ゴブリンスレイヤー【魔法剣士の異聞録】   作:星屑の騎士

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どうも、今回は少し長く書けたかなと思います。少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです!


四人め

 

 魔法剣士たちが村へ向かうとそこは、阿鼻叫喚となっていた。

 

 その村ではいままさに掠奪が行われていたのだ。

 

 村の入口では、見張りをしていた男性の死体が転がっている。

 

 グッと唇を噛んだ女神官がそれでも顔を僅かに青ざめさせながらも短く鎮魂を祈り、魔法剣士を先頭に一党も村へと踏み込んだ。

 

 村を進めば只人の目にも状況が飛び込んでくる。

 

 掠奪をおこなっていたのは、事前の索敵どおり緑肌の小柄な怪物──ゴブリンだった。

 

 村のなかは遮蔽物が多く、正確な数はわからないが十匹より少ないということはなさそうだ。

 

 だが、それでも掠奪が致命的になっていないのは、村の男たちとともに奮闘する者が居たからだった。

 

「──そこっ! 前に出すぎんな、よっと!」

 

 そう言って胴衣を纏った青年が腕を引き絞って拳を放ち、村人を殺さんとするゴブリンの頭を正確に打ち砕いた。

 

「す、すまない!」

 

「いいってことよ。これも一宿一飯の礼、ってなぁ! ここで逃げたら男が廃るってもんだ!」

 

 冒険者か旅人かはわからないが胴衣の青年は、そう言って拳や蹴り放ってゴブリンをさらに二匹葬った。

 

「おっ? オタクら、冒険者か!? こんな状況の村にわざわざ飛び込んでくるなんざ、よっぽどの馬鹿かお人好しか?! 物好きにもほどがあんだろ! ま、なんでもいいさ。来たんならちょいと手を貸してくんな!」

 

「ああ、もちろんだ!」

 

 魔法剣士は、長剣を鞘から抜き放ち、村人を襲おうとするゴブリンを後ろから容赦なく斬り倒した。

 

「ふたりは、あの狩人の元に!」

 

「は、はい!」

 

「……わかったわ!」

 

「村人は、三人を中心にして円陣を! 武器は大きく振らずに細かく振れ! とどめはこちらで刺す!」

 

「お、おう!」

 

「わ、わかった!」

 

 女神官、銀髪魔法士を中心に位置させ、四方八方を魔法剣士と賢狼剣士、青年と村の男たちが囲ってゴブリンを迎え撃つ。

 

 村人たちは鍬や鋤を振ってゴブリンを牽制し、たじろいだゴブリンには魔法剣士や賢狼剣士が斬りつけ、青年が洗練された格闘の技で仕留める。

 

 最終的に魔術や奇跡の出番はなく、村を襲うゴブリンたちは撃退できた。

 

「ふぅ……お疲れさまでした。わたしたち、力になれませんでしたね」

 

「いいさ。備えておくのも術者の仕事だ」

 

 女神官にそう返し、魔法剣士は乱戦ゆえに仕留め損なってないか、死んだふりしてるものはいないか、一匹一匹ゴブリンの頭を蹴り、胸元を踏みつけて確認する。

 

 ひとまず全員死んでることを確認した魔法剣士に、村人たちに指示していた青年が声をかける。

 

「お疲れさん。いや、正直助かったわ。あんがとよ」

 

「ああ、こちらも助かった」

 

 魔法剣士は、感心したようにそう返した。

 

 最終手段といってもいい素手を常套手段にまで昇華させた武闘家の体術は、武装した者たちにも勝るとも劣らない強さがあった。

 

「そいつはどうもっと。それでそっちの子は、神官かい?」

 

「はい。地母神さまにお仕えしている身ではありますが……」

 

「なら怪我人の手当てと死者の埋葬をお願いしても?」

 

「は、はい! もちろんです! ただ、わたしは地母神さまの様式しか知りませんが……」

 

「別にいいぜ。秩序側の神ならいちいち選り好みしないっしょ」

 

「わかりました。でしたら怪我人の治療をしてから、お葬式をいたしましょう」

 

