ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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ホワイトルーム救出作戦1

 

緋村零

それで、仕事の内容は?

 

俺はミカさんに向き直り、簡潔に問いかけた。

 

ミカ

あぁ。ある人物を施設から救出してほしいという依頼だ。ちなみにDAからの命令ではない、とある個人からの極秘の依頼だ

 

ある人物の救出……。しかもDAを介さない個人依頼。俺の脳内に、前世の多種多様な作品のデータがよぎる。

 

緋村零

ミカさん、その依頼の紙(データ)を見せてください

 

ミカさんから手渡された紙の資料に目を落とす。そこに記された施設の概要、実験内容、そして厳重なセキュリティ体制の文言を目にした瞬間、俺の目は細められた。

 

緋村零

これは……

 

千束

なになにー? 私にも見せて!

 

たきな

……私にも見せてください

 

千束とたきなが俺の両脇から顔を覗かせ、紙を凝視する。その資料の最上部にスタンプされた機密組織の名称を、俺は忌々しげに口にした。

 

緋村零

『ホワイトルーム』……

 

俺の冷徹な呟きに、地下室にいた全員の視線が俺へと集中する。

 

ミカ

時雨、その名に心当たりがあるのか?

 

ミカさんが怪訝そうに聞いてくる。

 

緋村零

ええ。前世にいた頃に、その噂を耳にしました。……ですが、ハッキリ言って虫酸が走るほど胸糞悪い話ですよ

 

俺は『ホワイトルーム』がどのような場所なのか、その恐るべき実態を3人に噛み砕いて説明した。

 

ミカ

……つまり、そのホワイトルームという施設は、徹底された管理教育によって人工的に『天才』を作り出すための組織……

 

千束

そのために、まだ物心もつかないようなたくさんの子供たちが集められて……

 

たきな

外部から完全に隔離された環境で、精神を崩壊させるほどの非人道的な実験や訓練を強制されている……と

 

3人が俺の話した内容を確認し合うように言葉を紡ぐ。その表情からは徐々に血の気が引き、代わりに静かな怒りが怒涛の如く湧き上がっていくのが分かった。

 

緋村零

正直、反吐が出るよ。ほんと……身寄りのない子に人殺しをさせるDAも大概だが、ここは子供をただの『実験動物』としか思っていない。DAなんかよりよっぽどヤバい場所だ

 

千束

私も正直、怒り心頭かな……。子供から自由を奪って、お人形みたいに扱うなんて、絶対に許せない!

 

たきな

……私も同意見です。そのような組織、存在していること自体が間違っています

 

千束とたきな、リコリコの二大看板が揃って静かにブチギレた。元リコリスとして、子供を道具扱いする組織には人一倍敏感なのだろう。まあ、当然の反応だ。

 

緋村零

で……その地獄から連れ出す、救出ターゲットの名前は?

 

俺はミカさんに最終確認を取る。

ミカ

資料の最後にある。……『綾小路清隆(アヤノコウジキヨタカ)』という少年だ

 

綾小路清隆。やはり『よう実』の主人公か。ホワイトルームの最高傑作と呼ばれる男を、原作開始前に俺たちが引き抜くことになるわけか。面白い。

 

緋村零

了解……

 

千束

オッケー、任せといて!

 

たきな

分かりました。直ちに作戦準備に入ります

 

3人で力強く返事をし、俺は千束とたきなに向き合って、前世で培ったプロとしての迅速な指示を飛ばす。

 

緋村零

今回は隠密救出作戦(スニークミッション)だ。ターゲットの安全確保が最優先だから、極力目立った戦闘は避ける。千束、俺が改良した例のゴム弾を使うから、拳銃(デトニクス)には必ずサプレッサーを装着しておけよ。クルミ、施設のシステムハッキングと監視カメラの映像改ざんはそっちに丸投げする。よろしくな

 

千束

了解〜! 静かに、かつ迅速にね!

 

クルミ

ふん、この世界最強のハッカー『ウォールナット』を誰だと思っている。通信もセキュリティも、私が完璧に掌握してやるさ。安心して行ってきな

 

俺が口にした改良ゴム弾とは、以前ミカさんが作っていた非致死性の特殊弾を、俺の前世の知識と技術でさらに調整したものだ。従来のゴム弾の弱点だった弾道のブレを極限まで無くし、命中率を実弾並みにまで跳ね上げてある。9ミリ弾の他に、千束の使う.45ACP弾、そしてアサルトライフル用の5.56ミリ弾もすでに量産済みだ。

指示を終え、俺たちは地下の装備スペースで一斉に身支度を整え始める。

俺は先ほど届いたばかりの愛銃、VP9とM4A1のすべてのマガジンに非致死性の5.56ミリゴム弾を装填し、それぞれの銃口に漆黒のサプレッサーを強固にねじ込んだ。そして防弾用のタクティカルプレートキャリアを装着し、その上から黒のコート型テックウェアを羽織る。

千束やたきなも手際よくゴム弾をマガジンに込め、今回の夜間作戦に合わせて新たにリコリコの武器庫からチョイスした銃を手に取った。

千束が新たに追加したのは、近距離戦での圧倒的な取り回しを誇る【Hk416Dカスタム(※外観はドルフロの416仕様)】。

たきなが手にしたのは、長銃身で遠距離からの精密狙撃に対応した【AR15カスタム(※外観はドルフロのAR15仕様)】だ。

そして二人もプレートキャリアをインナーに着込み、その上から千束は鮮やかな「赤」のコート型テックウェアを、たきなは深い「青」のコート型テックウェアを身に纏う。今回はDAの正規任務ではないため、あの目立つリコリスの制服は使えない。だが、この洗練されたテックウェア姿の二人も、驚くほど戦場に映える美しさがあった。

 

緋村零

……準備は良いな?

 

M4A1をチェストリグに固定し、俺は仮面の裏から二人に視線を送る。

 

千束

もちろん、いつでもいけるよ!

 

たきな

大丈夫です。いつでも始められます

 

よし……。必要な戦力も、情報支援も、すべて完璧に揃った。

俺たちは階段を上がり、一度静まり返った店内に戻る。

 

緋村零

それでは、行ってきます。無事に帰ってきたら、美味いコーヒーをお願いしますね、ミカさん

 

ミカ

あぁ、お前たちが帰る頃には、最高の1杯を淹れて待っていると約束しよう。3人とも、くれぐれも気をつけてな

 

重みのあるミカさんの激励を背中で受け止め、俺たちは喫茶リコリコの扉を開け、静かに夜の街へと滑り出した。

雪の舞う聖夜の喧騒から2年。今度は闇に隠された国家規模の実験施設が俺たちの戦場だ。

ホワイトルームの最高傑作を救出し、世界の因果をさらに書き換える。

静寂に包まれた夜の闇の中、俺たちは音もなく、作戦開始の地へと突き進んでいった。

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