ゴブリンスレイヤー【魔法剣士の異聞録】   作:星屑の騎士

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どうもです、読者の皆さん。今回は、短いですが区切りがよかったので更新しました! 年内では、これが最後の更新となります。楽しんでもらえたら幸いです。

↓ご協力のほどよろしくお願いします!

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成長の証

 

 魔法剣士と女神官が、悪党なれど初めてヒトと殺し合いになり、ヒトを手にかけた日の翌日の早朝の冒険者ギルド。

 

 朝の依頼書貼り出し前の時間にふたりは、受付のお姉さんから呼び出しを受け、とある話を聞かされていた。

 

「──俺たちが昇級、ですか?」

 

「はい、そうです。ふたり揃って白磁から黒曜への昇級が決まりました」

 

「も、もう昇級だなんて……えっと、その、早くない、ですか?」

 

 訝しげな魔法剣士に微笑を浮かべて応じる受付のお姉さんの言葉に、女神官は喜びよりも困惑のほうが大きいようでおどおどとした様子でそう訊ねた。

 

 それもそのはず。

 

 ふたりはまだ冒険者になって数日の駆け出しだ。

 

 昇級するにはあまりに早すぎる。

 

 実際、自分たちと同期の白磁等級の冒険者には、昇級の話などまるでない。

 

 それどころか、まともに依頼をこなせない者、依頼から帰ってこない者、昇級など夢のまた夢な者などばかりだ。

 

「疑問に思うのも無理はないですね。ですがあなたたちは、最初の依頼を達成したときに必要な報酬額は稼げていました。黒曜への昇級に必要なのは、あと貢献度だけでした」

 

 受付のお姉さんは、そう言って微笑を浮かべる。

 

 そう、だからこそ魔法剣士と女神官は、異彩を放っていた。

 

「そして、前回の依頼です。依頼外の事態へ冷静に対処し、依頼人のかたを見捨てることなく守り切った。これが高く評価されたのが決め手ですね。あの依頼人のかたからもとても高い評価をもらえたんですよ?」

 

 最後は、ふふ、と笑って付け加える受付のお姉さん。

 

 実際、依頼先の村でも問題を起こさず、ゴブリンを退治し、想定外なトロルに遭遇しても見事に斃し、村娘を救出した時点で昇級には充分だった。

 

 そして次の依頼では、掃除や荷運びといったあまり冒険者らしくない仕事を文句なくこなし、破落戸たちと戦うという依頼内容にない事態にも対処して依頼人を守った。

 

 特に最後のは、依頼人からも冒険者ギルドからも評価が高い。

 

 ゆえに報酬の増額も認められた。

 

 怪物退治に夢中になって守るべき者を疎かにするような輩などに用はない。

 

 そのことを新人ながらに理解して、実践したことは冒険者ギルドからの評価が高い。

 

 否、そんな貴重な新人だからこそ評価が高いのか。

 

 とにかく、だからこそ冒険者ギルドとしては、魔法剣士や女神官のような冒険者にこそ昇級してもらいたかった。

 

 技量も人格も問題ないのなら、評価しだいで先に進んでもらいたいというのは、すべての冒険者に対してギルドが望むことだ。

 

 ひとつのことをこなし続けるのは尊いが、だからといってゴブリンやネズミを斃し続けていつの間にか英雄クラスの実力に、なんてことはないのだから。

 

「これは、あなたたちの実力に見合った評価ですよ」

 

 多くの冒険者を見てきたであろう受付のお姉さんに、笑顔でそう太鼓判を押された魔法剣士と女神官は、顔を見合わせると頷き合う。

 

 ふたりとも、唐突な話に戸惑いはしても昇級は望むところなのだ。

 

「よろしくお願いします!」

 

「わ、わたしも、よろしくお願いしますっ!」

 

「はい。それでは、少しお待ちくださいね」

 

 ふたりの微笑ましい様子に柔らかく微笑むと頷き、受付のお姉さんは、真新しい金属の小板を小箱から取り出すと作業を始める。

 

