ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
俺は今、ドールズフロントラインに登場する鉄血工造のハイエンドモデル「エクスキューショナー」と完全に対峙していた。
緋村零
(大高さんの言っていた、人間じゃない奴らもいる傭兵ってのは、恐らく戦術人形たちのことだな……。問題は、前世の記憶にある最初の作品の時代か、それとも10年後の『ドルフロ2』の時代から来ているのか、どっちだ?)
俺は脳内で目まぐるしく思考を巡らせながら、全身の神経を研ぎ澄まして警戒度を最大に引き上げる。相手は生身の人間を遥かに超越した軍用機だ。常人が戦えば、なす術もなく一瞬で肉片に変えられる。……もちろん、俺という存在はその常識の例外だがな。
エクスキューショナー
へえ! さっきの人間離れした戦闘を見てたが、お前最高におもしれぇな!
緋村零
鉄血のハイエンドモデル直々に褒め言葉をいただけるとは、驚いたよ
エクスキューショナー
ふん! なぁお前、その腕を見込んで誘ってやる。大人しく俺たちの仲間にならないか?
緋村零
生憎だけど、お断りだ。機械の尖兵に下る趣味はないんでね
エクスキューショナー
そうかよ! 決定だ! なら……ここで死ねぇッ!!
交渉決裂の瞬間、エクスキューショナーは一瞬で間合いを詰め、凶悪な大剣を振りかざして肉薄してきた。俺もすかさず両目に「直死の魔眼」の極光を発動させ、正面からそれを迎え撃つ。
緋村零
クッ……!
エクスキューショナー
オラァッ!!!
金属のぶつかり合う激しい火花が散り、一進一退の壮絶な攻防が繰り広げられる。
緋村零
(チッ……! 流石に鉄血の幹部だ、防戦一方でなかなか決定打に踏み込めないな)
エクスキューショナー
オラオラオラァ! 伝説のJTRが聞いて呆れるぜ、こんなもんかよォ!
嵐のような連撃を繰り出し、俺を確実に削ろうと力任せに大剣を叩きつけてくる。
緋村零
(……一旦、間合いをリセットして仕切り直すか)
俺はあえて相手の重い一撃をナイフの腹で受け流し、その凄まじい衝撃を巧みに利用して後方へと大きくバックステップを踏んだ。さて……どう切り崩すか。
エクスキューショナー
俺のこの猛攻をここまで完璧に捌き切るとはな。ますます気に入った、おもしれぇ男だ!
緋村零
あっそ。お前の感想なんてどうでもいいよ
俺は冷徹に次の作戦を思考する。できれば、式とのあの地獄のような特訓を経てようやく扱えるようになった、空間そのものの死を体現する宝具「唯識・空の境界」は、こんな公衆の面前では使いたくない……。どうする……。
その膠着状態を破ったのは、戦場を引き裂く強烈な一撃だった。
ドォン!!!
緋村零
っ!?
エクスキューショナー
なっ、何だ!?
突如として、大気を震わせる巨大な銃声が響き渡った。この極大の破壊音と風切り音から察するに、間違いない――12.7mmクラスのアンチマテリアルライフル(対物狙撃銃)だ。
銃声の轟いた方位へと素早く視線を走らせる。そこに佇んでいたのは、巨大な長距離狙撃銃を構える一人の人形だった。
緋村零
(あの容姿、それにアンチマテリアルライフル……ネメシスか! やはり、最初のドルフロじゃなくて『2』の世界線から転生してきた部隊なんだな……)
そこには、ドルフロ2の最初期メンバーである特異な戦術人形、「ネメシス」が静かに銃口を向けて立っていた。だが、その存在を確認したエクスキューショナーの反応は奇妙なものだった。
エクスキューショナー
チッ……何だあいつは? グリフィンが新しく実戦投入した新型の戦術人形か……?
どうやら、旧時代(1型番)のAIであるエクスキューショナーは、未来の技術で作られたネメシスの個体識別データを持っていないらしい。だが、それよりも重要なのは――。
緋村零
戦闘中に、そんな大層なよそ見をしてる場合か?
エクスキューショナー
しまっ――
俺は彼女が生み出した一瞬の致命的な隙を見逃さなかった。影を駆けるような踏み込みで死角へと滑り込み、彼女の首筋に走る明確な「死の線」に沿ってナイフを一閃させる。
火花と共に、ハイエンドモデルの首が綺麗に宙を舞い、その強靭な巨体が崩れ落ちた。
緋村零
ふぅ……。終わったか?
ようやく一息つき、ナイフに付着したオイルを振り払う。その直後、足音を殺してこちらへと近づいてくる複数の確かな気配を察知した。
??(青年)
……見事な手際だ。君が、大高さんから聞いていた出迎えの人物――緋村零か?
緋村零
ああ、間違いない。そういうお前たちが、紺碧会が新しく高額で雇い入れたっていう例の傭兵部隊か?
??(青年)
そうだ。私はゼロ。……といっても、この世界では皆から「指揮官」と呼ばれている
ゼロと名乗ったその男。佇まいといい確かな眼差しといい、やはりドルフロ2に登場する、あの幾多の戦場を生き抜いてきた男性指揮官本人だった。
緋村零
そうか……。さっきの真島や鉄血の連中の乱入に関して、色々と聞きたいことが山ほどある。だが、まずは警察やDAが集まってくる前に、この現場から迅速に離脱しよう
指揮官
同感だ。グローザ、撤収班の警戒を頼む
俺たちは互いに頷き合い、爆発と煙に包まれる羽田空港から速やかに姿を消した。
混乱を極める羽田空港を完全に脱出した俺たちは、最寄りにある紺碧会の極秘セーフハウス(隠れ家)へと移動していた。
緋村零
ふぅ……落ち着いたな。改めて自己紹介をしておこう、俺は緋村零だ。これからよろしく
指揮官
改めて、私はゼロだ。ただ、本名で呼ばれるのはどうにも昔から違和感があってね。私のことは、今まで通り「指揮官」と呼んでくれればいい
俺と指揮官は、互いの実力を認め合うように力強い握手を交わした。
指揮官
では、今回同行している私の部隊のメンバーを紹介しよう……
指揮官の後ろに整然と控えている、一線級のオーラを放つ面々。
戦術人形
グローザ(流浪の隊長)
ネメシス(静かなる狙撃手)
コルフェン(優秀な医療担当)
キャロリック(爆発物と近接のスペシャリスト)
現在、この地ですぐに動かせる戦力としては、この精鋭揃いの「グローザ小隊」がメインになるらしい。他にも強力な人形たちはいるが、別の小隊や物資は後続の便で順次この日本へと合流する手筈になっているそうだ。
緋村零
戦力としての申し分はなさそうだな。よし、それじゃあまずは状況確認と情報共有から始めようか
俺は椅子の背もたれに深く腰掛け、これから始まる激動の作戦に向けて、真剣な面持ちで本題を切り出した。