ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
エルモ秘匿基地の広大な特設訓練場。
昨日まで私服やDAの制服だった58人の少年少女たちは今、支給されたばかりの漆黒の戦闘服に身を包み、鋭い緊張感を漂わせながら3つのエリアに分かれて整列していた。
かつて仮想世界で命を懸けた者、冷徹な実力至上主義の学園を生き抜いた者、ひひねくれた日常を守ろうとする者――彼らの瞳に映るのは、生温い日常ではなく、これから始まる本物の硝煙の現実だった。
狙撃・後方支援班
担当教官: 椎名ひより、神崎有希子、クルカイ
訓練生: 朝田詩乃(シノン)、紺野藍子(ラン)、早乙女紗知(サチ)、竹宮琴音(フィリア)、戸塚彩加、白石飛鳥、橘茜、姫野ユキ、長谷部波瑠加、山村美紀
内容想定: 7.62mm口径や.50BMGの精密射撃、セミオート狙撃の連携、カモフラージュと陣地転換。
前線突撃・近接CQB班
担当教官: 緋村零、錦木千束、井ノ上たきな、黛煙
訓練生: 桐ヶ谷和人(キリト)、結城明日奈(アスナ)、桐ヶ谷直葉(リーファ)、紺野木綿季(ユウキ)、枳殻虹架(レイン)、黒瀬樺恋(ルクス)、星山翠子(ツェリスカ)、高峰紅葉(クレハ)、本多小春(コハル)、一之瀬帆波、白波千尋、伊吹澪、西野武子、鬼龍院風花、朝比奈なずな
内容想定: 5.56mmや.45ACP、PDWを使用した超至近距離での射撃・スイッチング、バディ間の弾薬融通、前線突破フォーメーション。
司令部自衛・遊撃班(特殊潜入・重火力・電子戦)
担当教官: ザ・ボス、綾小路清隆、潮田渚、司波達也、司波深雪
訓練生: 比企谷八幡、後沢鋭二(エイジ)、三上悟(リムル)、小比類巻香蓮(レン)、篠原美優(フカ次郎)、帆坂・カリーナ・朋(アルゴ)、重村悠那(ユナ)、七瀬翼、天沢一夏、堀北鈴音、櫛田桔梗、松下千秋、軽井沢恵、佐藤麻耶、王美雨、小橋夢、森下藍、森下、他(自衛用ピストル・SMG組)
内容想定:
渚・達也・一夏による隠密潜入・格闘術。
フカ次郎(MGL140)やエギル(M240G)の重火力運用時の周囲のカバー。
ザ・ボス・清隆・八幡による、情報戦・状況判断の机上演習。
訓練開始。
狙撃・後方支援班
ひより
……ふむ。皆さん、自分の『相棒』の重さは、しかと手に馴染んでいますか?
静かだが鈴の音のように澄んだ、そしてどこか底知れない知性を孕んだ声が響く。
後方支援班の教官席に立つのは、椎名ひより、神崎有希子、そして冷徹な青い瞳で愛銃HK416を見つめる戦術人形・クルカイだった。ひよりの背後には、極限まで軽量化された白銀……ではなく、光を一切反射しない漆黒の怪物『チェイ・タック M200』が鎮座している。
朝田詩乃(シノン)は、自身の体格に合わせて限界まで軽量化された『PGM ヘカートⅡ』のボルトをカチャリと引き、その感触に目を細めた。
シノン
……驚いたわ。通常の半分以下の重さなのに、ボルトの噛み合わせも剛性もバーチャル(GGO)の時と全く変わらない。これなら、現実の私の身体でも完璧に振り回せる
クルカイ
喜ぶのは実際に的を撃ち抜いてからにしなさい、シノン。ボルトアクションはセミオートと違って次弾の装填に物理的な時間がかかる。一発外せば、それがあなたの死に直結するわ。……サチ、フィリア、彩加、あなたたちもよ
サチ
は、はい……っ! 私、このM24 SWSをしっかり抱えて、焦らずに……みんなの背中を守ります!
戸塚彩加
僕も……この真っ黒なTRG-22で、八幡たちの進む道を絶対に汚させないよ
ランがG28E3を、波瑠加がL96A1を、ユキと茜がMSG90を構える。ボルトアクションとセミオート、大口径.50BMGと7.62mmが織りなす「六重の絶対死線」。ひよりが微笑みを浮かべたまま、静かに最初の課題を告げた。
ひより
では、始めましょうか。まずは1キロ先のターゲットに対する、風読みと精密射撃。そして、一発撃つごとの迅速な『カモフラージュと陣地転換』。……誰も、私のチェイ・タックより遅れないでくださいね?
前線突撃・近接CQB班
千束
よーしお前ら! 景気よくババババッと弾幕張る準備は出来てるかーい!?