 受付のお姉さんは無地な表面に尖筆を以って、流麗な筆致で文字を刻み込んでいく。

 

 名前、生年、職業、技量、エトセトラ、エトセトラ──……。

 

 冒険者記録表の内容そのままに、魔法剣士、女神官の昇級の証を。

 

 そして、受付のお姉さんは手の内で尖筆を回し、ふぅっと金属板に吐息を吹きかけた。

 

 丁寧に道具をしまい、その板を静かに持ち上げる。

 

「はい、それでは改めて昇級おめでとうございます」

 

 そうして差し出された第九位、黒曜の小板──認識票。

 

 細い鎖を通され、首から下げられるようになったそれを、魔法剣士と女神官は大切に受け取った。

 

「今後とも、おふたりのよりいっそうのご活躍を期待しています」

 

 ふたりが認識票を首から下げたのを見届け、受付のお姉さんはそう言って微笑んだ。

 

「はい!」

 

「は、はいっ!」

 

 ふたりは、声を揃えて頷いた。

 

 その声音には、喜びや興奮とともに大なり小なり自信のようなものが滲んでいた。

 

 それから魔法剣士と女神官は、興奮も冷めやらぬまま場所をギルド併設の酒場に移し、黒曜等級に昇格したことを朝食のついでに小さな祝杯を挙げた。

 

「俺たちの昇級に」

 

「こ、これからのわたしたちの冒険に」

 

 乾杯、と杯を軽く打ちつけて呷った。

 

「……一歩前進だな」

 

「……は、はい」

 

 喉を潤し、微笑を浮かべてそう言って首にかかった黒曜等級を示すプレートを見下ろした。

 

「前進といえばこれからどうするかだな」

 

「どういうことですか?」

 

「パーティについてさ。いまの俺たちについての改善点や、新しく仲間を増やすかどうかって点だ」

 

「あ、なるほど」

 

 合点がいった女神官は、ん、と人差し指を口元に当ててしばし考え込んだ。

 

「……改善点は、やはりお仲間を増やす、とかでしょうか? その、少なくともわたしたち、いいコンビだと思いますし……あ、もちろんまだまだ学ばないといけないことは、たくさんありますが」

 

「ああ、それは俺もそう思う」

 

 魔法剣士と女神官は、出会って数日でありながら息の合ったコンビネーションを取れている。

 

 そこは、ふたりの共通認識だった。

 

「なら俺たちができることを増やし、連携を考えていくことにしよう」

 

「は、はい! あ、でも、わたしの場合、奇跡はそう簡単に増えたりしませんが……」

 

 学び、習熟していけば習得できる呪文と違い、奇跡は経験を積んでいき、一定の位階に達してから試練を受けて達成できてからそれぞれが信仰する神々が新たな奇跡を授けてくれる。

 

 その性質上、賜る奇跡を選ぶことはできず、どんな奇跡を授かるかは文字どおり神のみぞ知る。

 

「そうだな……やっぱりそうなると、おまえの言うように新しい仲間は増やしたほうがいいか」

 

 冒険で宝を手にするには、探索系の依頼や討伐依頼で見つけた宝箱次第というのが基本だ。

 

 探索はもちろん、宝箱を開けるにも野伏や斥候は必須だった。

 

「野伏か斥候、あとは専業の前衛や魔術師もひとり居たらいいな」

 

「それと、いいかただと嬉しいですね」

 

「ああ、戒律か。秩序善とまでは言わないが、せめて中立がいいな。冒険中に方針で揉めたくない」

 

 あれこれと足らないところを足りないながらに話し合うふたりは、まさに駆け出し冒険者らしいが誰もが大なり小なり通る道だった。

 

「……まあ、無理に増やす必要はないか。あくまで目安ってことで。いま話し合ったように戒律の問題はあるし、いくら昇級したからといって白磁と黒曜では、あまり稼ぎが変わらないからな」

 

 報酬は等分だから仲間を増やすとひとり頭の取り分は、当然減る。

 

