ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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武器選び、そして…

 

俺が喫茶リコリコの店員になってから、早いもので2年の月日が流れていた。

運命の歯車を動かし続け、俺は14歳になった。

 

緋村零

ふぅ……

 

モップを片手に、俺は小さく息を吐きながら店内の清掃を終える。夕闇が窓の外を包み込み、今日の営業はもう終わりを迎えていた。

 

ミカ

時雨、そっちの清掃は終わったか?

 

カウンターの奥から、淹れたての珈琲の香りと共にミカさんが声を掛けてくる。

 

緋村零

ええ、ミカさん。こっちはバッチリ終わりましたよ

 

ミカ

そうか、いつも助かるよ

 

??

相変わらず仕事が速いな、お前は。無駄な動きが一切ない

 

生意気そうな、だけど確かな親愛の情がこもった声で俺を評価するのは、カウンターの隅でノートPCを叩いていた少女――世界最強のハッカー「ウォールナット」こと、クルミだ。

リコリコに入店して間もなく、原作通りウォールナットの護衛任務が発生した。だが、前世の記憶(原作知識)を持つ俺と千束、たきなの3人が揃った作戦に死角などあるはずもなく、テロリストどもの裏をかいて無事に任務を完全遂行。その後、クルミは原作通り身を隠す形でこの店で暮らしている。

 

緋村零

まあな……。こういう前線の下準備や後片付けみたいなことは、前世から結構慣れてるからな

 

クルミとそんな他愛のない会話を交わしていると、奥のスタッフルームからパタパタと足音が響いた。

 

たきな

時雨、レジの締め作業と売り上げの集計、すべて終わりましたよ

丁寧な動作で報告してきたのはたきなだ。

 

2年前、俺が彼女の心を救ったあの一件以来、たきなはリコリコに自分の居場所を見出し、今では見違えるほど柔らかい笑顔を見せるようになっていた。手伝いに行く幼稚園のイベントでも、その生真面目さと優しさで子供たちから大人気らしい。

……あと、気のせいか、最近のたきなは何かと理由をつけて俺のすぐ側に居ようとする気がする。

 

緋村零

お疲れ、たきな。いつも正確で助かるよ

 

たきな

いえ……時雨こそ、お疲れ様です

 

俺の言葉に、たきなは嬉しそうに頬を緩めて微笑む。その純粋な笑顔を見ていると、運命を変えた甲斐があったと心の底から思う。そこに、裏口の引き戸がガラリと開く音が響いた。

 

千束

ゴミ出しも終わったよ〜〜ん! 今日も一日、お疲れ様でしたっ!

 

看板娘の千束が、相変わらずのエネルギーを放ちながら戻ってきた。その姿を見遣りながら、俺はふと疑問に思ったことを口にする。

 

緋村零

お疲れ。……そう言えば千束、みずきさんはどうしたんだ? 一緒にゴミ出しに行ったんじゃ?

 

千束

あはは、あの酔っ払いなら「もうアタシの肝臓が限界!」とか言って、使い物にならないから先に帰しちゃったよ〜

 

緋村零

……はは、みずきさんは相変わらずだな……

 

常連客と昼間から飲んでいたのだろうか。本当にブレない人だ。そんな風に俺たちが苦笑していると、ミカさんが重厚な足取りでカウンターから出てきた。

 

ミカ

時雨。……ちょうどいい、お前が裏ルート経由で私に頼んでいた『例のモノ』が、先ほど届いたぞ

 

緋村零

本当ですか、ミカさん?

 

俺の瞳に、転生者としての鋭い光が宿る。これから始まるSAOのデスゲーム、そして現実世界での戦闘に備え、俺は自分専用の特注銃器をミカさんのコネを使って発注していたのだ。

 

ミカ

ああ。すでに地下の射撃場へと搬入しておいた。確認してくるといい

 

緋村零

分かりました。さっそく行ってみます

 

千束

えっ、何それ何それ!? 時雨君の新しい武器!? あたしも気になる〜、見たい!

 

たきな

……私も、時雨がどのような銃器を選択したのか、非常に興味があります

 

緋村零

はは、じゃあ3人で一緒に降りようか

 

好奇心旺盛に目を輝かせる千束と、プロのリコリスとして視線を鋭くするたきなを伴い、俺たちは店の奥にある秘密の階段を上り、地下の広大な射撃場へと降りていった。

地下射撃場。

コンクリートに囲まれたその空間の長机の上に、3つの異なるサイズの頑丈なミリタリースペックのガンケースが置かれていた。小型、大型、そして異様な存在感を放つ特大型が1個ずつ。

 

千束

ねぇねぇ時雨君! 早く開けてよ! じらすのはナシね!

 

千束が待ちきれないといった様子で俺の袖を引っ張り、急かしてくる。はいはい、分かったから。

 

緋村零

まずは基本となる、拳銃からだな……

 

俺は最初に、一番小さなガンケースのロックを解除し、蓋を押し上げた。オイルの匂いと共に黒光りするポリマーフレームのハンドガンが姿を現す。

 

たきな

……それは、H&KVP9……ですか?