 武闘家の青年とやり取りを終え、女神官はここからが自分の仕事で戦いであると気を張る。

 

「俺もできることがあれば言ってくれ」

 

「もちろん、私も手伝います!」

 

「……私も。あまり力仕事は得意ではないけれど簡単な治療くらいなら」

 

「ありがとうございます」

 

 仲間に微笑を返し、女神官は髪を後ろでひとつに結うと早速治療に動き出した。

 

 負傷者を傷の度合いで分け、薬と奇跡を使い分けて治療を行い、村人たちは怪我人から新たに死者が出ることはなかった。

 

 火をかけられた家、斧や棍棒で壊された家はある。ゴブリンに立ち向かった村人にも死者が出てる。

 

 しかし、致命的ではない。少なくとも村の存続は失われるほどではなかった。

 

「慈悲深き地母神よ、どうかその御手にて、地を離れし者の御魂を御導きください……」

 

 治療を終えたあと、女神官には埋葬の務めが待っていた。

 

 錫杖を手繰り、囁くように祈りを口にし、埋葬される者ひとりひとりに聖印を結び、土をかける。

 

 放置すれば亡者になるだとかだけでなく、当然の行為だった。

 

 死者と別れなければ、生者は前を向いて歩いていくことさえできない。

 

 葬式とは死者のため以上に、生者のために必要な行為なのだ。

 

 そのうえで死者の魂は言葉持つ者である限り、各々の信じる神の御許へと召される。

 

 そうして世の中は廻り、廻っていくのだ。

 

 治療と葬式を終えたあと、魔法剣士一党は、武闘家の青年とともに村長の家に招かれ、心ばかりの歓待を受け、村から掻き集めたであろう銅貨と銀貨を礼として手渡してきた。

 

 魔法剣士たちとしては辞するつもりだったが、これを受け取らないと冒険者業が立ち行かないと武闘家の青年に言われ、受け取ることにした。

 

 もちろん、帰ったらギルドでしっかり報告するつもりだった。

 

 そして、今日は村長の家に泊めてもらい、明日発つことにした魔法剣士たちは、ベッドがふたつしかないため女性陣に譲り、魔法剣士は賢狼剣士と交代でひとつのベッドを使うことにした。

 

 寄り添って寝る女神官の薄い胸に銀髪魔法士の豊かな胸が押し合って柔らかくひしゃげてるのから視線を逸らし、魔法剣士は窓際の壁に座る武闘家の青年に声をかける。

 

「だがよかったのか? 俺たちがベッドを使わせてもらって」

 

「ん? ああ、オレはいちおう見張りもしとくしな。あんたは、前衛なんだししっかり休んどけよ」

 

「そうか……そういえばおまえは、冒険者なのか?」

 

「あんた、オレは寝とけって言ったろ」

 

「いいじゃんか。寝るまでの間のちょっとした雑談さ」

 

「ったく、仕方ねぇな……ああ、そうだ。オレは冒険者だ」

 

 そう言って武闘家の青年は、胸元から認識票の鎖を摘んで掲げる。そこに揺れるのは、黒曜の小板だった。

 

「黒曜等級の冒険者だったか……」

 

「ああ、オタクらもそうだろ? さっき認識票が見えたからな」

 

「ああ、まあな。ちなみに単独なのか?」

 

 武闘家の青年の目敏さに感心しながら頷き、魔法剣士がそう訊ねると彼は軽く肩を竦めて頷く。

 

「……まあな。ああ、別にこの戦いで仲間が死んだわけじゃねぇよ」

 

「そうか……なら、俺たちと一緒に冒険してみないか?」

 

「はぁ? オタクらと? またずいぶんと急な話だな」

 

「そうか? さっきの戦いでも上手くやれてたと思うんだが」

 

「……まあ、そうっすね」

 

 魔法剣士の言葉に皮肉げに笑っていた武闘家の青年だったが、納得いく話でもあって首肯する。

 

 実際、先ほどのゴブリン戦では、初めて組んだにしては上手くやれていたように思う。

 

