ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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ホワイトルーム救出作戦3〜綾小路清隆との出会い〜

ホワイトルーム救出作戦3〜綾小路清隆との出会い〜

俺たちは綾小路清隆の自室に向けて廊下を突き進んでいた。だが、ホワイトルーム側も最高傑作を奪われまいと必死なのだろう。通路の要所要所に、机や鉄製のロッカーを積み上げた急造のバリケードを築き、文字通り死守の構えで待ち構えていた。

 

警備員

撃て! 撃て! 侵入者をここで食い止めろ!!

 

俺たちの姿が通路の直線に入った瞬間、待ち構えていた警備員たちが一斉にAK-47の銃口から火花を散らす。激しい銃撃が激突し、コンクリートの壁を容赦なく削り取っていく。

 

緋村零

……本当にうざったいな、これ

 

俺はM4A1のトリガーをコントロールし、バリケードの隙間から覗く敵の肩や腕へと正確にゴム弾を叩き込みながら、小さく毒突いた。これでバリケードに遭遇するのは、このフロアに入ってからもう5度目だ。

 

千束

いくら何でも、数が多すぎでしょこれ! どんだけ人件費かけてんのよ、この施設!

 

たきな

まったく同感です……。倒しても倒しても、奥から次々と湧いて出てきます!

 

千束とたきなも、それぞれHk416DとAR-15を構え、流れるような連携で敵の制圧射撃をいなしながら同じことを思ったらしい。二人の銃から放たれる非致死性の弾丸が、的確に警備員たちの戦闘能力を奪っていく。

 

緋村零

文句を言うな。まあ、この狭い室内空間で、RPG(対戦車ロケット)やミニガン、対戦車砲をぶっ放されるよりは、AK相手の遮蔽物越しの撃ち合いの方が何倍もマシだけども……

 

もしも室内でそんな重火器をデタラメにブッ放されたら、このビルの構造自体が崩落しかねない。ヤバいどころの騒ぎではないのだ。

 

千束

ちょっと時雨君! そういうの、前世の映画とかのアニメだと絶対に『フラグ』になるからやめてよね!?

 

たきな

千束、流石に敵も自分の拠点が吹き飛ぶような対戦車ロケット弾や対戦車砲は、室内に持ち込んでいないと思いますよ……?

 

緊迫した戦場のはずだが、2年のコンビネーションを経た俺たちにとっては、この程度の軽口を叩き合う余裕すらあった。そんな会話を交わしつつ、最後の防衛線を一気に突破して―

緋村零

着いたな……ここだ

 

千束

ふぇぇ……長かった〜〜!

 

たきな

まったくです。……ここが目的の部屋ですね

 

数々の銃撃戦をくぐり抜け、俺たちはついにフロアの最奥に位置する、重厚な電子ロック付きの扉の前に到達した。プレートには『第4ブロック・16号室』と刻まれている。

 

緋村零

これより突入(エントリー)するぞ。千束、たきな、準備はいいな?

 

千束

うん、いつでもいける!

 

たきな

はい、クリアです

 

俺と千束が扉の両サイドの壁(デッドスペース)に張り付き、射線を確保したたきなが正面でAR-15をがっちりと構える。呼吸を合わせ、俺は電子ロックを強引に解除した。

 

緋村零

開けるぞ……。――突入!

 

俺は扉に手を掛け、勢いよく内側へと蹴り開けると、M4A1の銃口を先頭に、影のような速度で冷徹な部屋の中へと滑り込んだ。

 

綾小路清隆Side

 

俺の名前は綾小路清隆。この外部から完全に隔離された教育施設『ホワイトルーム』で、日々を機械的に消化しているだけの子供だ。俺は、あの『あの男(クソ親父)』の勝手な独善と都合によって、生まれてからずっとこの冷たい白い壁に囲まれて生活している。

今日という日も、割り当てられた過酷なカリキュラムを全て消化し、自室のベッドで就寝しようとした、その矢先のことだった。

突如として、部屋の天井に埋め込まれたスピーカーから、これまで一度も聞いたことのない異常なアナウンスが室内に鳴り響いた。

 

アナウンス

『警告。エリアBに侵入者が発生。全警備部隊は直ちに現地へ急行し、対象を排除せよ。繰り返す――』

 

侵入者……?

