ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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ホワイトルーム救出作戦4〜存在しないはずの者達「男子編」〜

 

俺たち3人はその場で固まっていた。

なんせ、あの常に冷徹で合理性を重んじるはずの綾小路清隆の口から、感情を露わにして「自分の親友たちを助けてくれ」と懇願されたのだから。

 

緋村零

(原作の知識だと、他人のことには徹底して無関心な冷血漢という印象だったが……これも世界線が混ざり合った、クロスオーバーの影響なのか?……)

俺が1人で思考を巡らせ、今後の作戦の修正案を弾き出そうとした、その時だった。

 

千束

時雨、私は助けてあげたいな

 

それまで静かに通路を警戒していた千束が、真剣な眼差しをこちらに向けて声を挙げた。

 

千束

親友を助けてあげたい……。もし私がこの子の立場なら、絶対に同じことを言ったと思うから。見捨てて行くなんて、私にはできないよ

 

たきな

……私も同じ意見です。確かに当初の計画から外れて無謀な行動になるかもしれませんが、2年前から鍛え上げてきた今の私したちなら、十分にやり遂げられます

 

たきなもまた、凛とした強い口調で千束の言葉に同意する。

……やれやれ、この2人がそう言うのなら、もはや答えは一つだけだ。俺自身、この地獄に囚われている子供たちをそのままにして行くのは、寝覚めが悪いと思っていたところだ。

 

緋村零

分かった。君の親友たちも全員まとめて助け出して、ここから脱出しよう。それに……そういう無茶な依頼は、嫌いじゃない

 

清隆

ありがとう……。本当に、ありがとう……

 

俺が不敵に笑ってそう告げると、清隆の瞳から堪えきれなくなった涙が一筋、頬を伝って流れ落ちた。

……ふーん。完璧な最高傑作と恐れられた男も、この世界では意外と人間らしい感情を持ち合わせているじゃないか。

 

緋村零

よし……グズグズしている暇はない、すぐに動くぞ。清隆君、ここから君の親友たちが収容されている区画はどこにある?

俺は清隆に向き直り、即座にマップの脳内データを更新するために問いかけた。

 

清隆

男子と女子がいるんだ。部屋は男女別に厳重に分けられている。ここから一番近いのは男子の居住区だ。そこに、男の親友が2人いる

 

緋村零

分かった。……千束、たきな。お前たちはそのまま女子の居住区へ向かって、そこにいる女の子たちを救出してくれ。これ以上の時間経過は敵の本隊に囲まれる。ここからは2手に分かれた方が時間を大幅に短縮できる

 

千束

了解〜! 女の子たちは私に任せといて!

 

たきな

了解です。時雨も、清隆君の安全確保を最優先に

 

俺たち4人は即座に部屋を飛び出した。俺は清隆を連れて男子の居住区へ、千束とたきなは俊敏な動きで女子の居住区へと、夜のテックウェアの裾を翻して別方向に駆け出していった。

◇◇◇

その頃――

深夜の『喫茶リコリコ』Side

店内は営業を終え、薄暗い照明だけが灯っていた。しかし、カウンターの奥では、ミカさんが厳かな雰囲気で対面する客と話し込んでいる。

 

ミカ

……こんな時間に、直接当店へお越しになるとは驚きましたよ

 

??

夜分遅くにすまないね、ミカ。しかし、件の『ホワイトルーム』の暴走は、国家の未来に関わる重大な懸念事項……決して見過ごすことはできませんからな

 

ミカさんの前に座り、深くため息をつくのは、スーツを隙なく着こなした初老の男性――政界の重鎮である大高議員だった。

 

??

本来なら、陸上自衛隊の『特殊作戦群』や海上自衛隊の『特別警備隊(SBU)』、あるいは防衛省直轄の『SR班』を即座に動かして圧力をかけたい所なのだが……。現在、国内待機の予備兵力を除いて、ほぼ全ての特戦部隊が別の極秘任務で出払っていてな。……して、君が送り込んだという彼らは大丈夫なのかね?

 

大高議員の隣には、威厳ある海上自衛隊の制服に身を包んだ男性が、鋭い眼差しでミカさんを見つめていた。

 

ミカ

問題ありませんよ。彼ら……特に時雨(JTR)の戦闘技術と判断力は、国家の特殊部隊をも凌駕します。あの子たちなら、きっと見事に任務をやり遂げてくれるはずです

 

ミカさんは一切の不安を感じさせない確固たる大人の微笑みを浮かべ、2人の国家の最高幹部へと温かい珈琲を差し出した。

 

ミカ

……大高議員、高野海上幕僚長。彼らの力を、信じて待ちましょう

 

緋村零Side

部屋を出た俺は、清隆の先導の元で男子の居住区へと突き進んでいた。

途中、通路を塞ぐように数人の警備員たちがバリケードを築いて待ち構えていたが、俺のM4A1から放たれる精密なゴム弾の猛射の前には無力に等しかった。一瞬で全員の意識を刈り取り、先へと急ぐ。

 

緋村時雨

清隆君、目的の部屋まであとどれくらいだ?

 

清隆

この角を曲がった先だ。もうすぐそこに見える!

 

清隆の案内に従い、俺たちはひたすらに廊下を疾走する。しかし、目的地である部屋の直前に差し掛かったその時、通路の奥から一人の屈強な警備員が荒々しく飛び出してきた。

 

警備員

止まれ! 侵入者め、動いたらこいつらの命はないぞ!