 互いの深い事情は知らない。だが、釣書がなければパーティになれないなどあり得ない。

 

 仲間になるから、仲間だからと何もかもを知らないとなれないだなんておかしな話なのだ。

 

 気が合うかどうか、上手くやれたかどうか、それだけで充分だろう。

 

「……まっ、たしかにオレもさっきは、あのままだったら死んでた可能性もあるからなぁ。命の恩人で、上手くやれて、気に入った相手なら断る理由もないっすわ」

 

 武闘家の青年は、そう言って口元に微笑を浮かべる。

 

「これからよろしくな」

 

「ああ、よろしくお願いしますぜ、大将」

 

 いつの間にか立ち上がっていた魔法剣士と、双月の月明かりが射すなかで武闘家の青年──漢気のある拳闘侠客と向き合って握手を交わした。

 

 

 

 

 

       §

 

 

 

 

 

 

           

 

 

 

 翌日、ゴブリンの再度の襲撃もなく夜明けを迎え、村人たちもホッと安堵するなか、魔法剣士たちは村長の家で朝食をご馳走になったあと、村を発つことにした。

 

「くぁ……〜、眠い」

 

「結局明けがたまで話し込んじまいましたからね。帰ったらちゃんと寝てくれよな、大将」

 

「ああ、そうするよ」

 

 あくびを噛み殺す魔法剣士に拳闘侠客は苦笑する。

 

 そう、結局あれからふたりはいろいろ話しているうちに朝を迎えてしまったのだ。

 

「もう、ちゃんと休まないとだめですよ? ほんと仕方ないヒトですね、あなたは」

 

「あなたは、一党の頭目なのですから、きっちり体調管理してください」

 

「……あなたに何かあったら、大変なのも心配するのも私たちなのよ?」

 

 そのこと、そして拳闘侠客が一党に加わったことを朝食を食べ終えてから聞かされた、女性陣がそう言った。

 

「ああ、悪い悪い」

 

「もう、反省しているのかしら? 次からは、私が管理したほうがいいのかしら……」

 

 魔法剣士の様子に銀髪魔法士が真剣に考え込む。

 

「と、とにかくだ! 村は致命的なことにならなかったし、新しい仲間も入ったし、よかったって言っていいんじゃないか?」

 

 それに危機感を覚えた魔法剣士の強引な話題逸らしに、女神官は小さく笑いながらも乗っかる。

 

「はい、そうですね。斥候と武闘家の兼業だなんて、とても頼りになります」

 

「それはそうですね。身のこなしも、私も思わず見失うほどでしたし、感知はともかく鍵開けなどは、得意なヒトが居てくれるのは助かります」

 

 仕方ない人ですね、と微笑を浮かべながら女神官と賢狼剣士も同意すれば拳闘侠客は、肩を竦める。

 

「まっ、身のこなしは、森人や闇人、獣人にはまだまだ敵わないがな。だが、鍵開けや罠の解除なんかは得意だぜ? 力仕事なんかも任せてくれよ」

 

 只人であれだけ身軽に動け、賢狼剣士よりも高い斥候能力。専属の前衛はひとりしかいなかったため、そこを埋めてもらえるのは非常に助かった。

 

「まっ、力になれると思うんでせいぜい上手く活用してくれよ」

 

「ああ、今日から仲間だからな」

 

 魔法剣士の言葉に頷く女神官たち。仲間の様子に拳闘侠客は、こそばゆいものを感じるがどこか本心からの微笑を口元に浮かべる。

 

「ああ、今日からアンタらの一党で拳を震わせてもらうぜ。一党に加わったからには、それなりに働きますぜ」

 

 軽く、だがたしかに請け負ってくれた拳闘侠客に魔法剣士たちは、笑顔で返すのだった。

 

 

 

 

END




今回ついに最後の仲間が加入しました!これで魔法剣士くんの一党はようやく完成です。悩みましたが、せっかくのゴブリンスレイヤーの世界ですし男キャラを仲間に加えました。

それではまた!

受付のお姉さんの外見のイメージは……

  • エノメ(不徳のギルド)
  • ルナ(このすば)
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