ゴブリンスレイヤー【魔法剣士の異聞録】   作:星屑の騎士

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あと関係ない話ですがいつかオリジナルの異世界ものを書きたいですね。


一党の初陣

 

 洞窟内は、薄暗かったが松明の灯りもあって特に問題はない。

 

 道筋も日頃から村人が採取に訪れていることもあり、横道や横穴もなく一本道で距離も長くはなかった。

 

「──止まれ」

 

 魔法剣士は静かにそう言って拓けた場所に出る前に松明を消し、岩陰からなかの様子を窺った。

 

 洞窟内部は、なかなかに広く武器や魔術を振るうのに問題はない。

 

 さらに盗賊たちも只人とあって四方に松明を立て、視界を確保していることもあって松明はいらないようで助かる。

 

「数は……六人だな。弓矢はなし。狼もなし。呪文遣いも……見る限りはいないな。まあ、俺みたいに兼業の可能性もあるから杖がないだけで断定はできないけどな」

 

 冒険者のように信用ありきな商売なら、自分は魔法使いとわかるように杖を手にしていることは普通だ。

 

 ナイフを懐に忍ばせる者より、腰や背中に佩いている者のほうが信用されるのと同じだ。

 

 だが、魔法剣士のような兼業、または不意打ち上等な輩は指輪やピアスなどの発動媒体を使う。

 

 そうでなくても予備の発動媒体は、術師の嗜みというものだ。

 

「……まあいい。とりあえず呪文遣いはなしと見ていいだろう」

 

「それで、どうしますか?」

 

 魔法剣士の判断に女神官が指示を仰ぎ、他の仲間も静かに見つめる。

 

「そうだな……向こうのほうが数は多い。囲まれないように立ち回る必要がある。だからここで迎え打つ」

 

 魔法剣士は、そう言ってこの通路を視線で示す。横幅からして只人のサイズなら、ひとりかふたりしか一度に打ちかかれない広さだ。

 

「あとは目眩しがしたい」

 

「でしたら、わたしが《聖光》の奇跡を嘆願します」

 

 魔法剣士の求めに女神官は、錫杖をしっかと握って緊張気味に頷く。

 

「ならそれだ。俺が注意を引くから合図したら頼む」

 

「わかりました」

 

「私はどうしましょうか?」

 

「オレもまだまだ余裕はあるぜ」

 

「……なら俺と前衛──いや、俺より少し前に出てもらう」

 

 魔法剣士は、指示や魔法もあるため中衛寄りに自らが立つことにし、専業のふたりに前衛を任せた。

 

「……私はどうすればいいかしら?」

 

「攻撃呪文はなしだ。薬苔を駄目にしたら意味がないし、そうでなくても崩落の危険もあるからな」

 

「……わかったわ。なら、状況を見て呪文を切るわ」

 

「ああ、それで頼む」

 

 小声で手早く、未熟なりに的確に指示を出した魔法剣士は、手にした長剣の具合いを確かめて一太刀で使い捨てることにすると前に出た。

 

「冒険者だ! おとなしく縄につくなら命まては取らないぞ!」

 

 挑発して注意を引きつけ、盗賊たちが慌てて手に手に武器を握り、立ち上がった。

 

「冒険者だと!? あの村人ども、ギルドに依頼しやがったな! 見張りの奴らは何してんだ!?」

 

 定期的に物見していたが村人ごときに出し抜かれ、あまつさえ自分たちを殺そうとする彼らを逆恨みするのは、一際体格のいい禿頭の大男だ。間違いなく彼が頭目だろう。

 

「村人どもにはお礼参りに行くとしてだ……まずは、手始めにこのガキを血祭りに上げてやれ! 冒険者ってことは、まずひとりじゃねぇ! 女も居るかもしれねぇからな! 場合によっちゃあお楽しみだぞ!」

 

 禿頭大男が得物の斧を手にして怒声を上げる。手下の盗賊たちは、士気が上がったのか声を上げて武器を手に襲いかかった。

 

