

 魔法剣士と女神官も大なり小なり知識はあったため、女神官は体力に不安があったものの経験を着実に積み重ねてきたこともあり、大きな問題にはならなかった。

 

 そう、依頼遂行自体に問題はなかった。

 

 個人としても、一党としても、誰にも問題はなく、目的の薬草も見つかったし、四人も居たから早くに採取も終わった。

 

 だが、その帰りに問題があった。

 

 運悪く豪雨に遭ってしまったのだ。

 

「あわわっ!? 凄い雨ですっ!」

 

「少し先も見えませんね……それにこれは……雨宿りしないと怪我や風邪の元になってしまいますよ」

 

「……あれだけ晴れていたのにね。ツイてないわ」

 

もはや痛いまである勢いの雨に打たれ、女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士が声を上げる。

 

 周りは鬱蒼とした木々が生い茂り、日も暮れてきたこともあって薄闇がかかってきたなかでの豪雨だ。

 

 それを受けて魔法剣士は、辺りを少しでも見渡そうと目を細めながら言う。

 

「……たしかにこれじゃあ怪我や風邪はもちろんだが、遭難しかねないな。それに怪物や野生の獣に遭遇しかねない」

 

 こうも視界が悪いと偶発的遭遇、あるいは獣の縄張りに入りかねない。

 

 なんにして雨天行軍は、いいことが何ひとつとしてない。体が冷えきる前になんとかしたいというのが一党の総意だったが──

 

「かといって雨宿りというが、そんな都合良く見つかるはずが……」

 

 ない、と続けるより先に魔法剣士の視界に〝偶然〟か〝宿命〟か、ぽっかりと口を開いた洞窟の入口が見えた。

 

 怪物や獣の巣穴の可能性が頭をよぎるが、このままではどちらにしろ良くないことになると判断した魔法剣士は、後ろの三人に声を上げる。

 

「ひとまずあそこに避難するぞ!」

 

 そう言って率先して前に行き、草木を掻き分けて道を踏み慣らし、安全を確保しながら三人を誘導する。

 

 洞窟内に逃げ込んだ魔法剣士は、洞窟が奥まで続いているのを確認したが、ひとまず獣臭や腐敗臭がしないことから安全そうだと判断する。

 

「ふぅっ……す、凄い雨でしたね」

 

「雨宿りできる場所が見つかってよかったです。あのままでは、どんな災難に繋がっていたかわかりません」

 

「……まったく、雨具を出す暇もなかったわね」

 

 少し遅れて女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士も駆け込んできた。

 

 三人とも全身ずぶ濡れで髪や服の裾から水滴が滴り落ちている。

 

「はぁ……服のなかも、ブーツのなかまでびしょびしょです……」

 

「下着のなかまでびしょ濡れですからね……」

 

「……このままだと風邪をひきそうね」

 

 女性陣は、そうぼやきながら服の裾をぎゅっと絞る。

 

 その際に三人の白く細い太ももが見えてしまい、魔法剣士は視線を逸らしながら自分も服の水分を絞った。

 

「火を熾して暖を取らないとな……」

 

 そう誤魔化すように、しかし必要なことを呟きながら魔法剣士は、洞窟の奥の暗がりに目を向けた。

 

 まさか洞窟の入口で火を熾すわけにもいかない。風で消されないように工夫しても、体が吹きさらしにされては意味がないし、雨粒も入ってくる。

 

 何より安全確認せずに体や精神が休まるはずもなし。

 

 魔法剣士が声を発しようとした、そのときだった。

「──わわっ!すっごい雨〜っ!」

 

 そう言って新たにこの洞窟に駆け込んできた者が居た。

 

 それは黒いカチューシャが特徴の美少女だった。

 

 キャミソールにホットパンツと動きやすい格好。上着はノースリーブに近く、肘までの長さの袖はデタッチドスリーブ。

 

 ブーツは爪先が露出するようになっている。

 

 手には、杖を持っており、豊かな胸元に揺れる小板から冒険者とわかる。

 

