ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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前前世

 

早速だが、俺が今生きているこの世界は、人生における3回目の生に当たる。

前世がこのリコリス・リコイルの世界に転生する前の、いわゆる普通の人生。そして前前世こそが、現実で言うところの『ドールズフロントライン』の硝煙塗れの世界だ。

俺たちは紺碧会が手配した車に乗り込み、首相官邸へと向かって車を走らせていた。

 

緋村零

そう言えば、メイリンやヘレナたちの残りのメンバーはどうしたんだ?

 

指揮官

後続の便で、カリーナたちと一緒に日本へ合流する手筈になっている。レナやリヴァ、クルカイたちも一緒だ。数日中には全員揃うはずさ

 

緋村零

そうか、あいつらも無事だったんだな。なら安心だ

車内の緊迫した空気は少しだけ和らぎ、俺たちはかつて共に戦った懐かしい仲間たちの話に花を咲かせる。

 

緋村零

今思えば、本当に懐かしいな。こうしてお前と何でもない世間話をするなんてさ

 

指揮官

そうだな。民間軍事会社グリフィン時代にお前と出会い、数々の死線を潜り抜けて様々な作戦を遂行してきた。……しかし驚いたよ、お前、あの頃と姿が全く変わっていないんだな

 

緋村零

それはお前もだろ、指揮官。俺が寿命で命を落としたあの時と、何一つ変わっちゃいない

 

そう、お互いに前前世の全盛期の容姿のままでこの地に立っている。これも複数の世界線や前世の記憶が複雑に重なり合って転生した、不可思議な影響の一端なのだろう。

 

緋村零

まぁ、今の俺の名前は緋村零だ。外ではそう呼んでくれ

 

指揮官

了解した、零

 

指揮官との久々の対話が一段落付いたところで、後部座席から一人の人形が身を乗り出してきた。

 

コルフェン

それにしても〜、十六夜……じゃなくて、零さんはこの新しい世界では今どんなお仕事をされているんですか?

 

コルフェンが興味津々といった様子で聞いてくる。

 

緋村零

自衛隊の特殊部隊隊員だよ。正確に言えば、これから新設される予定の、超法規的特殊部隊のスターティングメンバーだけどな

 

コルフェン

あれれ? それって、私たちが大高さんと結んだ契約内容とほぼほぼ同じですね

 

指揮官

あぁ、その通りだ。大高さんからの依頼内容だと、『自衛隊の内部に新しい極秘の特殊部隊を設立するから、その中核として力を貸してほしい』というものだった。そして……そこに足を運べば、必ずお前に再会出来ると言われていたからな

 

ふむ……。点と点が綺麗に繋がりすぎるな。

 

緋村零

大高さんや高野さんたちの背後に、さらに誰か大物がいるのか? まぁ、あの人たち自身も強力な転生者だから不思議じゃないが……

 

キャロリック

だとしてもよ? 誰がわざわざ、そんな世界を跨いだ面倒くさい仲介人の役回りを進んで買って出るっていうのよ?

 

不満げに頬を膨らませたキャロリックが聞いてくる。

 

緋村零

……あのお節介で、やたらと顔が広い頑固親父。クルーガーのおっさんかもね?

 

指揮官

……確かに、あの人なら裏でそれくらいの根回しを平然とやってのけそうだな……

 

俺と指揮官は、共通の知人であるグリフィンの最高責任者の顔を思い浮かべ、同時に苦笑いを浮かべた。

 

緋村零

思えばあのブラック企業、基地に着任していきなり『AR小隊の捜索をしてこい』なんていう無茶苦茶な任務が最初だったしな。しかも、その後は敵のど真ん中に孤立してる404小隊を今すぐ救出してこい、とかさ

 

指揮官

本当だな……。今考えれば、あの地獄のような戦場でよく五体満足で生きてたよな、お互いに……

 

俺も指揮官も、当時の過酷すぎる激戦を思い出して、揃って遠い目になる。それに……

 

緋村零

つか、指揮官は安全な前線基地の司令室で偉そうに指揮してただけでしょ。実際に弾丸が飛び交う最前線で泥塗れになって戦ってたのは、俺やグローザたちなんだからな?

 

グローザ

ふふ、そうね。でも、あの頃から指揮官の戦術眼には戦況をひっくり返す光るものがあったわ。それに……

 

グローザがふと真剣な表情を浮かべ、言葉を挟む。

 

グローザ

私の最初の指揮官や、肩を並べて戦う仲間が、十六夜……じゃなくて零たちで本当に良かったと思っているわ。そうでなければ、戦術人形としての私はとうに壊れていて、今こうしてここにいることはなかったもの

 

緋村零

相変わらず真面目だな、グローザ。まぁ、うちの基地に配属されてきた連中は、人間も人形も揃いも揃って訳ありのハズレモノしかいなかったしな

 

指揮官

だが、そのおかげで泥臭い経験をこれでもかと積めたし、極限状態における人間の本質というものを深く理解できた。その泥臭い経験が、この新しい世界でも確実に役に立っているのさ

 

緋村零

まぁ、過去の昔話はこれくらいにしておこう。そろそろ正面に見えてきたぞ

 

そんな戦友としての絆を確かめ合う会話を交わしている間に、車は厳重な警備が敷かれた首相官邸の敷地内へと滑り込んでいった。

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