 

さすがは銃器のスペシャリストたるリコリス、たきなが一目でその名前を言い当てた。

 

緋村零

正解。……前世でも俺が愛用していた拳銃の一つだよ。やはり、肉体に馴染んだ使い慣れた物が一番戦場で信頼できるからな

 

千束

あ、その気持ちはすごく分かる! 私のデトニクスちゃんも、これじゃなきゃダメってくらい馴染んでるし!

 

俺はケースからVP9を取り出すと、電光石火の手際で通常分解(フィールドストリップ)を行い、内部のパーツを細部まで調べる。ふむ、流石はミカさんのルートだ。中身は完全な新品であり、トリガーの引きの軽さやストロークも、俺の要望通り完璧にカスタムされている。

 

緋村零

よし、少し試し撃ちをするか……

 

マガジンに実包の9ミリ弾を滑り込ませ、銃身に叩き込む。スライドを引いて弾薬をチャンバーへ送り込み、ターゲットを見据えて無造作に構えた。

――パン! パン! パパンッ!

心地よい重低音と共に、間髪入れずに4発の銃声が地下室に轟く。

硝煙が薄く舞う中、20メートル先のターゲットペーパーの「10」のエリア、その完全なる中心(センター)に、4発すべての弾痕が重なるようにして大きな穴を開けていた。

 

千束

おお〜〜っ! さすがJTR、相変わらず変態的な命中精度だね!

 

たきな

……凄いです。反動の制御が完璧で、銃身が全くブレていません……

 

二人が感嘆の声を挙げる中、俺は冷徹に次のステップへと移る。

 

緋村零

さて……次はこれだ

 

拳銃から手早くマガジンを抜き、安全を確認してから卓上に置く。続いて、二番目の大きなガンケースを開いた。そこに入っていたのは――

 

千束

あ、これって、東京マルイとかでも有名なM4A1 MWS?

 

精悍な漆黒のアサルトライフル、M4A1が静かに横たわっていた。

 

緋村零

ベースはそうだけど、これを今から俺専用の仕様にカスタムするんだよ

 

俺はケースの底から、あらかじめ用意させておいた最新の強化パーツや、SOPMODアクセサリー(光学照準器や特殊ハンドガード)を取り出し、驚異的な速度で組み上げていく。その手つきは、熟練のガンスミスさえも凌駕していた。そして――

 

緋村零

よし……、完成だ

 

組み上がったのは、中距離以内のあらゆる戦闘を圧倒的な火力で制圧するための【M4A1カスタム(※外観はドルフロのM4A1 MOD3仕様)】。

タクティカルかつ近未来的な禍々しさを纏ったそのフォルムに、たきなが目を細めて分析を口にする。

 

たきな

……ハンドガードの形状、そしてドットサイトとブースターの配置。徹底的に取り回しと、中距離戦での精密射撃に特化させたカスタムですね……

 

緋村零

まあね。これが一番、前衛でも後衛でも柔軟に立ち回れるからな

 

俺は30連マガジンに弾を込め、M4A1を流れるような動作で肩にストックを密着させて構える。

――タン! タン! タタタタタタンッ!

セミオートからバースト、そしてフルオートへ。

凄まじい発射レートの反動をその強靭な肉体で完全に抑え込み、すべての弾丸がターゲットの胸部を寸分の狂いもなく蜂の巣に変えていく。

 

緋村零

よし……。じゃあ、最後だ

 

銃を置き、俺は最後に残された、長机のほとんどを占領している特大のガンケースに手をかけた。重厚なスチール製のロックを外して蓋を開ける。その瞬間、千束とたきなが同時に息を呑んだ。

 

緋村零

バレット M107A1

 

そこに鎮座していたのは、国家の軍隊がヘリや装甲車を破壊するために運用する、アンチマテリアル(対物)ライフルの代名詞。最高峰の破壊力を誇るバレットM82の、最新改良型だった。

 

千束

うわあぁ……! 本物の対物狙撃銃、初めて見た……。デ、デカいね……

 

たきな

……これを、一人で運用するつもりですか? 時雨、いくらなんでもこの重量と反動は、人間が手持ちで扱える代物では……

 

軍の規格すら超越した化け物銃を前に、流石の二人も引き気味のリアクションを返す。まあ、当然の反応だ。

 

緋村零

大丈夫だよ。……まあ、今の俺の年齢と体格じゃ、実戦ではまだ使わないけどな。これは数年後の『ある戦い』のための先行投資さ

 

現時点の14歳の身体では、VP9とM4A1の運用が丁度いい。俺は巨大なバレットM107A1を愛おしそうに撫でた後、再びガンケースの蓋を閉じてロックした。

これで現実世界での火力は整った。あとはSAOの開始を待つばかり――そう確信した、その時だった。

 

ミカ

3人とも、そこにいたか。……仕事だ

 

射撃場の階段から、ミカさんが深刻な面持ちで降りてきた。その手に握られているのは、DAの端末。

俺は仮面の裏で僅かに眉をひそめた。

 

緋村零

(……はて。原作のこの時期に、俺たち3人が指名されるような大きな任務はなかったはずだが。……システム(世界線)の修正による、新たな歪みか?)

 

冷たいコンクリートの部屋に、新たな戦いの予感が静かに満ちていく。俺は愛銃の感触を確かめながら、ミカさんの次なる言葉に意識を集中させた。

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