国家規模の隠蔽と、完璧なセキュリティで守られているはずのこのホワイトルームに、単独、あるいは組織的な侵入者が現れたというのか。一体、何者がそんな真似を。

疑問が脳裏をよぎるのとほぼ同時に、外の廊下から激しい銃声と、何かが爆発するような怒号が微かに聞こえてきた。さらに、その戦闘音は確実にこちらのフロアへと近づいてくる。そして、激しい交戦音の合間に、極めて微かな、だが洗練された『足音』が耳に届いた。

 

清隆

(……この足音、不規則な銃撃の中でも完全に統率されている。極めて高度な訓練を受けた奴らだ。数は……3人、か?)

 

その推測通り、足音は俺の部屋の扉のすぐ目の前でピタリと消えた。

金属製の冷たい扉の向こう側から、こちらを値踏みするような圧倒的なプレッシャーと気対(気配)を感じる。

俺は自室にある僅かな物を利用して、瞬時に迎撃のための最低限の体勢を整えようとした。だが、俺が動くよりも圧倒的に早く、頑強なドアが凄まじい勢いで開放された。

同時に、洗練された特殊部隊のような装備に身を包んだ、3人の侵入者が銃を構えて一瞬で部屋を制圧した。防弾ベストの上から、赤、青、黒の衣服を纏った、俺と年齢の近そうな異質な3人組。

そして――

 

??

……綾小路清隆だな?

 

3人の中で、中央に立つ黒ずくめのコートを纏った、仮面の人物が、抑揚のない冷徹なトーンで俺に問いかけてきた。体格からして、俺と同年代の少年。

 

清隆

あぁ……そうだ。君たちは?

 

俺が短くそう答えると、驚いたことに、侵入者である3人は一斉に銃口を地面へと下げ、張り詰めていた殺気を霧散させた。そして、黒ずくめの少年が、仮面の奥から静かに言葉を続けた。

 

??

とある人物からの極秘依頼で、君をこの地獄から救出しにきた。……もう大丈夫だ、俺たちと一緒にここを出るぞ

 

俺はその言葉を聞いた瞬間、これまで如何なる過酷な教育にも動じなかった自らの目を見開いていた。俺を……ここから、救い出す……?

 

緋村零Side

俺たちは部屋に突入し、事前の計画通り、何の問題もなく『最高傑作』こと綾小路清隆への接触に成功した。

俺たちが彼をホワイトルームから連れ出すために来たという事実を告げると、あの常にポーカーフェイスな綾小路清隆が、目に見えて驚愕したような表情を浮かべていた。まあ……生まれてからずっとここに隔離されていたんだ、無理もない。

 

清隆

……本当に、ここから出られるのか? 外の世界へ

 

緋村零

あぁ。そのために俺たちリコリコが、命懸けでここまで道を切り開いてきたんだからな。そういう依頼だ

 

清隆

……そうか。ならば、君たちの言葉を信じよう

 

俺が淡々とそう説明し、彼はまだ信じられないといった様子で、静かに納得の言葉を口にした。よし、これでファーストコンタクトは完了だ。あとは迅速に引き返すだけ――。

 

千束

時雨、感傷に浸ってるところ悪いんだけど、敵さんの本隊がすぐそこまで来てるよ〜?

 

扉の陰で通路を警戒していた千束が、アサルトライフルを構え直しながら、緊迫した声で接近を報せてきた。やれやれ……本当にしつこいな、ホワイトルームの警備部隊は。

 

緋村零

すぐにここを脱出する。……綾小路くん、部屋から持っていく私物や必要な物は何かあるか? なければこのまま行くが

 

俺は彼を促すように問いかけた。しかし、彼から返ってきた回答は、前世の『よう実』の原作知識を根底から覆す、とんでもない言葉だった。

 

清隆

俺自身の私物はない。……だが、行く前にもう一つ、頼みがある。この施設には、俺と同じように隔離され、共に地獄を生き抜いてきた『俺の親友たち』がいるんだ。……頼む。彼らも、一緒に連れていってくれ。俺と一緒に、ここから助け出してほしい……

 

その想定外すぎる言葉に、俺、千束、たきなの3人は、銃を構えたまま揃ってその場で完全に硬直した。

 

緋村零

(……何だって? 綾小路清隆に、この時点でホワイトルーム内に『親友』だと……!? 原作の第4期生は、彼を除いて全員が脱落し、精神を破壊されて廃人になったはずじゃ……。それに、複数形だと!?)

 

ホワイトルームの最高傑作が、自らの脱出よりも先に、他人の救出を懇願している。

この世界の『ホワイトルーム』という歪みの中に、俺の知らない、本来交わるはずのない強力な『別の因果』が混ざり込んでいることを、俺は本能的に察知していた――。

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