ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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会談2

俺のその確信に満ちた質問に対し、大高さんは深く厳かな笑みを浮かべ、こう答えた。

 

大高

零君、唐突な問いになりますが……君は神という存在を信じますかな?

 

神様、ねぇ……。

 

緋村零

昔の俺……つまり、前前世で『十六夜』として硝煙塗れの戦場を這い回っていた頃の俺なら、間違いなくそんなものは信じないと言い切ったでしょうね。ですが実際問題、俺は奇跡のような巡り合わせで、このリコリス・リコイルの世界にこうして転生して生きています。今さら存在を否定する方が無理ってものですよ

 

俺は自分の身に起きた事実を踏まえ、正直な胸の内を言葉にした。

 

大高

うむ、実に現実的な答えだ。では核心を話そう。実は、君の前前世での生き様や詳細な素性については、他ならぬ天皇陛下から直接お聞きしたのです

 

へ? 陛下から直々に……?

 

緋村零

ちょっと待ってください、大高さん。なぜここで、国の象徴である天皇陛下のお名前が出てくるんですか?

 

予想もしなかった大きすぎる名前に俺が困惑していると、隣の高野幕僚長が重々しく言葉を引き継いだ。

 

高野

零君、驚くのも無理はない。だがこれは紛れもない事実なのだ。実は……君をこの世界に生を受けさせ、転生へと導いた大いなる存在の正体こそ、我が国の最高神である天照大神(アマテラスオオミカミ)様本人なのだよ

 

緋村零

……マジですか? あの神話に名高い、高天原の女神様が直接俺に?

 

大高

マジもマジの大真面目です。我々紺碧会も、最初に陛下からそのお話を伺ったときは、我が耳を疑いましたからな

 

マジかよ……。いや、しかし腑に落ちない点がある。

 

緋村零

なぜ、俺という一人の人間をこの世界に転生させるために、日本の最高神が直々に動く必要があるんですか? というか、陛下はどうやってその天照大神様と接触されたんです?

 

俺は疑問の核心を大高さんにぶつけた。

 

大高

まず、陛下が天照大神様と対面されたのは、現実の物理的な空間ではないそうです。何でも、ある夜の御寝中に、極めて鮮明な神託の夢をご覧になったとか。その際、光り輝く女神様から直接、このように告げられたそうです。『お前には手紙を託す。その手紙を、この世界の歪みを正し、未来を救うことの出来る唯一の男に渡せ。さすれば、日本、ひいては世界の破滅も救われるであろう』と。それが、陛下が我々にお伝えくださった神託の全容です。そして実際に陛下が目を覚まされると、驚くべきことに、その枕元には見覚えのない2つの古い手紙が静かに置かれていたそうです

 

世界を救える者、ねぇ……。自分の背負わされた役目の重さに、少しだけ目眩がしそうだ。

 

緋村零

その、枕元に残されていたという手紙には、一体なんと書かれていたんですか?

 

大高

2つの手紙の内、すでに開封された1つ目にはこう記されていたそうです。『死を見る目――直死の魔眼を持つ者、そしてかつてその者と共に数多の死線を潜り抜けた、異界の戦士たちの力を借りるのだ。それこそが、迫り来る闇を払う唯一の光となる』とね。そして、もう1つの未開封の手紙こそが、陛下より『必ず本人の手に』と預かってきたものです。これは零君、君に渡すようにと天照大神様から指定されていたのですよ

 

大高さんはそう言うと、上着の内ポケットから恭しく一通の格式高い和紙の手紙を取り出し、円卓越しに俺へと手渡した。俺は厳かな気持ちでそれを受け取り、封を切って中に書かれた美麗な墨文字に目を落とす。

 

緋村零

……皆の前で、読み上げますね。『零さんへ。この手紙を読んでいる頃には、貴方の前前世の懐かしい仲間たちと無事に合流を果たしている頃でしょうか。貴方の予測通り、いま貴方が生きているその世界は、様々な並行世界や時間軸が複雑に重なり合って成立しています。それ故に、これから先、本来の歴史には存在しない歪んだ強大な敵が次々と出現することでしょう。その未曾有の脅威に立ち向かうため、私は貴方が最も信頼している前前世の戦友たちを、当時の力を持たせたままこの地へと送りました。どうか、この世界で新しく絆を結ぶ大切な仲間たち、そして前前世から紡がれた不滅の仲間たちと共に、いずれ訪れる“来るべき時”に備えてください』――以上です

 

俺が静かに読み上げ終えると、会議室の中はしばしの間、重苦しい沈黙に包まれた。最初に口を開いたのは大高さんだった。

 

大高

やはり、我々が対峙しているDAの闇のさらに奥底には、世界規模の巨大な悪が存在しているようですな。我々紺碧会が追っている、日本の国益を貪る影の政府のような連中が……

 

指揮官

私たちのいた世界で言えば、人形を兵器として弄び、世界を裏から牛耳ろうとしていたジラードグループや、隔離壁の向こうに潜む巨大な陰謀のような敵、ということでしょうか……

 

指揮官もグローザたちも、それぞれがかつて戦い抜いてきたあまりにも過酷な過去を振り返るように、厳しい表情を浮かべている。そこに、高野幕僚長が腕を組んで疑問を口にした。

 

高野

しかし、手紙の最後にあった『来るべき時に備えろ』というのは、具体的にどういう意味なのだろうか? 単なるDAの制圧だけでは終わらない、もっと大きな戦いがあるということか?

 

緋村零

恐らく、この世界に交じり合ってしまったすべての敵対勢力、真島や鉄血の生き残り、ホワイトルームの残党も含めた、あらゆる邪悪との最終決戦のことでしょう。ですが、神様がわざわざこうしてヒントと戦力を与えてくれたんです。まだいくらでも対策のしようはありますよ

 

大高

そうですな。敵の規模がどれほど大きかろうと、我々のやるべき一歩目は変わりません。まずは目前のクーデター計画を、何が何でも完璧に成功させることです。DAを解体し、国家の足元を固める。すべてはそこからだ

 

緋村零

ちなみに一つ聞いておきたいのですが、天皇陛下は俺たちのこの国家規模のクーデター計画に対して、どのような見解を? 賛成してくださっているのですか?

 

俺が大高さんの目を真っ直ぐに見据えて尋ねる。

 

大高

はい。陛下もまた、DAの暴走や現政府の腐敗に強い危機感を抱いておられます。このままリコリスという子供たちを使い潰し、欺瞞の上に成り立つ偽りの平和を続けていては、日本は内側から腐り落ちると。神託の手紙を我々に託されたこと自体が、陛下のご意思の現れです。……では、指揮官殿。これからの日本の未来のため、改めてよろしくお願いいたしますぞ

 

指揮官

もちろんです、大高総理。私たちエルモ号一同、そして後続の戦術人形たちも含め、この新しい世界と大切な戦友のために全力で任務にあたらせていただきます

 

大高

頼もしい限りだ。では、本日の極秘会談をこれにて終了します。零君、君は指揮官殿たちを、訓練で使用している紺碧会の極秘基地のほうへ案内してくれ給え

 

緋村零

了解しました。案内はお任せください

 

こうして、国の中枢で行われた神をも巻き込む前代未聞の会談は無事に幕を閉じた。俺は、前前世からの最高で最強の戦友たちを引き連れ、清隆君たちやザ・ボスが待つ極秘基地へと向かって、新たな決意を胸に官邸の廊下を歩き出した。

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