「《アラーネア(蜘蛛)……ファキオ(生成)……リガートゥル(束縛)》!」

 

 魔法剣士は、左手に握った蜘蛛の巣の束を真言とともに放った。

 

 大輪の花のように広がる蜘蛛の巣が真っ先に接近してきたふたりの盗賊を絡め取った。

 

「ぐあっ!? な、なんだこりゃっ!?」

 

「う、動けねぇっ!?」

 

 まずはふたり。足止めは問題ないため後回しに。

 

 蜘蛛の巣に絡め取られたふたりを飛び越え、さらにふたりが魔法剣士に接近する。

 

「光!」

 

「はい! 《いと慈悲深き地母神よ、闇に迷えるわたしどもに、聖なる光をお恵みください》!」

 

 慈悲深き地母神が信徒の魂削る祈りに応え、奇跡をもたらした。

 

 太陽の爆発さながらに白光が放たれる。

 

 閃光を背負う魔法剣士を目の当たりにし、盗賊ふたりの視界が真っ白な闇に塗り潰された。

 

「ぐげぇっ!?」

 

 そこを賢狼剣士がシミターを突き出して喉を貫いてひとりを殺してみせた。

 

「うごっ!?」

 

 拳闘侠客が突き出した拳がもうひとりの盗賊の喉を潰し、頸椎をへし折った。

 

 その隙に魔法剣士は、消耗した長剣で蜘蛛の巣に絡め取られたふたりのうちのひとりの喉を貫き、息の根を止める。

 

 さらに魔法剣士は、背負った槍を抜くと、もうひとりの盗賊の喉を突き刺して殺した。

 

 やがて白光が収まったときには、残っているのは禿頭頭目と手下のふたりだった。

 

「さて、あとはおまえたちだけだな」

 

「か、頭……」

 

「情けねぇ声出してんじゃねぇよ!」

 

「け、けど、逃げましょうや! あっという間に四人死んじまった! 勝てっこないですぜ! きっと高位の冒険者なんだ!」

 

「あんな若くてそんなわけがないだろ! てめぇみてえな情けない奴、もういらねぇ! せめて最期に俺の役に立てや!」

 

 何やら揉めていた禿頭頭目と手下だったが、禿頭頭目は手下の後ろに回り、背中側の服を鷲掴みにして盾のようにして突っ込んだ。

 

「か、頭ぁっ!?」

 

「おらぁっ! 死ねやぁ!」

 

 恐怖に顔を歪める手下、勝ち誇る禿頭頭目。

 

 たしかに禿頭頭目を仕留めるには、まず盾にされた手下をどうにかしてからでなければならない。

 

 そして、そうこうしていれば後ろの無傷の禿頭頭目の斧に頭をかち割られるというわけだ。

 

 だがそれは──魔法剣士がひとりであればの話だ。

 

「《アルマ(武器)……フギオー(逃亡)……アーミッティウス(喪失)》!」

 

 銀髪魔法士の真言呪文が禿頭頭目の手から斧──ではなく手下を手放させた。

 

「な、なにぃっ!?」

 

 盾を意図せず手放した禿頭頭目は瞠目し、次の瞬間には胸元に深々と長剣が突き立てられていた。

 

「あ、がぁっ……て、てめぇ……っ!」

 

 腰の長剣を抜いてひと刺しにした魔法剣士は、禿頭頭目が伸ばしてきた手を避けるように長剣を引きながら蹴り飛ばし後ろに下がった。

 

 禿頭頭目は、宙に空振る手を彷徨わせ、力なく蹌踉めくと後ろに仰向けで倒れて息絶えた。

 

 魔法剣士は、禿頭頭目の盾を括った左手からこぼれ落ちた斧を拾った。

 

 盾にされた手下は、すでに拳闘狭客が油断なく近づくと、命乞いの間を与えずに振り上げた脚を振り下ろして頭をかち割った。

 

「待──っ! あぎゃぁっ!?」

 

