ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
俺はロッカールームに戻ると、手際よく私服へと着替えた。冷え込む季節に合わせた冬物の普段着に、黒のロングコートを羽織る。ちなみに、俺たちが日々汗を流しているこの特殊作戦訓練は、紺碧会が所有する完全非公開の極秘施設で行われていた。
緋村零
よし、行くか……
極秘施設とはいえ、敷地内には当然ながら厳重な警衛が配置されている。正門へと歩みを進めると、直立不動の警衛たちが一斉に俺へ向けて敬礼を送ってきた。俺も自然な所作で答礼を返し、その足で羽田空港を目指して歩き出す。
緋村零
(傭兵、ね……。しかも全員が純粋な人間という訳じゃない、か。大高さんは一体どういう意味でそんなことを言ったんだ?)
俺の脳内に眠る前世の膨大なオタク知識と記憶のデータベースをひっくり返し、いくつかの条件を重ね合わせていく。傭兵部隊、そして人間ではない存在。それらの要素を加味すると、自ずといくつかの答えが導き出されてくる。
緋村零
(……だいたいの作品候補は絞れてくるが、まさかな。まぁ……実際に会ってみれば、嫌でも答えは分かるだろ)
俺はそんな思考を巡らせながら、羽田空港行きの列車へと乗り込むため、最寄りの駅へと向かった。
その頃、上空を飛行するある航空機の機内にて――。
??(青年)
まもなく日本に到着するか……
窓の外に広がり始めた日本の景色を見下ろしながら、一人の青年が静かにそう呟いた。
??
まさか、この新しい世界にきて、日本の政治家と直接契約を結ぶことになるとはな
??
いいんじゃない? あのままどこの国にも属さず、行く先に迷って放浪しているよりはさ
??
そうですよ! 前世みたいに、何の前触れもなくいきなり基地を襲撃されるなんて生活は、もう二度と御免ですからね!
??(青年)
まぁ……お前たちの言いたい気持ちも分かるがな……
彼らは機内の座席で、これまでの激動の日々を振り返るようにそんな会話を交わしていた。そして、青年は穏やかな視線を隣のシートへと向ける。
??(青年)
それにしても、まさかお前たちまで生前の姿と能力を保ったまま、この世界に一緒に転生してきているとは思いもしなかったよ
??
私たちは、いつだって貴方の忠実な部下。世界がどのように変わろうとも、私たちが貴方の絶対の盾であり、鋭き剣であることに変わりはないわ
全員
ね、指揮官。
その頃、緋村零の視点――。
俺は駅のホームから羽田空港へと向かう電車に揺られていた。ガタゴトと響く列車の音を聞きながら、腕を組んで考え込む。
緋村零
(ふぅ……やはり、まだ核心が掴めないな。大高さんはなぜ、この段階になってわざわざ外部の傭兵を雇い入れたんだ? クーデター計画において、DAの本部を制圧・解体するだけなら、俺やザ・ボス、それに千束たちがいれば戦力としては十二分に足りるはず。……まさか、DA以外にも同時に制圧しなければならない重要拠点があるのか?)
そこまで思考を進め、俺は小さく首を振った。
緋村零
(まあ……純粋に味方が増えること自体はありがたいし、戦力的にはプラスだからいいんだがな。そうなると、今後の立ち回りを考えると警察組織との強固なパイプも欲しい所だ。だが今のところ、紺碧会の陣営に警察の上層部や内部の人間はいない。……まぁ、その辺の根回しについてはおいおい考えていくとしよう)
そんな現実的な戦略を頭の中で組み立てている間にも、電車は着実にスピードを上げ、羽田空港へと近づいていた。
その頃、紺碧会の極秘施設・食堂にて――。
千束の視点――。
清隆
……傭兵、ですか?
千束
うん、そう! 大高さんが新しく腕利きの傭兵さんたちを雇ったんだって〜。さっき零君が、羽田空港まで迎えに行っちゃった
午前中のハードな訓練を終えた清隆たちは、食堂のテーブルを囲んで昼食を摂りながら話し合っていた。
ひより
何故、クーデター計画が本格始動するこの重要な時期に、わざわざ外部の傭兵などを呼び寄せるのでしょうか?
たきな
分かりません。私たちの戦力に不安要素があると判断されたのでしょうか……
新戦力の参入に対し、一同はそれぞれ不思議そうな表情を浮かべていた。それも当然だ。国家を揺るがす極秘計画の最中に、素性の知れない傭兵を招き入れるとなれば、疑問を抱かない方がおかしい。
渚
でも、あの大高さんのことだし、僕たちには見えていない何か深い考えがあってのことじゃないかな?
有希子
そうだね。まずは私たちが、足を引っ張らないように一人前の戦力になることを最優先で考えよう?
清隆たちは互いに意見を交わしながら、それぞれの決意を新たにして残りの休憩時間を過ごしていた。
再び、緋村零の視点――。
緋村零
……着いたな
電車を降り、改札を抜けた俺は、ついに目的地の羽田空港へと足を踏み入れた。案内板に従ってそのまま真っ直ぐ国際線の到着ロビーへと向かう。
緋村零
さてさて、大高さんが豪語していた『人間じゃない奴らもいる転生者』とやらは、一体どんな連中なんだろうな。……お手並み拝見といこうか、楽しみだ
俺はロビーの電光掲示板を見上げながら、その傭兵たちがゲートから姿を現すのを静かに待った。
この時の俺はまだ知る由もなかった。その者たちとの出会いが、この先に待ち受ける世界の運命と、俺たちの物語のシナリオをさらに大きく、激しく変革させていくことになるということを――。