ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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カフェ整備

物流トラックからのすべての物資と開発機材の搬入が終わり、総勢68人の大所帯は地下施設と地上の広間でひとまず埃を払っていた。長旅と重労働の疲れを滲ませる防人たちを見渡し、零がこれからの予定を告げる。

 

緋村零

さて、次にカフェの内装と、地下の射撃場とかの整備だ

 

零の言葉に応じるように、エプロンを優雅に手にしたスプリングフィールドが、おっとりと上品な微笑みを浮かべて歩み出た。

彼女の周囲だけ、まるで硝煙の戦場を忘れさせるかのような、穏やかで慈愛に満ちた空気がふわりと広がる。

 

スプリングフィールド

ふふ、皆様、長旅のすぐ後なのに本当にお疲れ様でした。次は私たちのカフェの準備ですね。戦う防人の皆様がいつでも心から一息つけるよう、とびきり居心地の良い場所に仕立ててみせますね、零さん。もちろん、千束さんと約束した特製のケーキや、美味しいコーヒーの準備もバッチリですよ

 

聖母のように優しい声音と、一切のトゲがない丁寧な物腰。彼女の言葉は、移動の緊張が残っていた一同の心をじんわりと解きほぐしていく。

 

センタウレイシー

店長の言う通り、まずは拠点の環境を整えるのが最優先です。零さん、厨房の機材配置からフロアの清掃、そして地下射撃場の安全動線の確保まで、このG36にお任せください。完璧にこなしてみせます。皆様は、今のうちに少しお体を休めてくださいね

 

センタウレイシーは生真面目な表情のまま一礼すると、メイドとしての完璧な仕事を見せるべく、すでに清掃用具の選定へとテキパキと動き始めた。

 

錦木千束

うわぁ、スプリングフィールドさんのコーヒーとケーキ! もう今から待ちきれないよー! たきな、ほら、私たちも負けてられないよ! 喫茶リコリコの意地にかけて、カフェのレイアウトを手伝っちゃおう!

 

井ノ上たきな

千束、はしゃぐのは良いですが、まずは地下の射撃場の整備が先です。私たちは特殊部隊員として、八咫烏の戦闘訓練がいつでも実戦同様に再開できるよう、標的の設置や弾薬庫の管理プロットを終わらせなければなりません

 

キリト

あはは、たきなは相変わらずブレないな。よし、俺たちも地下の射撃場の方を手伝うよ。達也たちと爆薬の実験ブースや、新しい武器の調整環境も作らないといけないしな

 

新拠点である大分県国東市安岐町の施設内で、大切な日常を守るためのカフェ、そして牙を研ぐための地下射撃場。二つの重要エリアの構築に向けて、漆黒の防人たちは私服姿のまま、心地よい活気とともにそれぞれの作業へと取り掛かろうとしていた。そこにマキアートが

 

マキアート

まぁ、店の奥の方に居住区画を作ればいいかしら?

 

カフェの図面をツンとすました顔で覗き込みながら、マキアートは腕を組んでぶっきらぼうに呟いた。

彼女のその素直になれない、けれど大所帯となった子供たちや仲間の寝床をしっかりと心配しているツンデレな優しさが、その短い提案の中に隠れている。

彼女の視線は図面のデッドスペースへと向けられており、不機嫌そうにフンと鼻を鳴らしながらも、細い指先でトントンと壁の境界線を叩いた。

 

マキアート

勘違いしないでよね。別に私があなたたちと四六時中一緒にいたいわけじゃないわ。ただ、68人も人がいて、プライベートな空間も満足にないんじゃ、戦う前にストレスで自滅する奴が出るかもしれないでしょ? だから、効率的に動線を分けるための、私なりの合理的なアドバイスよ

 

相変わらずのトゲのある強がりな言い回し。けれど、その奥にある繊細な配慮をよく知るグローザ小隊の面々やスプリングフィールドは、微笑ましそうに彼女を見つめた。

 

