ゴブリンスレイヤー【魔法剣士の異聞録】   作:星屑の騎士

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どうもです、皆さん。こうしてゴブリンスレイヤーを書いてると、イヤーワン、つまりゴブスレさんたちと同期の話も書きたくなってきますねぇ。

そういえば原作の続きはいつ出るんですかね?結構長いこと読んでない気がします。

それでは、お楽しみいただければ幸いです。


冒険準備

 

 

 ひょんな縁から一党を結成した魔法剣士と女神官は、冒険者登録を済ませてふたりで話し合った結果、初仕事にゴブリン退治の依頼を請けたあと、冒険者ギルドに併設された武器兼防具屋を訪れることにした。

 

 ちなみに国としては冒険者という無頼の輩を囲うためか、冒険者ギルドに併設されているのは、武具屋だけではない。

 

 できるだけ彼らを野放しにしないように冒険者ギルドは、役所を、宿屋を、酒場を、雑貨屋を、武具屋を併設することで可能な限りひとまとめにしているのだ。

 

 ふたりが訪れたこの武具屋もそんなギルド内に設置された工房のひとつだ。

 

「ぅわぁ……!」

 

 武器兼防具屋を訪れた女神官は、店内を見回して声を上げる。

 

 店内には、さまざまな武器や防具が並んでおり、赤子の頃から地母神の神殿で育った女神官にはまるで別世界のようで圧倒された。

 

 鉄や火の匂いを感じた魔法剣士もまた、女神官同様──否、前衛職でもあるとあって彼女以上に目を輝かせていた。

 

 鋳型に流し込むだけの粗雑な剣から、しっかりと鍛えられた剣まで。

 

 もちろん数打ちの量産品なため、天下無敵の名剣などとは比べるべくもない。

 

 だが、実力的にも、身長的にも、まだまだ身の丈に合ってない武器や防具の数々は、どれもが憧れで、魔法剣士の目にはかっこよく映った。

 

(いつかは、こういうのに見合う冒険者になりたいな……いや、なるんだ)

 

 所狭しと陳列された雑多な武器のなかから両手剣を見つめ、剣身に映る新人丸出しな自分の姿に決意を新たにする。

 

「……行こうか」

 

「あ、は、はいっ!」

 

 声をかければ、空気に呑まれていたらしい女神官もハッとなり、恥ずかしげに頬を赤くし、恐縮しながら魔法剣士のあとに追随する。

 

 施設の奥まった一室には、燃え盛る炉の前に、黙々と槌を振るうひとりの髭面の老人の姿が確認できた。

 

 向こうも魔法剣士と女神官に気づいたのか、作業の手を止める。

 

「──なんだ? ……新人か。冷やかしか? 客か?」

 

 鍛治仕事の影響か、片目は瞑っており、もう片方の目を見開き、ギロっと睨んでくる工房の翁の迫力に女神官は「ひぅっ!」と短い悲鳴を上げて魔法剣士の背に隠れる。

 

「客だ」

 

 魔法剣士は、怯むことなくそう言って女神官を庇うように前に出た。

 

「……ふん。金はあんのか?」

 

「ああ、もちろん」

 

 魔法剣士は、カウンターの上に財布を置いた。

 

 なかには、金貨が詰まっていた。

 

 工房の翁は、金貨を一枚手に取って齧った。

 

 鍍金ではないと判断した工房の翁は、凶悪な顔でギロッと見上げるように視線を向ける。

 

「……それで、ものはなんだ?」

 

「堅い革の鎧。それと兜だな」

 

「ほう?」

 

 魔法剣士の要望に工房の翁は、意外そうに目を見張る。

 

 武具屋に買い物に来た新人は、大抵が真っ先に武器を欲する。

 

 いままでも魔剣だの、伝説の剣だの、一番強い武器だのと身の丈に合わない武具を欲する者ばかりだった。

 

 そのうえ工房の翁の忠告は聞く者も稀で、顔が隠れるのが嫌だから兜は要らないだの、見栄え重視で歯抜けな鎧だの、盾さえ持たない始末だった。

 

 そんななか、真っ先に鎧と兜を求めるこの若者に工房の翁は、少し昔を思い出した。

 

(あの偏屈な奴は、最初は鎧と盾が欲しいとか言ってやがったな)

 

 いまや渾名で呼ばれるようになった銀等級の冒険者のイヤーワン時代を思い浮かべ、工房の翁は魔法剣士の装いを見やる。

 

(小剣に丸盾は、もう装備してんのか。大抵新人ってのは、剣の重みで大なり小なり体が傾くもんだが……こいつは、そんな様子はない。筋力は充分。戦士なのは確定。斥候や野伏と兼業ってわけじゃねぇな。発動体は見えっからまさか魔術師と兼業か? また珍しいのが来たな)

