ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
あの歴史的な料亭での会合以降、俺たちはザ・ボスの容赦ない指導の元、超実戦的な特殊作戦訓練に明け暮れていた。
ザ・ボス
遅いわ! もっと相手の視線と重心の動きを見なさい!
全員
はい!
俺たちが今行っているのは、銃撃戦をも制する近接格闘術、CQC(Close Quarters Combat)の猛訓練だ。
俺(前世の記憶を含め)や千束、たきなは、幼少期から命懸けの軍事訓練を受けてきているため、この地獄のようなメニューにもまだ対応できている。だが清隆たちは、いくらホワイトルームという極限の環境で鍛え上げられていたとはいえ、軍隊レベルの本格的な近接戦闘訓練を受けるのはこれが初めてのはずだ。それでも、彼らは驚異的な適応力でザ・ボスの課す苛烈な指導に必死についてきていた。
ザ・ボス
今日の訓練はここまでよ。各自、しっかり身体を休めなさい
全員
ありがとうございました!
その号令とともに、本日の張り詰めた訓練にようやく幕が下りた。
清隆
ふぅ……
ひより
お疲れ様です、清隆君。はい、お水
渚
お疲れ様、有希子。怪我はなかった?
有希子
うん、渚君もお疲れ様。大丈夫だよ
達也
ふぅ……深雪、そっちは大丈夫か? 無理はするなよ
深雪
大丈夫です、お兄様。お兄様こそ、お疲れ様でございます
清隆君たちは、それぞれの大切な彼女たちと寄り添いながら、互いの労をねぎらい合っている。その微笑ましい光景を横目に、俺や千束たちは教官の元へと歩み寄った。
緋村零
どうですか、教官から見てあいつらの筋は?
ザ・ボス
悪くないわね。ホワイトルームという檻にいただけのことはあるわ。基礎的な身体能力と状況判断力は、すでに完成されている
千束
まぁ、実戦の修羅場をくぐってきた私たちに比べたら、まだまだ初々しいけどね〜!
たきな
そうですね。DAの基準で言えば、現時点でもサードリコリス辺りの実力には充分に届いています
俺たちはザ・ボスとそんな言葉を交わす。
今回の訓練における俺たちのスタンスは、清隆たちのサポートだ。彼らが動きに迷ったときに実戦的なアドバイスを送り、全体の指揮と底上げをザ・ボスが担う形で効率よく進めている。
ザ・ボス
悪くないけれど、私の部隊(コブラ部隊)に入るなら話は別よ。少なくとも、最終的にはこの私を超えてもらわなきゃ困るわね
緋村零
あんたを超える、か。つまりネイキッド・スネーク並みの怪物になれってことですか……。まぁ、あいつらならやり遂げますよ。ああ見えて、どいつもこいつも異常なまでの根性を持ってますから
そんな風に、未来の戦力について談笑していた、その時だった。
ピルルルル! ピルルルル!
緋村零
悪い、ちょっと電話だ
ポケットの中でけたたましく鳴り響くスマホを取り出し、画面を確認する。大高さんからだった。
緋村零
緋村です
大高
大高です。零君、日々の訓練、非常に頑張っているようですな。ザ・ボス殿からも報告は受けておりますぞ
緋村零
ええ、みんな必死ですよ。それで大高さん、わざわざこの時間に直電なんて、今回は何の用件ですか?
大高
うむ。実はな、我々の計画をさらに盤石なものにするため、ある強力な傭兵の方々を新たに雇い入れることになりましてな
緋村零
傭兵、ですか?
大高
ええ。彼らも我々と同じ、この世界にやってきた転生者でしてな。しかし、先に言っておきますが……全員が純粋な人間という訳ではありませんぞ
緋村零
……人間じゃない? クローンか何かとでも言うんですか?
大高
ははは、それは実際に顔を合わせるまでの秘密、お楽しみですな。彼らは今日の16時頃に羽田空港に到着する予定です。零君、すまないが紺碧会を代表して、彼らの出迎えを頼めないだろうか?
緋村零
……分かりました。16時に羽田ですね、引き受けます
大高
頼みましたぞ。では、よろしくお願いする
ピッ。
通話が切れ、俺は静かに息を吐きながらスマホをポケットに仕舞う。
千束
ねぇねぇ、大高さんから何の電話だったの?
緋村零
新しい戦力についてさ。大高さんが、海外から新しく腕利きの傭兵部隊を雇ったんだって
たきな
傭兵、ですか? 自衛隊の特殊部隊や私たちだけでは人手が足りないと?
緋村零
さあな。とにかく、その傭兵たちが日本に着くから出迎えに行ってくれってさ
ザ・ボス
大高さんが直々に手配した傭兵……一体、どのような人物たちなのかしら?
緋村零
なんか全員が俺たちと同じ転生者らしいんですけど……大高さん曰く、メンバーの中に人間じゃない奴らが混ざってるらしいんです
千束
えっ、人間じゃないってどういうこと!? 宇宙人とかロボットとか!?
緋村零
さあな、そこまでは教えてくれなかった。とりあえず、16時までに羽田空港に向かわなきゃならないから、俺はこれで失礼するよ。じゃあな!
俺はそう言い残すと、私服に着替えて羽田空港へ向かうため、急ぎ足でロッカールームへと戻っていった。