スプリングフィールド

ふふ、マキアートさんの言う通りですね。皆様が安心して身体を休められるお部屋は、何よりも大切です。お店の奥のスペースを上手く区切れば、女の子たちの居住区画も綺麗に収まりそうですね

 

センタウレイシー

ええ、素晴らしい提案です。では、プライベートエリアのセキュリティと遮音性の確保も含めて、私が直ちに動線計画を修正します。マキアート、あなたも手伝いなさい。あなたのそういう細かいところに気がつくお節介な性格は、部屋割りの調整に向いていますから

 

センタウレイシーに事務的に、しかし確かな信頼を込めて言われ、マキアートは一瞬で顔を赤くして声を尖らせた。

 

マキアート

ちょっと! 誰がお節介よ! 私はただ、無駄な混乱で私の足を引っ張られたら迷惑だから言っただけよ! ……まぁ、そこまで言うなら、手伝ってあげないこともないけれど!

 

フイとそっぽを向いて耳まで赤くするマキアートの様子に、千束やアスナたちもクスクスと笑い声を漏らす。

新拠点となる大分県安岐町の施設の中で、戦いへの牙を研ぎつつも、人間と戦術人形が共に暮らす「新しい家」の形が、賑やかな議論とともに少しずつ組み上がろうとしていた。

 

緋村零

うーん、店内は前前世のズッケロと同じで良いだろう。ズッケロの店内レイアウトの方が海も見えるはずだ

 

零の口から飛び出した懐かしい名前に、ズッケロ小隊の面々、特に先ほど部屋割りを気にしていたマキアートが、驚いたように大きな目をさらに丸くした。前前世の硝煙に塗れた日々の中で、自分たちが拠り所にしていたあの場所のデザインが、この美しい大分県の海辺で再現されようとしているのだ。

 

マキアート

ちょっと……わざわざあのズッケロと同じにするなんて、何を考えてるのよ。……まあ、あのレイアウトなら確かに大きな窓からこの綺麗な海が一望できるでしょうけど。べ、別に懐かしいから賛成するわけじゃないんだからね? 単純に、視界の確保と採光の面で合理的だって言ってるのよ

 

顔をわずかに赤らめながらも、慣れ親しんだデザインの採用にどこか嬉しさを隠せないマキアート。フイとそっぽを向く彼女の隣で、同じくズッケロ小隊のシャークリーが楽しそうに声を弾ませた。

 

シャークリー

あはは、マキアートってば相変わらず素直じゃないなぁ! でも零、その提案は大賛成だよ。あのレイアウトならカウンターからもフロアからも外の様子がよく見えるし、何より居心地の良さは僕たちが保証するよ

 

スプリングフィールド

ふふ、ズッケロのレイアウトですか。それはとても素敵なアイデアですね、零さん。あのお店の設計は、光の入り方がとても柔らかくて、お茶の香りがよく引き立つんです。安岐町のこの美しい海を眺めながら皆様に一息ついていただくには、これ以上ない選択だと思いますよ

 

スプリングフィールドはそっと頬に手を当て、おっとりと上品な微笑みを浮かべながら零の提案に賛同した。彼女の温かい言葉に、今度は千束が目を輝かせて身を乗り出す。

 

錦木千束

えっ、海が見える席!? なにそれ最高じゃん! 喫茶リコリコも和風で落ち着くけど、目の前の砂浜を見ながらスプリングフィールドさんのケーキが食べられるなんて、もう天国確定だよ! 零、ナイスアイデア!

 

千束が嬉しそうに拳を突き上げる傍らで、たきなも手元の図面と窓の外の水平線を見比べながら、戦術的な視点を交えて小さく頷いた。

 

井ノ上たきな

そうですね。海が見えるということは、店内にいながらにして沿岸部からの接近警戒ラインを自然に監視できるということでもあります。一般のお客様を迎え入れたとしても、不自然さを出さずに防衛の目を光らせることができますね

 

異なる世界から集まった防人たちと戦術人形たちが、前前世の記憶を宿した憩いの場「ズッケロ」の再現に向けて、それぞれの視点から確かな手応えを感じていた。

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