 

 長年の経験から工房の翁は、その観察眼で魔法剣士の職を見抜いた。

 

「革鎧は、後ろの棚だ。兜はどんなのがいい」

 

「……頭が守れる鉄製のものを。視界は、隠れないと助かる」

 

「あいよ。それなりのを出してやる」

 

 そのやり取りを経て、魔法剣士は後ろの棚から革鎧を手に取り、素早く身につけていった。

 

(……話はちゃんと聞き、防具もちゃんと考える。少なくともそのへんの新人よりは、見込みがあるな。少なくとも見込みだけは)

 

 田舎から古びた武具を抱えた者、話も聞かずに装備を買っていくもののなんと多いことか。

 

(まあ、実際に怪物と戦うのはわしではないし、どんなに装備を整えても死ぬときは死ぬからな。好きな格好でやらせてやるべきか)

 

 工房の翁は、ひとりごちるが歳を取ると愚痴が多くなっていけねぇな、とボヤく。

 

「おらよ。これなら悪くねぇだろ」

 

 魔法剣士が革鎧を身につけた頃、工房の翁は、カウンターに額までは守れる造りの鉄兜を置いた。

 

 魔法剣士がその兜を手に取り、矯めつ眇めつ確認して納得したように頷き、「買った」と言って紐を通して首の後ろに掛けたのを見て、工房の翁は革鎧と兜の代金を回収する。

 

「あとは、何か必要なのありますか?」

 

「そうさな……冒険者セットは持っておくべきだ。あとは短剣一振りってところか」

 

 魔法剣士は、工房の翁が提示したものを購入し、満足いく買い物ができたようで頷く。

 

「でだ、そっちの嬢ちゃんはどうすんだ?」

 

 工房の翁の視線が魔法剣士の陰に隠れていた女神官に移り、彼女はビクッと肩を震わせる。

 

 鉱人のような強面の髭面をしているがこれでれっきとした只人なのだからわからないものだ。

 

「えっと……わ、わたしは、その、地母神さまの神官でしてっ」

 

「……ああ、地母神の神官か。だが、神官でも多少の守りは必要だと思うがな」

 

「えっと、わたし、待ち合わせもあまり……でしたら、冒険に役立てるような鞄などをいただけませんか?」

 

「ああ、なるほどな。神官に薬なんかは管理してもらうといい。ちょいと待ってな。うちにしては、女向けの洒落たもんが入ってたはずだ」

 

 恐縮した様子の女神官に工房の翁は、そう言って雑多な棚を漁って鞄をひとつ手に取った。

 

「ほらよ。これなら悪くないだろ」

 

 工房の翁が言うようにその鞄は、よくものが入るサイズながらデザインも女の子に向いている、冒険者用にしては珍しい洒落たものだった。

 

「あ、で、でしたらそれを」

 

「毎度」

 

 女神官も支払いを済ませ、鞄を肩から掛けた。

 

「ああ、それならこれらは預けていいか?」

 

 魔法剣士は、そう言うと女神官に買ったばかりの薬類や冒険者セットを手渡した。

 

「わ、わたしが持っていていいんですか?」

 

「ああ。俺は前衛だしな。身軽なほうがこちらとしても助かるし、薬品類は割る心配も減るだろう」

 

「あ、なるほど……そういうことでしたら、喜んでお預かりします」

 

 魔法剣士の言葉に女神官は、納得したように頷き、差し出された品々を丁寧に、几帳面に鞄にしまっていった。

 

 布類で瓶などは包み、綺麗に整理整頓して鞄に収納されたのは、女神官の性格だろう。

 

「……で、できました!」

 

「よし、ありがとう。それじゃあ、行くか」

 

「は、はい! 行きましょう!」

 

 互いに声を掛け合い、魔法剣士は軽く、女神官は深く、工房の翁に頭を下げたあと、武具屋をあとにするのだった。

 

「へっ……どっちも見込みはあったが、どうなるかねぇ」

 

 と、ひとりごちる工房の翁だが、それは冒険者の領分かとらしくない考えを追い払った。

 

(そんだけ期待はあったのか?)

 

 最後にそう思った工房の翁だったが、すぐに新人のことよりも新たな客への接客に応じるのだった。

 

 

 

END




まだ冒険に行かないのかよ!ってところで終わりです。でも、こういう冒険以外でのやり取りも大事かなと思っています。

次回こそは、冒険開始です!果たして初めてのゴブリン退治はどうなるのか?引き続きお待ちください。

受付のお姉さんの外見イメージはルナさんが優勢ですが、エノメさんもまだまだ巻き返せる範囲ですね。果たしてどうなるのか?

それではまた!

受付のお姉さんの外見のイメージは……

  • エノメ(不徳のギルド)
  • ルナ(このすば)
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