「はぁ、はぁ……ふぅ……あれ? 先客さん?」

 

 と、魔法剣士たちに気づいた少女が小さく驚き、警戒したように杖を構えた。

 

「ああ。冒険者だ」

 

 そう言って魔法剣士が首に下がった認識票を指で摘んで掲げ、女神官と賢狼剣士もそれに倣って自分の認識票を取り出して見せた。

 

「あ、なんだ冒険者か。っと、あたしも同じ冒険者だよ」

 

 そう言って少女も豊かな胸元に乗る認識票を指で摘んで掲げた。

 

 お互いに同業者とわかって警戒を解き、自己紹介をした。

 

 が、ここで銀髪魔法士だけ反応がないのに気がついた。

 

 否、正確には反応していた。ただし、魔法剣士たちとは違い、驚いたように目を見開くという物静かな彼女にしては、珍しいものだったが。

 

 すると、少女もそんな銀髪魔法士に気がつき、同じような反応を見せた。

 

「あ、あなたは!?」

 

「……やっぱりあなただったのね。久しぶり。元気そうね」

 

「うん! 久しぶりだね! 学院を卒業したとき以来だよね? まさかこんなところでまた会えるなんて!」

 

 と、少女は嬉しそうに銀髪魔法士の手を取り、銀髪魔法士も微笑を浮かべて応じた。

 

 僅かに近づいただけでふたりの豊かな胸が触れ合い、柔らかそうに押し合いへし合いをするのから目を逸らし、魔法剣士が訊ねる。

 

「──知り合いなのか?」

 

「……ええ。同じ〝賢者の学院〟を卒業した同期よ」

 

「懐かしいね〜。まだ一ヶ月くらいしか経ってないのにさ」

 

 お互いに同業者とわかって警戒を解き、自己紹介をした。

 

 少女は、駆け出し冒険者であると同時に錬金術士でもあるらしく近々辺境の街で店を開くこともあり、冒険者ギルドの依頼をこなすついでに錬金術に必要な素材集めもしに来たところを豪雨に遭ってしまったようだ。

 

「それで、ちょうどいいところに雨宿りできる場所を見つけてこうして駆け込んだってわけ」

 

 と、少女──錬金魔術師が話を締めた。

 

「そこで提案なんだけどさ、あたしもご一緒していいかな?」

 

 錬金魔術師の提案に魔法剣士たちは、顔を見合わせると頷く。

 

「ああ、もちろん構わないぞ。協力はしてもらうがな」

 

「もっちろんだよ! ありがとう! あたしにできることならなんでも力になるから任せといて!」

 

 魔法剣士が代表して言うと、錬金魔術師は嬉しそうに彼の手を両手で握って笑顔を浮かべた。嬉しさから魔法剣士の手を握ったまま両手をぶんぶんと上下に振る。

 

「あなたたちもよろしく!」

 

「は、はい! よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いしますね」

 

 錬金魔術師は、女神官と賢狼剣士とも快活に握手と言葉を交わす。

 

 女の子同士とあって仲良くなるのも早いのか、錬金魔術師の天真爛漫な性格もあってか、あるいはその両方か。さっそく打ち解けている。

 

「……奥に行くぞ」

 

 タイミングを見計らって魔法剣士の言葉に女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士、錬金魔術師も頷き、五人は隊伍を組んで洞窟の奥へと進んだ。

 

 松明を頼りに進むことしばし、そこまで奥まっていなかったが慎重に探索した結果、特に何もなく最奥に辿り着いた。

 

 特に何かが棲みついているわけではなく、空だった洞窟をありがたく一夜の仮宿にさせてもらうことにした。

 

 そうして早速野営の準備を始め、魔法剣士が火を熾している背後では──

 

「はぅぅ……」

 

「あまり気にしないでだいじょうぶですよ?」

 

「……そうよ。こんなの冒険には邪魔なだけだわ」

 

「そうそう、男子とかよく見てるしね〜。でも、この子以外であたしも自分と同じくらいの歳で、同じくらいのサイズの子は初めて見たなぁ。でも、それくらい珍しいってことだし、ね?」