 最後のひとりを仕留めたのを確認し、魔法剣士は腰の鞘に長剣を収め、盾にされた手下が腰に佩いていた広刃の剣を奪い取る。

 

 魔法剣士は、広刃の剣の鞘を払って抜き、油断なく辺りを観察し、死んだはずの盗賊をひとりひとり順番に頭を蹴り飛ばす。

 

 全員がたしかに死んでいることを確認し、魔法剣士はひと息つくと広刃の剣を鞘に収めた。

 

「……よし、いいぞ」

 

 魔法剣士の合図に女神官と銀髪魔法士も広場に入ってくる。

 

「……お疲れさま。だいじょうぶかしら?」

 

「ああ、問題はない」

 

 怪我も、人を斬ったこともと意味を込めて魔法剣士は、銀髪魔法士を見つめて頷き返す。

 

「いちおう確認しますね」

 

 賢狼剣士が先ほどのように手ずから魔法剣士の体を触診し、怪我の有無を確認する。

 

「……はい、問題ありませんね」

 

「それはよかった。ありがとう。──さてと……」

 

 賢狼剣士に礼を言い、魔法剣士は女神官の元に向かう。

 

 女神官は、跪いて錫杖を手繰り寄せ、盗賊たちの鎮魂を祈っていた。

 

 亡者になるのを防ぐ意味だけでなく、死ねばみな平等に安寧があるべきなのだ。

 

「……終わったか?」

 

「──あ、は、はい」

 

 そう言って健気に笑む女神官に頷き、魔法剣士は盗賊たちの死体を漁る。

 

 魔法剣士が使えそうなもの、売れそうなものを回収している間に銀髪魔法士は、錬金魔術師に納品する分の薬苔を採取していく。

 

 賢狼剣士と拳闘侠客は、念のためにと周囲を警戒していた。

 

 それぞれが必要なものを回収したあと、魔法剣士は今後も村人たちが利用できるように拳闘侠客と協力し、盗賊たちの死体を両肩に担ぐようにして運び、それを二回繰り返した。

 

「助かるよ。いままでは、男手は俺だけだったからな」

 

「なぁに、このくらいどうってことないさ。この手のことならいくらでも頼ってくれよ大将」

 

 魔法剣士の言葉に拳闘侠客は、気安く、だが力強く頼もしく請け負ってくれた。

 

 拳闘侠客は、正式な一党としてはこれが初めての冒険だったが、すっかりこの一党を気に入っており、仲間のために拳を振るおうと決めていた。

 

 魔法剣士も初めての同性同い年の仲間に、女神官たちに対するのとは、また違った親しみを感じていた。

 

(これが友人ってやつか……)

 

(これが友達ってやつかねェ?)

 

 魔法剣士と拳闘侠客は、ふたり同時に同じことを思っていた。

 

 釣書などなくとも、過ごした時間が短くとも、得られる関係というのはたしかにあるのだ。

 

 それから最初に仕留めた見張りふたりと狼含めて山積みにし、女神官が鎮魂を祈ったあと、銀髪魔法士が真言をひとつ口にして呪文使用回数を消費せずに火をつけて火葬した。

 

 それから魔法剣士たちは、村に帰って村長にことの報告を終え、礼とともに開いてくれた細やかな祝いの宴に参加し、一夜を過ごして翌日に辺境の街を目指して出立した。

 

 行きと違って帰りは徒歩だったが、依頼を達成した一党の足取りは軽い。

 

 翌日の夕暮れには、辺境の街に戻った魔法剣士一党は冒険者ギルドにて薬苔を納品し、討伐依頼含めてことの顛末を報告。無事に依頼達成が認められたのだった。

 

 こうして初の指名依頼に加え、ふたつの依頼を同時にこなすことを魔法剣士一党はやり遂げ、ギルドからの評価もますます上がるのだった。

 

 

 

 

受付のお姉さんの外見のイメージは……

  • エノメ(不徳のギルド)
  • ルナ(このすば)
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