ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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来店。喫茶リコリコ

 

年が明け、月は2月。季節は冬の真っ只中だ。今日の空からは、冷たい風に乗って白い雪が静かに舞い落ちている。

そんな極寒の空気の中、俺は防寒用のコートに身を包み、街をぶらぶらと当てもなく歩いていた。

 

緋村零

ふぅ……寒。そろそろ、どこかで一息入れるか……

 

朝から街の様子を観察がてら歩き回っていたため、時計の針はもうお昼時を指している。冷え切った身体が温かい食事と飲み物を求めていた。

 

緋村零

そこらの喫茶店あたりで適当に済ませるか……お?

 

そんなことを考えながら角を曲がった瞬間、俺の目に、見覚えがありすぎる独特な佇まいの店舗が飛び込んできた。建物の横に掲げられた看板には、確かにそう書かれている。

 

緋村零

『喫茶リコリコ』……こんな場所にあるのか……

 

前世のアニメ知識、そしてあの電波塔事件。点と点が頭の中で完全に繋がった。リコリス・リコイルの面々が集うあの隠れ家的な喫茶店が、まさに目の前に存在していた。

 

緋村零

ちょうどいい。あそこで暖を取らせてもらうか……

俺は凍えた手をポケットから出し、喫茶リコリコの木製の扉をカランコロンと音を立てて開けた。

入店した俺は、まずさりげなく店内を一度見渡す。

 

緋村零

(アニメの描写通りだな……)

 

古き良き和洋折衷の落ち着いた内装は、アニメ版の雰囲気そのものだった。木の温もりが感じられる空間に、どこか心が和む。すると、奥から低く落ち着いた声がかけられた。

 

??

いらっしゃいませ。お1人様ですか?

 

カウンターの奥から声をかけてきたのは、和服を着こなした大柄な黒人男性。喫茶リコリコの店長であり、リコリスたちの育ての親でもあるミカだった。

 

緋村零

あぁ、1人だ

 

ミカ

かしこまりました。お好きな席へどうぞ

 

俺はそのまま、店の情報や彼らの動きを観察しやすいカウンター席へと腰を下ろした。そこに、すかさず足音を立てずに近づいてくる気配があった。

 

??

いらっしゃいませ。こちら、お冷とメニューになります

 

お冷のグラスとメニュー表を差し出してきたのは、長い黒髪をツインテールに結った少女――井ノ上たきなだった。

 

緋村零

ありがとう……

 

メニューを受け取りながら、たきなの表情を観察する。その顔には一切の愛想笑いがなく、どこまでも生真面目で冷徹なリコリスとしてのオーラを纏っている。まだ千束に感化されきっていない、アニメの第3話あたり……DAから左遷されて間もない頃の雰囲気だ。

 

たきな

ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください

 

緋村零

どうも……

 

短く応じ、俺はメニューへと視線を落とした。和風甘味から洋食まで色々と充実しているな。

 

緋村零

ここは無難にコーヒー系にするか……

 

注文する品を決め、俺はカウンターの向こうのミカに声をかけた。

 

緋村零

すまない。カフェラテとカステラを貰えるか?

 

ミカ

かしこまりました。少々お待ちを

 

注文を終え、出来上がるまでの間、俺は顎を手に突いて思考を巡らせる。

 

緋村零

(さて……リコリコに辿り着いたのはいいが、この先どう動くべきか……)

 

ソードアート・オンラインの破滅の運命を変えるのが俺の第一目標だが、このリコリス・リコイルの世界ともクロスオーバーしている現実がある。このまま彼らの物語にも深く介入すべきだろうか。

 

緋村零

(いや……むしろDA(Direct Attack)やリコリコと一定の繋がりを持っておいた方が、将来的に『オーシャンタートル』の件やラースの計画に政府側からアプローチする際、状況を圧倒的に有利に運べるはずだ。……よし、そうしよう)

 

今後の長期的なロードマップを構築していると、不意に正面から影が落ちた。

 

たきな

お待たせいたしました。カフェラテとカステラです

 

たきなが、一切の手際の無駄なく注文の品をテーブルへと並べた。

 

緋村零

ありがとう……

 

手元に届いた淹れたてのカフェラテを手に取り、まずは一口、静かに含む。

 

緋村零

うまいですね……。苦すぎず、甘すぎず。非常に好みの味です

 

嘘偽りのない率直な感想を口にする。

 

ミカ

おや、そう言ってくれると嬉しいよ。淹れた甲斐があった

 

ミカがカウンターの奥で、嬉しそうに目を細めて微笑んだ。

さて……。店内を見回しても、現時点で客は俺以外に誰もいない。少しばかり、彼らの実力を測るために揺さぶりをかけてみるのも悪くないだろう。サーヴァント並みに研ぎ澄まされた俺の嗅覚は、この店が纏う「隠し味」を最初から捉えていた。

 

緋村零

……1つ、質問してもいいですか?

 

ミカ

おや、何かな?

 

俺はカフェラテのカップを静かに置き、仮面の裏の瞳でミカ、そしてたきなを真っ直ぐに見据え、確信を突く一言を放った。

 

緋村零

この店に入った瞬間から、微かに火薬……それも、かなり新鮮な『硝煙の匂い』が漂っているのは、何故ですか?

 

俺の放った静かな問いかけに、それまで流れていた穏やかな空気が、一瞬にして凍りついたように静まり返った。

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