 

 その背後では、女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士、錬金魔術師が濡れそぼった服を脱いでいた。

 

 どうやらいろいろと華奢な自分に比べ、女性的な魅力に富んでいながら引っ込んでいるところは引っ込んでいる賢狼剣士、銀髪魔法士、錬金魔術師の肢体を前にして恥じらう女神官を慰めているらしい。

 

 しゅるりと衣擦れの音と和気藹々としたやり取りに、魔法剣士は努めて気にしないように火熾しに集中していた。

 

「や、やっぱり下着もなかまでびしょびしょですね……」

 

「ええ……仕方ありませんね。風邪を引くわけにはいきませんし」

 

「……風邪引くくらいなら、脱いだほうが効率的よ。風邪は場合によっては命に関わることもあるのだし。だいたい、一緒に冒険しているのだから、このくらいで気にしていたら遠出なんてできないわ」

 

「わわっ、みんな大胆! でもあたしも脱いじゃおっと」

 

 火熾しを終えた魔法剣士の背後での会話。恥じらいはあるがやはり冒険者とあって、冒険中に体調を崩すよりはと大胆にも下着も脱いでいるようだ。

 

 ちなみに魔法剣士は、さすがに下着までは脱いでいなかった。

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

「ようやく人心地つけましたね」

 

「……ほんとにまいるわよね」

 

「おおっ、あったかいねぇ!」

 

 そこへ女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士、錬金魔術師が焚き火を囲むように集まり、車座に座る。

 

 魔法剣士の右側に女神官、左側に賢狼剣士、正面には銀髪魔法士と錬金魔術師の並びだ。

 

 焚き火に照らされる洞窟内の薄闇に女の子たちの白い柔肌はよく映える。

 

 さすがに外套は羽織っているが、素足は丸見えだし、少し動けばお腹や下乳、谷間なども闇に慣れてきた魔法剣士の目には見えてしまう。

 

 賢狼剣士は少ししか見えなくてもその豊かな胸元がよくわかるし、銀髪魔法士もそれを上回るほどに胸が大きく、錬金魔術師はふたりにも胸のサイズで負けていない。

 

 これを前にして華奢な女神官が自信を失くすのも無理はないが、それでも可憐な彼女は三人にも魅力で負けていない。

 

 魔法剣士は、信用や信頼を裏切らないようになるべく見ないようにしているが、どうしても視線が引き寄せられてしまう。

 

「とりあえず、何か食べるか」

 

 だから気を紛らわすように、しかし目下必要なことを提案する。

 

「あ、ならわたしが用意しますね。簡単なものになってしまいますが……」

 

「それでしたら私は、白湯でも用意しましょう」

 

「……私も料理を手伝うわ」

 

「あたしは、う〜ん……あ、調味料とか提供するよ」

 

「ああ。なら俺は警戒でもしていよう」

 

 そう言い合って各々がやるべきことへ取りかかった。

 

 魔法剣士は、作業で見え隠れする女の子たちの肌を見ないように出入り口に意識を集中する。何も棲みついてはいないが、それでどうして自分たちのように駆け込んでくる何かが来ないと言えようか。

 

 女性陣は、そのあたりは敏感で魔法剣士の様子にも気づいていたが、それでも紳士的に振る舞って見ないように努力しているところは他の男と違うと好印象だった。

 

 それはそれとして恥ずかしくもあり、頬は赤くなっていた。焚き火に照らされていてわかりづらいことに感謝だ。

 

 魔法剣士が見張り、女神官と銀髪魔法士が錬金魔術師から提供された調味料も使って調理しているなか、賢狼剣士が用意してくれた白湯を各々お礼を言って受け取って飲む。

 

 ほぅ、と吐息が漏れ、焚き火と合わさって体が内側からポカポカと温まってくる。

 

「はい、できましたよ。ほんとに簡単なものになってしまいましたが……」

 

 そう言って女神官が差し出したのは、堅パンに炙った干し肉と野菜を挟んだもの、水で薄めた葡萄酒だ。

 