 

警備員が俺たちに向けて叫び、立ち塞がる。

驚いたことに、その男の左右の腕には、まだ幼い2人の少年が捕らえられており、そのこめかみに向けて黒い拳銃の銃口が冷酷に突きつけられていた。人質作戦か。

だが、その囚われている2人の子供の『顔』を見た瞬間、俺の脳内に凄まじい衝撃が走り、その場で思わず固まった。

 

清隆

……! 渚、達也!

 

清隆君……!

 

達也

清隆……無事だったか……!

 

俺はその2人の名前と容姿を確認した瞬間、心の中で叫ばずにはいられなかった。

なんせ、そこにいたのは『暗殺教室』の主人公である潮田渚、そして『魔法科高校の劣等生』の主人公である司波達也だったからだ。

 

緋村零

(おいおい、マジかよ……! 完全に世界線が混ざり合ってクロスオーバーしてやがるな。これ、後々の原作の展開は一体どうなっちまうんだ……!?)

 

想定外のビッグネームの登場に、俺がほんの一瞬だけ思考を走らせていると、それを「怯み」と勘違いした警備員が、勝ち誇ったような下劣な笑みを浮かべて脅迫を重ねてきた。

 

警備員

おい、仮面もつけずに舐めた真似をしてくれた黒ずくめの侵入者! この2人のガキが脳みそをぶちまけられたくなければ、今すぐそのライフルを捨てて両手を挙げ、投降しろ!

 

人質の命を盾に、俺に無条件降伏を要求してくる警備員。

よし……ここは、前世の修羅場をくぐり抜けてきたプロとしての『揺さぶり』をかけさせてもらうか。

俺はアサルトライフルの銃口をあえて地面へと向け、冷酷そのものの表情(ヴィラン・フェイス)を浮かべて言い放った。

 

緋村零

……ハッ。殺すなら、そいつらを今すぐ勝手に殺せよ?

 

俺のあまりにも予想外すぎる冷淡な一言に、その場にいた俺以外の全員――警備員、清隆、そして人質の渚と達也までもが、信じられないものを見るかのように完全に硬直した。

 

警備員

お、お前……正気か!? ほ、本当にこいつらを殺すぞ! ハッタリじゃないんだぞ!

 

緋村零

いや、だから殺せばいいじゃん。わざわざ俺に許可取るなよ。さっさと引き金を引きなよ

 

警備員

な、何だと……!? お前、他人の命がどうでもいいのか! 救出にきた仲間じゃないのかよ!?

 

緋村零

勘違いするな。俺が引き受けた依頼は『綾小路清隆の救出』だけだ。そこの見ず知らずのガキ2人が死のうが生きようが、俺の報酬には一円の増減も関係ないし、俺の知ったことじゃないんだよ

 

俺の淀みのない、本気で冷徹な返答に、警備員の男は完全に脳の処理が追いつかなくなり、激しく混乱し始めた。

銃口を持つ手が、極度の困惑と焦燥で僅かに震える。

――ここだ。最大の隙が生まれた。

俺はゆっくりとM4A1を床へと置き、両手を上げて男を油断させるように数歩近づく。

 

緋村零

ほら、どうした? さっさとその2人を殺すところを見せてくれよ。……なんて、本気で言うと思ったかくそったれが!

 

爆発的な踏み込み。

男が引き金に指をかけるよりも圧倒的に早く、俺はブレザーの袖口から引き抜いたコンバットナイフを閃かせた。

閃光一閃。超高張力鋼の刃が、男の持っていた拳銃の銃身を文字通り真っ二つに切断する。

警備員

なっ、がぁっ!?

 

武器を破壊され、驚愕に目を見開く警備員の懐へ、俺は間髪入れずに潜り込み、完璧なCQCの打撃と投げのコンビネーションを叩き込んだ。

ゴキリ、と鈍い音が響き、男は床へと激しく叩きつけられ、一言も発せぬまま完全に失神した。

 

緋村零

ふぅ……。やれやれ、人質を取るなら、もう少し肝の据わった悪党を連れてきてほしいもんだね

 

俺はナイフを素早く鞘へと収め、ホッと一息つく。

解放された渚と達也は、状況が理解できないまま床に座り込んでいたが、すぐに駆け寄ってきた清隆と互いに抱き合い、「本当によかった……」と声を詰まらせながら、年相応の子供のようにボロボロと涙を流して泣きじゃくった。

あの無機質だったホワイトルームの最高傑作が、今、友のために必死に動いている。その絆は本物だった。

 

清隆君……。あの、そちらの黒い服の人は……一体?

 

涙を拭いながら、不思議そうに渚君が俺を見上げて問いかけてくる。

緋村零

俺は緋村時雨。とある依頼で清隆君をこの地獄から助け出しに来た店員さ。だが、彼がどうしても『親友も一緒に連れていきたい』と頭を下げてな。どうやら、君たちがその大切な親友だったわけだ。もう大丈夫だ、俺たちが来た以上、ここから外の世界へ連れ出してやる

 

俺のその温かい言葉の響きに、渚君と達也君は先ほどまでの恐怖と安堵が混ざり合い、さらに声を上げて泣いた。

こうして、俺は男子居住区の親友2人の救出に完全成功した。

さて……別行動をとった千束とたきなの方の、女子居住区の救出作戦は上手くいっているだろうか。

俺は2人の少年を立たせ、清隆と共に、合流地点へと向けて速やかに移動を開始した。

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