ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
千束
はいはい!戦術人形って何?
千束の勢いのある素朴な疑問に、食堂の空気が一瞬だけ和らいだ。
隣に座るたきなも、表情には出さないものの、興味深そうに指揮官たちの出方を窺っている。
指揮官
あぁ、すまない。まずはそこから説明するべきだったな。簡単に言えば、彼女たちは戦闘や軍事作戦に特化して造られた「自律型の人工知能ロボット」……いや、人間の少女の姿をした『外骨格ロボット(アンドロイド)』だ
千束
えええっ!? ロボット!? こんなに可愛くて、普通に喋ってご飯も食べそうなのに!?
キャロリック
ちょっと、可愛いっていうのは余計よ!
でもまぁ、驚くのも無理はないわね。私たちの皮膚の質感も、声帯の構造も、人間のそれと区別がつかないレベルで精密に作られてるから
コルフェン
ですね〜。ただ、中身はチタン合金の骨格や電子回路でできていますので、私たちだけで1個小隊、いえ、それ以上の軍隊を相手に無補給で壊滅させるくらいのお仕事は平気でこなせちゃうんですよ〜
千束とたきなは、コルフェンが笑顔で放った物騒な言葉に目を丸くしている。
たきな
……つまり、DAにおけるリコリスのような役割を、生身の人間ではなく完全な機械兵器として行うために生み出された存在、ということですか?
グローザ
ええ、本質的には同じよ。ただ、私たちは恐怖を感じないし、肉体的な限界や寿命もない。銃の反動を完全に抑え込む制御プログラムも組み込まれているわ。だから、兵士としての戦闘効率だけで言えば、生身の人間を遥かに凌駕している
指揮官
だが、彼女たちはただの冷徹な道具じゃない。人間と同じように喜び、怒り、時に傷つき、互いの絆を大切にする「心」を持っている。だからこそ、私は彼女たちを兵器ではなく、信頼できる家族であり戦友だと思っているんだ
指揮官の温かい言葉に、グローザたちはどこか嬉しそうな、誇らしげな視線を彼へと向けた。
千束
へぇ……! 心があるロボット、かぁ……。うん、なんか最高じゃん! よろしくね、グローザちゃん、みんな!
たきな
戦闘特化の人形……心強い味方であることは間違いなさそうですね
緋村零
納得したか、千束。あいつらの実力は俺が保証する。
緋村零
俺も、昔は戦術人形20式だったからな。人間から戦術人形に改造した…サイボーグだったけど
俺の口から不意に飛び出したその告白に、食堂の空気が一瞬にして凍りついた。
特に、俺のことを「生身の人間」だと思い込んでいた千束やたきな、そして渚たちは、まるで異次元の言語を聞いたかのように目を見開いている。
千束
え……? れ、零君、いま何て言ったの……? 20式って……サイボーグ!?
たきな
人間から……戦術人形に改造された、ですか……?
驚愕に震える彼女たちの視線を受け止めながら、俺は自嘲気味に肩をすくめた。
緋村零
あぁ、言葉通りの意味だよ。前前世のグリフィン時代、俺はもともと生身の人間として戦場を這い回っていたんだ。だけど、ある激戦で身体の大部分を失う致命傷を負ってね。一命を取り留める代償として、当時の最新技術で脳以外のほとんどを機械化されたんだよ。それが、戦術人形『20式』としての俺の始まりさ
指揮官
あぁ、あの時は本当に生きた心地がしなかったよ。だが、お前はサイボーグとして蘇った後も、その強靭な精神と『直死の魔眼』の力を完全に制御し、グリフィンのエースとして戦い抜いてくれた。生身の人間と戦術人形、その両方の限界を超えたハイブリッド……それがお前だったんだ、零
指揮官が当時の壮絶な記憶を噛み締めるように静かに語る。その言葉を補償するように、グローザたちも深く頷いた。
キャロリック
そうよ! ぶっちゃけ、中身の出力だけで言えば、純粋な人形である私たちよりもあんたの方が化け物染みた戦闘データ叩き出してたんだからね!
緋村零
はは、人聞きが悪いな。まぁ、そんなサイボーグとしての人生も、あの世界の最後の戦いで終わりを迎えたわけだけど……。巡り巡って、3回目の人生である今は、天照大神様のおかげで五体満足な『純粋な人間』として生まれてくることができた。だからこそ、さっき真島に言ったんだよ。どんな力を宿していようと、俺は人間だ、ってね
俺が笑ってみせると、千束はどこかホッとしたような、それでいて未だに信じられないといった複雑な表情で胸をな下ろした。
千束
そっか……零君にも、そんな凄まじい過去があったんだね……。でも、今はちゃんと生身の人間なんだよね? よかった……
たきな
人間から機械へ、そして再び人間へ……。信じがたい輪廻ですが、零のその圧倒的な強さの根源を知れた気がします
清隆や達也、式たちも、俺の告白をそれぞれの思想で咀嚼し、静かに納得の光を瞳に宿している。
ザ・ボス
……零。過去の深い傷を打ち明けてくれてありがとう。あなたがそれだけの壮絶な死線を越えてきたからこそ、いまこうして天照大神様に選ばれ、私たちの前に立っているのね。……素晴らしいわ
ザ・ボスは慈愛に満ちた眼差しで俺を見つめた後、再び会議室全体を見渡した。