「充分だ。ありがとう。──美味いな」

 

「ありがとうございます。──たしかに少しピリッとしていて美味しいですね」

 

「あ、ありがとうございます。いただいた調味料のおかげですかね?」

 

「……そうね。なかったらもっと味気なかったわ」

 

「ありがとう! あたしじゃあ、ここまで美味しくは作れないねぇ」

 

 白湯を飲み、ちょっとしたサンドイッチを食べ、喉も腹も満たされ、暖を取って体も温まり、ようやく人心地がつけたことで一様に表情や体の強張りが和らぐ。

 

 そうして心身が安らげば自然と口も軽くなるというもので、気づけば会話も弾んでいた。

 

「……あなたは、いまどこで活動しているのかしら?」

 

「あたしも辺境の街で活動してるよ! ついこの間、こっちに着いたばっかりだけどね〜」

 

「……あのあなたがねぇ。よくひとりで暮らせてるわね? 結構なだらしなさなのに……」

 

 銀髪魔法士は、知った仲ゆえに錬金魔術師の性格のこともよく知っている。

 

 彼女は、些か自分の身の回りのことを蔑ろにしがちだ。

 

 賢者の学院時代から何かと自由奔放に冒険を楽しむ気質で、学院の規則も堅っ苦しいと思いがちだった。

 

 そのうえ、魔法──特に錬金術の研究にのめり込み、自分のことを平凡と思っていることもあって魅力にも疎く、女の子らしさもあまり興味を示さない。

  

 だからひとりでまともに生活できているのか、そのことを疑問に思っていると、学院で実技の成績を争っていたライバルが微妙に苦笑いしていることが見て取れた。

 

「……あなた、まさか?」

 

「……あ、あはは……」

 

「……まったく、錬金術の研究ばかりで女の子を捨てたらダメよ? どこぞの先生のように行き遅れてしまうわ」

 

「はい……反省してます」

 

「……ふぅ、あなたらしい無茶するわね。まあ、退屈で魔術の才能があったから、村を出て学院の門を叩いたようなヒトだものね」

 

 銀髪魔法士は、呆れたといった様子だが口元に微笑が浮かんでいるところを見ると、錬金魔術師のそんなところに親しみを感じているらしい。

 

「そ、そういうあなただって、自分の道を決めつけられたくないからってそのまま家を出てきちゃったんでしょ!」

 

「……あら? 私は、ちゃんと自活できているわよ」

 

「ぐぬぬ……!」

 

 ふたりの貴族の子女と村娘らしい会話に貴族とも、村娘とも無縁な文庫育ちの魔法剣士は、貴族も大変なんだなと会話に入れなかった。

 

「……それで。あなたは、いまどうしているのかしら?」

 

「あ、うん。あたしはいま、自分のお店を持つために頑張ってるんだぁ」

 

「す、すごいですね。わたしと変わらないお歳なのに、自分のお店を持つだなんて」

 

「えへへ……ありがと。でも、それがいまちょぉっと難航しててねぇ」

 

 女神官の言葉に照れ臭そうにしていた錬金魔術師だったが、不意に表情が曇る。

 

「何かあったのですか?」

 

「うん。お店を開くにも商品がないとだめでしょ? その商品を作るために必要な素材をこうして自分で集めてるんだけど、そうすると商品を作るための体力や時間があまりなくて……。かといって商品を作ることに集中しても、結局素材が足りないから採取に行かないといけないし」

 

 賢狼剣士の疑問に錬金魔術師は、そう答えた。

 

 文字どおり錬金術士としての死活問題に対し、女神官は控えめに提案する。

 

「冒険者さんに依頼を出してみたらどうでしょうか?」

 

「それも考えたんだけどねぇ……錬金術の素材っていろいろあるけど、採取をきちんとしないと品質が悪くなっちゃっていいものが作れなくてさ。採取ってだいたいは、新人の冒険者の人に頼む仕事でしょ? だから採取のやりかたがこう、雑っていうか……」

 

