ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
転生から目覚めた俺が最初に目にしたのは、見慣れない天井だった。
体を起こし、窓の外に広がる景色を眺める。どうやらここは、どこかの高層マンションの一室のようだ。
緋村零
とりあえず、状況確認だな
部屋を出て、室内を探索し始める。
キッチン、リビング、バスルーム。一通り確認して回ったが、内装や家具のどれをとっても一級品ばかりで、かなり高価なマンションであることが窺える。リビングのローテーブルの上に、預金通帳やいくつかの書類が整然と並べられているのを見つけ、俺は手を伸ばした。
緋村零
えっと……
そこにあったのは、預金通帳、身分証明書、そして健康保険証。
何気なく預金通帳を開き、印字されている現在の残高を確認した瞬間、俺は思わず目を見開いた。
緋村零
1億円って、どんだけだよ……
あまりの桁違いな数字に、思わず苦笑いが漏れる。さらに通帳の横に添えられていたメモには、「毎月の初めに500万円を振り込む」とまで書き残されていた。至れり尽くせりにも程があるが、あの女神からのせめてもの手切れ金、あるいは軍資金といったところか。
緋村零
まあ、お金があって困るものでもないし、ありがたく使わせてもらうか
そう割り切ると、俺は次の確認へと移ることにした。
緋村零
そう言えば、タンスの中身とかも確認しておかないとな
寝室に移動し、備え付けの大きなタンスを開けてみる。
中には普通の学生服や普段着、下着類が整然と並んでいるだけだったが、その奥のデッドスペースに妙な違和感を覚えた。
緋村零
なんだこれ? 金庫か?
そこに鎮座していたのは、重厚な鉄で作られた頑丈な金庫のような箱だった。女神が用意してくれたものだと直感し、ダイヤルを回して扉を開く。中に入っていたのは、数振りの刃物だった。
緋村零
これは……ナイフに、刀か?
まず目を引いたのは一振りのナイフだ。手にとって鞘から抜いてみると、それは前世の記憶にある『空の境界』で両儀式が愛用していたものと、全く同じデザインのナイフだった。
緋村零
こっちの刀は……
続いて、2本並んでいた刀のうち、1本目を手に取ってゆっくりと抜刀する。
刃を一瞥した瞬間、その特異な構造に気がついた。
緋村零
これ、逆刃刀だな。しかも、ただの逆刃刀じゃない……『真打』の方かこれ
刃と峰が逆に打たれた、緋村剣心の愛刀「逆刃刀・真打」。人を殺めず、されど大切なものを守り抜くための不殺の象徴。
緋村零
まあ、これはこれでありがたいな。現実世界での特訓や、対人戦の峰打ちなんかで大いに活躍してくれそうだ
逆刃刀を静かに鞘へと戻し、最後の一本である2本目の刀を手に取る。
引き抜いた瞬間、それまで冴え渡るような銀色だった刀身が、俺の手の熱を吸い上げるようにして、見る見るうちに漆黒へと染まり変わっていった。
緋村零
やっぱり日輪刀か。しかも、最終決戦で炭治郎が使っていた戦国時代に継国縁壱が使っていた傑作だな
『鬼滅の刃』において、竈門炭治郎が最終局面で振るったあの黒刀。
緋村零
まあ、こいつは本当に余程の事がない限り、抜く機会は訪れないだろうな
日輪刀も鞘に収め、金庫を閉じる。
すべての道具を確認し終えたところで、ベッドの縁に腰掛け、改めてこれからのロードマップを頭の中で整理し始める。
鏡に映る現在の自分の姿を見るに、どうやら今の俺の年齢は10歳前後のようだ。
前世の記憶が確かならば、SAOの主要キャラクターである朝田詩乃(シノン)が、あの凄惨な郵便局強盗事件に巻き込まれるのは彼女が11歳の時。つまり、タイムリミットはあと1年もない。
緋村零
まずは、彼女の運命を変えるのが最優先だな。それ以外にも、この世界で成すべき事は山積みだ……とりあえず
思考を研ぎ澄ませ、この世界で自分が絶対に果たすべき目的を脳裏に刻み込む。
一、朝田詩乃の強盗事件を未然に防ぎ、彼女の運命を変える。
一、紺野姉妹(ユウキとアイコ)を不治の病から救い出す。
一、物語の主人公である桐ヶ谷和人(キリト)に接触する。
一、1日でも早く、授かった転生特典の技を完全にマスターする。
緋村零
今、すべき事はこれくらいだな。さて、まずは身体を鍛えつつ、必要な日用品の買い物でもしてくるか
外に出るための準備を整える。
今の身体は『サーヴァント並み』の潜在能力を秘めているとはいえ、まだ10歳の子供の肉体だ。技術と肉体を完全に同調させるための鍛錬が必要不可欠になる。
念のため、ジャケットの内ポケットに護身用としてあのナイフを忍ばせた。
緋村零
さて、行くか……
この先、どんな理不尽や困難が目の前に現れようとも、俺は決して立ち止まらない。運命という名の神が描いたシナリオが立ち塞がるのなら――かつて見た、あの最高に型破りな主人公の台詞を、心の中でなぞるように呟く。
緋村零
生きているのなら、神様だって殺してみせる
不条理な運命を切り裂くための、緋村零の旅が今、ここに始まった。