ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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会談1

 

俺たちは厳重な警備を潜り抜け、首相官邸の内部へと足を踏み入れた。主武装であるアサルトライフルなどの大型兵器は、すべて特製のタクティカルバッグの中に完璧に隠匿している。

 

指揮官

ここがこの世界の、日本の首相官邸か……。かつてのグリフィン本部や、イエローゾーンの移動基地とは随分と趣が違うな

 

キャロリック

案外、内装はしっかりしてて綺麗じゃない。もっと古臭い場所かと思ってたわ

 

物珍しそうに周囲を観察しながら、指揮官たちがそれぞれ呟く。

 

緋村零

え〜と、確かこの辺りに出迎えの人が来ているはずなんだが……

 

俺が辺りを見渡して連絡要員を探した、その時だった。

 

??

零君

 

聞き覚えのある凛とした声に、俺は声のした方へと素早く視線を向けた。

 

緋村零

日向2佐……!

 

そこに立っていたのは、日本国海上自衛隊・情報運用課所属の日向昭了2等海佐。紺碧会の主要メンバーの一員であり、高野幕僚長の右腕を務める極めて優秀な副官だ。

 

緋村零

お久しぶりです。お元気そうで何よりです

 

日向

そちらも元気そうだな。羽田での一件、見事な立ち回りだった

 

俺たちが短く再会の言葉を交わした後、日向2佐は指揮官たちへと視線を向けた。

 

日向

初めまして。日本国海上自衛隊、2等海佐の日向です。今回の計画において、情報支援と警備の統括を担当しています

 

指揮官

ゼロだ。表向きは傭兵部隊の長だが、この世界でも変わらず「指揮官」と呼んでくれ。それから、こちらがうちの小隊長のグローザ、隊員のネメシス、キャロリック、コルフェンだ

 

グローザ

これからよろしくお願いするわ、日向2佐。私たちの力、存分に役立ててみせる

 

日向

あぁ、よろしく頼むよ。君たちの異質なまでの戦闘能力、期待させてもらう

 

指揮官たちと日向2佐が互いに確かな握手を交わす。さて……挨拶が済んだところで本題だ。

 

緋村零

日向さん。大高さんや高野さんたちは、もう部屋でお待ちですか?

 

日向

あぁ。案内する、ついてきてくれ

 

俺たちは日向2佐の先導に付き従い、官邸の最深部にある厳重に遮蔽された会議室へと向かった。

 

首相官邸・極秘会議室

 

日向

日向です。お連れいたしました

 

大高

おぉ、ご苦労さまです。よくぞ無事で戻ってくれた

 

高野

ありがとう、日向君。中へ入ってもらいなさい

 

日向2佐の合図で、俺たちは静かに部屋へと入る。重厚な円卓の奥には、すでに大高さんと高野さんが威厳に満ちた表情で座っていた。

 

緋村零

大高総理、高野幕僚長、お久しぶりです

 

大高

うむ。零君、羽田での突発的な戦闘、本当にお疲れ様。見事な初陣でしたな

 

高野

まぁ、立ち話も何だ。そこに掛けなさい。指揮官、そして戦術人形の諸君も

 

指揮官

失礼します

勧められるまま、俺たちはそれぞれ席へと腰を下ろした。

 

大高

改めまして、日本国総理大臣の大高弥三郎です。皆様を歓迎いたします

 

高野

同じく、日本国海上自衛隊・幕僚長の高野五十六です

 

指揮官

傭兵部隊を率いる、指揮官のゼロです。指揮官とお呼びください

 

グローザ

小隊長のグローザです。それから、同じ小隊メンバーのネメシス、キャロリック、コルフェンです。よろしくお願いします

 

大高

よろしくお願いします。まずは何よりも、先ほどの羽田空港テロ事件への迅速な介入と協力、心より感謝いたしますぞ

 

指揮官

礼には及びませんよ。契約を交わした大高さんの出迎えという任務の最中でしたし……何より、戦場には無視できない『鉄血』の影もありましたからね

 

緋村零

指揮官。その鉄血に関してなんだが、さっき交戦したエクスキューショナーの奴、ネメシスの姿を見て『グリフィンの新型人形か』と口にしていた。つまり、あいつは未来のドルフロ2の技術を知らない……恐らく、俺たちのいた時代よりもかなり前の『過去の歴史』からこの世界に転生、あるいは転移してきた可能性が極めて高い

 

指揮官

あぁ、お前の言う通りだろうな。しかし、そんな時空を歪めるような現象が本当にあり得るのか?

 

これから先の戦いを優位に進めるためには、やはりこの世界の『構造』を全員が理解しておく必要がある。俺は大高さんへと視線を向けた。

 

緋村零

大高さん、これからの作戦共有も含めて、彼らにすべてを話しても?