 まだまだ駆け出しのうちは、仲間を増やしてもパーティとしての維持が難しいのだ。

 

「そう、ですね。それに何ができるできないも大切だとは思いますが、冒険するなら一緒に居て楽しいかただといいですね」

 

「たしかにな。とはいえ、気が合って能力もあって、なんて贅沢な話だよな。理想のパーティなんて物語のなかにしかいないか」

 

 女神官の言葉に魔法剣士は、そう言って肩を竦める。

 

 そう、冒険とは能力がなくても気が合う者同士で行けば存外なんとかなるものだ。

 

 極論、戦士だけの一党でも気が合えば上手くいく。

 

 もちろん、それでもなんとかならないこともあるが、どちらでも同じだけの成功と失敗の可能性があるのなら、気が合ったほうがいい。

 

「……ま、もし一緒に冒険したい奴が見つかれば誘ってみよう。それで求めている能力があれば嬉しいなってことで」

 

「は、はい! 一緒に頑張りましょう! ──あ……っ!」

 

 互いに意識確認して気概を高めたあと、さあ冒険だ、といったときに女神官が何かを思い出したように小さく声を上げた。

 

「どうかしたのか?」

 

「あ、いえ、その……すみません。さっそくなんですがわたし、神殿に行かないといけないみたいです」

 

「そうなのか?」

 

「は、はい。啓示というか予感というか……もしかしたら地母神さまより新たな奇跡を賜われる、かもしれません」

 

 魔法剣士の疑問に女神官は辿々しくも控えめに、しかし緊張しながらもしかと意思を込めて言う。

 

 神殿や寺院を出た聖職者は、その力量と位階によって、神託とともに新たな奇跡を与えられる。

 

 どうやら彼女の信仰心は、彼女自身が思っているよりも、強固であったらしい。

 

 新たな奇跡があれば、魔法剣士を支えることができると信じて、女神官は試練に臨むつもりだった。

 

「そ、それに昇級したことを神官長さまにご報告もしたい、です」

 

 曖昧な感覚を真摯に言葉にする女神官は、付け足すように言う。

 

 ひとりで試練に挑むという女神官に対し、魔法剣士には当然、否やはなかった。

 

「なるほど……ああ、わかった。そういうことなら、冒険はまたの機会にしよう」

 

「す、すみません……これからというときに」

 

 快く了承してくれた魔法剣士に女神官は、一党のことを思って申し訳なさそうに目を伏せた。

 

 魔法剣士は、これから自分などには想像だにしない試練に挑む女神官の後ろめたさを軽くするため、それを気にするなと気安く笑いかける。

 

「いや、構わないさ。一党を組んでいるからこそ、お互いの事情は汲み取らないとな。気にせず務めを果たすといい。それに、もしかしたらそれが俺たちの力になるかもしれないんだからな。だから、応援しかできないが……頑張れ」

 

「は、はい! ありがとうございます! 頑張ってきますね!」

 

 ようやっと女神官は、その表情を花のように綻ばせる。

 

 それから魔法剣士は、数日は神殿に籠もることになるという女神官の華奢な背を見送ったのだった。

 

 

END

 

 

 




というわけで、異例の早さの昇級ですね。でも、黒曜になるなら問題なしなだけのものは備わりました。ここからの昇級は、簡単にはいかないでしょう。

さて、前書きでも書いたように年内ではこれが最後の更新となります。ハーメルンさまでは、短いあいだでしたが評価、感想、お気に入り登録、募集へのご協力などたくさんお世話になりました。本当にありがとうございます!

なんだか最後みたいな挨拶ですが、あくまで年内最後なのでまた来年からもお付き合いいただければ大変嬉しく思います! それでは、皆さん、少し早いですが良いお年を!

何かあればコメント、だと規約に触れたりするかもなのでメッセージのほうで気軽にお声掛けください。

受付のお姉さんの外見のイメージは……

  • エノメ(不徳のギルド)
  • ルナ(このすば)
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