ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
たきな
20式…自衛隊の最新型自動小銃、20式自動小銃ですか?
たきなが自身のミリタリー知識から答えを導き出したことに、俺は少しだけ感心しながらパチンと指を鳴らした。
緋村零
たきな、大正解。さすが元リコリス、銃器の型番には耳が早いな。前前世の俺に与えられたコードネームであり、その身に刻まれたベースモデルこそが、日本の自衛隊が誇る最新鋭の『20式自動小銃』だったのさ
たきな
やはり……。日本の防衛省が開発した、高い排水性と環境耐性、そして近接戦闘を想定した最新型の小銃ですね。それをベースに改造されたということは、当時の零はまさに歩く最新兵器だったわけですか
納得したように何度も頷くたきなの横で、千束がまた「ふへぇ〜」と変な声を漏らして感心している。
指揮官
あぁ、その通りだ。当時の20式(零)の戦闘能力は群を抜いていた。あらゆる悪環境下でも決して機能停止せず、直死の魔眼と20式小銃の火力を組み合わせて、鉄血の軍勢や正規軍の装甲部隊すら単騎で圧倒していたからな
グローザ
泥まみれの戦場でも、塩水に浸かった後でも、何事もなかったかのように完璧な次弾を装填して敵を撃ち抜く……あの時の貴方の背中は、私たち戦術人形から見ても本当に頼もしかったわよ、零
かつての戦友たちからの手放しの称賛に、俺は少しだけ気恥ずかしくなって頭を掻いた。
緋村零
おいおい、過去の栄光をそこまで盛り盛りに語るなよ。さっきも言った通り、今の俺の手にあるのは20式自動小銃じゃなくて、この生身の肉体とナイフ、そして魔眼だけだ。……まぁ、中身の戦闘経験(データ)だけはそのまま残ってるから、当時と変わらないか、それ以上の動きはできるけどな
千束
最新鋭のアンドロイドから、3回目の人生で生身の最強人間にクラスチェンジってわけね! うんうん、主人公っぽくて超カッコいいじゃん!
緋村零
お前は相変わらず気楽でいいな、千束。まぁ…コーラップス放射線もないからマシか…
俺の口から不意に漏れ出たその一言に、指揮官とグローザ、そしてネメシスたち「エルモ号」のメンバーが、まるで冷水を浴びせられたかのように息を呑んだ。
指揮官
……コーラップス(崩壊)放射線、か。お前、よくその名前を今このタイミングで口にできたな。思い出すだけでも悍ましい
グローザ
ええ……。私たちの世界を、人類の歴史を根本から滅茶苦茶に引き裂いた最悪の呪い(緑の光)。あの汚染の恐怖だけは、どれだけ世界が変わろうとも魂に刻み込まれて消えないわ
前前世のドルフロの世界において、地球の大部分を人が住めない死の大地へと変貌させ、変異生物(ELID)を生み出す原因となった未知のエネルギー。それがコーラップス放射線(崩壊液)だ。
あまりにも重苦しい空気になったのを見て、今世の仲間である渚や千束たちが不思議そうに顔を見合わせる。
千束
ね、ねぇ零君……? 今度はその、コーなんとか放射線って何?
なんか、みんなの顔が一気にガチガチになってるんだけど……
緋村零
あぁ、すまない千束。これは俺たちの前前世の世界にあった、いわゆる究極の環境汚染物質みたいなものさ。浴びれば生物は異形の怪物に変異し、土地は数百年単位で死に絶える。……まぁ、核兵器の放射能なんて可愛いものに見えるレベルの、文字通りの『この世の終わり』の光だよ
たきな
核兵器を凌駕する環境汚染物質……。そんなものが、もしこの現代の日本に存在していたら……
たきなは想像しただけで背筋が凍ったのか、小さく身震いをした。
緋村零
安心しろよ。大高さんたちから事前に貰った情報や俺の魔眼の感覚からしても、今この世界にはコーラップス放射線の『コの字』も存在していない。あの最悪のエネルギーだけは、別の時間軸に置いてこれたみたいだからな。だからこそ『まぁ、あの地獄に比べたら今回の作戦なんて可愛いもんだろ』っていう、俺なりのちょっとしたブラックジョークさ
俺が肩をすくめて笑ってみせると、指揮官は「まったく、相変わらず心臓が強いな」と言わんばかりに呆れた笑みを浮かべた。
ネメシス
……緑の深淵は此処には無い……。星の巡りは、未だ清浄なる青を保っている。ならば、私たちが恐れるものは何もない……
キャロリック
そうそう! あんなクソみたいな放射線がないってだけで、こっちの世界は天国みたいなもんよ! よーし、がぜんやる気が出てきたわ!
戦術人形たちの緊張が解け、再び前向きな闘志がその瞳に宿る。
緋村零
だろ? 最悪の環境汚染がないなら、あとは人間同士の、あるいは機械同士の純粋な戦力値のぶつかり合いだ。