突撃班のエリアでは、錦木千束がデトニクスを回しながら、いつも通りの最高の笑顔で声を張り上げていた。だが、その隣に立つ緋村零、井ノ上たきな、そして黛煙の放つ圧倒的な「本物の戦士」のプレッシャーに、訓練生陣営の空気がガチリと引き締まる。
桐ヶ谷和人(キリト)は、黒一色(ブラックアウト)にカスタムされた『SIG MCX Rattler』のグリップを握り込み、そのあまりのコンパクトさに驚いていた。
キリト
サブマシンガンサイズのアサルトライフル……中身は本物の5.56mmか。零、これ最高に俺の身体のキレに馴染むよ。……なぁ、アスナ?
アスナ
ええ。私のSpear-LTも、驚くほど軽くて扱いやすいわ。これなら、SAOの時みたいに誰よりも速く、正確に一番槍を狙いに行ける!
直葉(リーファ)が剛性の塊のようなSCAR-SCを、ルクスが漆黒のSCAR-Lを構える。その横では、ユウキが『KRISS Vector』のマガジンをカチャカチャと叩きながら、目を爛々と輝かせていた。
ユウキ
毎分1200発の連撃……! ランお姉ちゃんたちが後ろで守ってくれるんだもん、ボク、現実世界でも絶剣のスピードで一番前を駆け抜けてみせるよ!
零
良い気合いだ、ユウキ。だがここは現実だ。剣技のステップのまま突っ込めば、敵のクロスファイア(交差火網)の餌食になる。千束やたきなの動きをよく見て、クローズドクォーターでの確実なスイッチングと、バディ間での『5.56mm弾の融通(ロジスティクス)』を徹底的に身体に叩き込め。……いくぞ!」
零の20式小銃が鋭い金属音を立ててボルトを閉じる。レインのAK Alpha、なずなの20式、一之瀬帆波のHK416D、千尋のSCAR-SC、武子のBREN 2、そして澪のHK416C。GGOの突撃型・クレハ(UMP45)やツェリスカ(89式)も加わり、圧倒的な「面制圧の暴力」が前線突破フォーメーションの教練へと動き出した。
司令部自衛・遊撃班(特殊潜入・重火力・電子戦)
ザ・ボス
……少年。昨日言ったこと、もう忘れたわけではないわね?
薄暗い特設射撃場を兼ねた作戦室。
白いスニークスーツを纏ったザ・ボスが、冷徹な視線を比企谷八幡へと向けていた。八幡の腰には、昨日手渡された『グロック19』が重々しく収まっている。彼の隣には綾小路清隆、潮田渚、司波達也、深雪という、エルモの最高峰の知略と異能が教官として並んでいた。
八幡
っ……! ええ、嫌というほど。俺の汚い搦手(からめて)も、仲間を生かすために使わなきゃただの自殺志願だってことは、昨日のシゴキで脳細胞に直接焼き付けられましたよ
八幡は眼鏡の位置を直し、死んだ魚の目の奥に冷徹な『参謀』の光を宿して、戦術モニターを見つめた。
この班の役割は多岐にわたる。
中央のデスクでは、八幡、清隆、ザ・ボス、そして堀北鈴音、櫛田桔梗、松下千秋たちが、DA本部のデータ消去を逆手に取る「情報・世論誘導戦」の机上演習に入ろうとしていた。
清隆
妥当な緊張感だ、比企谷。お前の他者の欺瞞を逆手に取る脳髄は、今回の情報戦の核になる。坂柳や櫛田、橘先輩と連携し、現体制の腐敗を世論の刃で切り刻むロジックを完成させろ
一方、実戦エリアでは潮田渚と司波達也、そして天沢一夏が、七瀬翼や後沢鋭二(エイジ)、リムル(三上悟)を相手に、音もなく敵の懐に潜り込む「隠密潜入・格闘術」の教練を開始していた。達也のUSP9と、一夏の大口径UMP45の連携が、凄まじい風切り音を立てる。
さらにその後方では、12.5キロの重機関銃『M420G』を腰だめで構えるエギルと、ダネルMGL140を抱えるフカ次郎(篠原美優)が、軽井沢恵や佐藤麻耶、王美雨、小橋夢といった「司令部自衛(P90・MPX・UMP45)組」の目の前で、圧倒的な火力をパージするための周囲のカバーリングの確認に入っていた。
ザ・ボス
大高さんの世界の軍、そして別世界の自衛隊が合流するまでの『天岩戸作戦』。その成否は、この司令部がどれだけ敵の裏工作をマヒさせ、前線をコントロールできるかに懸かっているわ。……総員、訓練開始!
ザ・ボスの鋭い号令が響き渡ると同時に、エルモ基地の全エリアから、一斉に擬似実弾の爆音と、電子戦のシミュレーションログが爆発するように立ち上った。
前世の因縁、前々世の硝煙、そして今世の覚悟。58人の防人たちの、国をひっくり返すための地獄の教練が、今ここに完全なる火蓋を切った。