ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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ホワイトルーム救出作戦5〜存在しないはずの者達「ヒロイン編」〜

 

俺が男子居住区で渚君たちを鮮やかに救出し終えた頃。

別れて女子居住区の救出に向かった千束とたきなは、驚くほど静まり返った廊下を進んでいた。

 

千束

……あれ? 敵さん、全然いないね。拍子抜けしちゃうくらい静か。

 

たきな

ですね……。もっと激しい抵抗があるかと警戒していたのですが。

 

それもそのはず、実はこの時、施設の殆どの警備員は俺(緋村零)のいる男子区画の排除に向かっており、女子区画には最低限以下の警備員しか残されていなかったのだ。

 

たきな

もしかすると、警備の主力は全て時雨(零)の方に向かったのかもしれません。

 

千束

ええ〜っ!? それって時雨君、めちゃくちゃヤバくない!?

 

たきな

いえ、むしろ引き付けられた警備員たちの方がヤバいと思いますよ。なんたって、彼はあの『JTR』ですから。

 

千束

あ……そっか、忘れてた。あっちの心配をするだけ無駄だったね。

 

そんな風に零の戦闘力を信頼しきった軽口を叩き合いながら進んでいると、通路の奥から突如として緊迫した黄色い悲鳴が響き渡った。

 

??

いや! 離して! 来ないでよ!

 

千束・たきな

ッ!

 

二人は顔を見合わせると、一瞬で戦闘モードへと切り替え、声のした方向へと全速力で駆け出した。

角を曲がった先の広いホールで二人が目にしたのは、最悪の光景だった。

 

警備員

うるせぇ! つべこべ言う事を聞け、このガキが!

 

??

ちょっと、放しなさいよ! 触らないで!

 

複数名の警備員が、怯える数人の少女たちを力ずくで押さえつけ、乱暴に揉み合っていた。男たちの下卑たニヤけ面が、彼女たちの恐怖を煽る。

 

警備員

へへッ! どうせこの施設ごと消されるか死ぬんだ! だったら最後ぐらい、俺たちを楽しませろよ、なぁ……?

 

人間のクズそのもののセリフを吐き散らす警備員たち。それを見た千束とたきなの瞳から、一瞬で温度が消え失せた。

 

千束

たきな。あれってさ……。

 

たきな

……万死に値するクソ野郎ですね。殺(や)りますか?

 

千束

だね。……女の子を泣かせる奴は、お仕置き決定!

 

二人は瞬時にアサルトライフルを肩に据え、銃口を男たちへと固定した。

 

たきな

そこの少女たち! 今すぐその場に伏せなさい!

 

??

ッ!

 

少女たちが本能的にその場にガバッと伏せる。同時に、警備員たちが驚愕して振り返った。

 

警備員

何者だ――!?

 

タタタタタタタタタタタタン!

千束のHk416DとたきなのAR-15が、猛烈なフルオートの火線を引いた。

空間を切り裂くように放たれた俺の改良ゴム弾は、驚異的な集弾率で警備員たちの胸、肩、太ももへと全弾容赦なく叩き込まれる。骨の砕けるような衝撃に、男たちは悲鳴を上げる間もなく次々と地に伏していった。だが――。

 

警備員

クソ……ガキどもが……野郎……!

 

一人の男が、まだ往生際悪く這いずり回ろうとする。それを見下ろした千束は、冷ややかな笑みを浮かべながら腰のデトニクス・コンバットマスターを引き抜いた。

 

千束

はいはい。女の子を襲おうとするような不届きな輩は、言い訳してないでさっさと沈黙しててね〜。

 

パン!

至近距離から放たれたゴム弾が警備員の顔面に直撃し、男は今度こそ完全に脳震盪を起こして沈黙した。

 

たきな

ふぅ……。もう大丈夫です、貴方たち、怪我はありませんか?

 

周囲の安全を電光石火の速さでクリアしたたきなが、銃口を下げて少女たちに優しく問いかける。

 

??

え……えぇ……大丈夫、です……。

 

??

あの……貴方たちは……一体、誰なんですか……?

 

怯えながらも立ち上がる少女たち。千束は銃を収めると、親しみやすい笑顔を浮かべて答えた。

 

千束

私たちはね、綾小路清隆君の救出依頼を受けてここに来たの。そしたら清隆君が『自分の親友達も一緒に助けてくれ』って、めちゃくちゃ必死に言うもんだからさ。……もしかして君たちが、清隆君の言っていた親友さん?