 錬金魔術師は、自分も見習いだからと言葉を濁すが確かに新人冒険者の採取は些か雑なところがある。

 

 銀髪魔法士が納得したというふうに頷く。

 

「……なるほど。かといって素材だけでなく品質まで指定しては、駆け出しの冒険者では面倒がってまず受けないでしょうね」

 

「そう! そうなんだよ! だからって高位の冒険者に依頼を出すにもお金がねぇ……そもそも請けてくれるかどうか。採取依頼にしても金額はもちろんなんだけど、あとはよっぽどのレアものとかじゃないとじゃん? あたしの作るものは、まだまだそんなレア素材は必要ないからねぇ」

 

 たしかに採取依頼は、よほど採取が難しい、あるいは採取地が難所などでもない限り、なかなか高位の冒険者に頼む仕事ではない。

 

 仮に常時必要な素材の採取に毎回高位の冒険者を雇っていては、採算が取れないだろう。

 

 若干暗くなった雰囲気を変えるように錬金魔術師が言う。

 

「あ、ごめんごめん! ところでみんなは、なんの依頼でここに来たの?」

 

「薬草の採取依頼だ」

 

 女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士が顔を見合わせると、一党の頭目として魔法剣士がそう言うと薬草が入った鞄を錬金魔術師に見せた。

 

 鞄に入った薬草を見た錬金魔術師は、目の色を変えて食いつくように見入り、身を乗り出した。

 

「ちょ、ちょっとそれ見せてもらえないかな!?」

 

「別に構わないが……」

 

「……すごい。品質はもちろん、採取の仕方から保存まで完璧……」

 

 魔法剣士から鞄を受け取り、素材を観察してブツブツと何事かを真剣な様子で呟いている錬金魔術師に女神官が遠慮がちに訊く。

 

「ど、どうかしましたか?」

 

「──えっ!? あ、うん。これ、すごいよ! こんなに鮮度のいい素材はなかなかないよ! あなたたち、新人冒険者、なんだよね?」

 

 ハッとした様子の錬金魔術師は、自分の世界から戻ってくるとそう問いかけた。

 

「ああ、まあな」

 

「なのにどうしてこんなにいい状態で素材採取ができたの!? いくらそのヒトが居ても……」

 

「……私の知識だけじゃないわ。みんな、知識も技術もなかなかあるのよ」

 

「わ、わたしは、地母神の神殿育ちなので、薬を扱うこともたくさんありましたからね。冒険者になってからもいろいろと経験してきましたので、自然と技術が身についたといったところでしょうか」

 

「私も村育ちですから。獣人ということもあり、平気な薬草とそうでないものの見分けかたは、体調にも大きく関わるので幼い頃から覚えさせられました」

 

「なるほど……うん、うん! これなら……ねぇ、お願いがあるんだけど!」

 

 銀髪魔法士、女神官、賢狼剣士の言葉に錬金魔術師は、納得すると何事かを考えること数分、身を乗り出してそう切り出した。

 

 魔法剣士は、女神官たちと顔を見合わせ、錬金魔術師に視線を戻すと先を促す。

 

「なんだ?」

 

「今度、あたしの依頼を定期的に請けてもらえないかな?! この品質で定期的に素材を供給してもらえたら、あたしも採取の時間を減らして商品作りに時間を多く割けて店を開けると思うんだ! もっちろん、報酬はちゃんと支払うからさ! どうかな?!」

 

 駆け出し冒険者で、丁寧に採取ができるというのはまさに錬金魔術師が求めていた人材なのだろう。

 

 信用も同期の銀髪魔法士が居る一党ということもだが、魔法剣士たちと接した短い時間でも人柄から問題ないと考えていた。

 

 半ば予想できていた提案──依頼だった。

 

 魔法剣士は、頷くと女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士に視線を巡らしながら言う。

 

「……まぁ、依頼なら俺はかまわないがな」

 

「はい、わたしもいいですよ」

 

「皆さんがいいのなら私もかまいません」

 

「……まあ、同期のよしみで私もいいわよ」

 