 

大高

もちろんです。隠し事はなしにしましょう

 

俺は深く頷き、指揮官たちの目をまっすぐに見据えた。

 

緋村零

実はな……

 

俺は指揮官たちに対し、この世界が単純な一つの世界ではなく、様々な作品や並行世界が複雑に重なり合って成立している『複合世界』であるという不都合な真実をすべて打ち明けた。

 

指揮官

なるほど……。色々な並行世界や時間軸がこの一つの日本に重なり合っている、か。だからこそ、本来出会うはずのない別作品の人間たちが同じ場所に存在するわけだな

 

グローザ

確かにそれなら、零の言う『エクスキューショナーが過去の時間軸から来た』という推測も完全に納得がいくわね。彼女にとっては、まだ世界が崩壊する前の鉄血工造の全盛期なのかもしれないわ

 

指揮官たちも世界の歪な構造を理解し、神妙な面持ちで納得した。

 

緋村零

まぁ、鉄血に関する考察はこれくらいにしておこう。どのみち奴らはこれから、俺たちを……というより、俺個人を明確に憎んで執拗に狙ってくるだろうしな

 

コルフェン

零〜。それはどういう意味ですか〜? なぜそこまで狙われると断言できるんです?

 

緋村零

あぁ。まずエクスキューショナーは、俺がネメシスの存在に意識を向けていた一瞬の隙を突いて、首を綺麗に刎ね飛ばして機能を完全停止させた。

ガブリエル・ミラーは、俺が鳩尾に叩き込んだ一撃の衝撃で崩壊寸前の管制塔に突っ込み、その破壊の余波で完全に瓦解した瓦礫の下敷きになった。

ヴァサゴは、同じく鳩尾を蹴り飛ばして燃え盛る旅客機に突っ込ませて、崩壊した機体の下敷きにしてやった。

おまけに真島は、俺の直接的な妨害のせいで、今日を含めて今までに合計3回もテロ計画を完全に失敗させられている。世界のバランスを病的に重要視している真島のことだ、今頃は怒り狂って俺を殺すことしか考えていないだろうさ

 

指揮官

なるほどな……。一戦交えただけで、テロリストの主要幹部たちを悉く絶望のどん底に叩き落としたわけか。相変わらず凄まじいな、お前は

 

まあ、そうでもして俺がここで奴らの戦力を削ぎ落としておかないと、大切な千束や、この世界のどこかにいるキリト君たちが原作以上の理不尽な危険に晒されることになるからな……。

 

緋村零

まぁ、あの狂人どもに関しては一旦脇に置いておくとしてだ。指揮官たちの具体的な運用方法を聞く前に、高野さん、さっきの羽田空港の正確な被害状況はどうなっていますか?

 

俺が尋ねると、高野幕僚長は無言で一冊の重厚なファイルを取り出し、机の上に滑らせた。

 

高野

あぁ。羽田空港が被った現在の被害は、この緊急報告書にまとめられている通りだ。極めて凄惨な状況だよ

 

俺はその報告書を開き、記載された冷徹な数字と事実に目を落とした。

 

【羽田空港・被害報告書】

・全滑走路:完全に損壊(使用不能)

・第1、第2旅客ターミナル:直撃により全壊

・第3国際線ターミナル:爆風の余波により半壊

・空港管制塔:衝撃により根元から完全崩壊(機能全喪失)

・駐機中の全旅客機:爆発に巻き込まれ全機大破(完全スクラップ化)

・死者・負傷者数:現在も集計中だが、未曾有の規模に達する見込み

…………最悪だな、本当に酷い有様だ。

 

緋村零

……ため息しか出ないな。一国の表玄関がこれじゃあ、国家の機能は完全に麻痺するぞ

 

指揮官

私も言葉が出ないな……。イエローゾーンの難民キャンプの襲撃跡地を見ているかのようだ

 

凄惨な破壊の規模に、あの戦い慣れた指揮官すらも言葉を無くしている。

 

大高

まったくです。生存者の救助、負傷者の搬送、遺族や各航空会社への巨額の補償手続き、そして羽田空港の全面的な復旧作業……。これからの政府がやらねばならん仕事は山積、やる事が大量すぎて気が遠くなりますよ

 

緋村零

あの無差別テロリストのクソ野郎ども……絶対にタダでは済まさねえ

 

俺や大高さんは、あまりの頭の痛さに揃って深いため息を吐き出す。

 

緋村零

まぁ……今さら過ぎた被害の文句を言っていても始まりませんし、時間は戻らない。前を向いて、俺たちのやるべきことを進めましょう

 

大高

そうですな。今こそ国家をリセットし、この歪んだ現状を正す時だ

 

さて……。ここからが、俺が最も聞きたかった本質的な問いかけだ。

 

緋村零

大高さん、そろそろ明確に聞かせてくれませんか? なぜ……あなた方紺碧会は、俺がまだこの世界に転生する前の、前前世の『十六夜』だった頃の記憶や素性をそこまで正確に知っていたんですか?

 

俺は円卓を挟み、大高さんの目をまっすぐに見つめて鋭く質問を投げかけた。その問いに対する、大高さんの口から返ってきた驚愕の回答は――

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