 

その言葉を聞いた瞬間、少女たちの顔に劇的な希望の光が宿った。

 

??

はい! そうです! 私たち、清隆君の親友です!

 

??

清隆君は……清隆君は無事なんですか!? どこにいるの!?

 

たきな

はい、安心してください。今頃はもう――。

 

たきなが事情を説明しようとした、その時だった。彼女の胸元に装着された無線機から、ザザッとノイズ混じりの俺の声がスピーカーを通じて響いてきた。

 

緋村零(時雨)

『千束、たきな。聞こえるか? こちらは清隆君の男子の親友2人の救出に成功した。そっちの状況を報告してくれ』

 

たきなは素早くインカムのスイッチを入れる。

 

たきな

こちらたきな、感度良好です。時雨、こちらも清隆君の女子の親友全員を無事に確保しました。クズな警備員たちも全員排除済みです。

 

緋村零(時雨)

『よくやった。さすがだな。……よし、そっちに合流する。現在位置の座標をすぐに送ってくれ』

 

たきな

了解。今、マップデータに現在地を同期させます。

 

緋村零(時雨)

『……確認した。10分で着く。その場から動かずに待機していろ。通信終了』

 

たきなは無線を切り、少女たちに向き直って安心させるように微笑んだ。

 

たきな

私たちの仲間が今こちらに向かっています。敵ではないので、安心して待っていてください。

 

千束

そうそう! すっごく頼りになる、私の大好きな相棒だからさ!

 

千束が背伸びをしながら無邪気に笑うと、少女たちもようやく心の底から落ち着いたようで、安堵の表情を浮かべた。

 

そして約10分後――。

緋村零(時雨)

すまない、待たせた。途中の残党を片付けていたんでね。

 

黒いテックウェアのコートを翻し、M4A1を携えた俺が、清隆、渚、達也の3人を連れてホールに姿を現した。

 

清隆・渚・達也

みんな! 無事だったか!

 

??

清隆君! 渚君! 達也君!

 

姿を見せ合った子供たちは、お互いに駆け寄り、ボロボロと涙を流しながら抱き合って無事を喜び合った。張り詰めていた地獄の日々から、ようやく解放された瞬間だった。だが、俺はまだ仮面の裏の目を緩めてはいなかった。

 

緋村零(時雨)

……再会を喜んでいるところ申し訳ないが、いつ敵の増援や本隊がここを包囲するか分からん。余韻は外に出てからだ。俺の後についてこい。ここから一気に脱出するぞ。

 

俺がそう告げ、踵を返して脱出経路へ動こうとした、まさにその刹那。

背後の暗闇から、冷徹で、あまりにも異質な『足音』と共に、凛とした声が響いた。

 

??

……ねぇ。

 

緋村零・千束・たきな

ッ――!?

 

俺たち3人の身体が本能的な戦慄で跳ね上がった。気配が全くなかった。

直ちに振り返り、銃口をその声の主へと突きつける。

だが、そこに立っている人物の姿を視界に捉えた瞬間、俺は文字通り、言葉を失って硬直した。

そこにいたのは、燃えるような白い着物を静かに着用し、その手には抜身の妖しい輝きを放つ日本刀を携えた、一人の美しい女性だった。

 

??

貴方たちが、噂の例の侵入者さんね?

 

たきな

……だったらどうするんですか? 武器を捨てなさい!

 

たきなが鋭く問いかけ、千束も油断なく周囲の警戒を維持する。しかし、その女性は俺たちを襲う素振りも見せず、ただじっと、俺の顔を見つめていた。

 

??

いいえ、確かめただけよ。……それにしても、随分と久しぶりね。……『時雨』。

 

千束

え……?

 

たきな

……えっ!?

 

その女性が俺の偽名を親しげに呼んだ瞬間、千束とたきなは完全に固まった。

信じられないといった様子で俺と彼女を交互に見つめ、しばらくして千束が困惑を爆発させるように問い詰める。

 

千束

ちょっと待って! 貴方、一体何者なの!? なんで時雨君のことを知ってるわけ!?

 

向けられた銃口を意にも介さず、その女性はただ静かに、すべてを見透かすような瞳で薄く微笑んだ。

両儀式

私と彼は、似たような同じ穴の狢(むじな)なのよ。……私は両儀式。太極を司る存在であり、万物の始まりにして終焉。この世の全てを記録し、この世の全てを作れる者――。

 

それは、前世の記憶を持つ俺にとっても予想だにしない、現実世界での『両儀式』という強大すぎる存在との、あまりにも衝撃的な出会いだった――。

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