「ほんと!? ありがとう! ほんとに助かるよ!」

 

 全員からの承諾を受け、錬金魔術師が喝采を上げた。

 

「なら、これからよろしくね!」

 

「ああ、よろしくな」

 

 そう言い合って錬金魔術師と握手を交わす魔法剣士だったが、話に夢中で気づいてなかったが錬金魔術師は、身を乗り出したことで羽織っていた外套がほとんどはだけている。

 

 焚き火に照らされ、艶めかしく色づいた豊かな胸の先っぽのピンク色まで見え、雨の匂いに混じって香る女の子の甘い匂いに魔法剣士は視線を逸らした。

 

「……? あっ!? あ、あはは……その、ごめんね。嬉しくてつい……お見苦しいものをお見せしました」

 

 その様子に錬金魔術師も自分の状態に気づいたのか、体を見下ろして頬を赤くすると、気恥ずかしさから腕で身を庇って外套を羽織り直した。

 

「むぅ……」

 

「もう……」

 

「はぁ、まったく……あなたは昔から無防備だわ。気をつけなさい」

 

 女神官が何やらむくれて頬を膨らまし、賢狼剣士はたしなめる様子だが少し怒っており、銀髪魔法士もどこか不機嫌そうに呟く。

 

「あ、あはは……以後気をつけます」

 

 魔法剣士や錬金魔術師もどこか居心地悪そうに身を揺する。

 

 魔法剣士としては、錬金魔術師はもちろん、女神官や賢狼剣士、銀髪魔法士の素肌も魅力的だ。つい視線を引き寄せられそうになる。

 

 だが、彼女たちが裸になっているのも信用や信頼あってこそだ。それを裏切るような真似をすることはできない。

 

「……とりあえず、見張りは俺がやるからそろそろ寝ておけ。何があるかわからないからな」

 

 無難だが必須なことを口にした魔法剣士に、女性陣は顔を見合わせて小さく笑みを浮かべる。

 

「なら先に休ませてもらいますね?」

 

「ありがとうございます。あとで代わりますから」

 

「……ありがとう。よろしくお願いするわ」

 

「うん、いろいろとありがとね」

 

 女神官たちは、そう言って四人で身を寄せ合って外套に包まって眠りについた。

 

 魔法剣士は、外套から覗く彼女たちの素足や太ももから視線を外して薪の時折弾ける音を聴きながら焚き火を眺める。

 

 女神官たちがしばらくして可愛らしい寝息を立て、魔法剣士がしっかり見張りをしていたが特に何事もなく夜は更けっていき、賢狼剣士と交代してから眠りについて少しすると朝を迎えた。

 

 すっかり乾いた装備品を身につけ、軽い朝食を食べたあと、しっかり火の始末をして身支度を整える。

 

「──さて、行くか」

 

 そう言う魔法剣士に応じ、女神官、賢狼剣士、銀髪魔法士、錬金魔術師があとに続いた。

 

 長くも短くもない道を進み、洞窟を出ると雨もすっかり上がり、雨上がりの朝特有の湿気を含んだ空気の匂いを肺いっぱいに吸い込み、朝陽に照らされて魔法剣士たちは辺境の街を目指して出立するのだった。

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけでライザリン・シュタウトが元ネタのキャラでした!ちなみにまだ15歳ですがだいぶスタイルが原作に近くなってます。そういう意味ではチートですね。

あと今後は、作品ごとに宣伝をしていこうと思います。

というわけで、作者の別作、『ハイスクールD×D〜聖魔の槍使い』のほうも良かったら目を通していただけたら嬉しいです!コメント、お気に入り登録、評価のほどももししていただけたら励みになりますのでよろしくお願いいたします!ほんとは作品のURL貼るかと思いましたが、あちらはR18なので自重いたしました。

お手数ですが検索、または↓から作者のページに飛んでいただけたらと思います。

https://syosetu.org/user/21593/

それではまた!

受付のお姉さんの外見のイメージは……

  • エノメ(不徳のギルド)
  • ルナ(このすば)
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